大塚先生の論文
今日,旬刊 金融法務事情2006年8月5・15日合併号を見ていたところ,大塚和成先生が
「会社法が求める内部統制とCOSO報告書・金融商品取引法との関係
−葉玉匡美検事のブログを参考にして」
という論文を見つけました。
まずサブタイトルでびっくりしましたが,小見出しの
「葉玉ブログの衝撃」
という題も衝撃でした(笑)。
衝撃の内容は,「会社法とCOSO」という記事の中の
http://app.blog.livedoor.jp/masami_hadama/tb.cgi/50687862
「会社法の内部統制システムの構築義務と金取法の内部統制は,全然関係ない」という部分なのですが,法務省の会社法グループの中では,そのことは水や空気と同じように当然視されていたので,「そこで驚かれるとは・・・」と不思議な気分です。
また,大塚先生のご論考には,共感を覚えますし,ブログのご紹介をしていただき有り難く思っていますが,まじめな論文に採り上げられると,やや気恥ずかしさが先に立ちます。例えて言えば,酔っぱらってカラオケで歌った歌がいつの間にかCD化されて売られていたような感じでしょうか(笑)。
さはさりながら,会社法と金証法の内部統制の考え方の違いについて,簡にして要を得た論文ですので,興味ある方はご一読されるとよいのではないかと思います。
(質問コーナー)
Q1
会社法100問の63番についてなのですが、任務懈怠と過失の区別云々のところで
任務懈怠=違法性、過失=責任という分類をされていますが、これは刑法で言えば、結果無価値的だなと感じました。
これを行為無価値的に引きなおすと一元説となってしまうのでしょうか。
二元説をとりつつ、過失を違法性判断で用いることはできるでしょうか。
Posted by 素通 at 2006年08月06日 02:26
A1
刑法の結果無価値と行為無価値も,その理念から一義的に,何らかの結論が導かれるものではないですし,刑法と会社法を同じ概念で説明するのも危険です。
一元説は,むしろ民法415条において,不完全履行に基づく損害賠償債務についての要件事実をどのように捉えるかというところを会社法についても,引きずってきた考えと捉えておく方がいいでしょう。
二元説をとりつつ,過失を違法性判断で用いるという意味がよく分かりませんが,
客観的注意義務違反=客観的過失=任務懈怠
と表現するならば,別におかしいことはありません。ただし,概念が誤解されやすいので,やめた方がいいように思います。
Q2
公開会社が、株券を発行する旨の定めを廃止すると同時に譲渡制限規定を設定する定款変更をしようと考えているのですが、株主及び登録株式質権者に対する各別の通知は、いつの時点での株主及び登録株式質権者に行えば良いのでしょうか。
基準日を設定することになるのかとも考えているのですが、いかがでしょうか。
Posted by yellow at 2006年08月06日 18:19
A2
通知をする時点での株主及び登録株式質権者です。
通知のためだけの基準日というのは,難しいと思います。
Q3
8月5日のQ2Q3に関連してご質問いたします。この両方の問いに対する、先生のご回答から明らかになったことは、この第319条第1項の提案は、多数決を要する株主総会の議案とは異なり、取締役会決議などの株主総会の議案が有効になるための手続要件が一切要らないということが、最大の特徴になると解釈いたしましたが、それでよろしいのでしょうか?ある意味株主が全員同意するならば、迂遠なことは省略できると言えるわけであり、会社支配の構造の中で、株主こそが、最大の支配者であることが明らかにされた条文ともいえるかとも思いますが、如何なのでしょうか?
Posted by R at 2006年08月06日 20:01
A3
株主総会の決議の省略は,株主総会の決議ではないので,株主総会を開催するときには必要であっても,決議の省略をするときには不要となるものもあります。「一切要らない」というわけではなく,例えば,取締役が会計監査人の選任提案をする場合には,監査役の同意が必要と解すべきであるという回答をしたはずです。
会社において,株主が最大の支配者であるということは,一部の政治的信念のある人は別として,「当然である」と理解されているはずです。
Q4
取締役会を設置しない会社(非設置会社)が取締役会を設置(設置会社)した場合、非設置会社の代表取締役(349条1項本文の取締役のこと)がそのまま設置会社の代表取締役に移行するのでしょうか?
仮に移行するとして、新に取締役会で代表取締役を選定した場合、他の代表取締役はどうなるのでしょうか?
【非設置会社】 【設置会社】
取締役 A B C A B C
→
代表取締役 A B C ?
Posted by 横山 at 2006年08月07日 00:28
A4
これは,前に質問を受けて,ペンディング中ですが,
取締役会を設置した場合には,取締役会は,代表取締役を選定しなければならない。
取締役会が代表取締役を選定した場合,当該代表取締役は,従前の地位を失うことはないが,選定された代表取締役は,選定の時点で,代表取締役の地位を失う
という方向で調整しているところです。
Q5
6月8日のA4につきましてご質問いたします。
合同会社については払込を証する書面は領収書でもよいとの記述があり、自分も合資の有限責任社員と同様に金銭を出資の目的とした場合には領収書でよいと考えておりました。
千問の773及び法務省民商782号通達によると、株式の発起設立と同様の書面等とされており,この等の部分には領収書も含まれると解釈しておりましたがこの通達の解釈には領収書は含まれないとの法務局の見解があります。
Posted by 雪山 at 2006年08月07日 17:00
A5
合同会社は,払込取扱銀行の制度がありませんので,銀行を使わない払込みの場合,発起設立と同じ書面は出せません。その場合には,払込を証する書面としては,領収書にする以外ないのではないでしょうか?調整マターではありますが,私の記憶に間違いがなければ,領収書でよかったと思います。
Q6
株式の併合についてお伺いしたいのですが、とーっても小さい会社の株式を併合しようと思ってるのですが、併合の割合の関係で端株が出てしまします。この場合、会社法は競売するか、市場価格がない場合は裁判所の許可を得て売却しなさいと書いてありますが、本当に1株に満たない株式の処分は、この二つの方法しか用意されてないのでしょうか。なぜ全体的に自由になった会社法で、このような面倒な規定を設けているのでしょうか。(決してけんかを売ってるわけではありません^^;)宜しく御願いいたします。
Posted by 千佳子 at 2006年08月07日 17:34
A6
他に方法がないからです。
Q7
合同会社の代表社員が法人の場合職務執行者を選任することになるかと思います。
解説などを読んでいると、代表社員が法人の場合には職務執行者の少なくとも1人は日本に住所を有している者と記載してあります。
前提として法人たる代表社員が複数いる場合だと思いますが、代表社員が1名(法人)のみの場合に当該法人は職務執行者を複数選任することはできるでしょうか。
Posted by keipyon at 2006年08月07日 18:29
A7
調整マターなのですが,職務執行者を複数選任することは,禁止されていないので,できると思います。
Q8
取締役会議事録の記載に関し質問をさせて下さい。
会社法施行規則では、取締役会に出席した株主が議事録の記載事項とされていますが、
株主が法人である場合に、その使用人が取締役会に出席した場合は
「出席株主 A株式会社(甲氏)」等として出席した従業員を明示する必要がありますか?
そもそも法人株主が使用人を取締役会に派遣してくる場合には、総会同様 委任状等を持参してもらうべきでしょうか?
Posted by greenlemon at 2006年08月07日 21:09
A8
従業員の明示は不要です。
委任状を持参しなければならないこととするかどうかは,任意ですが,代理権があることは従業員が証明する必要があります。

8/5の記事で質問に御回答頂いた者です。
どうもありがとうございました。
余談ですが、どこか組織的にこういうサイトを運営されればなぁと思います。個人でされているのはとても大変そうです。読者にとっては貴重ですが。
投稿: ピーポー | 2006年8月 8日 (火) 09時48分
新設分割についてご教授頂ければと思います(説明が長くなりすぎましたので数回に分けさせて頂きました。読みづらくて申し訳ございません。)。
会社法では、人的分割は物的分割+剰余金の配当と整理され、人的分割を行うには、分割手続とは別に剰余金の配当手続が必要とされています。
この剰余金配当手続に必要となる株主総会決議(会454)と新設分割計画を承認する株主総会決議(会804)を同じ日の株主総会で行うことはできるのでしょうか。
新設分割計画を承認する時点では、配当財産となる新設分割設立会社の株式は存在していませんし、そもそも新設分割が途中で頓挫してしまって新設分割設立会社の株式が発生しないかもしれません。
そのような決議の時点で存在していない、そもそも将来的に存在するかどうかも分からない状況で剰余金の配当ができるのかというのが問題意識です。
投稿: POG | 2006年8月 8日 (火) 13時40分
ただ、配当財産が発生した後でなければ剰余金配当ができないとすると、会社法812条2号に基づき配当の財源規制を免れるには、会社法763条12号で定められているとおり、新設分割設立会社の成立の日と同時に新設分割設立会社の株式を配当しなければならないので、新設分割設立会社が成立した日に必ず株主総会を開いて剰余金を配当しなければならないことになります。
ところが、新設分割設立会社の成立の日は登記の日なので、何らかの事情により招集通知の発送後にその日が変更になってしまい、もう一度手続をやり直さなければならないことになってしまいます。
したがって、新設分割と同時にする剰余金の配当のための株主総会決議は、新設分割設立会社の成立前に行うことが可能であり、新設分割計画承認の株主総会決議と同時にできると思われるのですがいかがでしょうか。
投稿: POG | 2006年8月 8日 (火) 13時40分
会社法では、分割計画で規定することにより、新設分割会社の一部の新株予約権だけを新設分割設立会社に移すことができると旬刊商事法務の新株予約権の解説のところで説明されています。
そのため、例えば新設分割設立会社に移る従業員に付与したストックオプションだけ新設分割設立会社に移し、新設分割会社に残る従業員に付与したストックオプションは新設分割会社に残すことも可能と考えています。
ところで、会社法808条1項では、イ新設分割設立会社に移る新株予約権者とロ新株予約権の内容として新設分割をしたら新設分割設立会社に移ると定められていたのに新設分割計画で新設分割設立会社に移らないことになった新設分割予約権者にのみ新株予約権買取請求権が認められており、新株予約権の内容としてそのような定めがなく、新設分割をしても新設分割設立会社に新株予約権が移らない新株予約権者には新株予約権買取請求権は認められていません。
投稿: POG | 2006年8月 8日 (火) 13時41分
しかし、ある新設分割会社の新株予約権者がその会社のある事業部門の成長を見込んで新株予約権(但し、新設分割しても新設分割設立会社に承継される旨定められていない。)を保有していたところ、その新設分割会社の新設分割計画において、その事業部門を人的分割して切り離してしまうけど、その新株予約権者の新株予約権は新設分割設立会社には承継させないことしてしまった場合、その新株予約権者の期待は害されてしまいます。
そうすると、新設分割設立会社に移らず、新株予約権の内容として新設分割をしたら、新設分割設立会社に移ると定められていない新株予約権者に対しても新株予約権買取請求権を認めるべきであり、そのような新株予約権者に対しても会社法808条3項に基づく新設分割する旨の通知をする必要があるように思います(公告にしてしまえば通知は必要なくなりますが。)。
投稿: POG | 2006年8月 8日 (火) 13時42分
また、今回新株予約権が会社に対する債権として整理されたことに伴い、新株予約権者も債権者保護手続の債権者として会社法810条2項に基づく個別催告の対象になったりするのでしょうか。
それとも、新設分割設立会社に移らず、新株予約権の内容として新設分割をしたら新設分割設立会社に移ると定められていない新株予約権者の期待が会社分割によって害されたとしても法律上は保護に値しないということで割り切ってしまって良いのでしょうか。
長すぎて申し訳ございませんが、宜しくお願い致します。
投稿: POG | 2006年8月 8日 (火) 13時43分
こんにちは、某法科大学院生です。
葉玉先生のブログは読んでいてとてもためになります。
これからも応援させてください!
投稿: ABC | 2006年8月 8日 (火) 15時37分
貸借対照表の注記事項のうち、取締役・監査役に対する金銭債権の総額(会社計算規則134条6号)の対象範囲と関連当事者との注記(同140条)の記載対象となる取引の範囲についてお教えください。
次の取引は対象となりますか?
1、会社が取締役のために第三者とする取引(いわゆる間接取引)
例:取締役が代取をしている他の会社のために債務者である銀行に対し保証する取引
2、当社の代取Aと相手方の会社の代取Cとの間の取引
当社:代取A、平取B 相手方:代取B、代取C とする。
3、会社が監査役のために第三者とする取引(いわゆる間接取引)
4、当社の代取Aと相手方の会社の代取Cとの間の取引
当社:代取A、監査役B 相手方:代取B、代取C とする。
投稿: MALLORCA | 2006年8月 8日 (火) 16時01分
葉玉さん、こんにちは。
会社法108条の種類株式の定め方と、その内容の登記事項についてご教授下さい。長いので2回に分けて投稿します。
とある大会社の種類株式の登記をするのに、勉強がてら種類株式の定めが登記されている別の大会社の登記事項証明書を取り寄せたところ、以下ような定めが登記してある会社がありました。しかも1つの会社だけでなくいくつもの会社にて登記されているのを見ました。
「1.株式の併合又は分割を受ける権利 / 第1種株式についての株式の併合、分割または無償割当てを行わない」
投稿: 骨ほねロック | 2006年8月 8日 (火) 16時09分
続きです。
この他、同じレベルに残余財産の分配、議決権、取得請求権、取得条項の定めもしてあり、それらは問題ないのですが、上記の内容は会社法上有効で、登記できる内容なのでしょうか。もし有効ならば、どの条文が根拠になるのでしょうか。今度行う予定の種類株登記の資料をもらったところ、この「株式の併合又は分割」を行わない旨が内容のひとつとされており悩んでいます。お忙しいところ恐縮ですが、お願いいたします。
投稿: 骨ほねロック | 2006年8月 8日 (火) 16時10分
葉玉先生こんにちは
私は中小企業の経理担当です。
監査役の選任ついて一点お伺いしたい点がございますので、ご教示をお願いいたします。
当社は株式に譲渡制限を設けていない取締役会設置会社です。昨年6月の株主総会決議において資本金を2億円から1億円に減資を行いました。当期の株主総会にて、商法特例法27条により、監査役は次の株主総会までは、従前の権限を有すると判断(会計限定ではない)し、監査役の選任決議を行いませんでした。しかし、整備法53条の反対解釈によると、弊社は公開会社である為、監査役の任期は満了となると考えられます。この場合、弊社は臨時総会を開催、監査役を選任しなければならないのでしょうか?
お恥ずかしながら当期の総会決議時点においては、商法特例法が廃止となることを把握しておりませんでした。後に、整備法に目を通した上で、上記の疑問点が沸いた次第です。
何卒、よろしくお願いいたします。
投稿: KAN | 2006年8月 8日 (火) 17時30分
葉玉先生
下記、ご教示いただきたいと存じます。
①無対価吸収型組織再編(「千問の道標」Q907)は、
合併対価の柔軟化の施行前である現時点(平成18年8月)
でも、認められているものと解して宜しいでしょうか。
②産業活力再生特別措置法旧第12条の9における
「合併等対価の柔軟化」(平成19年5月期限)において、
合併等対価の一部を金銭、一部を新株とするような
契約は可能でしょうか。
投稿: 葉玉先生ご教示ください。 | 2006年8月 8日 (火) 18時04分
葉玉先生、お世話になります。追加でお教えください。
計算書類附属明細書の記載事項のうち多くの事項が事業報告や計算書類の注記の記載事項に変更されていますが、次の明細書はどのように扱われるのですか?
1、社債、長期借入金及び短期借入金の増減
2、子会社に対する出資及び債権の明細のうち、債権の明細については関連当事者の注記事項ですが、出資の明細はどうなりましたか?
3、議決権の1/4超の会社に対する出資及び先方が有する株式の数
営業報告書の記載事項のうち、「主要な借入先、借入額及び当該借入先が有する株式の数」は、新法のもとではどこにも記載する必要がないことになったのでしょうか?
投稿: MALLORCA | 2006年8月 8日 (火) 18時33分
分配可能額について、お伺いいたします。
会社計算規則186条1号は、最終事業年度の末日に
おける「のれん等調整額」を控除するルールを定めて
おりますが、一方、最終事業年度の末日後に吸収型組
織再編行為により剰余金が増加した場合には、その増
加分はそのまま分配可能額に組み入れます。しかし、
この時点では吸収型組織再編行為により増加した「の
れん等調整額」を分配可能額から控除することは考慮
されていないと思われます。
事業年度の途中で吸収型組織再編行為により「のれん
等調整額」が計上された場合には、その時点で、会社
計算規則186条1号のルールを適用し、分配可能額
からその「のれん等調整額」を控除する方が取扱とし
て一貫性があるように感じるのですが、そのような取
扱を採用しなかったのは何か理由があるのでしょうか。
投稿: みひろ | 2006年8月 8日 (火) 22時43分
いつも大変参考にさせて頂いております。資本金の額の減少に関する手続についてご質問させて下さい。
447条3項によれば、株式会社が株式の発行と同時に資本金の額を減少する場合において、当該資本金の額の減少の効力が生ずる日後の資本金の額が当該日前の資本金の額を下回らないときは、取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)で足りるとされます。
この場合であっても、449条に定める債権者保護手続の履践は必要なのでしょうか。不要とする規定がない以上、履践は必要であると読まなければならないのでしょうか。
447条3項の場合のように、株式の発行によって増加する資本金の額の範囲内で資本金の額を減少する場合、払込資本が増加しますし、結局資本金の額は増加するのですから、債権者の保護は特に要しないようにも思われるところです。
ご教示頂ければと存じます。
投稿: NN | 2006年8月 8日 (火) 23時39分