無料ブログはココログ

« 2006年6月 | トップページ | 2006年8月 »

2006年7月31日 (月)

判決の将来効

  T&A masterの7月31日号に「取締役会の配当決定権」について解説を書きました。
この記事は、私が、港区の一角でカフェのマスターとなり、おいしいコーヒーと的確なアドバイスで、悩める法務担当者を癒しましょういう設定で、重要な会社法上の問題をできるかぎり優しく解説しようという試みです。
「なぜ、そういう設定なんですか」と尋ねられると
 「ノリだよ。ノリ。」
と答えるしかありません(笑)。
 コンセプトとしては、法務担当者が、社長から
「おい、松本君。こういうニュースを見たんだが、これは、法律上、どうなっているんだ」
と尋ねられたときに、小難しい言葉を使わずに
「社長、それは、・・・・ということです。」
と分かりやすく説明できるようにして、社長から
「なるほど、君はよく勉強しているな。ボーナスを弾むことにしよう。」
となることを目的としています(笑)。
 特に連載ということではありませんが、せっかく設定を考えて、イラストまで作ってもらったので、皆さんが「これが知りたい」ということがあれば、編集部にご要望ください。
 それをネタに、また書くかもしれません。

さて「旧司法試験でがんばる」さんから、無効の訴えの確定判決の効力について質問を受けました。

「将来効と遡及的無効との違いに関する質問です。
 設立無効、募集株式発行無効確認、合併無効などは将来効とされ、新株不存在確認、株主総会決議取消訴訟、株主総会決議無効確認訴訟は遡及的無効となっています。との説明です(一問一答Q213)。しかし、設立無効や合併無効、株主総会決議取消訴訟などは一般的に形成訴訟なので、この説明が合理的なのかが分かりません。
法が将来効と遡及的無効を分けた基準はどこにあるのでしょうか。」

 この質問は、「形成訴訟としたものと、そうでないものの区別」の話と「将来効としたものと、そうでないもの区別」の話が混じっているので、いくつか基本的な事項を確認しながら、説明します。

 まず、民法の錯誤無効と詐欺取消のことを思い出していただければ分かると思いますが、法律行為の効力を否定する方法としては
無効・・・最初から効力が生じてない。
取消・・・取消権を行使するまでは有効だが、取消権が行使されると遡及的無効となる
という2つのパターンがあります。

 そして、この無効事由と取消事由の違いについては
無効事由・・・内心的効果意思が欠けている又は強行法規(公序良俗等)に違反しているから、最初から効力が生じないこととした
取消事由・・・動機に瑕疵があるが、内心的効果意思は存在するので、とりあえず効力を有することとし、取消権が時効消滅すれば、法律関係は有効なものとして確定する。
と説明されるのが通常です。

 これに対し、会社の行為は、会社の意思決定手続きの強行法規性の度合いに着目し
無効事由・・・特に明文をおいていないものの、強行法規性の強い規定に違反した場合、無効事由になるとするのが通説
取消事由・・・株主総会の決議取消(内容の定款違反等)・持分会社の設立取消(設立の意思表示に取消事由がある場合等)のみ
という整理をしています。

 それでは、実体法上の無効事由について、仮に、会社法が「形成訴訟」という手法を採用しなかったとしたらどうなるかというと、この場合、民法と同じように、無効事由があれば、最初から効力は生じないし、そのことをいつまでも主張することができることになります。
 例えば、事業譲渡は、「無効の訴え」の対象になっていないので、株主総会の決議が欠け、相手方が悪意であるような場合には、最初から効力は生じず、無効であることを前提に、譲渡された事業の返還請求等をすることができます。

他方、会社法は、いくつかの会社の行為(設立、新株発行・資本金の減少・株主総会決議等)については、無効・取消主張について、「形成訴訟」を採用しています。

形成訴訟というのは、当該訴訟の判決の確定によって、はじめて実体法上の法律関係が形成されるという訴訟です。

この形成訴訟は、無効・取消の主張をするための特別な訴えなんだから、一見、提訴権者の保護のための制度に見えますが、実際は、その逆であり
 提訴期間を制限することにより、期間経過後の無効・取消の主張を封じて、法律関係を安定させる
ところに本質があります。その意味で、民法の取消制度(取消権が時効消滅等により行使できなくなった時点で法律関係が有効なものとして確定する)と発想はよく似ており、誤解を恐れずに言えば、「無効事由」を「取消し」のように取り扱うことを可能にするのが、形成訴訟です。

このように形成訴訟の対象となると、提訴期間内に提訴しなければならないという制限がかかる分、瑕疵を主張する者にとって不利なわけで、形成訴訟の対象とするためには、その瑕疵の主張を封じても正義に反しない程度の瑕疵であるという制度上の制約がつきます。

また、形成訴訟は、その判決が将来効とされるもの(設立無効の訴え等各種無効の訴え)と、遡及的無効とされるもの(株主総会決議取消の訴え)に分類されます。

 将来効は、遡及的無効とよって判決確定までに行われてきた会社の行為に広く瑕疵が生じ、法律関係の安定が害されることを防止するために認められるものです。
 設立無効の訴え等形成訴訟の大部分は、法律関係の安定のために形成訴訟にしているのですから、判決の効力についても、法律関係の安定のために、将来効になっています。

 ただし、株主総会決議の取消しの訴えについては、「何を」決議したのかによって、法律関係の安定の要請は変わってきます。
 また、決議取消判決を「将来効」とするのでは、判決確定前に、総会決議に従って法律行為が行われている場合に、その行為の効力を否定することができなくなり、決議の取消をした意味がなくなってしまう恐れもあります。
 そこで、決議取消の訴えについては、決議の効力を遡及的に無効とした上で、その決議に基づいて行われた会社の行為の効力は、別個に考えることにしたのです。
 たとえば、事業譲渡の承認決議に取消事由があった場合、決議取消判決が確定すれば、「決議」は遡及的に無効となり、総会決議のないまま事業譲渡が行われたことになりますが、当該「事業譲渡」の効力については、必ずしも遡及的無効と解釈する必要はなく、例えば、民法93条類推適用によって相手方が善意の場合には、事業譲渡を有効と解することができますよね。
 このように、決議取消判決に遡及効が認められているのは、取引の安全等は図るために、もうワンクッションの解釈をする余地があることも理由の一つです。

さて、以上をまとめると、会社の行為の無効・取消事由は
1 形成訴訟の対象となっていない事由
2 形成訴訟の対象となっていて、将来効である事由
3 形成訴訟の対象となっていて、将来効でない事由
の3つに分類されることになり、これを前提に、質問に答えましょう。

「旧司法試験でがんばる」さんは
 「株式発行の不存在確認の訴えは、なぜ将来効ではないのですか」
と質問されていますが、それに対しては
 形式的な理由は、株式発行の不存在確認の訴えは、形成訴訟ではない(上記1)から、判決の将来効を論ずる余地はない
という答えになります。

そこで、もう一歩、掘り下げて、
「なぜ株式発行の不存在確認の訴えは、形成訴訟になっていないのですか」
という質問があれば、それに対しては
 株式発行の不存在は、瑕疵の程度が重大なので、提訴期間による主張制限をすべきではないから
という政策的理由をお答えすることになります。
 株主総会決議無効・不存在確認の訴えや、自己株式処分不存在確認の訴え、新株予約権の不存在確認の訴えが、形成訴訟とされていないのも同じ理由です。

いいかえれば、
1 形成訴訟の対象となっていない事由・・・瑕疵が重大なので、提訴期間の制限をしない。
2 形成訴訟の対象となっていて、将来効である事由・・・瑕疵がそれほど重大ではないので、提訴期間の制限をするし、判決が確定しても法律関係の安定を優先して将来効
3 形成訴訟の対象となっていて、将来効でない事由・・・瑕疵がそれほど重大ではないので、提訴期間の制限はするが、判決が確定した場合には、判決の実効性を確保するために遡及的に無効とする。
という分類がされているのです。

(質問コーナー)
Q1
100問249頁では、取締役会決議を経ていない代表行為の効力について、民§93を類推して、相手方が「決議がないこと」につき悪意又は有過失の場合に、会社は無効主張できるとされています(最判S44・9・22)。ところで、相手方が『多額の借財』に当たることにつき悪意or有過失であることまでは不要でしょうか(いわば二重の悪意)。というのは、最判H6・1・20の調査官解説によれば、①「重要な財産の処分」にあたること、②役会決議がないこと、を要するとしているからです。これは、利益相反取引の相対的無効について、最大判S46・10・13が悪意=承認決議がなかったことのほか、利益相反取引にあたることを含めていることとも整合するように思います。どのように考えればよいのでしょうか。
Posted by ロー生 at 2006年07月31日 11:47
A1
①多額の借財であることが分からなかったため、役会決議のことにも考えが及ばなかった場合と、②多額の借財であることは知っていたが、役会決議があると誤信した場合の双方とも、保護されるべきだと思います。
 多額の借財であることについて善意が必要であるということになれば、②は保護されないことになりますが、代表取締役が役会議事録を偽造して相手方に示しているような場合もあるのですから、相手方を一切保護しないというわけにはいかないでしょう。
 ①と②の理論構成を変えるということも難しいので、①②とも、93条類推適用にして、取締役会の決議の不存在を知らなかったことについての過失を考える上で、「多額の借財」についての認識可能性なども判断すれば十分であるように思います。

Q2
事後設立に関し、質問があります。
 平成15年に、価額が資本金の20分の1を超える(ただし、純資産額の5分の1は越えない)財産を取得した場合、当時は、事後設立として、検査役の検査および株主総会の特別決議が必要です。
 それに対し、会社法では、純資産額の5分の1を越えていないことから、かかる場合には、事後設立(会社法467条1項5号)にあたらないことになるはずです。
 それでは、平成15年当時、検査役の検査および株主総会の特別決議を得なかった会社が、その瑕疵を治癒するためには、現時点で何かする必要があるのでしょうか?必要ないように思えるのですが、どうなんでしょうか。
 また、5分の1を超える場合には、会社法の下でも、事後設立にあたりますが、その場合に、検査役の検査が不要になるのでしょうか?
Posted by aki at 2006年07月31日 12:51
A2
467条は、効力発生日の前日までに、株主総会の承認を得ることを要求しています。
したがって、事後設立の効力発生日として平成15年を定めた場合、これを会社法上、有効にする手段はありません。
瑕疵を治癒することはできませんが、改めて、当該財産を取得し直すことは可能でしょう。もう事後設立の規制にもひっかからないのではないでしょうか。
 ちなみに、事後設立についての検査役の調査は、一切ありません。

Q3
質問させてください。会社法156条の自己株式取得をする際に、総株主に通知を出しますが、これは発送期日が指定されていませんで、このような指定の無い規定は常に、株主に不利益は無という理由で「いつでも」もしくは「相当な期間」と考えてよろしいのでしょうか。また、この通知に伴って譲渡しの申し込みがあった場合は、取締役会で定めた申し込み期日に売買契約が成立し、その日より、譲渡した株主は株主ではなくなると考えてよろしいでしょうか。最後に、買取価格が相当な価格よりかなり低い場合でも問題ないのでしょうか。よろしくお願いいたします。
Posted by 千佳子 at 2006年07月31日 13:12
A3
157条1項4号で申込期日を定めなければならないので、その日よりも前でなければいけませんが、期間は特に決められていません。
申込みに対し、会社が承諾すれば売買契約は成立します。ただし、株券発行会社の場合には、株券の交付がなければ、株式は移転しません。
買取価格が低くても、特に問題ありません。安いと思ったら、株主が売らなければよいだけなので。

Q4
 新設分割計画の記載事項に分割会社から承継する分割会社株式に関する事項がないのはなぜですか。一部にこれは,新設分割の場合,分割会社株式の承継を認めない趣旨だと記述する文献があるのですが,もしそうだとすればその理由は何でしょうか。
A4
新設分割では、分割会社株式の承継は認められません。
理由はいくつかありますが、①通常の設立手続を行う場合に、自己株式を現物出資して設立することができないこととの平仄、②単独で新株分割をすると、本来、禁止されている子会社による親会社株式の取得を直接に作り出すことになり、濫用のおそれが高い(なお、親会社が自己の親会社株式を新設会社に承継させることは、省令で認められています)というのが主たる理由です。

Q5
消滅会社・分割会社の新株予約権者は事前備置書類の閲覧をすることができますか。債権者に入ると解釈するかどうかです。株式交換は(取得+交付の対象以外の新株予約権者も)閲覧権があり,また事前備置書類の内容からしても当然閲覧できるように思いますが,「債権者」と解してよいか若干疑義がありましたので照会いたします(登記相談調)。
Posted by ik at 2006年07月31日 16:49
A5
新株予約権者は、債権者ですので、閲覧することができます。
債権者保護手続の「債権者」ですが、新株予約権者も形式的には該当すると思います。
債権者保護手続の債権者は、必ずしも金銭債権の債権者に限られないので。
ただ、無記名新株予約権ですと「知れたる債権者」に該当しませんし、新株予約権者が異議を申し述べたとしても、資本金の減少等が新株予約権者を害するおそれはないので、会社は何もする必要はないのが普通です。
ですから、新株予約権者の保護は、新株予約権買取請求権で図られることになるでしょう。

Q6
今年の1月に有限会社を株式会社に組織変更にした会社が、会社法施行後に吸収合併を行い存続会社となる場合に、債権者保護手続を行う際に示すべき「最終の事業年度に係る貸借対照表」に関する事項は、会社計算規則第199条第5号又は第7号のいずれに該当するのでしょうか。
Posted by 司法書士補助者 at 2006年07月31日 19:54
A6
7号です。

Q7
合併や株式交換において、株主総会の承認決議よりも前に、株券提出公告・通知(会社法219条)を行う(例えば、10月1日が効力発生日の場合に、8月25日に株券提出公告・通知を行い、9月30日に株主総会を開催する)ことは可能でしょうか。株主総会の承認決議がなされていない段階で、株主に対して株券の提出を求めるのは違和感がありますが、会社法上は、このような扱いも可能という理解でよろしいでしょうか。
Posted by 組織再編実務担当者 at 2006年07月31日 20:19
A7
できます。
なお、株券は、合併の効力発生により、無効となりますが、それと同時に、合併対価の交付請求権を表彰する有価証券になるので、株券提出の期限までに株券を提出しなくても、株主が害されることはほとんど考えられません。

判決の将来効

  T&A masterの7月31日号に「取締役会の配当決定権」について解説を書きました。
この記事は、私が、港区の一角でカフェのマスターとなり、おいしいコーヒーと的確なアドバイスで、悩める法務担当者を癒しましょういう設定で、重要な会社法上の問題をできるかぎり優しく解説しようという試みです。
「なぜ、そういう設定なんですか」と尋ねられると
 「ノリだよ。ノリ。」
と答えるしかありません(笑)。
 コンセプトとしては、法務担当者が、社長から
「おい、松本君。こういうニュースを見たんだが、これは、法律上、どうなっているんだ」
と尋ねられたときに、小難しい言葉を使わずに
「社長、それは、・・・・ということです。」
と分かりやすく説明できるようにして、社長から
「なるほど、君はよく勉強しているな。ボーナスを弾むことにしよう。」
となることを目的としています(笑)。
 特に連載ということではありませんが、せっかく設定を考えて、イラストまで作ってもらったので、皆さんが「これが知りたい」ということがあれば、編集部にご要望ください。
 それをネタに、また書くかもしれません。

さて「旧司法試験でがんばる」さんから、無効の訴えの確定判決の効力について質問を受けました。

「将来効と遡及的無効との違いに関する質問です。
 設立無効、募集株式発行無効確認、合併無効などは将来効とされ、新株不存在確認、株主総会決議取消訴訟、株主総会決議無効確認訴訟は遡及的無効となっています。との説明です(一問一答Q213)。しかし、設立無効や合併無効、株主総会決議取消訴訟などは一般的に形成訴訟なので、この説明が合理的なのかが分かりません。
法が将来効と遡及的無効を分けた基準はどこにあるのでしょうか。」

 この質問は、「形成訴訟としたものと、そうでないものの区別」の話と「将来効としたものと、そうでないもの区別」の話が混じっているので、いくつか基本的な事項を確認しながら、説明します。

 まず、民法の錯誤無効と詐欺取消のことを思い出していただければ分かると思いますが、法律行為の効力を否定する方法としては
無効・・・最初から効力が生じてない。
取消・・・取消権を行使するまでは有効だが、取消権が行使されると遡及的無効となる
という2つのパターンがあります。

 そして、この無効事由と取消事由の違いについては
無効事由・・・内心的効果意思が欠けている又は強行法規(公序良俗等)に違反しているから、最初から効力が生じないこととした
取消事由・・・動機に瑕疵があるが、内心的効果意思は存在するので、とりあえず効力を有することとし、取消権が時効消滅すれば、法律関係は有効なものとして確定する。
と説明されるのが通常です。

 これに対し、会社の行為は、会社の意思決定手続きの強行法規性の度合いに着目し
無効事由・・・特に明文をおいていないものの、強行法規性の強い規定に違反した場合、無効事由になるとするのが通説
取消事由・・・株主総会の決議取消(内容の定款違反等)・持分会社の設立取消(設立の意思表示に取消事由がある場合等)のみ
という整理をしています。

 それでは、実体法上の無効事由について、仮に、会社法が「形成訴訟」という手法を採用しなかったとしたらどうなるかというと、この場合、民法と同じように、無効事由があれば、最初から効力は生じないし、そのことをいつまでも主張することができることになります。
 例えば、事業譲渡は、「無効の訴え」の対象になっていないので、株主総会の決議が欠け、相手方が悪意であるような場合には、最初から効力は生じず、無効であることを前提に、譲渡された事業の返還請求等をすることができます。

他方、会社法は、いくつかの会社の行為(設立、新株発行・資本金の減少・株主総会決議等)については、無効・取消主張について、「形成訴訟」を採用しています。

形成訴訟というのは、当該訴訟の判決の確定によって、はじめて実体法上の法律関係が形成されるという訴訟です。

この形成訴訟は、無効・取消の主張をするための特別な訴えなんだから、一見、提訴権者の保護のための制度に見えますが、実際は、その逆であり
 提訴期間を制限することにより、期間経過後の無効・取消の主張を封じて、法律関係を安定させる
ところに本質があります。その意味で、民法の取消制度(取消権が時効消滅等により行使できなくなった時点で法律関係が有効なものとして確定する)と発想はよく似ており、誤解を恐れずに言えば、「無効事由」を「取消し」のように取り扱うことを可能にするのが、形成訴訟です。

このように形成訴訟の対象となると、提訴期間内に提訴しなければならないという制限がかかる分、瑕疵を主張する者にとって不利なわけで、形成訴訟の対象とするためには、その瑕疵の主張を封じても正義に反しない程度の瑕疵であるという制度上の制約がつきます。

また、形成訴訟は、その判決が将来効とされるもの(設立無効の訴え等各種無効の訴え)と、遡及的無効とされるもの(株主総会決議取消の訴え)に分類されます。

 将来効は、遡及的無効とよって判決確定までに行われてきた会社の行為に広く瑕疵が生じ、法律関係の安定が害されることを防止するために認められるものです。
 設立無効の訴え等形成訴訟の大部分は、法律関係の安定のために形成訴訟にしているのですから、判決の効力についても、法律関係の安定のために、将来効になっています。

 ただし、株主総会決議の取消しの訴えについては、「何を」決議したのかによって、法律関係の安定の要請は変わってきます。
 また、決議取消判決を「将来効」とするのでは、判決確定前に、総会決議に従って法律行為が行われている場合に、その行為の効力を否定することができなくなり、決議の取消をした意味がなくなってしまう恐れもあります。
 そこで、決議取消の訴えについては、決議の効力を遡及的に無効とした上で、その決議に基づいて行われた会社の行為の効力は、別個に考えることにしたのです。
 たとえば、事業譲渡の承認決議に取消事由があった場合、決議取消判決が確定すれば、「決議」は遡及的に無効となり、総会決議のないまま事業譲渡が行われたことになりますが、当該「事業譲渡」の効力については、必ずしも遡及的無効と解釈する必要はなく、例えば、民法93条類推適用によって相手方が善意の場合には、事業譲渡を有効と解することができますよね。
 このように、決議取消判決に遡及効が認められているのは、取引の安全等は図るために、もうワンクッションの解釈をする余地があることも理由の一つです。

さて、以上をまとめると、会社の行為の無効・取消事由は
1 形成訴訟の対象となっていない事由
2 形成訴訟の対象となっていて、将来効である事由
3 形成訴訟の対象となっていて、将来効でない事由
の3つに分類されることになり、これを前提に、質問に答えましょう。

「旧司法試験でがんばる」さんは
 「株式発行の不存在確認の訴えは、なぜ将来効ではないのですか」
と質問されていますが、それに対しては
 形式的な理由は、株式発行の不存在確認の訴えは、形成訴訟ではない(上記1)から、判決の将来効を論ずる余地はない
という答えになります。

そこで、もう一歩、掘り下げて、
「なぜ株式発行の不存在確認の訴えは、形成訴訟になっていないのですか」
という質問があれば、それに対しては
 株式発行の不存在は、瑕疵の程度が重大なので、提訴期間による主張制限をすべきではないから
という政策的理由をお答えすることになります。
 株主総会決議無効・不存在確認の訴えや、自己株式処分不存在確認の訴え、新株予約権の不存在確認の訴えが、形成訴訟とされていないのも同じ理由です。

いいかえれば、
1 形成訴訟の対象となっていない事由・・・瑕疵が重大なので、提訴期間の制限をしない。
2 形成訴訟の対象となっていて、将来効である事由・・・瑕疵がそれほど重大ではないので、提訴期間の制限をするし、判決が確定しても法律関係の安定を優先して将来効
3 形成訴訟の対象となっていて、将来効でない事由・・・瑕疵がそれほど重大ではないので、提訴期間の制限はするが、判決が確定した場合には、判決の実効性を確保するために遡及的に無効とする。
という分類がされているのです。

(質問コーナー)
Q1
100問249頁では、取締役会決議を経ていない代表行為の効力について、民§93を類推して、相手方が「決議がないこと」につき悪意又は有過失の場合に、会社は無効主張できるとされています(最判S44・9・22)。ところで、相手方が『多額の借財』に当たることにつき悪意or有過失であることまでは不要でしょうか(いわば二重の悪意)。というのは、最判H6・1・20の調査官解説によれば、①「重要な財産の処分」にあたること、②役会決議がないこと、を要するとしているからです。これは、利益相反取引の相対的無効について、最大判S46・10・13が悪意=承認決議がなかったことのほか、利益相反取引にあたることを含めていることとも整合するように思います。どのように考えればよいのでしょうか。
Posted by ロー生 at 2006年07月31日 11:47
A1
①多額の借財であることが分からなかったため、役会決議のことにも考えが及ばなかった場合と、②多額の借財であることは知っていたが、役会決議があると誤信した場合の双方とも、保護されるべきだと思います。
 多額の借財であることについて善意が必要であるということになれば、②は保護されないことになりますが、代表取締役が役会議事録を偽造して相手方に示しているような場合もあるのですから、相手方を一切保護しないというわけにはいかないでしょう。
 ①と②の理論構成を変えるということも難しいので、①②とも、93条類推適用にして、取締役会の決議の不存在を知らなかったことについての過失を考える上で、「多額の借財」についての認識可能性なども判断すれば十分であるように思います。

Q2
事後設立に関し、質問があります。
 平成15年に、価額が資本金の20分の1を超える(ただし、純資産額の5分の1は越えない)財産を取得した場合、当時は、事後設立として、検査役の検査および株主総会の特別決議が必要です。
 それに対し、会社法では、純資産額の5分の1を越えていないことから、かかる場合には、事後設立(会社法467条1項5号)にあたらないことになるはずです。
 それでは、平成15年当時、検査役の検査および株主総会の特別決議を得なかった会社が、その瑕疵を治癒するためには、現時点で何かする必要があるのでしょうか?必要ないように思えるのですが、どうなんでしょうか。
 また、5分の1を超える場合には、会社法の下でも、事後設立にあたりますが、その場合に、検査役の検査が不要になるのでしょうか?
Posted by aki at 2006年07月31日 12:51
A2
467条は、効力発生日の前日までに、株主総会の承認を得ることを要求しています。
したがって、事後設立の効力発生日として平成15年を定めた場合、これを会社法上、有効にする手段はありません。
瑕疵を治癒することはできませんが、改めて、当該財産を取得し直すことは可能でしょう。もう事後設立の規制にもひっかからないのではないでしょうか。
 ちなみに、事後設立についての検査役の調査は、一切ありません。

Q3
質問させてください。会社法156条の自己株式取得をする際に、総株主に通知を出しますが、これは発送期日が指定されていませんで、このような指定の無い規定は常に、株主に不利益は無という理由で「いつでも」もしくは「相当な期間」と考えてよろしいのでしょうか。また、この通知に伴って譲渡しの申し込みがあった場合は、取締役会で定めた申し込み期日に売買契約が成立し、その日より、譲渡した株主は株主ではなくなると考えてよろしいでしょうか。最後に、買取価格が相当な価格よりかなり低い場合でも問題ないのでしょうか。よろしくお願いいたします。
Posted by 千佳子 at 2006年07月31日 13:12
A3
157条1項4号で申込期日を定めなければならないので、その日よりも前でなければいけませんが、期間は特に決められていません。
申込みに対し、会社が承諾すれば売買契約は成立します。ただし、株券発行会社の場合には、株券の交付がなければ、株式は移転しません。
買取価格が低くても、特に問題ありません。安いと思ったら、株主が売らなければよいだけなので。

Q4
 新設分割計画の記載事項に分割会社から承継する分割会社株式に関する事項がないのはなぜですか。一部にこれは,新設分割の場合,分割会社株式の承継を認めない趣旨だと記述する文献があるのですが,もしそうだとすればその理由は何でしょうか。
A4
新設分割では、分割会社株式の承継は認められません。
理由はいくつかありますが、①通常の設立手続を行う場合に、自己株式を現物出資して設立することができないこととの平仄、②単独で新株分割をすると、本来、禁止されている子会社による親会社株式の取得を直接に作り出すことになり、濫用のおそれが高い(なお、親会社が自己の親会社株式を新設会社に承継させることは、省令で認められています)というのが主たる理由です。

Q5
消滅会社・分割会社の新株予約権者は事前備置書類の閲覧をすることができますか。債権者に入ると解釈するかどうかです。株式交換は(取得+交付の対象以外の新株予約権者も)閲覧権があり,また事前備置書類の内容からしても当然閲覧できるように思いますが,「債権者」と解してよいか若干疑義がありましたので照会いたします(登記相談調)。
Posted by ik at 2006年07月31日 16:49
A5
新株予約権者は、債権者ですので、閲覧することができます。
債権者保護手続の「債権者」ですが、新株予約権者も形式的には該当すると思います。
債権者保護手続の債権者は、必ずしも金銭債権の債権者に限られないので。
ただ、無記名新株予約権ですと「知れたる債権者」に該当しませんし、新株予約権者が異議を申し述べたとしても、資本金の減少等が新株予約権者を害するおそれはないので、会社は何もする必要はないのが普通です。
ですから、新株予約権者の保護は、新株予約権買取請求権で図られることになるでしょう。

Q6
今年の1月に有限会社を株式会社に組織変更にした会社が、会社法施行後に吸収合併を行い存続会社となる場合に、債権者保護手続を行う際に示すべき「最終の事業年度に係る貸借対照表」に関する事項は、会社計算規則第199条第5号又は第7号のいずれに該当するのでしょうか。
Posted by 司法書士補助者 at 2006年07月31日 19:54
A6
7号です。

Q7
合併や株式交換において、株主総会の承認決議よりも前に、株券提出公告・通知(会社法219条)を行う(例えば、10月1日が効力発生日の場合に、8月25日に株券提出公告・通知を行い、9月30日に株主総会を開催する)ことは可能でしょうか。株主総会の承認決議がなされていない段階で、株主に対して株券の提出を求めるのは違和感がありますが、会社法上は、このような扱いも可能という理解でよろしいでしょうか。
Posted by 組織再編実務担当者 at 2006年07月31日 20:19
A7
できます。
なお、株券は、合併の効力発生により、無効となりますが、それと同時に、合併対価の交付請求権を表彰する有価証券になるので、株券提出の期限までに株券を提出しなくても、株主が害されることはほとんど考えられません。

判決の将来効

  T&A masterの7月31日号に「取締役会の配当決定権」について解説を書きました。
この記事は、私が、港区の一角でカフェのマスターとなり、おいしいコーヒーと的確なアドバイスで、悩める法務担当者を癒しましょういう設定で、重要な会社法上の問題をできるかぎり優しく解説しようという試みです。
「なぜ、そういう設定なんですか」と尋ねられると
 「ノリだよ。ノリ。」
と答えるしかありません(笑)。
 コンセプトとしては、法務担当者が、社長から
「おい、松本君。こういうニュースを見たんだが、これは、法律上、どうなっているんだ」
と尋ねられたときに、小難しい言葉を使わずに
「社長、それは、・・・・ということです。」
と分かりやすく説明できるようにして、社長から
「なるほど、君はよく勉強しているな。ボーナスを弾むことにしよう。」
となることを目的としています(笑)。
 特に連載ということではありませんが、せっかく設定を考えて、イラストまで作ってもらったので、皆さんが「これが知りたい」ということがあれば、編集部にご要望ください。
 それをネタに、また書くかもしれません。

さて「旧司法試験でがんばる」さんから、無効の訴えの確定判決の効力について質問を受けました。

「将来効と遡及的無効との違いに関する質問です。
 設立無効、募集株式発行無効確認、合併無効などは将来効とされ、新株不存在確認、株主総会決議取消訴訟、株主総会決議無効確認訴訟は遡及的無効となっています。との説明です(一問一答Q213)。しかし、設立無効や合併無効、株主総会決議取消訴訟などは一般的に形成訴訟なので、この説明が合理的なのかが分かりません。
法が将来効と遡及的無効を分けた基準はどこにあるのでしょうか。」

 この質問は、「形成訴訟としたものと、そうでないものの区別」の話と「将来効としたものと、そうでないもの区別」の話が混じっているので、いくつか基本的な事項を確認しながら、説明します。

 まず、民法の錯誤無効と詐欺取消のことを思い出していただければ分かると思いますが、法律行為の効力を否定する方法としては
無効・・・最初から効力が生じてない。
取消・・・取消権を行使するまでは有効だが、取消権が行使されると遡及的無効となる
という2つのパターンがあります。

 そして、この無効事由と取消事由の違いについては
無効事由・・・内心的効果意思が欠けている又は強行法規(公序良俗等)に違反しているから、最初から効力が生じないこととした
取消事由・・・動機に瑕疵があるが、内心的効果意思は存在するので、とりあえず効力を有することとし、取消権が時効消滅すれば、法律関係は有効なものとして確定する。
と説明されるのが通常です。

 これに対し、会社の行為は、会社の意思決定手続きの強行法規性の度合いに着目し
無効事由・・・特に明文をおいていないものの、強行法規性の強い規定に違反した場合、無効事由になるとするのが通説
取消事由・・・株主総会の決議取消(内容の定款違反等)・持分会社の設立取消(設立の意思表示に取消事由がある場合等)のみ
という整理をしています。

 それでは、実体法上の無効事由について、仮に、会社法が「形成訴訟」という手法を採用しなかったとしたらどうなるかというと、この場合、民法と同じように、無効事由があれば、最初から効力は生じないし、そのことをいつまでも主張することができることになります。
 例えば、事業譲渡は、「無効の訴え」の対象になっていないので、株主総会の決議が欠け、相手方が悪意であるような場合には、最初から効力は生じず、無効であることを前提に、譲渡された事業の返還請求等をすることができます。

他方、会社法は、いくつかの会社の行為(設立、新株発行・資本金の減少・株主総会決議等)については、無効・取消主張について、「形成訴訟」を採用しています。

形成訴訟というのは、当該訴訟の判決の確定によって、はじめて実体法上の法律関係が形成されるという訴訟です。

この形成訴訟は、無効・取消の主張をするための特別な訴えなんだから、一見、提訴権者の保護のための制度に見えますが、実際は、その逆であり
 提訴期間を制限することにより、期間経過後の無効・取消の主張を封じて、法律関係を安定させる
ところに本質があります。その意味で、民法の取消制度(取消権が時効消滅等により行使できなくなった時点で法律関係が有効なものとして確定する)と発想はよく似ており、誤解を恐れずに言えば、「無効事由」を「取消し」のように取り扱うことを可能にするのが、形成訴訟です。

このように形成訴訟の対象となると、提訴期間内に提訴しなければならないという制限がかかる分、瑕疵を主張する者にとって不利なわけで、形成訴訟の対象とするためには、その瑕疵の主張を封じても正義に反しない程度の瑕疵であるという制度上の制約がつきます。

また、形成訴訟は、その判決が将来効とされるもの(設立無効の訴え等各種無効の訴え)と、遡及的無効とされるもの(株主総会決議取消の訴え)に分類されます。

 将来効は、遡及的無効とよって判決確定までに行われてきた会社の行為に広く瑕疵が生じ、法律関係の安定が害されることを防止するために認められるものです。
 設立無効の訴え等形成訴訟の大部分は、法律関係の安定のために形成訴訟にしているのですから、判決の効力についても、法律関係の安定のために、将来効になっています。

 ただし、株主総会決議の取消しの訴えについては、「何を」決議したのかによって、法律関係の安定の要請は変わってきます。
 また、決議取消判決を「将来効」とするのでは、判決確定前に、総会決議に従って法律行為が行われている場合に、その行為の効力を否定することができなくなり、決議の取消をした意味がなくなってしまう恐れもあります。
 そこで、決議取消の訴えについては、決議の効力を遡及的に無効とした上で、その決議に基づいて行われた会社の行為の効力は、別個に考えることにしたのです。
 たとえば、事業譲渡の承認決議に取消事由があった場合、決議取消判決が確定すれば、「決議」は遡及的に無効となり、総会決議のないまま事業譲渡が行われたことになりますが、当該「事業譲渡」の効力については、必ずしも遡及的無効と解釈する必要はなく、例えば、民法93条類推適用によって相手方が善意の場合には、事業譲渡を有効と解することができますよね。
 このように、決議取消判決に遡及効が認められているのは、取引の安全等は図るために、もうワンクッションの解釈をする余地があることも理由の一つです。

さて、以上をまとめると、会社の行為の無効・取消事由は
1 形成訴訟の対象となっていない事由
2 形成訴訟の対象となっていて、将来効である事由
3 形成訴訟の対象となっていて、将来効でない事由
の3つに分類されることになり、これを前提に、質問に答えましょう。

「旧司法試験でがんばる」さんは
 「株式発行の不存在確認の訴えは、なぜ将来効ではないのですか」
と質問されていますが、それに対しては
 形式的な理由は、株式発行の不存在確認の訴えは、形成訴訟ではない(上記1)から、判決の将来効を論ずる余地はない
という答えになります。

そこで、もう一歩、掘り下げて、
「なぜ株式発行の不存在確認の訴えは、形成訴訟になっていないのですか」
という質問があれば、それに対しては
 株式発行の不存在は、瑕疵の程度が重大なので、提訴期間による主張制限をすべきではないから
という政策的理由をお答えすることになります。
 株主総会決議無効・不存在確認の訴えや、自己株式処分不存在確認の訴え、新株予約権の不存在確認の訴えが、形成訴訟とされていないのも同じ理由です。

いいかえれば、
1 形成訴訟の対象となっていない事由・・・瑕疵が重大なので、提訴期間の制限をしない。
2 形成訴訟の対象となっていて、将来効である事由・・・瑕疵がそれほど重大ではないので、提訴期間の制限をするし、判決が確定しても法律関係の安定を優先して将来効
3 形成訴訟の対象となっていて、将来効でない事由・・・瑕疵がそれほど重大ではないので、提訴期間の制限はするが、判決が確定した場合には、判決の実効性を確保するために遡及的に無効とする。
という分類がされているのです。

(質問コーナー)
Q1
100問249頁では、取締役会決議を経ていない代表行為の効力について、民§93を類推して、相手方が「決議がないこと」につき悪意又は有過失の場合に、会社は無効主張できるとされています(最判S44・9・22)。ところで、相手方が『多額の借財』に当たることにつき悪意or有過失であることまでは不要でしょうか(いわば二重の悪意)。というのは、最判H6・1・20の調査官解説によれば、①「重要な財産の処分」にあたること、②役会決議がないこと、を要するとしているからです。これは、利益相反取引の相対的無効について、最大判S46・10・13が悪意=承認決議がなかったことのほか、利益相反取引にあたることを含めていることとも整合するように思います。どのように考えればよいのでしょうか。
Posted by ロー生 at 2006年07月31日 11:47
A1
①多額の借財であることが分からなかったため、役会決議のことにも考えが及ばなかった場合と、②多額の借財であることは知っていたが、役会決議があると誤信した場合の双方とも、保護されるべきだと思います。
 多額の借財であることについて善意が必要であるということになれば、②は保護されないことになりますが、代表取締役が役会議事録を偽造して相手方に示しているような場合もあるのですから、相手方を一切保護しないというわけにはいかないでしょう。
 ①と②の理論構成を変えるということも難しいので、①②とも、93条類推適用にして、取締役会の決議の不存在を知らなかったことについての過失を考える上で、「多額の借財」についての認識可能性なども判断すれば十分であるように思います。

Q2
事後設立に関し、質問があります。
 平成15年に、価額が資本金の20分の1を超える(ただし、純資産額の5分の1は越えない)財産を取得した場合、当時は、事後設立として、検査役の検査および株主総会の特別決議が必要です。
 それに対し、会社法では、純資産額の5分の1を越えていないことから、かかる場合には、事後設立(会社法467条1項5号)にあたらないことになるはずです。
 それでは、平成15年当時、検査役の検査および株主総会の特別決議を得なかった会社が、その瑕疵を治癒するためには、現時点で何かする必要があるのでしょうか?必要ないように思えるのですが、どうなんでしょうか。
 また、5分の1を超える場合には、会社法の下でも、事後設立にあたりますが、その場合に、検査役の検査が不要になるのでしょうか?
Posted by aki at 2006年07月31日 12:51
A2
467条は、効力発生日の前日までに、株主総会の承認を得ることを要求しています。
したがって、事後設立の効力発生日として平成15年を定めた場合、これを会社法上、有効にする手段はありません。
瑕疵を治癒することはできませんが、改めて、当該財産を取得し直すことは可能でしょう。もう事後設立の規制にもひっかからないのではないでしょうか。
 ちなみに、事後設立についての検査役の調査は、一切ありません。

Q3
質問させてください。会社法156条の自己株式取得をする際に、総株主に通知を出しますが、これは発送期日が指定されていませんで、このような指定の無い規定は常に、株主に不利益は無という理由で「いつでも」もしくは「相当な期間」と考えてよろしいのでしょうか。また、この通知に伴って譲渡しの申し込みがあった場合は、取締役会で定めた申し込み期日に売買契約が成立し、その日より、譲渡した株主は株主ではなくなると考えてよろしいでしょうか。最後に、買取価格が相当な価格よりかなり低い場合でも問題ないのでしょうか。よろしくお願いいたします。
Posted by 千佳子 at 2006年07月31日 13:12
A3
157条1項4号で申込期日を定めなければならないので、その日よりも前でなければいけませんが、期間は特に決められていません。
申込みに対し、会社が承諾すれば売買契約は成立します。ただし、株券発行会社の場合には、株券の交付がなければ、株式は移転しません。
買取価格が低くても、特に問題ありません。安いと思ったら、株主が売らなければよいだけなので。

Q4
 新設分割計画の記載事項に分割会社から承継する分割会社株式に関する事項がないのはなぜですか。一部にこれは,新設分割の場合,分割会社株式の承継を認めない趣旨だと記述する文献があるのですが,もしそうだとすればその理由は何でしょうか。
A4
新設分割では、分割会社株式の承継は認められません。
理由はいくつかありますが、①通常の設立手続を行う場合に、自己株式を現物出資して設立することができないこととの平仄、②単独で新株分割をすると、本来、禁止されている子会社による親会社株式の取得を直接に作り出すことになり、濫用のおそれが高い(なお、親会社が自己の親会社株式を新設会社に承継させることは、省令で認められています)というのが主たる理由です。

Q5
消滅会社・分割会社の新株予約権者は事前備置書類の閲覧をすることができますか。債権者に入ると解釈するかどうかです。株式交換は(取得+交付の対象以外の新株予約権者も)閲覧権があり,また事前備置書類の内容からしても当然閲覧できるように思いますが,「債権者」と解してよいか若干疑義がありましたので照会いたします(登記相談調)。
Posted by ik at 2006年07月31日 16:49
A5
新株予約権者は、債権者ですので、閲覧することができます。
債権者保護手続の「債権者」ですが、新株予約権者も形式的には該当すると思います。
債権者保護手続の債権者は、必ずしも金銭債権の債権者に限られないので。
ただ、無記名新株予約権ですと「知れたる債権者」に該当しませんし、新株予約権者が異議を申し述べたとしても、資本金の減少等が新株予約権者を害するおそれはないので、会社は何もする必要はないのが普通です。
ですから、新株予約権者の保護は、新株予約権買取請求権で図られることになるでしょう。

Q6
今年の1月に有限会社を株式会社に組織変更にした会社が、会社法施行後に吸収合併を行い存続会社となる場合に、債権者保護手続を行う際に示すべき「最終の事業年度に係る貸借対照表」に関する事項は、会社計算規則第199条第5号又は第7号のいずれに該当するのでしょうか。
Posted by 司法書士補助者 at 2006年07月31日 19:54
A6
7号です。

Q7
合併や株式交換において、株主総会の承認決議よりも前に、株券提出公告・通知(会社法219条)を行う(例えば、10月1日が効力発生日の場合に、8月25日に株券提出公告・通知を行い、9月30日に株主総会を開催する)ことは可能でしょうか。株主総会の承認決議がなされていない段階で、株主に対して株券の提出を求めるのは違和感がありますが、会社法上は、このような扱いも可能という理解でよろしいでしょうか。
Posted by 組織再編実務担当者 at 2006年07月31日 20:19
A7
できます。
なお、株券は、合併の効力発生により、無効となりますが、それと同時に、合併対価の交付請求権を表彰する有価証券になるので、株券提出の期限までに株券を提出しなくても、株主が害されることはほとんど考えられません。

公開会社の譲渡制限株式の発行

 「3つの誕生日」は,夜中に気分が盛り上がり,個人的な思い出を書いてしまったものであるにもかかわらず,思いがけず,反響が大きく,びっくりしました。
 コメントも沢山いただきましたし,知り合いや高校時代の同級生からも多数メールが寄せられ,色々な人の「親への思い」を受け取ることができて,なんか嬉しくなりました。
 おまけに,これまでの人生で経験のないほど沢山の「お誕生日おめでとう」もいただきました。
 本当にありがとうございました。

 今日は,会社法に話を戻しまして「公開会社の譲渡制限株式の発行」についてお話します。

 会社法100問の22問に,次のような文章があります。
「公開会社が,譲渡制限株式を有利発行した場合は,株式取引の安全を図る要請は低いが,株式発行を有効とした場合の株主の損害については,不公正な価額で引き受けた者の責任(212条1項1号)によっててん補可能であるのに対し,株式発行を無効とした場合の取得者の損害をてん補することは困難なので,取得者の保護を優先すべきである。」

この文章について,トノ様から,次のような質問を貰いました。
「P124の冒頭数行で、公開会社が譲渡制限株式を有利発行した場合に有効とする実質的理由が書かれていますが、無効とした場合の「取得者の損害の填補は困難」としている部分は840条でOKではないのでしょうか?既に転売していれば、転売代金をもらっているので問題は無いでしょうし・・。」

旧商法では,株式の種類ごとに譲渡制限の有無を別に取り扱うことができなかったので,「公開会社の譲渡制限株式の発行」は,会社法で初めて問題となる論点です。

 募集株式の発行は,非公開会社の場合と,公開会社の有利発行の場合は,株主総会の特別決議が必要ですが,これを欠いた新株発行の効力について,私は
(1)公開会社の譲渡自由株式の有利発行の場合なら,有効
(2)非公開会社の株式の発行の場合には,株主の持株比率維持のために,無効
と解しています(この考え方は,旧商法でも通説だと思います)。

 問題は,公開会社の譲渡制限株式の発行を,(1)(2)のどちらに寄せて考えるかということです。

 まず,公開会社の譲渡制限株式の発行について,発行手続きをおさらいしますと
 ①公開会社の譲渡制限株式の発行は,有利発行でなければ取締役会決議事項(201条1項),有利発行ならば,株主総会の決議事項であり,
 ②さらに,いずれの場合でも,発行する譲渡制限株式の株主が存在する場合には,種類株主総会の特別決議が必要(199条4項)
ということになっています。

 まず①の点について,22問の解答例では,株主総会の決議の欠缺を(1)に寄せて考え,有効としています。
 これは,①の株主総会の決議によって守られるべき利益は,株式の経済的価値であり,持株比率ではないからです。

 トノ様は,株式の発行を無効としても,840条によって取得者が保護されるのではないかと質問されていますが,840条では,判決確定時の株主(=取得者)が「払込みを受けた金額」しかもらえませんので,その保護が十分とはいえません。

 例えば,純資産1000万円,発行済株式総数1000株,1株あたり純資産額1万円の会社が,葉玉に対し,1円で1000株の新株発行をしたとしましょう。
 そうすると,純資産1000万1000円,発酵済株式総数2000株で,1株あたり純資産額は,約5000円になります。
 この後,松本さんが,葉玉から,この株式1株を約5000円で買った後に,株式発行無効判決が確定すると,松本さんが,会社から交付を受けることができるのは,葉玉が払い込んだ「1円」だけです。
 これでは,松本さんは,泣きたくなりますね。

 このように840条は,有利発行の場合には,取得者保護としては十分な機能を果たさないので,株式発行を有効にした上で,葉玉に不公正価額で引き受けた者の責任を追及したり,取締役の任務懈怠責任を追及したりする方が,株主の公平に資するというのが,100問の解答です。

ただ,②の種類株主総会の欠缺については,22問の解答例で「種類株主総会の決議の欠缺も,差止めの機会が与えられる限り,無効原因とならないと解する。」と軽く流して書いているものの,今でも若干迷いがあります。

199条4項の種類株主総会の決議の趣旨は,種類株主総会における持株比率の維持にありますから,これを欠く場合には,(2)非公開会社の株式の発行の場合と平仄を合わせて,株式発行を無効とするというのも合理性はあると思います。譲渡制限株式なんだから,それほど流通性を考慮する必要もないということもできます。

しかし,公開会社における譲渡制限株式の株主は,「株主総会」における持株比率の維持の利益を有しませんから,非公開会社の株主よりは,その保護が後退するのもやむをえないというのも一つの見識です。譲渡制限株式の譲渡も有効であり,取得者の保護を図る必要もあるので,結局は,既存株主の保護と取得者の保護のバランスの問題に過ぎないのです。

しかも,22問の解答例も,差止めの機会が与えられなければ,無効である解しているので,有効説と無効説は,「種類株主総会の招集通知がされたが,種類株主総会の決議に瑕疵が生じた」というような微妙な場合にしか,結論に違いは生じません。

そういうことを考えているうち,
「どちらの考え方もありうるが,株主総会の決議の欠缺が無効原因となるかどうかについて,会社法の828条2項1号の提訴期間の差(公開会社は6月,非公開会社は1年)を理由としていることからすれば,種類株主総会の欠缺も,同様に考えるべきではないか」
と思い,公開会社である以上,種類株主総会の欠缺についても無効事由にならないとしたわけです。

厳密にいうと,提訴期間の持つ役割は,株主総会の決議の欠缺と種類株主総会の欠缺では違うのですが,公開会社において,種類株主総会を欠いて譲渡制限株式を発行した場合も,「6月」の提訴期間に服することすると,無効事由は狭く解する方が法の趣旨に合致するのではないでしょうか。

この論点については,様々なご意見があろうと思いますが,100問は,問題提起をすることにも意味があると思っているので,あえて難しい問題を提示してみました。いろいろな方の考えを聞いてみたいところではありますが,会社法の本の中で,この問題について触れている本は,いまだ見つからないのが残念です。

(質問コーナー)
Q1
いわゆる株主割当ての方法により、募集株式を発行する場合において、申込みの期日の2週間前に株主へ募集事項等を通知しなければならないとの規定(会社法202条4項)がありますが、申込みの期日の2週間前までに株主に通知されなかったときには、これを理由に募集株式の発行等をやめることの請求(会社法210条)ができるのでしょうか?
また、株主全員から同意をもらえば、この期間を短縮して通知しても差し支えないものでしょうか?
Posted by 齋藤隆行 at 2006年07月28日 13:34
A1
通知義務に違反し,法令違反は認められるので,210条の「株主が不利益を受けるおそれがある」という要件を充たすかどうかですね。会社が,一部の株主にしか知らせず,割当てを受ける権利が与えられたことを知らない株主がいるような場合には,株主が不利益を受けるおそれがあるでしょう。また,払込価額が時価相当額だと,あまり不利益はないように思いますが,時価よりも低い場合には,株主が割当てを受ける権利を行使しなければ,保有株式の経済的価値が低下する場合があります。お金のない株主にとって,それを「不利益」と考えるかどうかで,意見が分かれそうです。

Q2
 83条(創立総会への報告の省略)が,種類創立総会について準用されていない理由はなぜでしょうか?
Posted by 予備校講師 at 2006年07月28日 15:11
A2
報告のために種類創立総会を開催する場合を想定しがたいからです。

Q3
取締役会の電話会議、テレビ会議方式での開催の場合です。社外取締役を外国人にお願いしました。彼はあまり日本に来ません。取締役会はもちろんテレビ会議。
このように開催した取締役会の議事録の署名、または記名押印ですが、電磁的記録によらない場合、署名、または記名押印しかないのでしょうか?
来日しない外国人社外取締役の署名をもらうのは難儀です。
テレビ会議により出席した旨を議事録上記載しておけば署名はもらわなくて言いのでしょうか?
Posted by あっ!と法 無 at 2006年07月28日 15:19
A3
テレビ会議でも出席になり,出席した取締役である以上,議事録が書面で作成されれば,署名をもらう必要があります。
来日しない外国人社外取締役の署名を貰うのは大変なので,電磁的記録で作成し,電子署名をもらえばよいのではないでしょうか。

Q4
そろそろ、会社法施行後に決算期を迎える会社の総会準備が佳境なのですが、剰余金の配当がゼロである場合、「配当は0円です」という議案を提出しなくていいでしょうか?ゼロであっても、議案を出しておかないと、株主が動議も出せませんし、目的事項でもないので、議題提案手続きから開始しなくてはならないのでは??と思うと違和感があって、ご教示願いたく、書き込みました。旧法では、利益処分案(損失処理案)が必ずあったので、0円配当も議案の一部だったので・・・。
Posted by ドサ廻り at 2006年07月28日 19:06
A4
配当0円の配当議案は不要です。利益処分案はなくなりましたから,特に何もありません。
株主が動議を出したければ,議題提出権を行使していただけばいいのではないかと思います。

Q5
形式基準では子会社ではなかった会社が会社法の施行に伴い実質基準により子会社となりました。従来から、その会社は、株式を相互保有していましたが子会社となったことにより、親会社株式の取得になると考えており、相当の期間内に処分しなければならないと思っています。しかし、非公開会社であり、なかなか相手先がみつかりません。相当の期間とはどの程度の期間なのでしょうか。
Posted by take at 2006年07月29日 11:04
A5
よくある質問なのですが,相当の期間は,相当の期間です。遅滞なくでも,速やかにでもありません。売る努力をしなければまずいですが,売る努力をして売れないのは仕方ない。どうしようもないときは,親会社に売るのが普通でしょう。

Q6
会社法
99条 設立しようとする『会社』が種類株式発行会社である場合において
100条 設立しようとする『株式会社』が種類株式発行会社である場合において
101条 設立しようとする『株式会社』が種類株式発行会社である場合において
は,なぜ表現が違うのでしょうか。
Posted by 設立大好き at 2006年07月29日 16:07
A6
たぶん,あまり意味はありません。

Q7
定款変更について、下記の理解で宜しいでしょうか。
1.整備法66Ⅱにより、施行日前の株式会社の定款は、会社法に基づく株式会社の定款とみなされ、同法76Ⅰにより、その定款の記載は、会社法上の相当規定事項の記載とみなされているので、定款を(例えば、用語を変更したり、条文を会社法の条文に書き換えたりして)変更する義務は会社にはないが、変更する場合は、総会決議が必要である(?)。
2.これに対し、会社法によって新たに(又は、内容が拡張変更されて)定款事項とされ整備法によって「定款の定めがある」とみなされた事項(ex52・53・57・76Ⅱ・76Ⅳ・80Ⅰ)については、定款変更義務があるが、総会決議は不要である。
3.1の場合に、定款変更(ex責任限定契約)をしたとしても、その内容に実質的な変更がなければ、変更登記の義務は生じない(株券発行の定めや譲渡制限も同様)。
Posted by moremi at 2006年07月30日 14:23
A7
1 整備法により「みなされた」ものについては,もう変更されているので,総会決議は不要です。
2 みなされたのだから,もう定款は変更されています。だから,規範としての定款を変更する義務はありません。書面としての定款をみなされたとおりに修正するだけです。
3 職権で登記されているものは,申請により変更登記をする必要はありません。「実質的な変更がなければ,変更登記の義務は生じない」というのは,ちょっと危ない感じ。どの定めの問題かを,より具体的に見る必要があります。

公開会社の譲渡制限株式の発行

 「3つの誕生日」は,夜中に気分が盛り上がり,個人的な思い出を書いてしまったものであるにもかかわらず,思いがけず,反響が大きく,びっくりしました。
 コメントも沢山いただきましたし,知り合いや高校時代の同級生からも多数メールが寄せられ,色々な人の「親への思い」を受け取ることができて,なんか嬉しくなりました。
 おまけに,これまでの人生で経験のないほど沢山の「お誕生日おめでとう」もいただきました。
 本当にありがとうございました。

 今日は,会社法に話を戻しまして「公開会社の譲渡制限株式の発行」についてお話します。

 会社法100問の22問に,次のような文章があります。
「公開会社が,譲渡制限株式を有利発行した場合は,株式取引の安全を図る要請は低いが,株式発行を有効とした場合の株主の損害については,不公正な価額で引き受けた者の責任(212条1項1号)によっててん補可能であるのに対し,株式発行を無効とした場合の取得者の損害をてん補することは困難なので,取得者の保護を優先すべきである。」

この文章について,トノ様から,次のような質問を貰いました。
「P124の冒頭数行で、公開会社が譲渡制限株式を有利発行した場合に有効とする実質的理由が書かれていますが、無効とした場合の「取得者の損害の填補は困難」としている部分は840条でOKではないのでしょうか?既に転売していれば、転売代金をもらっているので問題は無いでしょうし・・。」

旧商法では,株式の種類ごとに譲渡制限の有無を別に取り扱うことができなかったので,「公開会社の譲渡制限株式の発行」は,会社法で初めて問題となる論点です。

 募集株式の発行は,非公開会社の場合と,公開会社の有利発行の場合は,株主総会の特別決議が必要ですが,これを欠いた新株発行の効力について,私は
(1)公開会社の譲渡自由株式の有利発行の場合なら,有効
(2)非公開会社の株式の発行の場合には,株主の持株比率維持のために,無効
と解しています(この考え方は,旧商法でも通説だと思います)。

 問題は,公開会社の譲渡制限株式の発行を,(1)(2)のどちらに寄せて考えるかということです。

 まず,公開会社の譲渡制限株式の発行について,発行手続きをおさらいしますと
 ①公開会社の譲渡制限株式の発行は,有利発行でなければ取締役会決議事項(201条1項),有利発行ならば,株主総会の決議事項であり,
 ②さらに,いずれの場合でも,発行する譲渡制限株式の株主が存在する場合には,種類株主総会の特別決議が必要(199条4項)
ということになっています。

 まず①の点について,22問の解答例では,株主総会の決議の欠缺を(1)に寄せて考え,有効としています。
 これは,①の株主総会の決議によって守られるべき利益は,株式の経済的価値であり,持株比率ではないからです。

 トノ様は,株式の発行を無効としても,840条によって取得者が保護されるのではないかと質問されていますが,840条では,判決確定時の株主(=取得者)が「払込みを受けた金額」しかもらえませんので,その保護が十分とはいえません。

 例えば,純資産1000万円,発行済株式総数1000株,1株あたり純資産額1万円の会社が,葉玉に対し,1円で1000株の新株発行をしたとしましょう。
 そうすると,純資産1000万1000円,発酵済株式総数2000株で,1株あたり純資産額は,約5000円になります。
 この後,松本さんが,葉玉から,この株式1株を約5000円で買った後に,株式発行無効判決が確定すると,松本さんが,会社から交付を受けることができるのは,葉玉が払い込んだ「1円」だけです。
 これでは,松本さんは,泣きたくなりますね。

 このように840条は,有利発行の場合には,取得者保護としては十分な機能を果たさないので,株式発行を有効にした上で,葉玉に不公正価額で引き受けた者の責任を追及したり,取締役の任務懈怠責任を追及したりする方が,株主の公平に資するというのが,100問の解答です。

ただ,②の種類株主総会の欠缺については,22問の解答例で「種類株主総会の決議の欠缺も,差止めの機会が与えられる限り,無効原因とならないと解する。」と軽く流して書いているものの,今でも若干迷いがあります。

199条4項の種類株主総会の決議の趣旨は,種類株主総会における持株比率の維持にありますから,これを欠く場合には,(2)非公開会社の株式の発行の場合と平仄を合わせて,株式発行を無効とするというのも合理性はあると思います。譲渡制限株式なんだから,それほど流通性を考慮する必要もないということもできます。

しかし,公開会社における譲渡制限株式の株主は,「株主総会」における持株比率の維持の利益を有しませんから,非公開会社の株主よりは,その保護が後退するのもやむをえないというのも一つの見識です。譲渡制限株式の譲渡も有効であり,取得者の保護を図る必要もあるので,結局は,既存株主の保護と取得者の保護のバランスの問題に過ぎないのです。

しかも,22問の解答例も,差止めの機会が与えられなければ,無効である解しているので,有効説と無効説は,「種類株主総会の招集通知がされたが,種類株主総会の決議に瑕疵が生じた」というような微妙な場合にしか,結論に違いは生じません。

そういうことを考えているうち,
「どちらの考え方もありうるが,株主総会の決議の欠缺が無効原因となるかどうかについて,会社法の828条2項1号の提訴期間の差(公開会社は6月,非公開会社は1年)を理由としていることからすれば,種類株主総会の欠缺も,同様に考えるべきではないか」
と思い,公開会社である以上,種類株主総会の欠缺についても無効事由にならないとしたわけです。

厳密にいうと,提訴期間の持つ役割は,株主総会の決議の欠缺と種類株主総会の欠缺では違うのですが,公開会社において,種類株主総会を欠いて譲渡制限株式を発行した場合も,「6月」の提訴期間に服することすると,無効事由は狭く解する方が法の趣旨に合致するのではないでしょうか。

この論点については,様々なご意見があろうと思いますが,100問は,問題提起をすることにも意味があると思っているので,あえて難しい問題を提示してみました。いろいろな方の考えを聞いてみたいところではありますが,会社法の本の中で,この問題について触れている本は,いまだ見つからないのが残念です。

(質問コーナー)
Q1
いわゆる株主割当ての方法により、募集株式を発行する場合において、申込みの期日の2週間前に株主へ募集事項等を通知しなければならないとの規定(会社法202条4項)がありますが、申込みの期日の2週間前までに株主に通知されなかったときには、これを理由に募集株式の発行等をやめることの請求(会社法210条)ができるのでしょうか?
また、株主全員から同意をもらえば、この期間を短縮して通知しても差し支えないものでしょうか?
Posted by 齋藤隆行 at 2006年07月28日 13:34
A1
通知義務に違反し,法令違反は認められるので,210条の「株主が不利益を受けるおそれがある」という要件を充たすかどうかですね。会社が,一部の株主にしか知らせず,割当てを受ける権利が与えられたことを知らない株主がいるような場合には,株主が不利益を受けるおそれがあるでしょう。また,払込価額が時価相当額だと,あまり不利益はないように思いますが,時価よりも低い場合には,株主が割当てを受ける権利を行使しなければ,保有株式の経済的価値が低下する場合があります。お金のない株主にとって,それを「不利益」と考えるかどうかで,意見が分かれそうです。

Q2
 83条(創立総会への報告の省略)が,種類創立総会について準用されていない理由はなぜでしょうか?
Posted by 予備校講師 at 2006年07月28日 15:11
A2
報告のために種類創立総会を開催する場合を想定しがたいからです。

Q3
取締役会の電話会議、テレビ会議方式での開催の場合です。社外取締役を外国人にお願いしました。彼はあまり日本に来ません。取締役会はもちろんテレビ会議。
このように開催した取締役会の議事録の署名、または記名押印ですが、電磁的記録によらない場合、署名、または記名押印しかないのでしょうか?
来日しない外国人社外取締役の署名をもらうのは難儀です。
テレビ会議により出席した旨を議事録上記載しておけば署名はもらわなくて言いのでしょうか?
Posted by あっ!と法 無 at 2006年07月28日 15:19
A3
テレビ会議でも出席になり,出席した取締役である以上,議事録が書面で作成されれば,署名をもらう必要があります。
来日しない外国人社外取締役の署名を貰うのは大変なので,電磁的記録で作成し,電子署名をもらえばよいのではないでしょうか。

Q4
そろそろ、会社法施行後に決算期を迎える会社の総会準備が佳境なのですが、剰余金の配当がゼロである場合、「配当は0円です」という議案を提出しなくていいでしょうか?ゼロであっても、議案を出しておかないと、株主が動議も出せませんし、目的事項でもないので、議題提案手続きから開始しなくてはならないのでは??と思うと違和感があって、ご教示願いたく、書き込みました。旧法では、利益処分案(損失処理案)が必ずあったので、0円配当も議案の一部だったので・・・。
Posted by ドサ廻り at 2006年07月28日 19:06
A4
配当0円の配当議案は不要です。利益処分案はなくなりましたから,特に何もありません。
株主が動議を出したければ,議題提出権を行使していただけばいいのではないかと思います。

Q5
形式基準では子会社ではなかった会社が会社法の施行に伴い実質基準により子会社となりました。従来から、その会社は、株式を相互保有していましたが子会社となったことにより、親会社株式の取得になると考えており、相当の期間内に処分しなければならないと思っています。しかし、非公開会社であり、なかなか相手先がみつかりません。相当の期間とはどの程度の期間なのでしょうか。
Posted by take at 2006年07月29日 11:04
A5
よくある質問なのですが,相当の期間は,相当の期間です。遅滞なくでも,速やかにでもありません。売る努力をしなければまずいですが,売る努力をして売れないのは仕方ない。どうしようもないときは,親会社に売るのが普通でしょう。

Q6
会社法
99条 設立しようとする『会社』が種類株式発行会社である場合において
100条 設立しようとする『株式会社』が種類株式発行会社である場合において
101条 設立しようとする『株式会社』が種類株式発行会社である場合において
は,なぜ表現が違うのでしょうか。
Posted by 設立大好き at 2006年07月29日 16:07
A6
たぶん,あまり意味はありません。

Q7
定款変更について、下記の理解で宜しいでしょうか。
1.整備法66Ⅱにより、施行日前の株式会社の定款は、会社法に基づく株式会社の定款とみなされ、同法76Ⅰにより、その定款の記載は、会社法上の相当規定事項の記載とみなされているので、定款を(例えば、用語を変更したり、条文を会社法の条文に書き換えたりして)変更する義務は会社にはないが、変更する場合は、総会決議が必要である(?)。
2.これに対し、会社法によって新たに(又は、内容が拡張変更されて)定款事項とされ整備法によって「定款の定めがある」とみなされた事項(ex52・53・57・76Ⅱ・76Ⅳ・80Ⅰ)については、定款変更義務があるが、総会決議は不要である。
3.1の場合に、定款変更(ex責任限定契約)をしたとしても、その内容に実質的な変更がなければ、変更登記の義務は生じない(株券発行の定めや譲渡制限も同様)。
Posted by moremi at 2006年07月30日 14:23
A7
1 整備法により「みなされた」ものについては,もう変更されているので,総会決議は不要です。
2 みなされたのだから,もう定款は変更されています。だから,規範としての定款を変更する義務はありません。書面としての定款をみなされたとおりに修正するだけです。
3 職権で登記されているものは,申請により変更登記をする必要はありません。「実質的な変更がなければ,変更登記の義務は生じない」というのは,ちょっと危ない感じ。どの定めの問題かを,より具体的に見る必要があります。

公開会社の譲渡制限株式の発行

 「3つの誕生日」は,夜中に気分が盛り上がり,個人的な思い出を書いてしまったものであるにもかかわらず,思いがけず,反響が大きく,びっくりしました。
 コメントも沢山いただきましたし,知り合いや高校時代の同級生からも多数メールが寄せられ,色々な人の「親への思い」を受け取ることができて,なんか嬉しくなりました。
 おまけに,これまでの人生で経験のないほど沢山の「お誕生日おめでとう」もいただきました。
 本当にありがとうございました。

 今日は,会社法に話を戻しまして「公開会社の譲渡制限株式の発行」についてお話します。

 会社法100問の22問に,次のような文章があります。
「公開会社が,譲渡制限株式を有利発行した場合は,株式取引の安全を図る要請は低いが,株式発行を有効とした場合の株主の損害については,不公正な価額で引き受けた者の責任(212条1項1号)によっててん補可能であるのに対し,株式発行を無効とした場合の取得者の損害をてん補することは困難なので,取得者の保護を優先すべきである。」

この文章について,トノ様から,次のような質問を貰いました。
「P124の冒頭数行で、公開会社が譲渡制限株式を有利発行した場合に有効とする実質的理由が書かれていますが、無効とした場合の「取得者の損害の填補は困難」としている部分は840条でOKではないのでしょうか?既に転売していれば、転売代金をもらっているので問題は無いでしょうし・・。」

旧商法では,株式の種類ごとに譲渡制限の有無を別に取り扱うことができなかったので,「公開会社の譲渡制限株式の発行」は,会社法で初めて問題となる論点です。

 募集株式の発行は,非公開会社の場合と,公開会社の有利発行の場合は,株主総会の特別決議が必要ですが,これを欠いた新株発行の効力について,私は
(1)公開会社の譲渡自由株式の有利発行の場合なら,有効
(2)非公開会社の株式の発行の場合には,株主の持株比率維持のために,無効
と解しています(この考え方は,旧商法でも通説だと思います)。

 問題は,公開会社の譲渡制限株式の発行を,(1)(2)のどちらに寄せて考えるかということです。

 まず,公開会社の譲渡制限株式の発行について,発行手続きをおさらいしますと
 ①公開会社の譲渡制限株式の発行は,有利発行でなければ取締役会決議事項(201条1項),有利発行ならば,株主総会の決議事項であり,
 ②さらに,いずれの場合でも,発行する譲渡制限株式の株主が存在する場合には,種類株主総会の特別決議が必要(199条4項)
ということになっています。

 まず①の点について,22問の解答例では,株主総会の決議の欠缺を(1)に寄せて考え,有効としています。
 これは,①の株主総会の決議によって守られるべき利益は,株式の経済的価値であり,持株比率ではないからです。

 トノ様は,株式の発行を無効としても,840条によって取得者が保護されるのではないかと質問されていますが,840条では,判決確定時の株主(=取得者)が「払込みを受けた金額」しかもらえませんので,その保護が十分とはいえません。

 例えば,純資産1000万円,発行済株式総数1000株,1株あたり純資産額1万円の会社が,葉玉に対し,1円で1000株の新株発行をしたとしましょう。
 そうすると,純資産1000万1000円,発酵済株式総数2000株で,1株あたり純資産額は,約5000円になります。
 この後,松本さんが,葉玉から,この株式1株を約5000円で買った後に,株式発行無効判決が確定すると,松本さんが,会社から交付を受けることができるのは,葉玉が払い込んだ「1円」だけです。
 これでは,松本さんは,泣きたくなりますね。

 このように840条は,有利発行の場合には,取得者保護としては十分な機能を果たさないので,株式発行を有効にした上で,葉玉に不公正価額で引き受けた者の責任を追及したり,取締役の任務懈怠責任を追及したりする方が,株主の公平に資するというのが,100問の解答です。

ただ,②の種類株主総会の欠缺については,22問の解答例で「種類株主総会の決議の欠缺も,差止めの機会が与えられる限り,無効原因とならないと解する。」と軽く流して書いているものの,今でも若干迷いがあります。

199条4項の種類株主総会の決議の趣旨は,種類株主総会における持株比率の維持にありますから,これを欠く場合には,(2)非公開会社の株式の発行の場合と平仄を合わせて,株式発行を無効とするというのも合理性はあると思います。譲渡制限株式なんだから,それほど流通性を考慮する必要もないということもできます。

しかし,公開会社における譲渡制限株式の株主は,「株主総会」における持株比率の維持の利益を有しませんから,非公開会社の株主よりは,その保護が後退するのもやむをえないというのも一つの見識です。譲渡制限株式の譲渡も有効であり,取得者の保護を図る必要もあるので,結局は,既存株主の保護と取得者の保護のバランスの問題に過ぎないのです。

しかも,22問の解答例も,差止めの機会が与えられなければ,無効である解しているので,有効説と無効説は,「種類株主総会の招集通知がされたが,種類株主総会の決議に瑕疵が生じた」というような微妙な場合にしか,結論に違いは生じません。

そういうことを考えているうち,
「どちらの考え方もありうるが,株主総会の決議の欠缺が無効原因となるかどうかについて,会社法の828条2項1号の提訴期間の差(公開会社は6月,非公開会社は1年)を理由としていることからすれば,種類株主総会の欠缺も,同様に考えるべきではないか」
と思い,公開会社である以上,種類株主総会の欠缺についても無効事由にならないとしたわけです。

厳密にいうと,提訴期間の持つ役割は,株主総会の決議の欠缺と種類株主総会の欠缺では違うのですが,公開会社において,種類株主総会を欠いて譲渡制限株式を発行した場合も,「6月」の提訴期間に服することすると,無効事由は狭く解する方が法の趣旨に合致するのではないでしょうか。

この論点については,様々なご意見があろうと思いますが,100問は,問題提起をすることにも意味があると思っているので,あえて難しい問題を提示してみました。いろいろな方の考えを聞いてみたいところではありますが,会社法の本の中で,この問題について触れている本は,いまだ見つからないのが残念です。

(質問コーナー)
Q1
いわゆる株主割当ての方法により、募集株式を発行する場合において、申込みの期日の2週間前に株主へ募集事項等を通知しなければならないとの規定(会社法202条4項)がありますが、申込みの期日の2週間前までに株主に通知されなかったときには、これを理由に募集株式の発行等をやめることの請求(会社法210条)ができるのでしょうか?
また、株主全員から同意をもらえば、この期間を短縮して通知しても差し支えないものでしょうか?
Posted by 齋藤隆行 at 2006年07月28日 13:34
A1
通知義務に違反し,法令違反は認められるので,210条の「株主が不利益を受けるおそれがある」という要件を充たすかどうかですね。会社が,一部の株主にしか知らせず,割当てを受ける権利が与えられたことを知らない株主がいるような場合には,株主が不利益を受けるおそれがあるでしょう。また,払込価額が時価相当額だと,あまり不利益はないように思いますが,時価よりも低い場合には,株主が割当てを受ける権利を行使しなければ,保有株式の経済的価値が低下する場合があります。お金のない株主にとって,それを「不利益」と考えるかどうかで,意見が分かれそうです。

Q2
 83条(創立総会への報告の省略)が,種類創立総会について準用されていない理由はなぜでしょうか?
Posted by 予備校講師 at 2006年07月28日 15:11
A2
報告のために種類創立総会を開催する場合を想定しがたいからです。

Q3
取締役会の電話会議、テレビ会議方式での開催の場合です。社外取締役を外国人にお願いしました。彼はあまり日本に来ません。取締役会はもちろんテレビ会議。
このように開催した取締役会の議事録の署名、または記名押印ですが、電磁的記録によらない場合、署名、または記名押印しかないのでしょうか?
来日しない外国人社外取締役の署名をもらうのは難儀です。
テレビ会議により出席した旨を議事録上記載しておけば署名はもらわなくて言いのでしょうか?
Posted by あっ!と法 無 at 2006年07月28日 15:19
A3
テレビ会議でも出席になり,出席した取締役である以上,議事録が書面で作成されれば,署名をもらう必要があります。
来日しない外国人社外取締役の署名を貰うのは大変なので,電磁的記録で作成し,電子署名をもらえばよいのではないでしょうか。

Q4
そろそろ、会社法施行後に決算期を迎える会社の総会準備が佳境なのですが、剰余金の配当がゼロである場合、「配当は0円です」という議案を提出しなくていいでしょうか?ゼロであっても、議案を出しておかないと、株主が動議も出せませんし、目的事項でもないので、議題提案手続きから開始しなくてはならないのでは??と思うと違和感があって、ご教示願いたく、書き込みました。旧法では、利益処分案(損失処理案)が必ずあったので、0円配当も議案の一部だったので・・・。
Posted by ドサ廻り at 2006年07月28日 19:06
A4
配当0円の配当議案は不要です。利益処分案はなくなりましたから,特に何もありません。
株主が動議を出したければ,議題提出権を行使していただけばいいのではないかと思います。

Q5
形式基準では子会社ではなかった会社が会社法の施行に伴い実質基準により子会社となりました。従来から、その会社は、株式を相互保有していましたが子会社となったことにより、親会社株式の取得になると考えており、相当の期間内に処分しなければならないと思っています。しかし、非公開会社であり、なかなか相手先がみつかりません。相当の期間とはどの程度の期間なのでしょうか。
Posted by take at 2006年07月29日 11:04
A5
よくある質問なのですが,相当の期間は,相当の期間です。遅滞なくでも,速やかにでもありません。売る努力をしなければまずいですが,売る努力をして売れないのは仕方ない。どうしようもないときは,親会社に売るのが普通でしょう。

Q6
会社法
99条 設立しようとする『会社』が種類株式発行会社である場合において
100条 設立しようとする『株式会社』が種類株式発行会社である場合において
101条 設立しようとする『株式会社』が種類株式発行会社である場合において
は,なぜ表現が違うのでしょうか。
Posted by 設立大好き at 2006年07月29日 16:07
A6
たぶん,あまり意味はありません。

Q7
定款変更について、下記の理解で宜しいでしょうか。
1.整備法66Ⅱにより、施行日前の株式会社の定款は、会社法に基づく株式会社の定款とみなされ、同法76Ⅰにより、その定款の記載は、会社法上の相当規定事項の記載とみなされているので、定款を(例えば、用語を変更したり、条文を会社法の条文に書き換えたりして)変更する義務は会社にはないが、変更する場合は、総会決議が必要である(?)。
2.これに対し、会社法によって新たに(又は、内容が拡張変更されて)定款事項とされ整備法によって「定款の定めがある」とみなされた事項(ex52・53・57・76Ⅱ・76Ⅳ・80Ⅰ)については、定款変更義務があるが、総会決議は不要である。
3.1の場合に、定款変更(ex責任限定契約)をしたとしても、その内容に実質的な変更がなければ、変更登記の義務は生じない(株券発行の定めや譲渡制限も同様)。
Posted by moremi at 2006年07月30日 14:23
A7
1 整備法により「みなされた」ものについては,もう変更されているので,総会決議は不要です。
2 みなされたのだから,もう定款は変更されています。だから,規範としての定款を変更する義務はありません。書面としての定款をみなされたとおりに修正するだけです。
3 職権で登記されているものは,申請により変更登記をする必要はありません。「実質的な変更がなければ,変更登記の義務は生じない」というのは,ちょっと危ない感じ。どの定めの問題かを,より具体的に見る必要があります。

2006年7月27日 (木)

就任契約の性質

 電子債権、改め、「電子登録債権」の中間試案もまとまり、もうすぐパブコメにかけることになります。昨日は、その打ち上げで疲れ果てて、ブログをお休みさせていただきました。
 あいかわらず、複数の種類の異なる仕事が同時並行的に進行しているため、頭の切り替えが大変なのですが、今日は一日、目下の最大の課題である
「代表取締役の就任・退任時期とその承諾の要否」
について、先例を調べたり、同僚と議論したりしていました。
 理論的にも難しい点があり、登記実務にも影響を与える話なので、各種の調整が必要で難航していますが、調整がついた段階でブログにも書きますし、論文も書きたいと思います。

 今日は、その話の前提問題を検討しているときに
「取締役と会社との委任契約」
について思いついた話を書きたいと思います。

 取締役に就任する要件として、株主総会で取締役を選任する決議をやるほか、会社と取締役との間に契約が必要かという論点は、古くて新しい論点です。

 「取締役を株主の中から選定しなければならない」というルールのあった大昔の商法では、
株主自身が総会に参加しているのだから、そこで選任されれば、別途、契約をする必要はない
というのが有力説でした。

 しかし、その後、「委任の規定に従う」という規定ができたり、「取締役を株主に限定してはいけない」というルールに変わったりしたため、
総会で議決権を行使していない取締役の承諾なしに、取締役としての義務を負わせるのは妥当ではない
という価値観が支配的になり、取締役と会社との間には、「委任契約」が必要であるというのが通説になりました。

 私も、取締役・会社間の「契約」がなければ、取締役に就任しないという点は賛成ですが、若干、通説の説明には不正確な点があるのではないかと思っています。

 ご承知のように民法では、契約自由の原則が採用されていて、民法に規定されている典型契約以外の契約であっても、意思表示どおりの権利義務関係を発生させることができます。
 売買契約、賃貸借契約、委任契約等の民法の規定は、当事者が自由に結んだ契約内容を典型契約の要件に当てはめてみて、その要件を充たす場合には、その典型契約のために用意された義務や担保責任等が発生するという機能を果たしているだけで、しかも、それらの規定のほとんどは、契約によって排除することができます。

 これに対し、取締役の就任契約については、その内容にかかわらず、会社と取締役との間の関係は「委任に関する規定に従う」(330条)こととされています。
 この規定を、「会社と取締役の間の契約は、委任契約なのだから、当然のことを定めた確認規定である」と説明する人もいますが、「従う」という言葉から明らかなとおり、330条は、就任契約の内容がどんなものであっても、強制的に委任の規定を適用するという規定であり、契約と矛盾する法的効果を生じさせる場合もあることを前提とした強行規定です。

 実際、この就任契約は、報酬特約等の特約を結ぶことを否定するものではありませんが、
1 欠格事由を排除することができない。
2 取締役の善管注意義務や忠実義務を排除することができない(これができると、責任免除と同様の効果が生じてしまいます)。
3 任期を伸ばすことができない。
など、会社法の強行規定により、契約内容がことごとく制限されています。

以上のような就任契約の性質を考えると、会社と取締役は、「委任契約」を締結するのではなく、「取締役に就任する旨の契約」という会社法が定めた定型的な契約を締結し、その契約について委任の規定が適用されると解するのが、理論的にすっきりします。

そして、その定型的な就任契約の内容を明らかにすることが、就任承諾の要否の解釈や任務懈怠責任における違法と責任の区別にも役に立つものと思います。

今日の記事は「何を当たり前のことをグダグダ言っているんだ」
というお叱りを受けそうな感じもしますが、代表取締役の就任承諾の問題を考えるにあたっては、本日述べたとおり、「就任契約については、契約自由が制限され、ある程度定型的な契約を締結しなければならない」という理解を深めておいていただかないといけないので、前振りとして、就任契約の法的性質を説明してみました。
 「前振りだけかよ・・」とツッコまれそうですが、調整がつくまで、今、しばらくお待ちください。


(質問コーナー)
Q1
仮に競業避止義務は追わないと契約すれば、事業活動の承継をするような場合でも総会決議は不要ですか。
 親子会社の(100%子会社でない)場合、総会開くのを避けるため競業避止義務をつけないで契約するようなことは認められますか。譲渡人は競業避止義務つけないけど、絶対競業はしないと、親子ゆえ暗黙の了解がある。 
独立した当事者での事業譲渡で、事業活動の承継をする場合、譲受人は当然、譲渡人に競業避止義務を得負わせて契約すると思いますが(これでも一概に言えないような気もするのですが。)。
A1
私は、競業避止義務を負わない契約を締結すれば、総会決議は不要だと思います。ただ、ここは、判例の解釈によっては、違う結論も考えられるかも知れません。
ただし、親子会社の事例は、暗黙の了解があったら、総会の決議を採るべきでしょう。

Q2
2006年07月20日の01:58の書き込みの質問コーナーQ2で、「165条2項では、株主総会で自己株式の取得枠を決め、その範囲内で取締役会が自己株式を取得できます。459条1項の定めを置けば、自己株式の取得枠そのものを取締役会で決議することができます。」と書かれていますが、165条2項はあくまで、市場取引等により取得する手続きを定めた規定ですので、459条1項1号を待つまでもなく、同条3項及び1項により、156条1項各号の事項は株主総会又は取締役会のいずれが定めてもよろしいのではないでしょうか。ご教示いただけると幸いです。
A2
おっと、勘違いしていました。おっしゃるように、165条2項でも取締役会で156条1項各号の事由を定めることができますね。申し訳ありませんでした。459条1項は、市場取引等により取得する場合以外でも、自己株式の取得枠を定めることができる点において、165条2項よりも広いということになりますね。

Q3
千問Q702で、Aの2に「業務執行者は、①(鄯)および②(鄯)の場合には、欠損填補責任を負わないが、・・・」とあります。②(鄯)の方は、465条1項10号ロハなのでわかりますが、①(鄯)の方がわかりません。つまり、①(鄯)は取締役会決議で454条1項各号を定めており、定時総会でそのことを定めているのではないため、10号イに該たらないと思うのですが。よろしくお願いします。
Posted by 流れ星 at 2006年07月25日 07:38
A3
質問が465条1項10号イのカッコ内の「第四百三十六条第三項の取締役会」に該当します。

Q4
責任限定契約についてご照会いたします。
定款で、「社外監査役との間に任務を怠ったことによる損害賠償責任を限定する契約を締結することができる。ただし当該契約に基づく責任の限度額は、法令が規定する額とする。」として報酬の2年分を限度額(=最低責任限度額)とする契約は締結することが法令上可能でしょうか。
定款の「法令が規定する額」とは、427条第1項にあります「定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を…定款で定めることができる。」のことと思いますが、「あらかじめ定めた額」を決めてはいません。ご教示ください。
Posted by kiki at 2006年07月25日 17:44
A4
「あらかじめ定めた額」がなければ、427条一項は適用できません。
しかし、当該定款は、法律により定められた最低責任限度額を「法令が規定する額」と表現し、その額を「あらかじめ定めた額」としているものとして有効だと思います。

Q5
責任限定契約などでの最低責任限度額について教えて下さい。
上の方のご質問にもある内容ですが、A社の定款に責任限定契約の定めとして「法令に定める最低責任限度額」を責任限度額として記載があります。この場合、無報酬の社外役員との責任限定契約による責任限度額は「ゼロ」ということでよいのでしょうか?
また、取引先B社から派遣された社外監査役(非常勤)Cについて、A社が役員Cに直接支払っている報酬はゼロですが、「給与負担金」をB社に支払っています(CはB社職員として給与を受け取っています)。
この給与負担金(経営指導料等の名目とする場合も考えられますが…)については、425条の「職務執行の対価または受けるべき財産上の利益」に該当するのでしょうか。
Posted by 法務社員1年生 at 2006年07月26日 09:27
A5
無報酬ならば、0ですね。
「給与負担金」をB社に支払っているというのは、よくあるパターンなのですが、その給与負担金が、社外監査役の職務執行の対価として、B社を通じて、社外監査役に支払われているとすれば、それは、「報酬」に該当すると思います。したがって、本来、報酬決議を採るのが筋ですし、まして、最低責任限度額の算定で「0」というのは、裁判では通用しないものと思われます。

Q6
定款で株券不発行を謳い、「当会社の発行する株式の譲渡による取得については、取締役会の承認を受けなければならない。」という譲渡制限規定を設けた会社について、認証後登記申請の段階で、「発行する」の文言削除を要したという事例を聞きました。削除するべきなのでしょうか。
また、株券不発行で株式譲渡制限規定があるのはおかしい、との意見だそうです。頭が混乱してきてます。よろしくご教示下さい。
Posted by HAMA at 2006年07月25日 18:31
A6
「株券」の発行と「株式」の発行は、全く違います。株券不発行の会社でも、株式は発行します。「発行する」の文言削除というのは、不要ではないでしょうか。
ちなみに、定款で株券を発行する旨を定めない限り、株券不発行なので、株券不発行の定めは単なる確認的な意味しかありません。

Q7
 株式交換でパーチェス法による場合の「その他資本剰余金」についてお尋ねします。
会社計算規則68条1項2号(ロ)(1)により、債権者保護手続をとった場合は株式交換完全親会社の増加する払込資本の内訳は、いきなり全額を「その他資本剰余金」とすることができるとされています。
 では、債権者を害するおそれがないとして保護手続をとる必要のない株式交換(=交付財産が完全親会社の株式のみの場合)については、いきなり全額を「その他資本剰余金」とすることはできないのでしょうか?明文上は68条1項2号(ロ)(2)に該当し、ダメのように読めます。しかし、債権者保護手続が必要でない以上、債権者保護手続をとった場合と異なる扱いをする理由はないように思われます。質問のケースを会社計算規則68条1項2号(ロ)(1)に含めなかった理由はどのようなものですか?以上です。よろしくお願いします。
Posted by KOUKAN at 2006年07月26日 14:56
A7
債権者保護手続きのない株式交換では、その他資本剰余金にすることはできません。
これは、確か法制審の要綱で決まっていたような記憶があります。

Q8
葉玉先生、新株予約権の発行決議につきお尋ねいたします。
千問311頁のQ430によると、「親会社が子会社の取締役等に対して新株予約権を無償で発行することもできる、子会社の従業員が子会社を通じて提供した役務の対価として発行するなら取締役決議によることも可」とあります。
1. この「子会社の取締役等に対して」には「子会社の従業員に対して」も含まれますか。「子会社の顧問」はどうでしょうか。
2. 312頁の「親会社が新株予約権の公正価額に見合う便益を得ているかどうか」はどのように判定すればよいでしょうか。
3. 312頁の「親会社が債務引受する」パターンの場合、子会社は債務引受の退化を親に払う必要がありますか。
Posted by CCC at 2006年07月26日 18:22
A8
子会社の従業員は、含まれます。
ところで、「顧問」って従業員ですか?
それとも、委任契約をした税理士さんとか?
子会社の顧問が、子会社を通じて提供した役務があれば、同じに考えて良いと思いますが、それがあるかどうか?

Q9
休眠会社のみなし解散について教えてください。最後の登記が平成13年6月の株式会社は、5年経たずに会社法施行となりましたので、会社法472条により、平成25年が、みなし解散の適用時期の年度となる、との理解でよいのでしょうか。
Posted by 難民なべ at 2006年07月26日 21:15
A9
特に経過措置は置かれていないので、そうなるでしょう。

Q10
株主総会が終わって早1ヶ月。会社法の荒波にもまれた脱力感もなくなり、久しぶりに質問させて頂きます。
剰余金の処分について、任意積立金を目的外で取り崩すときは総会決議が必要だと思いますが、その総会は「臨時総会」でも可能でしょうか?
具体的に申しますと、8月に臨時総会で退職慰労金の打ち切り支給を決議するとして、現在積立金が100万あり、実際の支給は30万だとします。このなかで、100−30=70万を臨時総会で処分(社外流出はなし)できますか?
仮に可能だとすると、比較的一般的な金額は一任決議ではなく、退職慰労金は30万を支給するという決議をとらないと駄目でしょうか?
Posted by dunk at 2006年07月26日 22:32
A10
任意積立金の取り崩しは、臨時総会でも可能です。
任意積立金の取り崩しと、退職慰労金の支払いは、別次元の話です。
定款で、取り崩しの要件が定められていれば、それに従うべきですが、法律上は、退職慰労金のの額とリンクさせる必要はありません。
ちなみに、退職慰労金の支払いは、利益処分ではないので、報酬決議でやってください。

就任契約の性質

 電子債権、改め、「電子登録債権」の中間試案もまとまり、もうすぐパブコメにかけることになります。昨日は、その打ち上げで疲れ果てて、ブログをお休みさせていただきました。
 あいかわらず、複数の種類の異なる仕事が同時並行的に進行しているため、頭の切り替えが大変なのですが、今日は一日、目下の最大の課題である
「代表取締役の就任・退任時期とその承諾の要否」
について、先例を調べたり、同僚と議論したりしていました。
 理論的にも難しい点があり、登記実務にも影響を与える話なので、各種の調整が必要で難航していますが、調整がついた段階でブログにも書きますし、論文も書きたいと思います。

 今日は、その話の前提問題を検討しているときに
「取締役と会社との委任契約」
について思いついた話を書きたいと思います。

 取締役に就任する要件として、株主総会で取締役を選任する決議をやるほか、会社と取締役との間に契約が必要かという論点は、古くて新しい論点です。

 「取締役を株主の中から選定しなければならない」というルールのあった大昔の商法では、
株主自身が総会に参加しているのだから、そこで選任されれば、別途、契約をする必要はない
というのが有力説でした。

 しかし、その後、「委任の規定に従う」という規定ができたり、「取締役を株主に限定してはいけない」というルールに変わったりしたため、
総会で議決権を行使していない取締役の承諾なしに、取締役としての義務を負わせるのは妥当ではない
という価値観が支配的になり、取締役と会社との間には、「委任契約」が必要であるというのが通説になりました。

 私も、取締役・会社間の「契約」がなければ、取締役に就任しないという点は賛成ですが、若干、通説の説明には不正確な点があるのではないかと思っています。

 ご承知のように民法では、契約自由の原則が採用されていて、民法に規定されている典型契約以外の契約であっても、意思表示どおりの権利義務関係を発生させることができます。
 売買契約、賃貸借契約、委任契約等の民法の規定は、当事者が自由に結んだ契約内容を典型契約の要件に当てはめてみて、その要件を充たす場合には、その典型契約のために用意された義務や担保責任等が発生するという機能を果たしているだけで、しかも、それらの規定のほとんどは、契約によって排除することができます。

 これに対し、取締役の就任契約については、その内容にかかわらず、会社と取締役との間の関係は「委任に関する規定に従う」(330条)こととされています。
 この規定を、「会社と取締役の間の契約は、委任契約なのだから、当然のことを定めた確認規定である」と説明する人もいますが、「従う」という言葉から明らかなとおり、330条は、就任契約の内容がどんなものであっても、強制的に委任の規定を適用するという規定であり、契約と矛盾する法的効果を生じさせる場合もあることを前提とした強行規定です。

 実際、この就任契約は、報酬特約等の特約を結ぶことを否定するものではありませんが、
1 欠格事由を排除することができない。
2 取締役の善管注意義務や忠実義務を排除することができない(これができると、責任免除と同様の効果が生じてしまいます)。
3 任期を伸ばすことができない。
など、会社法の強行規定により、契約内容がことごとく制限されています。

以上のような就任契約の性質を考えると、会社と取締役は、「委任契約」を締結するのではなく、「取締役に就任する旨の契約」という会社法が定めた定型的な契約を締結し、その契約について委任の規定が適用されると解するのが、理論的にすっきりします。

そして、その定型的な就任契約の内容を明らかにすることが、就任承諾の要否の解釈や任務懈怠責任における違法と責任の区別にも役に立つものと思います。

今日の記事は「何を当たり前のことをグダグダ言っているんだ」
というお叱りを受けそうな感じもしますが、代表取締役の就任承諾の問題を考えるにあたっては、本日述べたとおり、「就任契約については、契約自由が制限され、ある程度定型的な契約を締結しなければならない」という理解を深めておいていただかないといけないので、前振りとして、就任契約の法的性質を説明してみました。
 「前振りだけかよ・・」とツッコまれそうですが、調整がつくまで、今、しばらくお待ちください。


(質問コーナー)
Q1
仮に競業避止義務は追わないと契約すれば、事業活動の承継をするような場合でも総会決議は不要ですか。
 親子会社の(100%子会社でない)場合、総会開くのを避けるため競業避止義務をつけないで契約するようなことは認められますか。譲渡人は競業避止義務つけないけど、絶対競業はしないと、親子ゆえ暗黙の了解がある。 
独立した当事者での事業譲渡で、事業活動の承継をする場合、譲受人は当然、譲渡人に競業避止義務を得負わせて契約すると思いますが(これでも一概に言えないような気もするのですが。)。
A1
私は、競業避止義務を負わない契約を締結すれば、総会決議は不要だと思います。ただ、ここは、判例の解釈によっては、違う結論も考えられるかも知れません。
ただし、親子会社の事例は、暗黙の了解があったら、総会の決議を採るべきでしょう。

Q2
2006年07月20日の01:58の書き込みの質問コーナーQ2で、「165条2項では、株主総会で自己株式の取得枠を決め、その範囲内で取締役会が自己株式を取得できます。459条1項の定めを置けば、自己株式の取得枠そのものを取締役会で決議することができます。」と書かれていますが、165条2項はあくまで、市場取引等により取得する手続きを定めた規定ですので、459条1項1号を待つまでもなく、同条3項及び1項により、156条1項各号の事項は株主総会又は取締役会のいずれが定めてもよろしいのではないでしょうか。ご教示いただけると幸いです。
A2
おっと、勘違いしていました。おっしゃるように、165条2項でも取締役会で156条1項各号の事由を定めることができますね。申し訳ありませんでした。459条1項は、市場取引等により取得する場合以外でも、自己株式の取得枠を定めることができる点において、165条2項よりも広いということになりますね。

Q3
千問Q702で、Aの2に「業務執行者は、①(鄯)および②(鄯)の場合には、欠損填補責任を負わないが、・・・」とあります。②(鄯)の方は、465条1項10号ロハなのでわかりますが、①(鄯)の方がわかりません。つまり、①(鄯)は取締役会決議で454条1項各号を定めており、定時総会でそのことを定めているのではないため、10号イに該たらないと思うのですが。よろしくお願いします。
Posted by 流れ星 at 2006年07月25日 07:38
A3
質問が465条1項10号イのカッコ内の「第四百三十六条第三項の取締役会」に該当します。

Q4
責任限定契約についてご照会いたします。
定款で、「社外監査役との間に任務を怠ったことによる損害賠償責任を限定する契約を締結することができる。ただし当該契約に基づく責任の限度額は、法令が規定する額とする。」として報酬の2年分を限度額(=最低責任限度額)とする契約は締結することが法令上可能でしょうか。
定款の「法令が規定する額」とは、427条第1項にあります「定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を…定款で定めることができる。」のことと思いますが、「あらかじめ定めた額」を決めてはいません。ご教示ください。
Posted by kiki at 2006年07月25日 17:44
A4
「あらかじめ定めた額」がなければ、427条一項は適用できません。
しかし、当該定款は、法律により定められた最低責任限度額を「法令が規定する額」と表現し、その額を「あらかじめ定めた額」としているものとして有効だと思います。

Q5
責任限定契約などでの最低責任限度額について教えて下さい。
上の方のご質問にもある内容ですが、A社の定款に責任限定契約の定めとして「法令に定める最低責任限度額」を責任限度額として記載があります。この場合、無報酬の社外役員との責任限定契約による責任限度額は「ゼロ」ということでよいのでしょうか?
また、取引先B社から派遣された社外監査役(非常勤)Cについて、A社が役員Cに直接支払っている報酬はゼロですが、「給与負担金」をB社に支払っています(CはB社職員として給与を受け取っています)。
この給与負担金(経営指導料等の名目とする場合も考えられますが…)については、425条の「職務執行の対価または受けるべき財産上の利益」に該当するのでしょうか。
Posted by 法務社員1年生 at 2006年07月26日 09:27
A5
無報酬ならば、0ですね。
「給与負担金」をB社に支払っているというのは、よくあるパターンなのですが、その給与負担金が、社外監査役の職務執行の対価として、B社を通じて、社外監査役に支払われているとすれば、それは、「報酬」に該当すると思います。したがって、本来、報酬決議を採るのが筋ですし、まして、最低責任限度額の算定で「0」というのは、裁判では通用しないものと思われます。

Q6
定款で株券不発行を謳い、「当会社の発行する株式の譲渡による取得については、取締役会の承認を受けなければならない。」という譲渡制限規定を設けた会社について、認証後登記申請の段階で、「発行する」の文言削除を要したという事例を聞きました。削除するべきなのでしょうか。
また、株券不発行で株式譲渡制限規定があるのはおかしい、との意見だそうです。頭が混乱してきてます。よろしくご教示下さい。
Posted by HAMA at 2006年07月25日 18:31
A6
「株券」の発行と「株式」の発行は、全く違います。株券不発行の会社でも、株式は発行します。「発行する」の文言削除というのは、不要ではないでしょうか。
ちなみに、定款で株券を発行する旨を定めない限り、株券不発行なので、株券不発行の定めは単なる確認的な意味しかありません。

Q7
 株式交換でパーチェス法による場合の「その他資本剰余金」についてお尋ねします。
会社計算規則68条1項2号(ロ)(1)により、債権者保護手続をとった場合は株式交換完全親会社の増加する払込資本の内訳は、いきなり全額を「その他資本剰余金」とすることができるとされています。
 では、債権者を害するおそれがないとして保護手続をとる必要のない株式交換(=交付財産が完全親会社の株式のみの場合)については、いきなり全額を「その他資本剰余金」とすることはできないのでしょうか?明文上は68条1項2号(ロ)(2)に該当し、ダメのように読めます。しかし、債権者保護手続が必要でない以上、債権者保護手続をとった場合と異なる扱いをする理由はないように思われます。質問のケースを会社計算規則68条1項2号(ロ)(1)に含めなかった理由はどのようなものですか?以上です。よろしくお願いします。
Posted by KOUKAN at 2006年07月26日 14:56
A7
債権者保護手続きのない株式交換では、その他資本剰余金にすることはできません。
これは、確か法制審の要綱で決まっていたような記憶があります。

Q8
葉玉先生、新株予約権の発行決議につきお尋ねいたします。
千問311頁のQ430によると、「親会社が子会社の取締役等に対して新株予約権を無償で発行することもできる、子会社の従業員が子会社を通じて提供した役務の対価として発行するなら取締役決議によることも可」とあります。
1. この「子会社の取締役等に対して」には「子会社の従業員に対して」も含まれますか。「子会社の顧問」はどうでしょうか。
2. 312頁の「親会社が新株予約権の公正価額に見合う便益を得ているかどうか」はどのように判定すればよいでしょうか。
3. 312頁の「親会社が債務引受する」パターンの場合、子会社は債務引受の退化を親に払う必要がありますか。
Posted by CCC at 2006年07月26日 18:22
A8
子会社の従業員は、含まれます。
ところで、「顧問」って従業員ですか?
それとも、委任契約をした税理士さんとか?
子会社の顧問が、子会社を通じて提供した役務があれば、同じに考えて良いと思いますが、それがあるかどうか?

Q9
休眠会社のみなし解散について教えてください。最後の登記が平成13年6月の株式会社は、5年経たずに会社法施行となりましたので、会社法472条により、平成25年が、みなし解散の適用時期の年度となる、との理解でよいのでしょうか。
Posted by 難民なべ at 2006年07月26日 21:15
A9
特に経過措置は置かれていないので、そうなるでしょう。

Q10
株主総会が終わって早1ヶ月。会社法の荒波にもまれた脱力感もなくなり、久しぶりに質問させて頂きます。
剰余金の処分について、任意積立金を目的外で取り崩すときは総会決議が必要だと思いますが、その総会は「臨時総会」でも可能でしょうか?
具体的に申しますと、8月に臨時総会で退職慰労金の打ち切り支給を決議するとして、現在積立金が100万あり、実際の支給は30万だとします。このなかで、100−30=70万を臨時総会で処分(社外流出はなし)できますか?
仮に可能だとすると、比較的一般的な金額は一任決議ではなく、退職慰労金は30万を支給するという決議をとらないと駄目でしょうか?
Posted by dunk at 2006年07月26日 22:32
A10
任意積立金の取り崩しは、臨時総会でも可能です。
任意積立金の取り崩しと、退職慰労金の支払いは、別次元の話です。
定款で、取り崩しの要件が定められていれば、それに従うべきですが、法律上は、退職慰労金のの額とリンクさせる必要はありません。
ちなみに、退職慰労金の支払いは、利益処分ではないので、報酬決議でやってください。

2006年7月24日 (月)

株式買取請求権のための通知・公告の省略

昨日のQ2で「事業譲渡や組織再編において,誰も反対しないときに反対株主買取請求権の機会付与のための通知・公告を省略できませんか。」という質問に対し、できないと答えたところ、内藤さんから、

「省略することはできないと解される場合であっても、「20日前」という期間を短縮することは認められると考えます。
 旧商法下の新株発行においても、新株発行事項の通知又は公告に関する2週間前という期間は、総株主の同意により短縮可能、というのが登記実務でした。この点は、会社法においても同様に解されているようです(「論点解説」201頁。ただし、「不要」ではなく、「期間の短縮が可能」が正しいと思います。)。」

というコメントを頂きました。
 この問は、頻出問題であり、微妙なものを含んでいるので、今日は少し深掘りします。

内藤さんのご指摘どおり、旧商法下の新株発行においては、新株発行事項の通知又は公告について2週間前という期間が守られていなくても、総株主の同意があれば、登記の申請は受理されました。

内藤さんのコメントは、これを反対株主買取請求権の通知・公告に広げようというものです。

私も、実質において、その見解を支持したいところではありますが、昨日も述べたとおり、明文なく省略を許してよいかというと躊躇を覚えます。

これは、新株発行に関する旧商法上の登記実務(会社法でも同じ実務がとられるはずです)が認められていた理由を考えると、分かります。

私の記憶に間違いがなければ、新株発行についての当該登記実務は、相株主の同意があれば
「2週間前という期間を守らなくても適法である」又は「通知・公告しなくても適法である」
というものではなかったはずです。

ご承知のように、新株は、一度、発行されれば、新株発行無効の訴えの認容判決が確定するまでは、有効であり、しかも、当該無効事由は、
①新株発行の差し止めの裁判がされたにもかかわらず、これを無視して発行した場合
又は
②新株発行についての通知・公告がなく、かつ、差し止め事由がある場合
等の場合に限定されています。

前述の登記実務は、この新株発行無効事由に着眼して、
「適法な通知・公告がなくても、新株発行について総株主が同意し、差止権が放棄されたのだから、新株発行の無効事由は存在しない。したがって、登記も受理せざるをえない。」
という理屈で、登記を受理していたのだと思います。

千問の道標Q278は、それをもう少し強気に言い換えているのですが、発想としては同じ発想です。

この理屈が、反対株主買取請求権の機会付与のための通知・公告について、応用できるでしょうか。

組織再編にも無効の訴えがあること、無効事由が法定されていないことは、新株発行の場合と同じですが、組織再編については差し止めの訴えがないので、新株発行と同じ基盤に立つことはできません。

また、新設型組織再編の場合には、登記が効力発生要件となっているので、新株発行のときのように「既に株式が発行され、かつ、無効事由がないのだから、登記せざるをえない」というような状況にもありません。

さらに、反対株主買取請求権の機会付与のための通知・公告を怠ったことが組織再編の無効事由になるかどうかについて、判例が固まれば、その判例に沿った解釈をすることもできますが、残念ながら、そういう判例もありません。

個人的には、総株主が同意していれば、反対株主買取請求権の通知・公告の意味はないので、その瑕疵は、無効事由にならないと思いますし、吸収型組織再編は、効力発生日に効力が発するので、少なくとも、そこは、新株発行と同視できるのではないかとも思うのですが、いかんせん隙の多い立論であるため、現段階では、そのような結論を採る勇気がありません。

ですから、心情的には、ikさんや内藤さんにエールを送りつつも、なかなか難しいですねという玉虫色の発言になってしまい、昨日の記事で、威勢良く「玉虫色のことは言わない」というようなことを言ってしまったことをやや後悔しています(笑)。

(質問コーナー)
Q1
取締役会決議省略についてお聞きします。
決議省略の場合も、議事録作成を義務づけられており、書面で作成する場合、法369条3項によれば、「出席した」取締役及び監査役の署名又は記名押印を要するとされます。
しかし書面や電子メールで同意された場合、出席者はいません。この場合は議事録作成取締役の署名か記名押印があればよいのですか?
また同意の電子メールは、プリントアウトしたものを備置するとしてもよいのでしょうか?
Posted by minash at 2006年07月23日 21:04
A1
頻出ですが、決議省略の場合には、出席した取締役は誰もいませんので、署名は不要です。
電子メールで同意した場合には電子メールを、電子メールをプリントアウトした書面で同意した場合には、その書面を備置するのが原則であり、後者については、E文書法の適用があります。

Q2
「債権者の信頼」についてですが,会社法の下では,株式会社の債権者は株式会社の財産のみを引当とする(104条)ので,見せ金によって株式会社の財産的基礎が害された場合,債権者は債権を回収することが難しくなると思うのですが,ここにあるはずの債権者の信頼を「債権者の信頼」と呼びました。
Posted by ヨボヨボ at 2006年07月23日 22:02
A2
 債権者の債権回収が困難になることと、債権者の信頼とは、やや意味が違います。
 債権者の債権回収を考えると、会社財産が多ければ多いほどいいでしょうが、会社の規模は、本来、会社債権者が口出しできないところなので、会社法でいう債権者の信頼は、計算書類や登記上の資本金に水増しがあるかどうかという点から判断すべきです。
 そうすると、昨日述べたとおり、有効説に立つと、払込みに伴い資本金が増加するかわりに、代表取締役に対する債権が資産に立つし、無効説だと、見せ金分は資本金が増加しないかわりに、資産にもならないというだけで、債権者の信頼の点では変わりありません。
 有効説に対して代表取締役に対する債権は、無価値な場合があるから、債権者の信頼を害するという立論も可能ですが、無効説でも、代取が払込が有効であることを前提として虚偽の計算書類を作成するので、会社債権者の信頼を害する点では同じです。
 見せ金の有効・無効と債権者の保護は関係ないというのは、そういう意味です。
 
Q3
 特例有限会社が通常の株式会社に移行した直後に吸収合併を行い存続会社となる場合に、債権者保護手続を行う際に示すべき「最終の事業年度に係る貸借対照表」に関する事項は、会社計算規則第199条第5号 or 第7号のいずれに該当するかについて、実務の取扱いに若干混乱が見られるようです。
 私は、移行するとすぐに会社法第440条第1項の適用がある株式会社となること、また、事業年度は継続しているので「最終の事業年度」は存することから、第7号に該当すると考えていますが、「最終の事業年度はない」(第5号)として公告している例が散見されます。
Posted by 内藤卓 at 2006年07月23日 23:11
A3
 特例有限会社は、株式会社であり、事業年度はありますから、7号が正しいと思います。

Q4
100問の365頁の下から3行目からの記述、「なお、株主が当該金銭の全額を支払った場合には、民法422条が類推適用され、株主は、自己が売却した株式について代位する。」についてですが、なぜ民法422条直接適用ではなく、類推適用なのでしょうか?
A4
民法422条の射程が必ずしも明確ではないことと、462条の株主の責任を損害賠償責任という性質と位置づけることが適当か疑問があることから、類推適用としています。

Q5
①存続会社等における吸収合併等の承認(795条4項)と②消滅会社等における吸収合併に承認(783条3項)・消滅会社等における新設合併等の承認(804条3項)はどちらも組織再編行為における種類株主総会ですが、①は特別決議、②は特殊決議となっています。どうしてこのような差があるのですか?
Posted by a at 2006年07月24日 02:17
A5
①は、存続会社等における承認ですから、その株主の株式が譲渡制限株式に変わることはありません。②は、消滅会社の譲渡制限のない株式が、存続会社の譲渡制限株式に変わる場合ですから、譲渡制限の定款変更をする場合と同様、特殊決議になっています。

Q6
譲渡承認手続で,指定買取人は一部買取も可能とされてますが,これは,指定買取人500,会社500というのも可能ですか。複数の指定買取人で分担は当然可能ですよね。
会社と指定買取人の分担を認める場合,先に指定買取人が買取通知をして,その後総会で承認されなかったので会社の分はみなし承認となったら,買主は1000ほしかったのに会社の分500だけ承認となります。いらないなら買主は解除するでしょうが,このとき売主は指定買取人に500売らないといけないのでしょうか。
Posted by ik at 2006年07月24日 03:49
A6
指定買取人500、会社500という買取も可能だと思います。
後段については、売主は、譲渡承認請求の撤回ができなくなっているので、指定買取人に500売る義務を負います。

Q7
吸収分割の効力発生日と登記日が異なる場合、事後開示書面(会社法791条1項)は、いつの時点で作成すればよいのでしょうか。
会社法791条2項には、効力発生日から6箇月間事後開示書面を備え置かなければならない、と規定されているので、これによれば、効力発生日付けで事後開示書面を作成しなければならないようにも読めますが、他方、会社法施行規則189条5号によれば、登記日が記載事項となっているので、効力発生日と登記日が異なる場合、効力発生日の時点では、事後開示書面を作成することができません。どのような扱いをすればよいでしょうか。
Posted by 法務担当者 at 2006年07月24日 17:54
A7
事後開示書面は、効力発生日後遅滞なく作成しなければならないのですが、「遅滞なく」とは合理的理由がない限り、速やかにという意味です。通常、効力発生日と登記日は近接しているはずですから、登記日後に作成したとしても、「遅滞なく」作成したものと認められます。ただし、登記懈怠に陥っているような場合には、正当な理由はないので、登記日の記載ができなくても、事後開示書面の作成義務も懈怠していることになります。

株式買取請求権のための通知・公告の省略

昨日のQ2で「事業譲渡や組織再編において,誰も反対しないときに反対株主買取請求権の機会付与のための通知・公告を省略できませんか。」という質問に対し、できないと答えたところ、内藤さんから、

「省略することはできないと解される場合であっても、「20日前」という期間を短縮することは認められると考えます。
 旧商法下の新株発行においても、新株発行事項の通知又は公告に関する2週間前という期間は、総株主の同意により短縮可能、というのが登記実務でした。この点は、会社法においても同様に解されているようです(「論点解説」201頁。ただし、「不要」ではなく、「期間の短縮が可能」が正しいと思います。)。」

というコメントを頂きました。
 この問は、頻出問題であり、微妙なものを含んでいるので、今日は少し深掘りします。

内藤さんのご指摘どおり、旧商法下の新株発行においては、新株発行事項の通知又は公告について2週間前という期間が守られていなくても、総株主の同意があれば、登記の申請は受理されました。

内藤さんのコメントは、これを反対株主買取請求権の通知・公告に広げようというものです。

私も、実質において、その見解を支持したいところではありますが、昨日も述べたとおり、明文なく省略を許してよいかというと躊躇を覚えます。

これは、新株発行に関する旧商法上の登記実務(会社法でも同じ実務がとられるはずです)が認められていた理由を考えると、分かります。

私の記憶に間違いがなければ、新株発行についての当該登記実務は、相株主の同意があれば
「2週間前という期間を守らなくても適法である」又は「通知・公告しなくても適法である」
というものではなかったはずです。

ご承知のように、新株は、一度、発行されれば、新株発行無効の訴えの認容判決が確定するまでは、有効であり、しかも、当該無効事由は、
①新株発行の差し止めの裁判がされたにもかかわらず、これを無視して発行した場合
又は
②新株発行についての通知・公告がなく、かつ、差し止め事由がある場合
等の場合に限定されています。

前述の登記実務は、この新株発行無効事由に着眼して、
「適法な通知・公告がなくても、新株発行について総株主が同意し、差止権が放棄されたのだから、新株発行の無効事由は存在しない。したがって、登記も受理せざるをえない。」
という理屈で、登記を受理していたのだと思います。

千問の道標Q278は、それをもう少し強気に言い換えているのですが、発想としては同じ発想です。

この理屈が、反対株主買取請求権の機会付与のための通知・公告について、応用できるでしょうか。

組織再編にも無効の訴えがあること、無効事由が法定されていないことは、新株発行の場合と同じですが、組織再編については差し止めの訴えがないので、新株発行と同じ基盤に立つことはできません。

また、新設型組織再編の場合には、登記が効力発生要件となっているので、新株発行のときのように「既に株式が発行され、かつ、無効事由がないのだから、登記せざるをえない」というような状況にもありません。

さらに、反対株主買取請求権の機会付与のための通知・公告を怠ったことが組織再編の無効事由になるかどうかについて、判例が固まれば、その判例に沿った解釈をすることもできますが、残念ながら、そういう判例もありません。

個人的には、総株主が同意していれば、反対株主買取請求権の通知・公告の意味はないので、その瑕疵は、無効事由にならないと思いますし、吸収型組織再編は、効力発生日に効力が発するので、少なくとも、そこは、新株発行と同視できるのではないかとも思うのですが、いかんせん隙の多い立論であるため、現段階では、そのような結論を採る勇気がありません。

ですから、心情的には、ikさんや内藤さんにエールを送りつつも、なかなか難しいですねという玉虫色の発言になってしまい、昨日の記事で、威勢良く「玉虫色のことは言わない」というようなことを言ってしまったことをやや後悔しています(笑)。

(質問コーナー)
Q1
取締役会決議省略についてお聞きします。
決議省略の場合も、議事録作成を義務づけられており、書面で作成する場合、法369条3項によれば、「出席した」取締役及び監査役の署名又は記名押印を要するとされます。
しかし書面や電子メールで同意された場合、出席者はいません。この場合は議事録作成取締役の署名か記名押印があればよいのですか?
また同意の電子メールは、プリントアウトしたものを備置するとしてもよいのでしょうか?
Posted by minash at 2006年07月23日 21:04
A1
頻出ですが、決議省略の場合には、出席した取締役は誰もいませんので、署名は不要です。
電子メールで同意した場合には電子メールを、電子メールをプリントアウトした書面で同意した場合には、その書面を備置するのが原則であり、後者については、E文書法の適用があります。

Q2
「債権者の信頼」についてですが,会社法の下では,株式会社の債権者は株式会社の財産のみを引当とする(104条)ので,見せ金によって株式会社の財産的基礎が害された場合,債権者は債権を回収することが難しくなると思うのですが,ここにあるはずの債権者の信頼を「債権者の信頼」と呼びました。
Posted by ヨボヨボ at 2006年07月23日 22:02
A2
 債権者の債権回収が困難になることと、債権者の信頼とは、やや意味が違います。
 債権者の債権回収を考えると、会社財産が多ければ多いほどいいでしょうが、会社の規模は、本来、会社債権者が口出しできないところなので、会社法でいう債権者の信頼は、計算書類や登記上の資本金に水増しがあるかどうかという点から判断すべきです。
 そうすると、昨日述べたとおり、有効説に立つと、払込みに伴い資本金が増加するかわりに、代表取締役に対する債権が資産に立つし、無効説だと、見せ金分は資本金が増加しないかわりに、資産にもならないというだけで、債権者の信頼の点では変わりありません。
 有効説に対して代表取締役に対する債権は、無価値な場合があるから、債権者の信頼を害するという立論も可能ですが、無効説でも、代取が払込が有効であることを前提として虚偽の計算書類を作成するので、会社債権者の信頼を害する点では同じです。
 見せ金の有効・無効と債権者の保護は関係ないというのは、そういう意味です。
 
Q3
 特例有限会社が通常の株式会社に移行した直後に吸収合併を行い存続会社となる場合に、債権者保護手続を行う際に示すべき「最終の事業年度に係る貸借対照表」に関する事項は、会社計算規則第199条第5号 or 第7号のいずれに該当するかについて、実務の取扱いに若干混乱が見られるようです。
 私は、移行するとすぐに会社法第440条第1項の適用がある株式会社となること、また、事業年度は継続しているので「最終の事業年度」は存することから、第7号に該当すると考えていますが、「最終の事業年度はない」(第5号)として公告している例が散見されます。
Posted by 内藤卓 at 2006年07月23日 23:11
A3
 特例有限会社は、株式会社であり、事業年度はありますから、7号が正しいと思います。

Q4
100問の365頁の下から3行目からの記述、「なお、株主が当該金銭の全額を支払った場合には、民法422条が類推適用され、株主は、自己が売却した株式について代位する。」についてですが、なぜ民法422条直接適用ではなく、類推適用なのでしょうか?
A4
民法422条の射程が必ずしも明確ではないことと、462条の株主の責任を損害賠償責任という性質と位置づけることが適当か疑問があることから、類推適用としています。

Q5
①存続会社等における吸収合併等の承認(795条4項)と②消滅会社等における吸収合併に承認(783条3項)・消滅会社等における新設合併等の承認(804条3項)はどちらも組織再編行為における種類株主総会ですが、①は特別決議、②は特殊決議となっています。どうしてこのような差があるのですか?
Posted by a at 2006年07月24日 02:17
A5
①は、存続会社等における承認ですから、その株主の株式が譲渡制限株式に変わることはありません。②は、消滅会社の譲渡制限のない株式が、存続会社の譲渡制限株式に変わる場合ですから、譲渡制限の定款変更をする場合と同様、特殊決議になっています。

Q6
譲渡承認手続で,指定買取人は一部買取も可能とされてますが,これは,指定買取人500,会社500というのも可能ですか。複数の指定買取人で分担は当然可能ですよね。
会社と指定買取人の分担を認める場合,先に指定買取人が買取通知をして,その後総会で承認されなかったので会社の分はみなし承認となったら,買主は1000ほしかったのに会社の分500だけ承認となります。いらないなら買主は解除するでしょうが,このとき売主は指定買取人に500売らないといけないのでしょうか。
Posted by ik at 2006年07月24日 03:49
A6
指定買取人500、会社500という買取も可能だと思います。
後段については、売主は、譲渡承認請求の撤回ができなくなっているので、指定買取人に500売る義務を負います。

Q7
吸収分割の効力発生日と登記日が異なる場合、事後開示書面(会社法791条1項)は、いつの時点で作成すればよいのでしょうか。
会社法791条2項には、効力発生日から6箇月間事後開示書面を備え置かなければならない、と規定されているので、これによれば、効力発生日付けで事後開示書面を作成しなければならないようにも読めますが、他方、会社法施行規則189条5号によれば、登記日が記載事項となっているので、効力発生日と登記日が異なる場合、効力発生日の時点では、事後開示書面を作成することができません。どのような扱いをすればよいでしょうか。
Posted by 法務担当者 at 2006年07月24日 17:54
A7
事後開示書面は、効力発生日後遅滞なく作成しなければならないのですが、「遅滞なく」とは合理的理由がない限り、速やかにという意味です。通常、効力発生日と登記日は近接しているはずですから、登記日後に作成したとしても、「遅滞なく」作成したものと認められます。ただし、登記懈怠に陥っているような場合には、正当な理由はないので、登記日の記載ができなくても、事後開示書面の作成義務も懈怠していることになります。

2006年7月23日 (日)

会社法の不備

「会社法ですか?」さんから,禁断の質問(笑)を受けました。

「今までの本文とQ&Aを拝見した限りでは、ここは、会社法を立案した方が、その不備を、ここで自分なりの解釈で補正していると考えてよろしいのでしょうか。そして、それが実務にも影響していると・・・。実務者として、改正後まだ数ヶ月もたっていないのに、会社法のあちこちの条文がぼろぼろと崩れているのを実感しています。先生の解釈が実務(法務省内でも。何度も法務省に問い合わせをしています)でも影響が大なことは、御自分でもご存知でしょうね。」

 個人的には,「禁断の愛」とか言われれば,「萌え〜」と答えますが,このブログは,公序良俗に違反しない限り,禁断の質問というものはありませんので,どんな質問でもバッチコイ(古ッ)です。
 それどころか,「会社法ですか」さんのご質問は,このブログの位置づけを皆さんに理解していただく上で,貴重な質問だと思います。

 まず,「会社法に不備があるか」という質問に答えるためには,「不備」とは何かを整理する必要があります。一般的には,「不備」とは
1 誤記・条文の引用間違いなど条文上の間違い
2 本来,当然に設けられるべき制度の欠如や同趣旨の制度間の平仄上の不整合
3 立法論として整備した方が望ましい事項の存在
を言うのではないかと思います。

 1は形式チョンボで,会社法には形式チョンボはないはずです。
 2は実質チョンボで,会社法には,若干の実質チョンボがあります。これは,解釈によって補うことはできず,省令でフォローできなければ,会社法の改正によって修正するしかありません。この実質チョンボも,本来あってはいけないものではありますが,会社法に限らず,大きな法律には,しばしば存在し,次の改正の機会に修正されます。会社法も,次の機会に若干の実質チョンボ直しを行う予定です。
 3は,立法論ですから,間違いではなく,正確に言うと「不備」というのは適当ではありません。また,解釈で解決することができない事項を立法的に解決しようという話ですから,これも「不備を解釈で補う」というわけではありません。

 以上のように,「会社法の不備を解釈で補正している」というのは,命題そのものが間違っていますので,答えは「NO」ということになります。

 ただし,
「ブログという読者が書き込みやすいメディアで会社法を語ることにより,会社法の不備が少しでも多く見つかれば,それだけ会社法の完成度が高まる」
と思っているのは事実であり,実際,ここで指摘していただいたコメントから実質チョンボが見つかったこともあります。
 人間が作るものは,ミスを避けることはできません。特に複雑になればなるほど,法律も,契約書も,プログラムも,バグが必ず出てきます。
 大事なのは,会社法の不備を押し隠すことではなく,不備を早く見つけ出し,それを修正することですので,その意味でこのブログは大変役に立っています。

 それから,会社法の条文は,一般的抽象的規範ですから,具体的な事実を当てはめる上で条文解釈は必要不可欠であり,条文を解釈すること自体は,不備を補正することにはなりません。
 限定解釈や拡張解釈をすることが「不備の補正」であるとすると,憲法も民法も刑法も,不備だらけということになります(笑)。
 確かに,私は,このブログで,いろいろな会社法の解釈を披露しておりますが,それは,知的好奇心と親切心からやっているだけであり,会社法の不備を補正するような壮大な意図はありません。

 実際,私の答えを見ていただければ分かるとおり,ほとんどは
「条文に書いてあるとおりです」
「条文が制限していない以上,制限はされません」
「条文で手続きが要求されている以上,それを省略することはできません。」
という条文至上主義的な回答であり,なぜ条文がそのように規定しているのか,その趣旨を解説していることが多いと思います。

 もちろん,私は,会社法の立案担当者の一人なので,私の解釈が一定の社会的影響力を与えていることは認識していますが,所詮,局付の一人が趣味でやっているブログの解釈ですから,別に,「この解釈を採らないとダメ」などというつもりはありませんし,むしろ色々な反論を受けて議論する方が楽しいです。
 実際,ikさんや内藤さん等会社法の論客が多数このブログにコメントしてくださるので,私自身,コメントに対する反論を通じて,自分の解釈の本質が明確になったり,修正した方がいいと考えて,仲間内で議論して解釈を変更したこともありました。

 もともと,私は,単なる局付ですから,民事局としての回答を決定する権限はありませんし,私の解釈が民事局としての回答に採用されないことがあるのも,言うまでもないことです。
 特に,ブログの質問に対する回答は,スピードを最優先にして,脊髄反射的に回答しているのがほとんどなので,局内でとことん議論して違う結論になったとしても,不思議なことは何もありません。
 もし
「質問に対し,関係部署と調整の上,局として正式に決まってから,きとんした回答をよこせ」
ということになれば,回答スピードは100倍遅くなりますし,いい加減な言い回しもできなくなってて,書くのも読むのも面白くなくなってしまうでしょう。

 このブログでやろうとしていることは,「お上」が一方的に解釈を押しつけるということではなく,読者の皆さんが,勉強や実務でぶつかった疑問点を提示してもらい,私は,私の考えを率直に述べ,それを見ておかしいと思う人は「こういう点がおかしい」と反論するという自由な議論の場の創造です。
 会社法の書物では,難しいところは,玉虫色の答えになっていることが多いのですが,このブログでは,玉虫色をできるだけ廃して,何が解釈として妥当かを議論の中で明確にするように努力しています。

 また,民事局への電話相談や法務局での登記相談では,なかなか実現することができない「不特定人が会社法の解釈を巡る議論に参加すること」を実現できれば,行政プロセスの民主化の実験としても,とても面白いのではないかと思っています。

 もちろん,私も,かれこれ5年以上会社法の担当をしており,あまり的ハズレなことは言わなくなっていますので,
「議論をしたいわけではないが,とりあえず「早い。安い。旨い。」という吉野屋又はキン肉マン的な回答が欲しい」
という方もいらっしゃるでしょう。
 そういう方は,そういう趣旨で,このブログを使っていただいても結構であり,その代わり
「念入りに準備されたロオジェのフレンチや吉兆の懐石の味を期待しないでくださいね」
と注意書きを添えて,回答をお出しすることにしています。

 それから,「会社法ですか?」さんの「条文がぼろぼろ崩れている」というのが,どの条文のことを言っているのか,すごく興味がありますが,私自身は,全然,崩れている感覚がありません。
 私が,様々な質問に答えてきた経験からいえば,会社法は非常に論理的で緻密に作られていて,旧商法の解釈に内在していた矛盾を大部分解決しているように思います(もちろん課題もありますが)。

 むしろ,私は,実務について調べてみて,「ぞっ」とすることの方が多いのです。
 というのも,Aという実務慣行は,本来,Bという制度があることが前提となっていたのに,既にBという制度がなくなり,むしろBとは反対の制度が採用されているにもかかわらず,ずっとAという実務慣行が変わらずに続いているというようなことが,まま,あるのです。
 それどころか,もともと法律違反と言われても仕方がないようなことなのに,誰かが一回やって,特に文句がでなかったので,慣行となってしまったようなものもあり,そういう実務慣行について「この実務慣行は会社法で認められるか」と聞かれると,「もともと旧法でも認められなかったはずですが・・・」としか答えようがないのです。

 こうした根拠のないドグマは,別に実務慣行だけではなく,会社法の学説の中にもありますから,誰が悪いというわけではありませんが,実務慣行にしても学説にしても,会社法の明文に反するようなものは,「会社法に反する」と答えざるを得ないし,解釈の前提自体が,これまでの商法改正や会社法によって変更されてしまったのならば,
「その解釈を維持するのは,難しくなりました」
と率直に説明すべきだと思います。

 ところが,たまに「実務が変わること自体」「解釈が変わること自体」に怒り出す人がいます。そういう人は,こちらから,
「なぜ,解釈が変わるとまずいんですか?」
と理由を尋ねても
「これが実務だから」「これが通説だから」
としか答えてくれません。

 私も,効率性の観点から,合理的な実務慣行を変更するような解釈を採るのはよくないと思いますが,会社法のもとで不合理な解釈・不合理な実務慣行がないかを見直し,不合理ならば変えるしかないと思うのです。
 ところが,「変わること自体」が嫌な人は,解釈の変更には,全てネガティブになってしまいます。

 会社法の解釈は,最終的には,最高裁判所が決定するので,その決定がでるまでは,それぞれオウンリスクで「私の会社法」で実務をやるしかないのですが,会社法の内容を知らないため,うっかり損害賠償責任等を負うことになるのは,悲惨なので,私は,このブログで,たびたび
「その部分は,今までどおりの取扱いじゃ,まずいんじゃないかなあ」
というアラートを出しているのです。
 もちろん,そのアラートが気に障る人は無視すればよいですし,不合理ならば反論すれば良いし,なるほどと思えば,実務を見直すきっかけにすればよいのですが,
「アラートを出すこと自体がけしからん」
というアホな批判されたときは
「アラートを出さなかったために,失敗した人が出たら,お前が責任を取るのか。」
という大人げない反論をすることにしています。

 一番怖いのは,リスク自体を知らないこと。

 大切なのは,漫然とドグマに従わず,その一つ一つの意味と根拠を見つめ直すこと。

 このブログが,何の疑問も抱いていなかった実務慣行の見直しのきっかけになるならば,休みを削って,書いてきただけの甲斐があるというものです。


(質問コーナー)
Q1
指定買取人との売買契約の成立時期について,相澤=岩崎商事1739号39頁を見ると「通知を行っただけでは,売買対象である株式の価格は決まっておらず,その時点で株式の売買契約が成立したものと一義的にはいえない」とされてます。この解説を変更する趣旨になるのでしょうか(それとも一致していることになるんでしょうか)。また,145条2号括弧書等の通知は到達主義になり,指定買取人がする限り相手が株主でも126条の類推はない,ということでよろしいでしょうか。
Posted by ik at 2006年07月21日 02:55
A1
当該解説は,請求者が譲渡承認等請求を撤回することを制限した規定の趣旨を説明するためのものです。「代金の具体的金額が定まっていない段階では,売買契約の全部の要素が確定していないので,撤回は自由にできる」という考え方もありうることから,「一義的にはいえない」と表現しているものであって「代金の具体的金額が定まらなくても,売買契約としては成立している」ということを否定しているわけではありません。
 145条2号カッコ書の通知というのは,第142条1項の規定による通知のことでしょうか?承諾の意思表示だから発信主義ということでいいのではないかと思いますが?
発信の宛先については,126条の類推もありうると思います。

Q2
事業譲渡や組織再編において,誰も反対しないときに反対株主買取請求権の機会付与のための通知・公告を省略できませんか。事業譲渡で総会決議をやって,翌日効力発生にしようと思ったら,通知・公告を忘れてたという事例は,後を絶たないような気がいたしまして,そのとき総会は100%賛成だったりすると,これがないことで問題が生じるのか,という気もいたします。100%子会社の吸収合併なんかでも,反対されたら決議が通りませんから,この公告・通知の意味は最初からありませんが,特に除外されているようには読めません。また,仮に必要なのに忘れた場合,効果としてはどうなるのでしょうか。
Posted by ik at 2006年07月21日 03:03
A2
現在の解釈では,通知・公告を省略することはできないと解されます。
100%賛成のような特殊な場合に,本来,要求されている手続きを省略することができるようにするかどうかは,政策的な問題であり,招集手続の省略等いくつかの手続きについては,それが明文化されています。明文がない場合に手続きの省略を認めるような解釈をすれば,思いもよらぬ不都合が生ずる可能性があることもあり,また,登記の現場が混乱することもあるので,具体的な場面では「こんな手続き不要だろう」ということがあっても,ある程度画一的な取扱いをせざるをえません。個人的には,いくつかの手続きについては,株主全員の承諾によって省略していいと思うものがありますが,それを解釈で認めるためには,登記を含め様々な調整が必要になるでしょう。次期改正の課題の一つにあがるといいんですが。

Q3
自己株式の取得に関する手続きついて、教えて下さい。
・160条の特定の株主からの取得を行おうとするときに、同条4項によれば、その特定の株主は「156条1項の株主総会において議決権を行使できない」とありますが、これは株主総会において他の議案がある場合、当該156条1項の議案にのみ議決権を行使できない、ということでよろしいのでしょうか。
・また、譲渡制限会社における自己株式の取得については、譲渡承認手続きは不要(136条)ということでよろしいでしょうか。
Posted by 法務ヒラ社員 at 2006年07月21日 13:33
A3
最初の質問は,そのとおりです。他の議案については議決権を行使することができます。
二番目の質問は,136条のカッコ書きで,当該譲渡制限株式を発行した株式会社が除かれていますので,会社に譲渡する場合には,承認を取る必要はありません。

Q4
一時会計監査人を2名以上選任することは可能なのでしょうか?可能だと思いますが、すでに1名選任してある場合でも「会計監査人が欠ている」と、いえるのでしょうか。宜しくおねがいします
A4
一時会計監査人を2名以上選任することは可能であり,その例もあります。
一時会計監査人は,「会計監査人」ではないので,一時会計監査人を選任しても「会計監査人が欠けている」状態に変わりありません。

Q5
法363②取締役会への報告義務を負う「業務執行取締役」ですが,常務取締役等の「役付取締役」として選定され,○○部担当を指名された者は法的な報告義務を負うと考えますが,平取締役で,○○部長,○○工場長等の使用人兼務を委嘱された使用人兼務取締役者は,「取締役会の構成員」ではあるが,原則として取締役としての業務執行権限は有しないので,法的報告義務を負う「業務執行取締役」ではないと,理解してよろしいでしょうか?
それとも,使用人兼務は重要な使用人の選任として取締役会で決議しており,使用人としてではあるが業務執行をしているので,「業務執行取締役」として法的報告義務があると考えるのでしょうか?ご教授ください。
Posted by 新任取締役 at 2006年07月21日 18:01
A5
報告義務を負うのは,「取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの」ですから,その要件を充たすかどうかにかかっています。
使用人兼務というのは,代表取締役や業務担当取締役の手足として業務執行を補助する使用人としての地位を併有しているということですから,取締役会の決議で業務執行権を付与しなくても,業務執行を行うことができますし,その取締役も「業務執行取締役」(2条15号)には該当します。
 しかし,報告義務を負うのは,客観的に業務を執行したかどうかで判断される「業務執行取締役」ではなく,「取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの」(業務担当取締役)ですから,使用人兼務取締役が,取締役会の決議で業務を執行する取締役として選定されていなければ,業務を執行したとしても,報告義務を負いません。その業務についての報告は,その業務について責任を負っている代表取締役又は業務担当取締役が行います。
 もっとも,取締役会の決議で「○○部長とする」と選定された場合,その決議の解釈によっては,業務担当取締役に選定したものとされる場合もありえます。

Q6
100問のP.84「見せ金」について質問があります。
見せ金を無効としても会社債権者の保護がはかれないとの批判に対しての反論のうち,①について,「見せ金は〜〜〜会社債権者の保護とは無関係であり,〜〜〜」とありますが,なぜ「無関係」と言い切ることができるのでしょうか。
http://blog.livedoor.jp/masami_hadama/archives/50388172.html
こちらの,「「見せ金」は,代表取締役が自己の借金の返済のために使い込んでしまう(横領する)ので,会社は,その払込金を事業のために用いることができない」という説明にあるように,代表取締役によって会社の財産的基礎を危うくされれば,債権者の信頼を害することになるのではないでしょうか。
Posted by ヨボヨボ at 2006年07月22日 05:01
A6
 ヨボヨボさんのいう債権者の信頼とは,何でしょうか。それが,分からないので,大変答えにくい質問になっています。
 ヨボヨボさんご自身でそれを明確にした上で,次の3つの帰結を見比べてください。
1 会社法で見せ金を有効とすれば,その払込価額は,資本金に計上される代わりに,代表取締役に対する金銭返還請求権が資産に計上されます。
2 会社法で見せ金が無効であれば,資本金に組み入れられることも,会社の資産として計上されることもありません。
3 旧商法で見せ金を無効とすれば,発行価額が資本金に組み入れられる代わりに,発起人等に払込担保責任が生じます。
 さて,どの見解が,「債権者の信頼」を害し,どの見解が「債権者の信頼」を害しないのでしょうか?それを教えていただければ,詳しく説明いたします。
 なお,会社法で見せ金を無効とする見解にたつと,仮に代表取締役が見せ金を有効なものとして資本金に組み入れて計算書類を作成すれば,虚偽の計算書類を作成したことになりますから,その計算書類を信頼した第三者は,取締役等に対して損害賠償責任を追及することができますし(429条2項),その資本金を登記すれば,公正証書原本等不実記載罪になります。これは見せ金の問題ではなく,虚偽計算書類の作成や虚偽登記の問題です。

Q6
整備法106条で旧法の例によってされた減資における債権者保護手続でも、最終の貸借対照表に係る事項を公告する必要がありますが、その会社が有価証券報告書提出会社であり、最終事業年度に関する有価証券報告書を提出しているため、最終の貸借対照表について会社法による公告していないる場合には、公告事項はどうなるのでしょうか?
旧法に基づく債権者保護手続でも、有価証券報告書提出会社である旨を公告すればよいのでしょうか?
最終の貸借対照表を改めて公告しなければならないというのでは、会社法440条4項の意味がないように思うのですが。
Posted by たつきち at 2006年07月20日 21:35
A6
これは以前回答したような気がしますが,その場合,貸借対照表も,有価証券報告書提出会社である旨も,公告する必要はありません。

Q7
株式分割の基準日と効力発生日について質問させてもらった者です。早速のご回答ありがとうございます。何故このような細かいことにこだわるかと申しますと、基準日=効力発生日に臨時株主総会を開催し、分割後の発行済株式総数の4倍に発行可能株式総数を拡大する定款変更決議をしたいと考えています(同日非公開会社から公開会社に移行する予定です)。この場合、基準日を午後5時現在の株主名簿記載の株主と定めると、株式分割の効力発生は午後5時と考えてよいのでしょうか。同日午後5時以前に株主総会を開催して分割後の発行済株式総数の4倍に発行可能株式総数を拡大する決議をするには株式分割効力発生を条件とする決議でないと無効のよう思いますし、5時以後に総会を開いたら無条件で決議できるとするのもおかしい気がします。株式分割の効力発生は効力発生日の経過であってそれ故、基準日(時間指定)=効力発生日が可能ということでしょうか。
Posted by ジタン at 2006年07月20日 23:44
A7
すいません。質問の意味が,いまいちつかめません。効力発生は,通常,効力発生日の「到来時」(午前零時)に生じますが,効力発生日も,時間指定をすることはできると解されるので,基準時の後に効力発生時を設定すれば,それが同じ日であってもよいということです。

会社法の不備

「会社法ですか?」さんから,禁断の質問(笑)を受けました。

「今までの本文とQ&Aを拝見した限りでは、ここは、会社法を立案した方が、その不備を、ここで自分なりの解釈で補正していると考えてよろしいのでしょうか。そして、それが実務にも影響していると・・・。実務者として、改正後まだ数ヶ月もたっていないのに、会社法のあちこちの条文がぼろぼろと崩れているのを実感しています。先生の解釈が実務(法務省内でも。何度も法務省に問い合わせをしています)でも影響が大なことは、御自分でもご存知でしょうね。」

 個人的には,「禁断の愛」とか言われれば,「萌え〜」と答えますが,このブログは,公序良俗に違反しない限り,禁断の質問というものはありませんので,どんな質問でもバッチコイ(古ッ)です。
 それどころか,「会社法ですか」さんのご質問は,このブログの位置づけを皆さんに理解していただく上で,貴重な質問だと思います。

 まず,「会社法に不備があるか」という質問に答えるためには,「不備」とは何かを整理する必要があります。一般的には,「不備」とは
1 誤記・条文の引用間違いなど条文上の間違い
2 本来,当然に設けられるべき制度の欠如や同趣旨の制度間の平仄上の不整合
3 立法論として整備した方が望ましい事項の存在
を言うのではないかと思います。

 1は形式チョンボで,会社法には形式チョンボはないはずです。
 2は実質チョンボで,会社法には,若干の実質チョンボがあります。これは,解釈によって補うことはできず,省令でフォローできなければ,会社法の改正によって修正するしかありません。この実質チョンボも,本来あってはいけないものではありますが,会社法に限らず,大きな法律には,しばしば存在し,次の改正の機会に修正されます。会社法も,次の機会に若干の実質チョンボ直しを行う予定です。
 3は,立法論ですから,間違いではなく,正確に言うと「不備」というのは適当ではありません。また,解釈で解決することができない事項を立法的に解決しようという話ですから,これも「不備を解釈で補う」というわけではありません。

 以上のように,「会社法の不備を解釈で補正している」というのは,命題そのものが間違っていますので,答えは「NO」ということになります。

 ただし,
「ブログという読者が書き込みやすいメディアで会社法を語ることにより,会社法の不備が少しでも多く見つかれば,それだけ会社法の完成度が高まる」
と思っているのは事実であり,実際,ここで指摘していただいたコメントから実質チョンボが見つかったこともあります。
 人間が作るものは,ミスを避けることはできません。特に複雑になればなるほど,法律も,契約書も,プログラムも,バグが必ず出てきます。
 大事なのは,会社法の不備を押し隠すことではなく,不備を早く見つけ出し,それを修正することですので,その意味でこのブログは大変役に立っています。

 それから,会社法の条文は,一般的抽象的規範ですから,具体的な事実を当てはめる上で条文解釈は必要不可欠であり,条文を解釈すること自体は,不備を補正することにはなりません。
 限定解釈や拡張解釈をすることが「不備の補正」であるとすると,憲法も民法も刑法も,不備だらけということになります(笑)。
 確かに,私は,このブログで,いろいろな会社法の解釈を披露しておりますが,それは,知的好奇心と親切心からやっているだけであり,会社法の不備を補正するような壮大な意図はありません。

 実際,私の答えを見ていただければ分かるとおり,ほとんどは
「条文に書いてあるとおりです」
「条文が制限していない以上,制限はされません」
「条文で手続きが要求されている以上,それを省略することはできません。」
という条文至上主義的な回答であり,なぜ条文がそのように規定しているのか,その趣旨を解説していることが多いと思います。

 もちろん,私は,会社法の立案担当者の一人なので,私の解釈が一定の社会的影響力を与えていることは認識していますが,所詮,局付の一人が趣味でやっているブログの解釈ですから,別に,「この解釈を採らないとダメ」などというつもりはありませんし,むしろ色々な反論を受けて議論する方が楽しいです。
 実際,ikさんや内藤さん等会社法の論客が多数このブログにコメントしてくださるので,私自身,コメントに対する反論を通じて,自分の解釈の本質が明確になったり,修正した方がいいと考えて,仲間内で議論して解釈を変更したこともありました。

 もともと,私は,単なる局付ですから,民事局としての回答を決定する権限はありませんし,私の解釈が民事局としての回答に採用されないことがあるのも,言うまでもないことです。
 特に,ブログの質問に対する回答は,スピードを最優先にして,脊髄反射的に回答しているのがほとんどなので,局内でとことん議論して違う結論になったとしても,不思議なことは何もありません。
 もし
「質問に対し,関係部署と調整の上,局として正式に決まってから,きとんした回答をよこせ」
ということになれば,回答スピードは100倍遅くなりますし,いい加減な言い回しもできなくなってて,書くのも読むのも面白くなくなってしまうでしょう。

 このブログでやろうとしていることは,「お上」が一方的に解釈を押しつけるということではなく,読者の皆さんが,勉強や実務でぶつかった疑問点を提示してもらい,私は,私の考えを率直に述べ,それを見ておかしいと思う人は「こういう点がおかしい」と反論するという自由な議論の場の創造です。
 会社法の書物では,難しいところは,玉虫色の答えになっていることが多いのですが,このブログでは,玉虫色をできるだけ廃して,何が解釈として妥当かを議論の中で明確にするように努力しています。

 また,民事局への電話相談や法務局での登記相談では,なかなか実現することができない「不特定人が会社法の解釈を巡る議論に参加すること」を実現できれば,行政プロセスの民主化の実験としても,とても面白いのではないかと思っています。

 もちろん,私も,かれこれ5年以上会社法の担当をしており,あまり的ハズレなことは言わなくなっていますので,
「議論をしたいわけではないが,とりあえず「早い。安い。旨い。」という吉野屋又はキン肉マン的な回答が欲しい」
という方もいらっしゃるでしょう。
 そういう方は,そういう趣旨で,このブログを使っていただいても結構であり,その代わり
「念入りに準備されたロオジェのフレンチや吉兆の懐石の味を期待しないでくださいね」
と注意書きを添えて,回答をお出しすることにしています。

 それから,「会社法ですか?」さんの「条文がぼろぼろ崩れている」というのが,どの条文のことを言っているのか,すごく興味がありますが,私自身は,全然,崩れている感覚がありません。
 私が,様々な質問に答えてきた経験からいえば,会社法は非常に論理的で緻密に作られていて,旧商法の解釈に内在していた矛盾を大部分解決しているように思います(もちろん課題もありますが)。

 むしろ,私は,実務について調べてみて,「ぞっ」とすることの方が多いのです。
 というのも,Aという実務慣行は,本来,Bという制度があることが前提となっていたのに,既にBという制度がなくなり,むしろBとは反対の制度が採用されているにもかかわらず,ずっとAという実務慣行が変わらずに続いているというようなことが,まま,あるのです。
 それどころか,もともと法律違反と言われても仕方がないようなことなのに,誰かが一回やって,特に文句がでなかったので,慣行となってしまったようなものもあり,そういう実務慣行について「この実務慣行は会社法で認められるか」と聞かれると,「もともと旧法でも認められなかったはずですが・・・」としか答えようがないのです。

 こうした根拠のないドグマは,別に実務慣行だけではなく,会社法の学説の中にもありますから,誰が悪いというわけではありませんが,実務慣行にしても学説にしても,会社法の明文に反するようなものは,「会社法に反する」と答えざるを得ないし,解釈の前提自体が,これまでの商法改正や会社法によって変更されてしまったのならば,
「その解釈を維持するのは,難しくなりました」
と率直に説明すべきだと思います。

 ところが,たまに「実務が変わること自体」「解釈が変わること自体」に怒り出す人がいます。そういう人は,こちらから,
「なぜ,解釈が変わるとまずいんですか?」
と理由を尋ねても
「これが実務だから」「これが通説だから」
としか答えてくれません。

 私も,効率性の観点から,合理的な実務慣行を変更するような解釈を採るのはよくないと思いますが,会社法のもとで不合理な解釈・不合理な実務慣行がないかを見直し,不合理ならば変えるしかないと思うのです。
 ところが,「変わること自体」が嫌な人は,解釈の変更には,全てネガティブになってしまいます。

 会社法の解釈は,最終的には,最高裁判所が決定するので,その決定がでるまでは,それぞれオウンリスクで「私の会社法」で実務をやるしかないのですが,会社法の内容を知らないため,うっかり損害賠償責任等を負うことになるのは,悲惨なので,私は,このブログで,たびたび
「その部分は,今までどおりの取扱いじゃ,まずいんじゃないかなあ」
というアラートを出しているのです。
 もちろん,そのアラートが気に障る人は無視すればよいですし,不合理ならば反論すれば良いし,なるほどと思えば,実務を見直すきっかけにすればよいのですが,
「アラートを出すこと自体がけしからん」
というアホな批判されたときは
「アラートを出さなかったために,失敗した人が出たら,お前が責任を取るのか。」
という大人げない反論をすることにしています。

 一番怖いのは,リスク自体を知らないこと。

 大切なのは,漫然とドグマに従わず,その一つ一つの意味と根拠を見つめ直すこと。

 このブログが,何の疑問も抱いていなかった実務慣行の見直しのきっかけになるならば,休みを削って,書いてきただけの甲斐があるというものです。


(質問コーナー)
Q1
指定買取人との売買契約の成立時期について,相澤=岩崎商事1739号39頁を見ると「通知を行っただけでは,売買対象である株式の価格は決まっておらず,その時点で株式の売買契約が成立したものと一義的にはいえない」とされてます。この解説を変更する趣旨になるのでしょうか(それとも一致していることになるんでしょうか)。また,145条2号括弧書等の通知は到達主義になり,指定買取人がする限り相手が株主でも126条の類推はない,ということでよろしいでしょうか。
Posted by ik at 2006年07月21日 02:55
A1
当該解説は,請求者が譲渡承認等請求を撤回することを制限した規定の趣旨を説明するためのものです。「代金の具体的金額が定まっていない段階では,売買契約の全部の要素が確定していないので,撤回は自由にできる」という考え方もありうることから,「一義的にはいえない」と表現しているものであって「代金の具体的金額が定まらなくても,売買契約としては成立している」ということを否定しているわけではありません。
 145条2号カッコ書の通知というのは,第142条1項の規定による通知のことでしょうか?承諾の意思表示だから発信主義ということでいいのではないかと思いますが?
発信の宛先については,126条の類推もありうると思います。

Q2
事業譲渡や組織再編において,誰も反対しないときに反対株主買取請求権の機会付与のための通知・公告を省略できませんか。事業譲渡で総会決議をやって,翌日効力発生にしようと思ったら,通知・公告を忘れてたという事例は,後を絶たないような気がいたしまして,そのとき総会は100%賛成だったりすると,これがないことで問題が生じるのか,という気もいたします。100%子会社の吸収合併なんかでも,反対されたら決議が通りませんから,この公告・通知の意味は最初からありませんが,特に除外されているようには読めません。また,仮に必要なのに忘れた場合,効果としてはどうなるのでしょうか。
Posted by ik at 2006年07月21日 03:03
A2
現在の解釈では,通知・公告を省略することはできないと解されます。
100%賛成のような特殊な場合に,本来,要求されている手続きを省略することができるようにするかどうかは,政策的な問題であり,招集手続の省略等いくつかの手続きについては,それが明文化されています。明文がない場合に手続きの省略を認めるような解釈をすれば,思いもよらぬ不都合が生ずる可能性があることもあり,また,登記の現場が混乱することもあるので,具体的な場面では「こんな手続き不要だろう」ということがあっても,ある程度画一的な取扱いをせざるをえません。個人的には,いくつかの手続きについては,株主全員の承諾によって省略していいと思うものがありますが,それを解釈で認めるためには,登記を含め様々な調整が必要になるでしょう。次期改正の課題の一つにあがるといいんですが。

Q3
自己株式の取得に関する手続きついて、教えて下さい。
・160条の特定の株主からの取得を行おうとするときに、同条4項によれば、その特定の株主は「156条1項の株主総会において議決権を行使できない」とありますが、これは株主総会において他の議案がある場合、当該156条1項の議案にのみ議決権を行使できない、ということでよろしいのでしょうか。
・また、譲渡制限会社における自己株式の取得については、譲渡承認手続きは不要(136条)ということでよろしいでしょうか。
Posted by 法務ヒラ社員 at 2006年07月21日 13:33
A3
最初の質問は,そのとおりです。他の議案については議決権を行使することができます。
二番目の質問は,136条のカッコ書きで,当該譲渡制限株式を発行した株式会社が除かれていますので,会社に譲渡する場合には,承認を取る必要はありません。

Q4
一時会計監査人を2名以上選任することは可能なのでしょうか?可能だと思いますが、すでに1名選任してある場合でも「会計監査人が欠ている」と、いえるのでしょうか。宜しくおねがいします
A4
一時会計監査人を2名以上選任することは可能であり,その例もあります。
一時会計監査人は,「会計監査人」ではないので,一時会計監査人を選任しても「会計監査人が欠けている」状態に変わりありません。

Q5
法363②取締役会への報告義務を負う「業務執行取締役」ですが,常務取締役等の「役付取締役」として選定され,○○部担当を指名された者は法的な報告義務を負うと考えますが,平取締役で,○○部長,○○工場長等の使用人兼務を委嘱された使用人兼務取締役者は,「取締役会の構成員」ではあるが,原則として取締役としての業務執行権限は有しないので,法的報告義務を負う「業務執行取締役」ではないと,理解してよろしいでしょうか?
それとも,使用人兼務は重要な使用人の選任として取締役会で決議しており,使用人としてではあるが業務執行をしているので,「業務執行取締役」として法的報告義務があると考えるのでしょうか?ご教授ください。
Posted by 新任取締役 at 2006年07月21日 18:01
A5
報告義務を負うのは,「取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの」ですから,その要件を充たすかどうかにかかっています。
使用人兼務というのは,代表取締役や業務担当取締役の手足として業務執行を補助する使用人としての地位を併有しているということですから,取締役会の決議で業務執行権を付与しなくても,業務執行を行うことができますし,その取締役も「業務執行取締役」(2条15号)には該当します。
 しかし,報告義務を負うのは,客観的に業務を執行したかどうかで判断される「業務執行取締役」ではなく,「取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの」(業務担当取締役)ですから,使用人兼務取締役が,取締役会の決議で業務を執行する取締役として選定されていなければ,業務を執行したとしても,報告義務を負いません。その業務についての報告は,その業務について責任を負っている代表取締役又は業務担当取締役が行います。
 もっとも,取締役会の決議で「○○部長とする」と選定された場合,その決議の解釈によっては,業務担当取締役に選定したものとされる場合もありえます。

Q6
100問のP.84「見せ金」について質問があります。
見せ金を無効としても会社債権者の保護がはかれないとの批判に対しての反論のうち,①について,「見せ金は〜〜〜会社債権者の保護とは無関係であり,〜〜〜」とありますが,なぜ「無関係」と言い切ることができるのでしょうか。
http://blog.livedoor.jp/masami_hadama/archives/50388172.html
こちらの,「「見せ金」は,代表取締役が自己の借金の返済のために使い込んでしまう(横領する)ので,会社は,その払込金を事業のために用いることができない」という説明にあるように,代表取締役によって会社の財産的基礎を危うくされれば,債権者の信頼を害することになるのではないでしょうか。
Posted by ヨボヨボ at 2006年07月22日 05:01
A6
 ヨボヨボさんのいう債権者の信頼とは,何でしょうか。それが,分からないので,大変答えにくい質問になっています。
 ヨボヨボさんご自身でそれを明確にした上で,次の3つの帰結を見比べてください。
1 会社法で見せ金を有効とすれば,その払込価額は,資本金に計上される代わりに,代表取締役に対する金銭返還請求権が資産に計上されます。
2 会社法で見せ金が無効であれば,資本金に組み入れられることも,会社の資産として計上されることもありません。
3 旧商法で見せ金を無効とすれば,発行価額が資本金に組み入れられる代わりに,発起人等に払込担保責任が生じます。
 さて,どの見解が,「債権者の信頼」を害し,どの見解が「債権者の信頼」を害しないのでしょうか?それを教えていただければ,詳しく説明いたします。
 なお,会社法で見せ金を無効とする見解にたつと,仮に代表取締役が見せ金を有効なものとして資本金に組み入れて計算書類を作成すれば,虚偽の計算書類を作成したことになりますから,その計算書類を信頼した第三者は,取締役等に対して損害賠償責任を追及することができますし(429条2項),その資本金を登記すれば,公正証書原本等不実記載罪になります。これは見せ金の問題ではなく,虚偽計算書類の作成や虚偽登記の問題です。

Q6
整備法106条で旧法の例によってされた減資における債権者保護手続でも、最終の貸借対照表に係る事項を公告する必要がありますが、その会社が有価証券報告書提出会社であり、最終事業年度に関する有価証券報告書を提出しているため、最終の貸借対照表について会社法による公告していないる場合には、公告事項はどうなるのでしょうか?
旧法に基づく債権者保護手続でも、有価証券報告書提出会社である旨を公告すればよいのでしょうか?
最終の貸借対照表を改めて公告しなければならないというのでは、会社法440条4項の意味がないように思うのですが。
Posted by たつきち at 2006年07月20日 21:35
A6
これは以前回答したような気がしますが,その場合,貸借対照表も,有価証券報告書提出会社である旨も,公告する必要はありません。

Q7
株式分割の基準日と効力発生日について質問させてもらった者です。早速のご回答ありがとうございます。何故このような細かいことにこだわるかと申しますと、基準日=効力発生日に臨時株主総会を開催し、分割後の発行済株式総数の4倍に発行可能株式総数を拡大する定款変更決議をしたいと考えています(同日非公開会社から公開会社に移行する予定です)。この場合、基準日を午後5時現在の株主名簿記載の株主と定めると、株式分割の効力発生は午後5時と考えてよいのでしょうか。同日午後5時以前に株主総会を開催して分割後の発行済株式総数の4倍に発行可能株式総数を拡大する決議をするには株式分割効力発生を条件とする決議でないと無効のよう思いますし、5時以後に総会を開いたら無条件で決議できるとするのもおかしい気がします。株式分割の効力発生は効力発生日の経過であってそれ故、基準日(時間指定)=効力発生日が可能ということでしょうか。
Posted by ジタン at 2006年07月20日 23:44
A7
すいません。質問の意味が,いまいちつかめません。効力発生は,通常,効力発生日の「到来時」(午前零時)に生じますが,効力発生日も,時間指定をすることはできると解されるので,基準時の後に効力発生時を設定すれば,それが同じ日であってもよいということです。

2006年7月20日 (木)

任意積立金

代理人さんから、任意積立金についての質問を受けました。

「「その他利益剰余金」に分類される『任意(別途)積立金」の積み立て、および取り崩しについて、よくわかりませんので、教えていただけないでしょうか。会社法452条で、別途積立金は、株主総会・普通決議によって、積み立てができると思います。さて、この別途積立金を減少させる場合には、どのような手続きが必要なのか、よくわからないのです。
会社計算規則181条2項2号によれば、「法第四百五十二条前段の株主総会の決議によりある剰余金の項目に係る額の増加又は減少をさせた場合において、当該決議の定めるところに従い、同条前段の株主総会の決議を経ないで当該剰余金の項目に係る額の減少又は増加をすべきとき。」は、「株主総会の決議を経ないで剰余金の項目に係る額の増加又は減少をすべき場合」にあたるということです。
①ここで、「当該決議の定めるところに従い」とは、積み立て決議の時に、「別途積立金(過去の積み立て分を含む)は、随時、何らの決議を経ずして取り崩しできる」とか「取締役会での決議で取り崩すことができる」等、具体的に定めておくことができるということでしょうか?
②また、2項1号を読むと、極端な場合「何らの決議を経ずして増加又は減少させられる、と定款に定めておける」のか? と思えてしまいます。」

さて、代理人さんの質問にある「任意積立金」は、会社が
「来年以降の安定配当のために、分配可能額から、さらに、任意準備金の分だけ控除して、配当しよう」
という趣旨で、積み立てるものです。
 あくまでも、任意のものなので、もしかしたら、別の趣旨かも知れませんが、普通は、配当の範囲を制限するもののはずです。

この任意積立金は、法律上の分配可能額の計算においては、控除されませんから、仮に任意積立金を控除せずに配当したとしても、462条の責任等は生じません。

ただし、定款で、任意積立金を控除して配当するという趣旨の定めがあれば、「定款の規定に違反して、剰余金の配当をしたとき」(963条5項2号)として、違法配当罪が成立してしまう可能性があるので、注意が必要です。実務では、任意積立金を取り崩さず、その他利益剰余金をマイナスにして配当するという恐ろしいことが行われていると聞いたことがありますが、定款次第ではお縄になりますから、ちゃんと任意積立金の減少の決議をしてくださいね。

この任意積立金の増加・減少は、452条では、株主総会の決議によって行うことができることが定められています。

しかし、会社法上、この場合にのみ任意積立金の増加・減少が生ずると限定しているわけではなく、計算規則181条2項は、株主総会の決議以外で任意積立金が増減する場合を定めています。
すなわち、1号は、法令又は定款の規定により増減が生ずる場合であり、2号は452条の株主総会決議で定めた事由により増減が生ずる場合です。

代理人さんは、この定款(1号)や株主総会決議(2号)で定める内容が、何でもいいのかということを聞いているわけですが、答えは、「何でもいい」です。

もともと、任意準備金は、会社が、任意に配当を減らすためのものなので、それをどう増減させるかについて、会社法が五月蠅く制限する必要はないので、どうぞ、任意に決めてくださいという考え方ですね。

例えば、定款や総会決議で
 「取締役会の決議で取り崩すことができる」
と定めても良いし、
 「ジャイアンツが負けた日は、任意積立金を1万円減少する」
と定めてもいい。

それは、すべて会社の自治に委ねられています。

ただし、定款で増減事由を定めている場合において、それに矛盾する株主総会の決議を行うと、内容の定款違反として決議取消事由が生ずる可能性があるので、その点だけは要注意。

あとは、自由気ままにやってください。

(質問コーナー)
Q1
 P198の上から11行目
「 (三) さらに公開会社である大会社は、監査役会又は委員会並びに会計監査人を置かなければならない(328条1項)。 」
とありますが、下線部は「委員会又は監査役会並びに会計監査人を」となるべきではないでしょうか。
Posted by edomonto at 2006年07月20日 08:24
A1
委員会設置会社は、委員会+会計監査人の会社です。
ですから、(監査役会又は委員会)+ 会計監査人を置かなければならないということでよいのです。

Q2
旧法時代の少数説として選任決議は,被選任者の承諾を停止条件とする会社の単独行為であるとする見解(鈴木竹雄・竹内明夫「会社法(第3版)」p270)があり,これによれば,代表取締役Aが任用契約の申込みをしない場合や被選任者Bの就任承諾の受領を拒絶する場合でもBが就任できることを簡単に説明できたと思います。会社法が任用契約により就任するとの考えを採っているとして,上記のような場合には,どのような取扱になるのかをお聞きしたかったのです。
Posted by 猫太郎 at 2006年07月20日 10:40
A2
鈴木先生と竹内先生に文句を言いたくはないので(笑)、コメントはやめておきます。
普通の委任契約は、代表取締役が会社を代表して行いますから、会社法上の例外が認められるかどうかですね。

Q3
取締役会で監査役がコメントするの意味は、議題に関する所感を監査役が述べたりするのです。 議題に異議を唱えるわけでもなく、単なる感想のようなことを漏らされます。
それが法383条にいう「必要があると認める場合」の「意見」や「発言」とは思えないので、議事録に残す必要があるか悩んでいました。
やはり、発言がある限り監査役としては「必要があると認めて」のものと捉えるのが素直なのでしょうか?
Posted by greenlemon at 2006年07月20日 11:56
A3
意見は、異議でなくても記載する必要があります。
正直言って、「単なる感想」と言われても、中身が分からなければ答えようがありません。
議題と関係がないならば、書く必要はないですし、関係があるのならば、書いた方がよいのではないでしょうか。リスクをとって書かないという選択肢もあると思いますが・・。

Q4
会社法施行規則101条3項7号には、取締役会議事録に署名する者として「取締役会に出席した執行役、会計参与、会計監査人又は株主」が挙げられていますが、「株主兼取締役」とか説明のために出てきた「株主兼従業員」のように、特段、株主の立場で発言していない者であっても、株主として署名しなければならないのでしょうか?
Posted by takahiko at 2006年07月20日 17:34
A4
まず、誤解を解くと、株主は、署名する必要ありません。単に作成者が氏名等を記載するだけです。
株主として出席したのではなければ、氏名を書く必要はありません。

Q5
合併には、略式手続を除いて(784条2項)、差止請求が認められておらず、無効の訴えのみとなっています。なぜかは、略式手続に差止請求が認められる根拠が株主総会の決議が省略される点にあることを考えると、合併には株主総会の承認決議があるからだと思いました。しかし、そうすると、場面を変えて、公開でない会社の募集株式の発行について、なぜ差止請求(210条)が認められているのかがよくわかりません。公開でない会社において募集株式の発行をする場合には株主総会決議が必要だからです(199条2項)。合併と募集株式の発行で、差止請求権の有無に違いが生じるのか、教えていただけたら幸甚です。
Posted by とむ at 2006年07月20日 17:41
A5
差し止めの問題は、ご指摘の点を含めて難問ですので、そのうち詳しくお話しします。

Q6
譲渡制限株式について、定款に「相続人等に対する株式の売渡請求」ができるという条項を設けた場合、取得条項付株式に当たるのでしょうか?
Posted by 川又 at 2006年07月20日 22:43
A6
当たりません。取得条項付株式は、株式の内容として規定されるものであり、相続人等に対する譲渡制限株式の売り渡し請求とは別物です。

Q7
非公開会社が公開会社になった時点で取締役(332条4項3号)監査役(336条4項4号)は任期満了するという規定を置いた立法趣旨について教えて下さい。
公開会社と非公開会社の違いの本質から置いた規定ですか、個々の会社の「機関設計」、「任期を伸長しているか」、「監査役の権限が会計監査権限のみであるか」等の個別判断を避け、画一的に処理できるようにしたのでしょうか。
A7
公開会社と非公開会社では、任期の伸張等様々な違いがあるので、一旦、任期を終了させないと、まずい点が出てくるからです。まずいところだけ、ピックアップする計画がありましたが、複雑なルールになったので、止めました。

任意積立金

代理人さんから、任意積立金についての質問を受けました。

「「その他利益剰余金」に分類される『任意(別途)積立金」の積み立て、および取り崩しについて、よくわかりませんので、教えていただけないでしょうか。会社法452条で、別途積立金は、株主総会・普通決議によって、積み立てができると思います。さて、この別途積立金を減少させる場合には、どのような手続きが必要なのか、よくわからないのです。
会社計算規則181条2項2号によれば、「法第四百五十二条前段の株主総会の決議によりある剰余金の項目に係る額の増加又は減少をさせた場合において、当該決議の定めるところに従い、同条前段の株主総会の決議を経ないで当該剰余金の項目に係る額の減少又は増加をすべきとき。」は、「株主総会の決議を経ないで剰余金の項目に係る額の増加又は減少をすべき場合」にあたるということです。
①ここで、「当該決議の定めるところに従い」とは、積み立て決議の時に、「別途積立金(過去の積み立て分を含む)は、随時、何らの決議を経ずして取り崩しできる」とか「取締役会での決議で取り崩すことができる」等、具体的に定めておくことができるということでしょうか?
②また、2項1号を読むと、極端な場合「何らの決議を経ずして増加又は減少させられる、と定款に定めておける」のか? と思えてしまいます。」

さて、代理人さんの質問にある「任意積立金」は、会社が
「来年以降の安定配当のために、分配可能額から、さらに、任意準備金の分だけ控除して、配当しよう」
という趣旨で、積み立てるものです。
 あくまでも、任意のものなので、もしかしたら、別の趣旨かも知れませんが、普通は、配当の範囲を制限するもののはずです。

この任意積立金は、法律上の分配可能額の計算においては、控除されませんから、仮に任意積立金を控除せずに配当したとしても、462条の責任等は生じません。

ただし、定款で、任意積立金を控除して配当するという趣旨の定めがあれば、「定款の規定に違反して、剰余金の配当をしたとき」(963条5項2号)として、違法配当罪が成立してしまう可能性があるので、注意が必要です。実務では、任意積立金を取り崩さず、その他利益剰余金をマイナスにして配当するという恐ろしいことが行われていると聞いたことがありますが、定款次第ではお縄になりますから、ちゃんと任意積立金の減少の決議をしてくださいね。

この任意積立金の増加・減少は、452条では、株主総会の決議によって行うことができることが定められています。

しかし、会社法上、この場合にのみ任意積立金の増加・減少が生ずると限定しているわけではなく、計算規則181条2項は、株主総会の決議以外で任意積立金が増減する場合を定めています。
すなわち、1号は、法令又は定款の規定により増減が生ずる場合であり、2号は452条の株主総会決議で定めた事由により増減が生ずる場合です。

代理人さんは、この定款(1号)や株主総会決議(2号)で定める内容が、何でもいいのかということを聞いているわけですが、答えは、「何でもいい」です。

もともと、任意準備金は、会社が、任意に配当を減らすためのものなので、それをどう増減させるかについて、会社法が五月蠅く制限する必要はないので、どうぞ、任意に決めてくださいという考え方ですね。

例えば、定款や総会決議で
 「取締役会の決議で取り崩すことができる」
と定めても良いし、
 「ジャイアンツが負けた日は、任意積立金を1万円減少する」
と定めてもいい。

それは、すべて会社の自治に委ねられています。

ただし、定款で増減事由を定めている場合において、それに矛盾する株主総会の決議を行うと、内容の定款違反として決議取消事由が生ずる可能性があるので、その点だけは要注意。

あとは、自由気ままにやってください。

(質問コーナー)
Q1
 P198の上から11行目
「 (三) さらに公開会社である大会社は、監査役会又は委員会並びに会計監査人を置かなければならない(328条1項)。 」
とありますが、下線部は「委員会又は監査役会並びに会計監査人を」となるべきではないでしょうか。
Posted by edomonto at 2006年07月20日 08:24
A1
委員会設置会社は、委員会+会計監査人の会社です。
ですから、(監査役会又は委員会)+ 会計監査人を置かなければならないということでよいのです。

Q2
旧法時代の少数説として選任決議は,被選任者の承諾を停止条件とする会社の単独行為であるとする見解(鈴木竹雄・竹内明夫「会社法(第3版)」p270)があり,これによれば,代表取締役Aが任用契約の申込みをしない場合や被選任者Bの就任承諾の受領を拒絶する場合でもBが就任できることを簡単に説明できたと思います。会社法が任用契約により就任するとの考えを採っているとして,上記のような場合には,どのような取扱になるのかをお聞きしたかったのです。
Posted by 猫太郎 at 2006年07月20日 10:40
A2
鈴木先生と竹内先生に文句を言いたくはないので(笑)、コメントはやめておきます。
普通の委任契約は、代表取締役が会社を代表して行いますから、会社法上の例外が認められるかどうかですね。

Q3
取締役会で監査役がコメントするの意味は、議題に関する所感を監査役が述べたりするのです。 議題に異議を唱えるわけでもなく、単なる感想のようなことを漏らされます。
それが法383条にいう「必要があると認める場合」の「意見」や「発言」とは思えないので、議事録に残す必要があるか悩んでいました。
やはり、発言がある限り監査役としては「必要があると認めて」のものと捉えるのが素直なのでしょうか?
Posted by greenlemon at 2006年07月20日 11:56
A3
意見は、異議でなくても記載する必要があります。
正直言って、「単なる感想」と言われても、中身が分からなければ答えようがありません。
議題と関係がないならば、書く必要はないですし、関係があるのならば、書いた方がよいのではないでしょうか。リスクをとって書かないという選択肢もあると思いますが・・。

Q4
会社法施行規則101条3項7号には、取締役会議事録に署名する者として「取締役会に出席した執行役、会計参与、会計監査人又は株主」が挙げられていますが、「株主兼取締役」とか説明のために出てきた「株主兼従業員」のように、特段、株主の立場で発言していない者であっても、株主として署名しなければならないのでしょうか?
Posted by takahiko at 2006年07月20日 17:34
A4
まず、誤解を解くと、株主は、署名する必要ありません。単に作成者が氏名等を記載するだけです。
株主として出席したのではなければ、氏名を書く必要はありません。

Q5
合併には、略式手続を除いて(784条2項)、差止請求が認められておらず、無効の訴えのみとなっています。なぜかは、略式手続に差止請求が認められる根拠が株主総会の決議が省略される点にあることを考えると、合併には株主総会の承認決議があるからだと思いました。しかし、そうすると、場面を変えて、公開でない会社の募集株式の発行について、なぜ差止請求(210条)が認められているのかがよくわかりません。公開でない会社において募集株式の発行をする場合には株主総会決議が必要だからです(199条2項)。合併と募集株式の発行で、差止請求権の有無に違いが生じるのか、教えていただけたら幸甚です。
Posted by とむ at 2006年07月20日 17:41
A5
差し止めの問題は、ご指摘の点を含めて難問ですので、そのうち詳しくお話しします。

Q6
譲渡制限株式について、定款に「相続人等に対する株式の売渡請求」ができるという条項を設けた場合、取得条項付株式に当たるのでしょうか?
Posted by 川又 at 2006年07月20日 22:43
A6
当たりません。取得条項付株式は、株式の内容として規定されるものであり、相続人等に対する譲渡制限株式の売り渡し請求とは別物です。

Q7
非公開会社が公開会社になった時点で取締役(332条4項3号)監査役(336条4項4号)は任期満了するという規定を置いた立法趣旨について教えて下さい。
公開会社と非公開会社の違いの本質から置いた規定ですか、個々の会社の「機関設計」、「任期を伸長しているか」、「監査役の権限が会計監査権限のみであるか」等の個別判断を避け、画一的に処理できるようにしたのでしょうか。
A7
公開会社と非公開会社では、任期の伸張等様々な違いがあるので、一旦、任期を終了させないと、まずい点が出てくるからです。まずいところだけ、ピックアップする計画がありましたが、複雑なルールになったので、止めました。

指定買取人との売買契約の成立時期

ik さんから、譲渡制限株式の譲渡承認手続について、理論的なご質問を受けました。

「譲渡を承認しない場合の指定買取人との売買契約の成立時期につき,千問68頁では,買取通知を発した時点となっています。しかし,この時点では売買契約の要素である価格が決定していませんので,そのように読めるのかどうか。
民法的なご説明は,新版注釈(3)103頁で今井先生も述べておられますが,旧商法は売渡「請求」であったのであって形成権とよむ余地もあったのですが(価格は法定の手続に委ねるという特定で売買契約を成立させる形成権と解釈),買取「通知」という事実行為になった会社法で同じ説明を維持できるのかどうか疑問に思っています(通知とあるがこれは形成権という説明が一つ,当事者意思として譲渡不承認を条件とした売買の申込につき価格決定は法定の手続に委ねると考えるものが一つ。でも協議という道もあるため,価格は協議するという意思でも契約が成立するとなると契約法理はかなり混乱します。)。解除とみなし承認の作りからすれば,価格決定前に売買契約は成立しているとのお考えだとは伺われるんですが,ここはどうお考えなのかがまず第一点です。
第二点は,「発した時点」となってますが,指定買取人が株主あるいは株主ですらない取得者に通知するときに何を根拠に発信主義をとれるのですか(今井前掲101頁は到達主義にしてます)。」


まず、質問中に、「買取通知という事実行為になった」というご指摘がありますが、これは、違います。

「通知」の性質は、何を通知するかによって定まるものであり、意思表示を通知すれば意思表示ですし、事実を通知すれば観念の通知です。たとえば、民法97条1項は、意思表示を「通知」する場合の規定です。

そこで、142条1項の通知の法的性質が問題になるので、譲渡承認請求手続で指定買取人が買い取る場合の手続きを簡単におさらいすると
(1)請求者は、会社に対し、会社が承認をしないことを条件にして、株式会社又は指定買取人が譲渡制限株式を買取る旨を請求し(138条1号ハ、2号ハ)
(2)それに対し、指定買取人が請求者「指定買取人として指定を受けた旨」「買い取る対象株式数」を通知する
という手続きをとることになっています。

(1)の申込みは、直接には指定買取人に対して行われていませんが、指定買取人に対する申込みとなることを前提として請求しており、その意思表示の内容を、会社が、指定買取人に対して、通知して到達させますから、指定買取人との関係でも申込みの効力は生じます。

 また、(2)の通知内容は、「買い取る旨」という形式的な文言は含まれていませんが、「買い取る対象株式数」という文言が含まれている以上、自己が指定買取人として、対象株式数を買い取る旨の意思表示であると評価することができ、(1)の申込みに対する承諾と評価できる思います。

 とすると、この売買契約の成立時期は、民法526条1項により、承諾の意思表示である(2)の通知を発したとき(発信主義)になると思います。

 この法律構成で問題となるのは、意思表示の内容として価格が具体的に決定されていないということですが、「買い取る」意思表示には、「代金支払い」の意思が含まれており、しかも、具体的な代金の決定は法定手続きによって決定されるということを前提に当該意思表示は発せられています。
 通常の株式売買契約であっても、「代金は、株式引き渡し日の前日の終値」などと具体的な金額を定めずに契約が成立することはあるので、代金の決定方法が特定されていれば、買取の通知時に具体的金額が定まっていないことは、契約成立の妨げにはなりません。
 法定手続きの中で協議が含まれていますが、協議で成立しない場合の価格決定手続きがそれに続きますから、価格は必ず決まります。
 協議だけが価格決定方法ですと、協議が成立しない場合、売買契約の内容が特定されないため、そもそも協議前に売買契約が成立しているのかという疑問がわくのは、理解できますが、協議が成立しなくても、価格が決定するシステムである以上、そのような疑問は生じないと思います。

 また、142条4項は、譲渡等承認請求者が、3項の期間内に株券を供託しない場合には、指定買取人は、「売買契約を解除することができる」と規定し、価格未決定時点で売買契約が成立していることを前提としています。

 なお、(2)を形成権と捉えることも可能だとは思いますが、請求者による(1)買取の請求がなければ、そもそも指定買取人が買取をすることができないことからすると、指定化買取人の一方的な意思表示により売買契約が締結されると見るよりも、通常の契約と考えれば十分ではないでしょうか。

 以上の理由から、千問Q92では、指定買取人が通知を発した時点で、売買契約が成立するという結論を採っているのです。

(質問コーナー)
Q1
基準日と効力発生日を同日として株式の分割をすることは可能でしょうか。この場合、基準日を午後5時現在の株主名簿記載の株主としても問題ないでしょうか。
Posted by ジタン at 2006年07月19日 00:58
A1
基準日と効力発生日を同日として株式の分割をすることはできます。
基準日について、時間の指定をすることも可能であると思います。

Q2
先日、ある方から「自己株式の取得と配当はともに剰余金の分配という形で会社法では整理された、459条で剰余金の分配を取締役会が決定される旨を定款に定める場合には取締役の任期を1年以内とすることが必要となった。一方、この定款変更をせず、自己株式の取得を取締役会決議によって定める旨を定款に定める場合(165条2項)は、旧商法と同様に取締役任期を1年以内とする必要はない。これは平仄が合わないのではないか」という質問をされ、私には答える事が出来ませんでした。この件につきまして葉玉先生のご見解をお聞かせいただければ幸いです。
Posted by 十郎 at 2006年07月19日 06:38
A2
165条2項では、市場取引等により限定されます。
459条1項の定めを置けば、市場取引等に限らず、自己株式の取得枠そのものを取締役会で決議することができます。したがって、取締役の任期を1年としても、その分自由度が増しています。

Q3
株式譲渡制限のある会社の役会で「Aへの譲渡を承認する。但し●年●日までに譲渡が実施されなかったら、承認は失効する。」という決議をしたら有効でしょうか。効果は同じだろうと思います。
Posted by semi初学者 at 2006年07月19日 10:54
A3
微妙ですね。承認は失効すると言った場合、それは承認しなかったことになるのでしょうか。145条が適用されて、結果として承認をしたとみなされることになる場合が多いような気がします。

Q4
千問Q11で、会社の行為には、商法507条のように「商人」であることが適用の要件とされている規定も適用されるとありますが、それは会社法5条のみによって導かれる結論なのでしょうか。
私のような旧法脳では、商法4条1項のような規定を介在させないと、商行為→商人がつながらないと思ってしまうのですが。
Posted by ころ at 2006年07月19日 12:21
A4
私は、商法4条1項を介在させる見解が妥当だと思いますが、グループ内では、当然に商人であるという見解も有力なので、千問Q11のような答えになりましたm。

Q5
よく旧法の教科書で書いてある「業務担当取締役」とは、363条1項2号の取締役を指しているのでしょうか。神田先生の本を読むと、「選定業務執行取締役」と名づけているので、363条1項2号の取締役と「業務担当取締役」の関係について、頭が混乱しています。
Posted by 初心者ロー生 at 2006年07月19日 16:08
A5
業務担当取締役は、363条1項2号の取締役でしょうね。
ただ、旧法は、社外取締役の定義に関しては、それ以外の取締役も業務執行をすると業務担当取締役とみなしていましたが、会社法は、2条15号で「業務執行取締役」という概念を使っていますので、みなし規定はなくなりました。

Q6
役員の就任についての質問です。旧法では,Bが取締役に選任決議され,Bが就任承諾の意思表示をした場合,代表取締役Aが被選任者Bに対して申込みの意思表示をしないか,代表取締役Aが被選任者Bの承諾の意思表示の受領を拒絶したとしても,Bの就任は認められることになっていたと思います。会社法でもこの結論は維持されるのでしょうか。また,その理由はどのように説明することになるのでしょうか。
Posted by 猫太郎 at 2006年07月19日 17:06
A6
すいません。その旧法の取扱いについては、何か資料があるのでしょうか?

Q7
取締役会議事録の記載事項について質問をさせて下さい。千問Q504では規則101条3項6号に関する記載を「競業取引や利益相反取引に関する報告等法律上の義務に基づき述べられた意見又は発言があるときはその内容の概要」と表現されていますが、この6号のイ〜ホを1つずつ見ていくと、 会社法本文で「報告」をする場合と「意見」を述べる場合とが混在していますが、法365条2項等法で「報告と記載されている部分については「発言」を記載し、法367条4項等法で 「意見」と記載されている部分については「意見」を記載するとの対応関係があるのでしょうか? 監査役が議案に対して意見というよりコメントを残すことがあるので、これも議事録に残す必要があるのかな?と悩んでいます。
Posted by greenlemon at 2006年07月19日 22:03
A7
「意見」と「コメント」の違いがよく分からないのですが、そのコメントは「意見」なのではないでしょうか。議事録に残す方がよいと思います。

Q8
先生の商事法務の論文について質問があります。財源規制違反の自己株式の取得の場合、有効説では、譲渡人が責任を全部履行したときは、譲渡人は株式またはその代替物に代位するそうですが、この「代位」の意味が分かりません。
譲渡人が株式を取得する(株主になる)ということでしょうか。もしそうだとすると、株券の返還又は交付を受けないでも、議決権を行使し配当を受領することができるのでしょうか。代位である以上、会社の権利以上のものを取得することはできないようにも思えるのですが。
それとも、株券の交付を受ければ議決権を行使できるということでしょうか。このとき会社は募集株式等の発行手続に従わなければならないのでしょうか。株券不発行会社でも発行手続を要するのでしょうか。会社が手続をしない場合、譲渡人はどうしたらよいのでしょうか。
Posted by satirev at 2006年07月19日 23:23
A8
「代位」は、権利移転と捉えるのが通説です。「代位である以上、会社の権利以上のものを取得することはできない」という表現は間違いではありませんが、自己株式は、株式の権利内容自体に変化が生じているのではなく、会社自身が株主である場合に限り、権利の制限がされているに過ぎないので、譲渡人に株式が移転すれば、その権利の制限を受けないというだけのことです。
 それから、株券の交付は「譲渡」の要件ですが(128条1項)、代位の要件ではないので、株券の交付はなくても、譲渡人は、代位により株式を取得します。
 代位による権利移転は、株式会社の法律行為による自己株式の処分と異なりますから、募集手続きは不要です。法律上当然に代位します。
 ただし、譲渡人が、その取得を株式会社に対抗するためには、株主名簿の名義書換が必要ですが、この場合には、132条3に準じて株式会社が単独で書き換えるべきでしょう。
 なお、会社が取得した自己株式が既に処分して存在しなければ、その株式について代位の効力は生じませんから、この場合に「株式を発行する」ということはありません。

Q9
 株券発行会社の株式の譲渡は、株券を交付しなければ効力が発生しませんが(会社法第128条)、当事者間では債権的効力が生じる(通説)と思います。なお、本件は非公開会社のケースであるため、現時点で株主からの請求がないので、株券を発行しておりません。
 この状況の中で、当事者間の特約で例えば「株券の引渡を受けることなく株式を取得する」旨合意し、会社も当該譲渡による名義書換えを認めた場合、この譲渡は確定的(物権的)に有効となるのでしょうか?ちなみに、譲渡後も譲受人は会社に対し株券の発行を請求することはありません。
A9
 売買契約を締結すれば、債権的に、株式の移転を請求することはできます。
 しかし、当事者間で「株券の引渡を受けることなく株式を取得する」と合意したとしても、当事者の意思表示により、株券発行会社の株式の移転要件を変更することはできませんので、株式の移転の効力は生じません。
 「会社が、名義書換を認めた場合」とありますが、その名義書換は、何条に基づく名義書換でしょうか。名義書換の要件を充たさない名義書換は無効です(また、いくら名義書換をしても、権利移転をしていない以上、意味はありません)。
 ということで、設問の事実を前提とすれば、株式の譲渡の効力を生ずることはありません。

 

指定買取人との売買契約の成立時期

ik さんから、譲渡制限株式の譲渡承認手続について、理論的なご質問を受けました。

「譲渡を承認しない場合の指定買取人との売買契約の成立時期につき,千問68頁では,買取通知を発した時点となっています。しかし,この時点では売買契約の要素である価格が決定していませんので,そのように読めるのかどうか。
民法的なご説明は,新版注釈(3)103頁で今井先生も述べておられますが,旧商法は売渡「請求」であったのであって形成権とよむ余地もあったのですが(価格は法定の手続に委ねるという特定で売買契約を成立させる形成権と解釈),買取「通知」という事実行為になった会社法で同じ説明を維持できるのかどうか疑問に思っています(通知とあるがこれは形成権という説明が一つ,当事者意思として譲渡不承認を条件とした売買の申込につき価格決定は法定の手続に委ねると考えるものが一つ。でも協議という道もあるため,価格は協議するという意思でも契約が成立するとなると契約法理はかなり混乱します。)。解除とみなし承認の作りからすれば,価格決定前に売買契約は成立しているとのお考えだとは伺われるんですが,ここはどうお考えなのかがまず第一点です。
第二点は,「発した時点」となってますが,指定買取人が株主あるいは株主ですらない取得者に通知するときに何を根拠に発信主義をとれるのですか(今井前掲101頁は到達主義にしてます)。」


まず、質問中に、「買取通知という事実行為になった」というご指摘がありますが、これは、違います。

「通知」の性質は、何を通知するかによって定まるものであり、意思表示を通知すれば意思表示ですし、事実を通知すれば観念の通知です。たとえば、民法97条1項は、意思表示を「通知」する場合の規定です。

そこで、142条1項の通知の法的性質が問題になるので、譲渡承認請求手続で指定買取人が買い取る場合の手続きを簡単におさらいすると
(1)請求者は、会社に対し、会社が承認をしないことを条件にして、株式会社又は指定買取人が譲渡制限株式を買取る旨を請求し(138条1号ハ、2号ハ)
(2)それに対し、指定買取人が請求者「指定買取人として指定を受けた旨」「買い取る対象株式数」を通知する
という手続きをとることになっています。

(1)の申込みは、直接には指定買取人に対して行われていませんが、指定買取人に対する申込みとなることを前提として請求しており、その意思表示の内容を、会社が、指定買取人に対して、通知して到達させますから、指定買取人との関係でも申込みの効力は生じます。

 また、(2)の通知内容は、「買い取る旨」という形式的な文言は含まれていませんが、「買い取る対象株式数」という文言が含まれている以上、自己が指定買取人として、対象株式数を買い取る旨の意思表示であると評価することができ、(1)の申込みに対する承諾と評価できる思います。

 とすると、この売買契約の成立時期は、民法526条1項により、承諾の意思表示である(2)の通知を発したとき(発信主義)になると思います。

 この法律構成で問題となるのは、意思表示の内容として価格が具体的に決定されていないということですが、「買い取る」意思表示には、「代金支払い」の意思が含まれており、しかも、具体的な代金の決定は法定手続きによって決定されるということを前提に当該意思表示は発せられています。
 通常の株式売買契約であっても、「代金は、株式引き渡し日の前日の終値」などと具体的な金額を定めずに契約が成立することはあるので、代金の決定方法が特定されていれば、買取の通知時に具体的金額が定まっていないことは、契約成立の妨げにはなりません。
 法定手続きの中で協議が含まれていますが、協議で成立しない場合の価格決定手続きがそれに続きますから、価格は必ず決まります。
 協議だけが価格決定方法ですと、協議が成立しない場合、売買契約の内容が特定されないため、そもそも協議前に売買契約が成立しているのかという疑問がわくのは、理解できますが、協議が成立しなくても、価格が決定するシステムである以上、そのような疑問は生じないと思います。

 また、142条4項は、譲渡等承認請求者が、3項の期間内に株券を供託しない場合には、指定買取人は、「売買契約を解除することができる」と規定し、価格未決定時点で売買契約が成立していることを前提としています。

 なお、(2)を形成権と捉えることも可能だとは思いますが、請求者による(1)買取の請求がなければ、そもそも指定買取人が買取をすることができないことからすると、指定化買取人の一方的な意思表示により売買契約が締結されると見るよりも、通常の契約と考えれば十分ではないでしょうか。

 以上の理由から、千問Q92では、指定買取人が通知を発した時点で、売買契約が成立するという結論を採っているのです。

(質問コーナー)
Q1
基準日と効力発生日を同日として株式の分割をすることは可能でしょうか。この場合、基準日を午後5時現在の株主名簿記載の株主としても問題ないでしょうか。
Posted by ジタン at 2006年07月19日 00:58
A1
基準日と効力発生日を同日として株式の分割をすることはできます。
基準日について、時間の指定をすることも可能であると思います。

Q2
先日、ある方から「自己株式の取得と配当はともに剰余金の分配という形で会社法では整理された、459条で剰余金の分配を取締役会が決定される旨を定款に定める場合には取締役の任期を1年以内とすることが必要となった。一方、この定款変更をせず、自己株式の取得を取締役会決議によって定める旨を定款に定める場合(165条2項)は、旧商法と同様に取締役任期を1年以内とする必要はない。これは平仄が合わないのではないか」という質問をされ、私には答える事が出来ませんでした。この件につきまして葉玉先生のご見解をお聞かせいただければ幸いです。
Posted by 十郎 at 2006年07月19日 06:38
A2
165条2項では、市場取引等により限定されます。
459条1項の定めを置けば、市場取引等に限らず、自己株式の取得枠そのものを取締役会で決議することができます。したがって、取締役の任期を1年としても、その分自由度が増しています。

Q3
株式譲渡制限のある会社の役会で「Aへの譲渡を承認する。但し●年●日までに譲渡が実施されなかったら、承認は失効する。」という決議をしたら有効でしょうか。効果は同じだろうと思います。
Posted by semi初学者 at 2006年07月19日 10:54
A3
微妙ですね。承認は失効すると言った場合、それは承認しなかったことになるのでしょうか。145条が適用されて、結果として承認をしたとみなされることになる場合が多いような気がします。

Q4
千問Q11で、会社の行為には、商法507条のように「商人」であることが適用の要件とされている規定も適用されるとありますが、それは会社法5条のみによって導かれる結論なのでしょうか。
私のような旧法脳では、商法4条1項のような規定を介在させないと、商行為→商人がつながらないと思ってしまうのですが。
Posted by ころ at 2006年07月19日 12:21
A4
私は、商法4条1項を介在させる見解が妥当だと思いますが、グループ内では、当然に商人であるという見解も有力なので、千問Q11のような答えになりましたm。

Q5
よく旧法の教科書で書いてある「業務担当取締役」とは、363条1項2号の取締役を指しているのでしょうか。神田先生の本を読むと、「選定業務執行取締役」と名づけているので、363条1項2号の取締役と「業務担当取締役」の関係について、頭が混乱しています。
Posted by 初心者ロー生 at 2006年07月19日 16:08
A5
業務担当取締役は、363条1項2号の取締役でしょうね。
ただ、旧法は、社外取締役の定義に関しては、それ以外の取締役も業務執行をすると業務担当取締役とみなしていましたが、会社法は、2条15号で「業務執行取締役」という概念を使っていますので、みなし規定はなくなりました。

Q6
役員の就任についての質問です。旧法では,Bが取締役に選任決議され,Bが就任承諾の意思表示をした場合,代表取締役Aが被選任者Bに対して申込みの意思表示をしないか,代表取締役Aが被選任者Bの承諾の意思表示の受領を拒絶したとしても,Bの就任は認められることになっていたと思います。会社法でもこの結論は維持されるのでしょうか。また,その理由はどのように説明することになるのでしょうか。
Posted by 猫太郎 at 2006年07月19日 17:06
A6
すいません。その旧法の取扱いについては、何か資料があるのでしょうか?

Q7
取締役会議事録の記載事項について質問をさせて下さい。千問Q504では規則101条3項6号に関する記載を「競業取引や利益相反取引に関する報告等法律上の義務に基づき述べられた意見又は発言があるときはその内容の概要」と表現されていますが、この6号のイ〜ホを1つずつ見ていくと、 会社法本文で「報告」をする場合と「意見」を述べる場合とが混在していますが、法365条2項等法で「報告と記載されている部分については「発言」を記載し、法367条4項等法で 「意見」と記載されている部分については「意見」を記載するとの対応関係があるのでしょうか? 監査役が議案に対して意見というよりコメントを残すことがあるので、これも議事録に残す必要があるのかな?と悩んでいます。
Posted by greenlemon at 2006年07月19日 22:03
A7
「意見」と「コメント」の違いがよく分からないのですが、そのコメントは「意見」なのではないでしょうか。議事録に残す方がよいと思います。

Q8
先生の商事法務の論文について質問があります。財源規制違反の自己株式の取得の場合、有効説では、譲渡人が責任を全部履行したときは、譲渡人は株式またはその代替物に代位するそうですが、この「代位」の意味が分かりません。
譲渡人が株式を取得する(株主になる)ということでしょうか。もしそうだとすると、株券の返還又は交付を受けないでも、議決権を行使し配当を受領することができるのでしょうか。代位である以上、会社の権利以上のものを取得することはできないようにも思えるのですが。
それとも、株券の交付を受ければ議決権を行使できるということでしょうか。このとき会社は募集株式等の発行手続に従わなければならないのでしょうか。株券不発行会社でも発行手続を要するのでしょうか。会社が手続をしない場合、譲渡人はどうしたらよいのでしょうか。
Posted by satirev at 2006年07月19日 23:23
A8
「代位」は、権利移転と捉えるのが通説です。「代位である以上、会社の権利以上のものを取得することはできない」という表現は間違いではありませんが、自己株式は、株式の権利内容自体に変化が生じているのではなく、会社自身が株主である場合に限り、権利の制限がされているに過ぎないので、譲渡人に株式が移転すれば、その権利の制限を受けないというだけのことです。
 それから、株券の交付は「譲渡」の要件ですが(128条1項)、代位の要件ではないので、株券の交付はなくても、譲渡人は、代位により株式を取得します。
 代位による権利移転は、株式会社の法律行為による自己株式の処分と異なりますから、募集手続きは不要です。法律上当然に代位します。
 ただし、譲渡人が、その取得を株式会社に対抗するためには、株主名簿の名義書換が必要ですが、この場合には、132条3に準じて株式会社が単独で書き換えるべきでしょう。
 なお、会社が取得した自己株式が既に処分して存在しなければ、その株式について代位の効力は生じませんから、この場合に「株式を発行する」ということはありません。

Q9
 株券発行会社の株式の譲渡は、株券を交付しなければ効力が発生しませんが(会社法第128条)、当事者間では債権的効力が生じる(通説)と思います。なお、本件は非公開会社のケースであるため、現時点で株主からの請求がないので、株券を発行しておりません。
 この状況の中で、当事者間の特約で例えば「株券の引渡を受けることなく株式を取得する」旨合意し、会社も当該譲渡による名義書換えを認めた場合、この譲渡は確定的(物権的)に有効となるのでしょうか?ちなみに、譲渡後も譲受人は会社に対し株券の発行を請求することはありません。
A9
 売買契約を締結すれば、債権的に、株式の移転を請求することはできます。
 しかし、当事者間で「株券の引渡を受けることなく株式を取得する」と合意したとしても、当事者の意思表示により、株券発行会社の株式の移転要件を変更することはできませんので、株式の移転の効力は生じません。
 「会社が、名義書換を認めた場合」とありますが、その名義書換は、何条に基づく名義書換でしょうか。名義書換の要件を充たさない名義書換は無効です(また、いくら名義書換をしても、権利移転をしていない以上、意味はありません)。
 ということで、設問の事実を前提とすれば、株式の譲渡の効力を生ずることはありません。

 

2006年7月18日 (火)

財源規制違反行為の効力

商事法務の1772号に「財源規制違反行為の効力」という論文を載せてもらいました。

会社法の解説や、千問や、会社法100問で、違法配当有効説を説明してきたのですが、知り合いの先生から
「なぜ有効と考えなければならないのか」
「無効と考えると、まずいのか」
ということについて、ご質問を頂くことが多いので、論文を書くことにしました。

内容は、金銭配当、現物配当、自己株式の取得のそれぞれについて、無効説と有効説の帰結を考えると、違法配当について具体的に妥当な結論を導くためには、無効説は、まずいのではないかという内容です。

神田先生や弥永先生が無効説で基本書を書かれていて、前田先生の第11版も無効説だったので、試験的には、無効説でもいいのではないかと思いますが、今回の論文を書いてみて、無効説には問題が多いように思いました。
 具体的な問題点を多々指摘しているので、無効説からの反論を期待しています。

 ちなみに、私は、立案時、計算の担当ではなかったので、担当者から最初に「違法配当は有効だ」と聞いたときは、「うそーっ?まじっ?」と思いました(笑)。
 でも、緻密に検討してみると、確かに有効説はよくできた考え方なので、有効説に寝返ることにし、寝返る過程で、いろいろ考えた結果が、今回の論文です。

 さて、本日は、他の仕事を抱えているので、いきなり質問コーナーに突入します。

(質問コーナー)
Q1
昨日のQ10に便乗して質問させてください。
7月5日に発行された前田先生の「会社法入門〔第11版〕」(有斐閣)の343頁に、「株主総会の招集の決定は、会社にとって重要な業務執行の決定であり、その招集は、業務執行であり、かつ会社代表である側面を有する。…取締役会設置会社では、株主総会の招集権者は代表取締役または代表執行役であり、その招集の決定権は取締役会にあると解すべきである。」との記述がありますが、立法者としては、このような考え方はとられていないということで良いのでしょうか。それとも前田先生と葉玉先生では、「業務執行」の意味するところが違うのでしょうか。
Posted by 権兵衛 at 2006年07月18日 17:56
A1
取締役会設置会社では、取締役会に総会の招集決定権があります(298条4項)。
総会の招集は、「取締役」が行うものです(296条3項)
代表取締役は、取締役として招集することができますが、平取締役も招集することはできます。
執行役は、たとえ代表執行役であったとしても招集することはできません。
ちなみに、私は、立法者ではありません。
業務執行と職務執行の違いは過去の記事や千問Q398を参照してください。

Q2
「株式を譲渡するには、取締役会の承認をようする」旨の株式の譲渡制限の規定がある株式会社で、取締役会において『本日より1年間、株式をAに譲渡する場合は、その譲渡を承認したものとみなす』という決議をした場合に、この決議は有効でしょうか?
Posted by 法務課1年目 at 2006年07月18日 19:03
A2
承認のみなしは、株式の内容として定款で規定する必要があります(107条2項1号ロ)。
したがって、当該決議に定めた事項が生じても、承認の効力を生じません。

Q3
公開会社であるA社が10月1日をもって、非公開会社となる場合についてです。A社は9月1日に「11月1日を申込日とする、総株主からの自己株取得の決議」を行いました。この際、157条により特定の事項を総株主に通知しなければいけませんが、158条で「公開会社は通知を公告に代えることが出来る」とされています。この場合、A社は通知をすべきでしょうか?公告で足りますでしょうか?また、定めた申込日によって、それは変わるのでしょうか。宜しく御願い致します。
Posted by 法務課1年目 at 2006年07月18日 19:03
A3
その時点で公開会社ですから、通知を、公告をもって代えることができます。

Q4
自社の従業員向けのストックオプションの付与として、取得条項付の新株予約権を無償で発行した会社が、その新株予約権を取得する際、取得と引換えに何らかの対価のようなものを交付する義務はありますでしょうか。
Posted by 外資系企業 at 2006年07月18日 19:22
A4
無対価と定めることはできます。

Q5
会社計算規則178条1項3号「最終事業年度の末日後に株式会社が吸収型再編受入行為に際して処分する自己株式・・・」とありますが、何故「処分した」ではなく「処分する」なのでしょうか?
吸収合併契約を締結済みの場合は、その合併で「処分する」ことになっている自己株式も含める、というような趣旨なのでしょうか?
Posted by みひろ at 2006年07月16日 21:22
A5
現在形と過去形の区別は、なかなか難しいのですが、その「処分する」は「処分した」場合を指します。

Q6
Q889では、特定完全子法人について、
「当該会社が発行済株式の全部を有している株式会社または全部の持分を有している持分会社(……)」
と説明されています。
施行規則136条を読んでみたところ、上記説明の後半の「全部の持分を有している持分会社」とは1号の「持分の全部を有する法人(株式会社を除く。) 」のことだと思いましたが、「法人(株式会社を除く。)」が「持分会社」になる理由が良く分かりませんでした。
外国会社等の場合は、特定完全子法人にならないのでしょうか。
Posted by Wロースクール2年生 at 2006年07月14日 16:08
A6
持分のある法人であれば、持分会社以外でも、特定完全子法人に該当します。千問は、「中間法人等持分のない法人は含まない」という意識が強くて、典型的な場合である持分会社と書いてしまいました。すいません。
外国会社も、持分のある法人であれば、該当します。

Q7
今年平成18年度の新司民事系会社法部分と旧司の会社法部分の解説お願いできないでしょうか。
Posted by 法科大院未修一年 at 2006年07月18日 07:48
A7
時間が取れないので、今のところは無理です。
そのうち100問を改訂することがあれば、含めようかなと思っていますが、まだ相当、先の話です。

財源規制違反行為の効力

商事法務の1772号に「財源規制違反行為の効力」という論文を載せてもらいました。

会社法の解説や、千問や、会社法100問で、違法配当有効説を説明してきたのですが、知り合いの先生から
「なぜ有効と考えなければならないのか」
「無効と考えると、まずいのか」
ということについて、ご質問を頂くことが多いので、論文を書くことにしました。

内容は、金銭配当、現物配当、自己株式の取得のそれぞれについて、無効説と有効説の帰結を考えると、違法配当について具体的に妥当な結論を導くためには、無効説は、まずいのではないかという内容です。

神田先生や弥永先生が無効説で基本書を書かれていて、前田先生の第11版も無効説だったので、試験的には、無効説でもいいのではないかと思いますが、今回の論文を書いてみて、無効説には問題が多いように思いました。
 具体的な問題点を多々指摘しているので、無効説からの反論を期待しています。

 ちなみに、私は、立案時、計算の担当ではなかったので、担当者から最初に「違法配当は有効だ」と聞いたときは、「うそーっ?まじっ?」と思いました(笑)。
 でも、緻密に検討してみると、確かに有効説はよくできた考え方なので、有効説に寝返ることにし、寝返る過程で、いろいろ考えた結果が、今回の論文です。

 さて、本日は、他の仕事を抱えているので、いきなり質問コーナーに突入します。

(質問コーナー)
Q1
昨日のQ10に便乗して質問させてください。
7月5日に発行された前田先生の「会社法入門〔第11版〕」(有斐閣)の343頁に、「株主総会の招集の決定は、会社にとって重要な業務執行の決定であり、その招集は、業務執行であり、かつ会社代表である側面を有する。…取締役会設置会社では、株主総会の招集権者は代表取締役または代表執行役であり、その招集の決定権は取締役会にあると解すべきである。」との記述がありますが、立法者としては、このような考え方はとられていないということで良いのでしょうか。それとも前田先生と葉玉先生では、「業務執行」の意味するところが違うのでしょうか。
Posted by 権兵衛 at 2006年07月18日 17:56
A1
取締役会設置会社では、取締役会に総会の招集決定権があります(298条4項)。
総会の招集は、「取締役」が行うものです(296条3項)
代表取締役は、取締役として招集することができますが、平取締役も招集することはできます。
執行役は、たとえ代表執行役であったとしても招集することはできません。
ちなみに、私は、立法者ではありません。
業務執行と職務執行の違いは過去の記事や千問Q398を参照してください。

Q2
「株式を譲渡するには、取締役会の承認をようする」旨の株式の譲渡制限の規定がある株式会社で、取締役会において『本日より1年間、株式をAに譲渡する場合は、その譲渡を承認したものとみなす』という決議をした場合に、この決議は有効でしょうか?
Posted by 法務課1年目 at 2006年07月18日 19:03
A2
承認のみなしは、株式の内容として定款で規定する必要があります(107条2項1号ロ)。
したがって、当該決議に定めた事項が生じても、承認の効力を生じません。

Q3
公開会社であるA社が10月1日をもって、非公開会社となる場合についてです。A社は9月1日に「11月1日を申込日とする、総株主からの自己株取得の決議」を行いました。この際、157条により特定の事項を総株主に通知しなければいけませんが、158条で「公開会社は通知を公告に代えることが出来る」とされています。この場合、A社は通知をすべきでしょうか?公告で足りますでしょうか?また、定めた申込日によって、それは変わるのでしょうか。宜しく御願い致します。
Posted by 法務課1年目 at 2006年07月18日 19:03
A3
その時点で公開会社ですから、通知を、公告をもって代えることができます。

Q4
自社の従業員向けのストックオプションの付与として、取得条項付の新株予約権を無償で発行した会社が、その新株予約権を取得する際、取得と引換えに何らかの対価のようなものを交付する義務はありますでしょうか。
Posted by 外資系企業 at 2006年07月18日 19:22
A4
無対価と定めることはできます。

Q5
会社計算規則178条1項3号「最終事業年度の末日後に株式会社が吸収型再編受入行為に際して処分する自己株式・・・」とありますが、何故「処分した」ではなく「処分する」なのでしょうか?
吸収合併契約を締結済みの場合は、その合併で「処分する」ことになっている自己株式も含める、というような趣旨なのでしょうか?
Posted by みひろ at 2006年07月16日 21:22
A5
現在形と過去形の区別は、なかなか難しいのですが、その「処分する」は「処分した」場合を指します。

Q6
Q889では、特定完全子法人について、
「当該会社が発行済株式の全部を有している株式会社または全部の持分を有している持分会社(……)」
と説明されています。
施行規則136条を読んでみたところ、上記説明の後半の「全部の持分を有している持分会社」とは1号の「持分の全部を有する法人(株式会社を除く。) 」のことだと思いましたが、「法人(株式会社を除く。)」が「持分会社」になる理由が良く分かりませんでした。
外国会社等の場合は、特定完全子法人にならないのでしょうか。
Posted by Wロースクール2年生 at 2006年07月14日 16:08
A6
持分のある法人であれば、持分会社以外でも、特定完全子法人に該当します。千問は、「中間法人等持分のない法人は含まない」という意識が強くて、典型的な場合である持分会社と書いてしまいました。すいません。
外国会社も、持分のある法人であれば、該当します。

Q7
今年平成18年度の新司民事系会社法部分と旧司の会社法部分の解説お願いできないでしょうか。
Posted by 法科大院未修一年 at 2006年07月18日 07:48
A7
時間が取れないので、今のところは無理です。
そのうち100問を改訂することがあれば、含めようかなと思っていますが、まだ相当、先の話です。

2006年7月17日 (月)

会社法における基本的制度

法学部生さんから,基本的な質問を受けました。

「会社法の制度の中で重要な制度をいくつか挙げるとしたら,葉玉先生でしたらどの制度を挙げられますか?また、制度という場合、法律で定められているものをいうのでしょうか?」

法学部生さんは,「制度」という言葉に振り回されている感じがしますが,あまり難しく考えるのはやめましょう。

制度というのは,条文のコンビネーションのことであり,そのコンビネーションに分かりやすい名前をつけているだけです。
所有と経営の分離や株主平等の原則なんていうのは,バレーボールで言えば,Aクイックとか,ブロードとか,そんな感じのものです。

そして,法律の制度は,関係者間の利益調整のための基本的ルール・原則なので,会社法に登場する人物をピックアップして,誰と誰との間に,どんな基本的ルールがあるのかを考えれば,うまく整理できます。

例えば,株式会社には,株主,取締役等の役員,株式会社,会社債権者という主要メンバーがいますが,制度は,その4者の関係ごとに違いますから,次のように分類して,整理すると分かりやすいでしょう。
なお,それぞれの制度の意味をここで説明すると大変なので,意味や内容は,このブログや基本書などで確認してください。

1 株主 vs 株主
  → 株主平等の原則

2 株主 vs 役員
  → 所有と経営の分離
  → 役員の第三者に対する責任

3 株主 vs 会社債権者
  → 間接有限責任
  → 資本原則

4 株主 vs 株式会社
  → 株主権(配当請求権・議決権・残余財産分配請求権・単独株主権・少数株主権)
  → 株式譲渡自由の原則
  → 反対株主の株式買取請求権

5 役員 vs 役員
  → 機関の分化(会社の意思決定機関・執行機関・監査機関)

6 役員 vs 株式会社
  → 委任関係と任務懈怠責任

7 役員 vs 会社債権者
  → 役員の第三者に対する責任

8 株式会社 vs 会社債権者
  → 資本原則
  → 債権者保護手続

(質問コーナー)
Q1
今度は分配可能額なんですが,計規186⑧はなぜ必要なのかです。
Posted by ik at 2006年07月14日 01:56
A1
すいません。本当は,不要です。次に改正すると思います。

Q2
自己株式の対価額を控除するのはなぜですか。
Posted by ik at 2006年07月14日 02:09
A2
自己株式の処分の対価が現物の場合には,決算を経るまで対価額が過大評価されている可能性があるので,それを控除し,自己株式の処分と取得を無限に繰り返すことができないようにしているのです。

Q3
どうして計規44は,資本準備金ではなく,その他資本剰余金なのでしょう?
A3
不足額の填補責任は,引受人間の平等を確保する制度なので,資本金や資本準備金にして拘束する必要はないからです。

Q4
462Ⅲの分配可能額を超える部分につき,裁判上の和解もできないのでしょうか(850Ⅳ)。代表訴訟につき平成13年12月改正前の裁判実務では,違法(旧商法266Ⅴ)でも和解してましたが,裁判所が分配可能額を超える部分に割り込むような和解案を出したら,「裁判官!それは違法です!」という話になるんでしょうか。
Posted by ik at 2006年07月14日 04:16
A5
違法配当責任について,代表訴訟で,分配可能額を超える部分を割り込むような和解はできません。総株主の同意によっても,免除できないので,仕方ありません。

Q5
7/14のA1で「募集事項の決定および募集株式の割当てに関しては、株主総会の決議事項とすることはできるが、取締役会から権限を奪うことはできない」旨ご回答を頂戴いたしましたが、すると、定款に株主総会の決議事項とすると定めたとしても、取締役会でも引き続き決議することは可能ということになるのでしょうか??
Posted by 悩める株式課員 at 2006年07月14日 09:42
A5
そのとおりです。それが嫌なら,非公開会社になるか,取締役会を廃止してください。

Q6
 会社法240条2項・3項について質問させていただきます。
 新株予約権の発行を公開会社が取締役会で決議した場合、割当日から2週間までに、株主に対し通知または公告をしなければならないと規定してあります。
 この通知または公告の対象の株主とは、いつの時点の株主になるのでしょうか。
Posted by どんまい。 at 2006年07月14日 13:20
A6
通知又は公告をするときに株主名簿に記載されている株主全員です。
また,通知か,公告かのどちらかをすれば足ります。

Q7
DESについての質問です。
法人税の改正で、会社法の現物出資の考えにあわせて、債務者側の仕訳でも債務額を時価評価し、増資額と債務の簿価との差額を債務免除益として認識することとなりました。
会社法では債権の弁済期が到来していれば検査役の調査は不要とのことですが、それは弁済期が到来しているものは券面額によって振り替えても評価上問題がないからだと思っていました。
しかし法人税では債権の回収可能性を問題としているようなので、会社の財務内容が悪化していれば、弁済期が到来している債権であっても額面の回収は不可能ですからやはり債務免除益はでると思いますが・・・。弁済期と債権(債務)の評価との関係がよくわかりませんご教示いただければと思います。
Posted by ma at 2006年07月14日 22:53
A7
検査役の調査が必要かどうかと,会計上,負債をどのように評価するかは無関係です。
基本的には,ikさんの答えを参考にしてください。

Q8
 会社法第324条第1項で、「その種類の株式の総株主」と規定されているのは、なぜでしょうか?同条第2項及び第3項では、「当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主」という規定の置き方がなされています。なぜ相違するのかが、その区別の理由がわからないのですが。
Posted by 内藤卓 at 2006年07月15日 16:46
A8
「その種類の株式の総株主」は,旧商法の直訳です。


Q9
会社法100問の65に関連して、質問なのですが、
登記による悪意擬制(908条1項)と表見代表取締役(354条)との関係の議論は、表見支配人の場合でも、同じように考えてよいのでしょうか。
Posted by N法科大学院生 at 2006年07月16日 13:47
A9
支配人も登記事項なので,同様に考えて良いと思います。ただし,表見支配人の場合には,支店自体が,その実質を備えていない場合にどうするかという問題も加わりますが。

Q10
株主総会の招集者に関してお伺いしたいことがあります。
従前の学説・判例等では、株主総会の招集は取締役会の意思決定に係る会社業務の執行として代表取締役が行わなければならないというのが原則的な考え方のように見受けられますが、千問の道標では「株主総会の招集は、会社の内部的な意思決定機関である株主総会の招集手続に関する行為であり、業務の執行には該当しない」とあります。また、条文上も代表取締役とはされていません。
会社法の解釈として、株主総会の招集者は代表取締役に限られないとの理解で正しいでしょうか。また、どのような経緯で上記の考え方が従前とは異なることとなったのでしょうか。
Posted by 巡礼者 at 2006年07月16日 20:14
A10
千問Q631。
 総会の招集は,業務執行の意義を明らかにする必要がなかった時代には,漫然と「業務執行」と捉えられていました。
 しかし,「社外取締役」の定義等で,業務の執行の意義を明らかにする必要が生じてからは,総会の招集は,業務執行とは区別して考えられるようになりました。
 実は平成14年改正当時から会社法と同様の整理をしていたのですが,旧商法は,明文上,はっきりしなかったので,従来の考え方が幅をきかせていたというだけです。

Q11
『口頭試問では、次の問いに対する皆さんの考えを説明してもらい、その上で議論をしてもらいます。
<問い>ある日、急ぎの重大案件を抱えた某部長は、部下のA君とB君に 下命することにした。その案件は、期限は翌朝まで、合格ラインは80点とした。
A君は、頭脳優秀な職員で、要領よく夕方五時までに仕上げて、 さっさとアフターファイブを楽しみに帰った。出来栄えは85点だった。
B君は頭脳はあまり優秀ではないが、まじめで努力家で、徹夜をして仕上げた。 出来栄えは90点だった。
さて、上司としてどちらに良い評価をつけるべきであろうか』
Posted by 法曹志望高校生 at 2006年07月15日 22:51
A11
既に諸先輩方が有益な答えを示していただいています。
私も,期限の翌朝において提出された仕事の出来映えがB君の方がよければ,その案件については,B君に良い評価をつけるべきだと思います。
 ただし,A君とB君の5点の差が,B君の残業代に見合うだけの経済的価値を生じない場合には,A君の方が評価が高くなるでしょう。

Q12
すみません、法文に「株式会社は〜できる。」とある場合の会社の意思決定機関について教えてください。
178条、197条4項、234条5項などの場合、取締役会設置会社のは、取締役会の決議によることとなっていますが、取締役会「非」設置会社の場合は、295条1項の株主総会が決するのですか?それとも、348条1項(取締役)もしくは、2項(取締役の過半数)で決するのですか?
見分け方はなんですか?
定款による変更は可能ですか?
Posted by 針路西北西 at 2006年07月17日 17:09
A12
非取締役会設置会社の業務執行の決定は,取締役が1名ならばその取締役が,取締役が複数ならば過半数で決するのが原則です。見分け方は,条文通りなので,特にないです。
定款による変更は,348条2項にあるとおり,可能です。すべて条文通りです。

Q13
株主代表訴訟に対して、会社が被告(取締役)側に訴訟参加するには849条2項で、監査役・監査委員の同意がなくてはならない、とされていますが、監査役・監査委員を設置しない会社(取締役のみの会社)においては、会社は何の条件も無く訴訟参加できるという解釈でよろしいのでしょうか?
A13
取締役のみの会社の場合,監査をする機関がありませんので,そのような機関の同意を求める余地がありません。
したがって,取締役が複数いる会社の場合,取締役の過半数で参加するかどうかを決し,取締役が一人の場合には,その取締役で決します。
ただし,株式会社が原告との間で和解をする場合には,利益相反取引(間接取引)になる場合がありうるので,そのような和解については,株主総会の承認(356条)が必要となると思います。

Q14
会社法で出題された択一問題が圧倒的に不足する現況で、択一のアウトプット訓練はどのようにすべきでしょうか?
先生の御眼鏡にかなう教材等がありましたらアドバイスいただけると幸いです。
Posted by いち受験生 at 2006年07月14日 18:05
A14
司法書士の商法の過去問がいいのではないでしょうか。
難しいですけど,条文のチェックには最適だと思います。

会社法における基本的制度

法学部生さんから,基本的な質問を受けました。

「会社法の制度の中で重要な制度をいくつか挙げるとしたら,葉玉先生でしたらどの制度を挙げられますか?また、制度という場合、法律で定められているものをいうのでしょうか?」

法学部生さんは,「制度」という言葉に振り回されている感じがしますが,あまり難しく考えるのはやめましょう。

制度というのは,条文のコンビネーションのことであり,そのコンビネーションに分かりやすい名前をつけているだけです。
所有と経営の分離や株主平等の原則なんていうのは,バレーボールで言えば,Aクイックとか,ブロードとか,そんな感じのものです。

そして,法律の制度は,関係者間の利益調整のための基本的ルール・原則なので,会社法に登場する人物をピックアップして,誰と誰との間に,どんな基本的ルールがあるのかを考えれば,うまく整理できます。

例えば,株式会社には,株主,取締役等の役員,株式会社,会社債権者という主要メンバーがいますが,制度は,その4者の関係ごとに違いますから,次のように分類して,整理すると分かりやすいでしょう。
なお,それぞれの制度の意味をここで説明すると大変なので,意味や内容は,このブログや基本書などで確認してください。

1 株主 vs 株主
  → 株主平等の原則

2 株主 vs 役員
  → 所有と経営の分離
  → 役員の第三者に対する責任

3 株主 vs 会社債権者
  → 間接有限責任
  → 資本原則

4 株主 vs 株式会社
  → 株主権(配当請求権・議決権・残余財産分配請求権・単独株主権・少数株主権)
  → 株式譲渡自由の原則
  → 反対株主の株式買取請求権

5 役員 vs 役員
  → 機関の分化(会社の意思決定機関・執行機関・監査機関)

6 役員 vs 株式会社
  → 委任関係と任務懈怠責任

7 役員 vs 会社債権者
  → 役員の第三者に対する責任

8 株式会社 vs 会社債権者
  → 資本原則
  → 債権者保護手続

(質問コーナー)
Q1
今度は分配可能額なんですが,計規186⑧はなぜ必要なのかです。
Posted by ik at 2006年07月14日 01:56
A1
すいません。本当は,不要です。次に改正すると思います。

Q2
自己株式の対価額を控除するのはなぜですか。
Posted by ik at 2006年07月14日 02:09
A2
自己株式の処分の対価が現物の場合には,決算を経るまで対価額が過大評価されている可能性があるので,それを控除し,自己株式の処分と取得を無限に繰り返すことができないようにしているのです。

Q3
どうして計規44は,資本準備金ではなく,その他資本剰余金なのでしょう?
A3
不足額の填補責任は,引受人間の平等を確保する制度なので,資本金や資本準備金にして拘束する必要はないからです。

Q4
462Ⅲの分配可能額を超える部分につき,裁判上の和解もできないのでしょうか(850Ⅳ)。代表訴訟につき平成13年12月改正前の裁判実務では,違法(旧商法266Ⅴ)でも和解してましたが,裁判所が分配可能額を超える部分に割り込むような和解案を出したら,「裁判官!それは違法です!」という話になるんでしょうか。
Posted by ik at 2006年07月14日 04:16
A5
違法配当責任について,代表訴訟で,分配可能額を超える部分を割り込むような和解はできません。総株主の同意によっても,免除できないので,仕方ありません。

Q5
7/14のA1で「募集事項の決定および募集株式の割当てに関しては、株主総会の決議事項とすることはできるが、取締役会から権限を奪うことはできない」旨ご回答を頂戴いたしましたが、すると、定款に株主総会の決議事項とすると定めたとしても、取締役会でも引き続き決議することは可能ということになるのでしょうか??
Posted by 悩める株式課員 at 2006年07月14日 09:42
A5
そのとおりです。それが嫌なら,非公開会社になるか,取締役会を廃止してください。

Q6
 会社法240条2項・3項について質問させていただきます。
 新株予約権の発行を公開会社が取締役会で決議した場合、割当日から2週間までに、株主に対し通知または公告をしなければならないと規定してあります。
 この通知または公告の対象の株主とは、いつの時点の株主になるのでしょうか。
Posted by どんまい。 at 2006年07月14日 13:20
A6
通知又は公告をするときに株主名簿に記載されている株主全員です。
また,通知か,公告かのどちらかをすれば足ります。

Q7
DESについての質問です。
法人税の改正で、会社法の現物出資の考えにあわせて、債務者側の仕訳でも債務額を時価評価し、増資額と債務の簿価との差額を債務免除益として認識することとなりました。
会社法では債権の弁済期が到来していれば検査役の調査は不要とのことですが、それは弁済期が到来しているものは券面額によって振り替えても評価上問題がないからだと思っていました。
しかし法人税では債権の回収可能性を問題としているようなので、会社の財務内容が悪化していれば、弁済期が到来している債権であっても額面の回収は不可能ですからやはり債務免除益はでると思いますが・・・。弁済期と債権(債務)の評価との関係がよくわかりませんご教示いただければと思います。
Posted by ma at 2006年07月14日 22:53
A7
検査役の調査が必要かどうかと,会計上,負債をどのように評価するかは無関係です。
基本的には,ikさんの答えを参考にしてください。

Q8
 会社法第324条第1項で、「その種類の株式の総株主」と規定されているのは、なぜでしょうか?同条第2項及び第3項では、「当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主」という規定の置き方がなされています。なぜ相違するのかが、その区別の理由がわからないのですが。
Posted by 内藤卓 at 2006年07月15日 16:46
A8
「その種類の株式の総株主」は,旧商法の直訳です。


Q9
会社法100問の65に関連して、質問なのですが、
登記による悪意擬制(908条1項)と表見代表取締役(354条)との関係の議論は、表見支配人の場合でも、同じように考えてよいのでしょうか。
Posted by N法科大学院生 at 2006年07月16日 13:47
A9
支配人も登記事項なので,同様に考えて良いと思います。ただし,表見支配人の場合には,支店自体が,その実質を備えていない場合にどうするかという問題も加わりますが。

Q10
株主総会の招集者に関してお伺いしたいことがあります。
従前の学説・判例等では、株主総会の招集は取締役会の意思決定に係る会社業務の執行として代表取締役が行わなければならないというのが原則的な考え方のように見受けられますが、千問の道標では「株主総会の招集は、会社の内部的な意思決定機関である株主総会の招集手続に関する行為であり、業務の執行には該当しない」とあります。また、条文上も代表取締役とはされていません。
会社法の解釈として、株主総会の招集者は代表取締役に限られないとの理解で正しいでしょうか。また、どのような経緯で上記の考え方が従前とは異なることとなったのでしょうか。
Posted by 巡礼者 at 2006年07月16日 20:14
A10
千問Q631。
 総会の招集は,業務執行の意義を明らかにする必要がなかった時代には,漫然と「業務執行」と捉えられていました。
 しかし,「社外取締役」の定義等で,業務の執行の意義を明らかにする必要が生じてからは,総会の招集は,業務執行とは区別して考えられるようになりました。
 実は平成14年改正当時から会社法と同様の整理をしていたのですが,旧商法は,明文上,はっきりしなかったので,従来の考え方が幅をきかせていたというだけです。

Q11
『口頭試問では、次の問いに対する皆さんの考えを説明してもらい、その上で議論をしてもらいます。
<問い>ある日、急ぎの重大案件を抱えた某部長は、部下のA君とB君に 下命することにした。その案件は、期限は翌朝まで、合格ラインは80点とした。
A君は、頭脳優秀な職員で、要領よく夕方五時までに仕上げて、 さっさとアフターファイブを楽しみに帰った。出来栄えは85点だった。
B君は頭脳はあまり優秀ではないが、まじめで努力家で、徹夜をして仕上げた。 出来栄えは90点だった。
さて、上司としてどちらに良い評価をつけるべきであろうか』
Posted by 法曹志望高校生 at 2006年07月15日 22:51
A11
既に諸先輩方が有益な答えを示していただいています。
私も,期限の翌朝において提出された仕事の出来映えがB君の方がよければ,その案件については,B君に良い評価をつけるべきだと思います。
 ただし,A君とB君の5点の差が,B君の残業代に見合うだけの経済的価値を生じない場合には,A君の方が評価が高くなるでしょう。

Q12
すみません、法文に「株式会社は〜できる。」とある場合の会社の意思決定機関について教えてください。
178条、197条4項、234条5項などの場合、取締役会設置会社のは、取締役会の決議によることとなっていますが、取締役会「非」設置会社の場合は、295条1項の株主総会が決するのですか?それとも、348条1項(取締役)もしくは、2項(取締役の過半数)で決するのですか?
見分け方はなんですか?
定款による変更は可能ですか?
Posted by 針路西北西 at 2006年07月17日 17:09
A12
非取締役会設置会社の業務執行の決定は,取締役が1名ならばその取締役が,取締役が複数ならば過半数で決するのが原則です。見分け方は,条文通りなので,特にないです。
定款による変更は,348条2項にあるとおり,可能です。すべて条文通りです。

Q13
株主代表訴訟に対して、会社が被告(取締役)側に訴訟参加するには849条2項で、監査役・監査委員の同意がなくてはならない、とされていますが、監査役・監査委員を設置しない会社(取締役のみの会社)においては、会社は何の条件も無く訴訟参加できるという解釈でよろしいのでしょうか?
A13
取締役のみの会社の場合,監査をする機関がありませんので,そのような機関の同意を求める余地がありません。
したがって,取締役が複数いる会社の場合,取締役の過半数で参加するかどうかを決し,取締役が一人の場合には,その取締役で決します。
ただし,株式会社が原告との間で和解をする場合には,利益相反取引(間接取引)になる場合がありうるので,そのような和解については,株主総会の承認(356条)が必要となると思います。

Q14
会社法で出題された択一問題が圧倒的に不足する現況で、択一のアウトプット訓練はどのようにすべきでしょうか?
先生の御眼鏡にかなう教材等がありましたらアドバイスいただけると幸いです。
Posted by いち受験生 at 2006年07月14日 18:05
A14
司法書士の商法の過去問がいいのではないでしょうか。
難しいですけど,条文のチェックには最適だと思います。

2006年7月14日 (金)

取締役としての権利義務を有する者

ここ数日、Wさんから、「取締役としての権利義務を有する者」についてのご質問をいただいています。

会社法346条は、役員が欠けた場合等には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有すると規定しています。

 この規定は、例えば、取締役会設置会社で、取締役が3名いるときに、一人の取締役が会社が嫌になって辞任したとしても、その辞任した取締役は、次の取締役が就任するまでは、取締役としての権利義務を有するというものであり、辞任等により会社の運営が停滞することがないようにするための制度です。

 この規定は、旧商法の規定を現代語化したものなのですが、「役員としての権利義務を有する」という表現は、何を意味しているのか、不明確な点がありますので、その点をもう少し詳しく分析してみましょう。

 ご承知のように、取締役は、株主総会の決議によって選任された上で、会社と委任契約を締結することにより就任し、取締役が辞任するというのは、委任契約を解除(民法651条1項)して、取締役としての地位を失うということを意味します。

ですから、辞任取締役が「取締役として権利義務を有する者」(面倒なので、以下、「権利義務者」といいます)になったとしても、当初の委任契約自体は、解除により将来に向かって消滅しているということはできるでしょう。

 Wさんが「旧法下では、権利義務者となった時点、つまり辞任や任期満了と同時に会社との委任契約は終了しており、法律の規定に基づいて権利義務者としての地位がある。」という指摘をされていますが、その解釈は、会社法でも同じです。

 しかし、その権利義務者は、会社法346条により、取締役としての権限を行使することができ、また、取締役としての会社法上の義務を負うというだけでなく、会社法330条の規定の適用も受けます。つまり、会社と権利義務者との間の法律関係は委任に関する規定に従うということです。この規定の適用がなければ、民法644条の善管注意義務も適用されないし、その他の受任者の義務規定も適用されなくなってしまいますから、会社法330条が適用されること自体は、Wさんも否定されないものと思います。

 なお、権利義務者について、会社法330条を適用する上で、若干、難しいのは、「受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない」という民法648条1項であり、会社と権利義務者との間の委任契約が完全になくなっているのならば、権利義務者は、タダ働きしなければならないことになるはずです。
 しかし、会社法346条が、なお取締役としての「権利」も有していると規定しているのは、辞任前に定めた報酬特約に基づく権利を有しているという意味も含意されていると解されていますので、民法648条も適用されると解すべきでしょう。

 私が、昨日の回答で「取締役としての権利義務を有する者は、会社との間に委任契約があることを前提としている」といったのは、これまで述べてきたように会社と権利義務者との間では、委任契約と同じ法律関係が形成されることが前提になっているという意味です。

 ただし、権利義務者と会社との間には、意思表示に基づく委任契約は存在しませんし(報酬特約はやや微妙ですが)、会社法346条の趣旨からすれば、新たな取締役が就任するまでは、権利義務者がその地位を辞することはできないと解すべきですから、権利義務者には、少なくとも民法651条による解除は認められないと解すべきです。

 以上を前提に、Wさんの質問である「権利義務者が破産手続きの開始決定を受けた場合」について考えます。

 この問題は、言い換えれば「権利義務者が、会社法330条により、委任の終了事由を定めた民法653条の適用を受けるか?」という問題ですが、Wさんは、「退任の登記をすることができると考える根拠が会社法330条というのは少し弱い気がするのです。」とおっしゃっていて、これを否定する見解を取っているようです。

 Wさんの論理を推測すると
1 権利義務者が死亡すれば、その地位が相続されるわけではないから、単に会社法346条が適用されなくなるだけであり、わざわざ民法653条1号を適用する必要はない。
2 権利義務者が後見開始の審判を受けた場合には、会社法331条2号の欠格事由にあたり、権利義務者は、その権利義務を失うことになるから、民法653条2号を適用する必要もない。
3 権利義務者と会社との間には、委任契約はなく、民法651条の解除の規定も適用されないのだから、委任の終了事由を定めた民法653条も適用されない。
4 また、破産手続きの開始決定が取締役の欠格事由から外された趣旨を考えても、権利義務者については、民法653条は適用されるべきではない。
ということになるように思います。

 しかし、まず、4の価値判断については、取締役が破産した場合には、会社法330条・民法653条が適用されて、委任契約が終了し、取締役としての地位を失い、しかも、その場合には、辞任でも任期満了でもないので、権利義務者になれないと解されているので、権利義務者になった後に破産した場合には、民法653条が適用されないとするのでは、取締役との平仄が取れません。

 また、民法653条は、委任の当事者に、委任契約後に当事者相互の信頼を基礎とする委任関係を継続することができない事情等が生じた場合に、一旦、当事者の保護のために、その法律関係を終了させる趣旨の規定です。ですから、当事者が、委任契約で特約を設けて終了事由を変更することも可能ですし、終了事由が生じた後に、再度、委任契約を締結することも可能です。
 これに対し、取締役の欠格事由は、当事者双方がどんなに望んでも、取締役となることができない事由を定めたものであり、民法653条とは趣旨が異なります。
 
 以上のような民法653条の趣旨を考えれば、同条の適用については、会社と権利義務者との間に現に「委任契約」が存在するかどうかは重要ではなく、受任者に、653条に掲げる事由が生じた場合に、委任関係を継続させるのが妥当かどうかという点が重要であり、その点からすれば、権利義務者について、民法653条の適用を排除する理由はないと思います。

 また、取締役が破産手続きの開始決定を受けたときに、会社法346条が適用されないことからすれば、権利義務者について民法653条が適用され、その地位が喪失したとしても、会社法346条の趣旨を没却することにならないでしょう。

 ということで、私は、権利義務者について、破産手続きの開始決定があった場合には、その時点でその地位を失い、結果的には、破産宣告を欠格事由としていた旧法の取扱いと同じになると考えています。
 なお、この問題は、登記にからむマターであり、もしかしたら、関係者と調整しなければならないかもしれませんので、その節は、また、この論点について記事を書きます。

(質問コーナー)
Q1
7/12のA8でご回答いただきました「株主総会は,定款で定めた事項を決議することができますから(295条2項),取締役会の決議事項とされていることでも,定款で定めることにより株主総会の決議事項とすることはできます。“なお,その場合に取締役会の決議ができなくなるのかどうかは,各規定で,定款で別段の定めができるかどうかによって決まります。”」のなお書きの部分は、具体的にどういうケースがありますでしょうか?
Posted by 悩める株式課員 at 2006年07月13日 12:00
A1
たとえば、362条2項の権限は、定款で別段の定めをすることができるという趣旨の規定がないので、取締役会から奪うことはできません。
 これに対し、139条但し書きのように、「定款に別段の定めがある場合は、この限りでない」等という定めがあれば、取締役会の権限を奪うことは可能です。
 ご質問の募集事項の決定および募集株式の割当てに関しては、株主総会の決議事項とすることはできますが、取締役会から権限を奪うことはできません。

Q2
司試平成16年第2問の関係で質問です(100問に解答例がありません・・・)。
本問で、Cが354条を根拠にA株式会社に手形金を請求する場合、
「表見代理の規定にいう『第三者』は、手形行為の直接の相手方に限り、第三取得者を含まない」
との判例の立場を前提とすれば、Bが悪意の場合には、Cは第三者でないとして請求は認められないことになるのでしょうか。
一般に「」内については、民法110条の適用の可否という文脈で議論されていると思うのですが、354条についても同様な扱いとなるのでしょうか。
Posted by 去年商法G at 2006年07月13日 15:11
A2
 表見代表取締役における「第三者」が直接の相手方に限るかどうかということですね。
 まず、前提問題として、354条の「善意」は、無重過失も要求されていると解するのが通説です。
 「善意」というのは、知らなければいいので、転得者であったとしても、その要件を満たすことができるのですが、「重過失」を要求するとなると、「第三者」が、どのような事情のもとで、代表取締役であると誤信したのかが問題となります。
 このような事情は、A株式会社と直接手形取引をした相手方との関係でのみ問題となりますから、354条の「第三者」に転得者を含むと考えることは困難です。
 ですから、354条についても、民法110条と同様、基本的には、A株式会社の直接の相手方のみを保護する規定であると考えるべきでしょう。

Q3
 会社が株主から株式を買い取ることに備えて、事前にその買取価格(ex昔の額面50円)を会社側で(定款等で)決めておくことはできるのでしょうか?
 取得条項付株式もしくは取得請求権付株式であれば、引き換えに「1株につき金50円」とできると考えますが、それ以外の方法が可能であればご教授いただきたいです。
Posted by かつわ at 2006年07月13日 15:16
A3
会社と株主との間で契約をすることは可能ですが、定款その他の内規で定めることにより、契約をしていない株主を拘束することはできません。

Q4
合名会社について質問させてください。
① 「退社員の持分は払戻をしない」という定款の規定は有効でしょうか?
② ①がダメならば、払戻しの額を出資額とする旨の定めは可能ですか?
Posted by yo at 2006年07月13日 15:39
A4
「退社員の持分は払戻をしない」という定めはできませんが、退社員の持分相当分を算定する方法を定款で定めることはできますので、工夫してください。
 また「払戻しの額を出資額とする旨の定め」は、退社員の持分相当分を算定する方法としてやれそうですが、もう少し工夫しないと、社員全員が退社した場合に、うまくいかないような気がします。
千問Q807を参照してください。

Q5
 会社法370条で、取締役会の決議の省略はできますが、これには規制はないのでしょうか。
A5
 特に規制はありません。

Q6
 会社法370条で言うところの「取締役会決議の省略」については、"千問"の記載によると決議事項についての制限はなく、議事録への出席取締役による記名押印も不要となっています。
 しかし、仮に「代表取締役の選定」決議を当該方法にて行った場合、議事録への押印がどこにも無いことから代表取締役の変更登記が受理されない可能性があるのではないでしょうか?
Posted by 法と実務の間で苦しむ社会人 at 2006年07月13日 17:57
A7
議事録への署名がなくても、代表取締役の選定の決議はあるものとみなされます。
ただ、議事録への署名がない場合には、代表取締役の就任を証する書面にはなりません。

Q8
葉玉先生、こんばんは。証券会社の調査部門で働いているものです。株主優待と株主平等原則に関し一つ質問がございます。最近、保有年数に応じ株主優待の内容を変える(保有年数が長いほど優待を厚くする)企業が出てきています。個人的には個人株主に対する長期保有へのインセンティブとして悪い事ではないと思いますが、保有株数ではなく保有年数で差をつけると株主平等原則に反するとも解釈できそうなのですが、先生のご見解を教えていただければ幸いです。
Posted by 十郎 at 2006年07月12日 23:12
A8
実務に影響が大きそうな話なので、あまり話したくないのですが、場合によっては、株主平等原則に反することもあるでしょうね。

Q9
旧商法上では、設立後・組織変更後の役員の任期は1年内の最終の決算期に係る定時総会終結時まで伸長可能でした。整備法95条により、この任期は、会社法施行後も引続き効力を有しますが、任期満了前に定款変更により任期を伸長すれば、既存の役員は伸長した任期が適用されるのでしょうか?
A9
任期満了前ならば、任期は伸張すると思います。
Q10
Q9と関連して、既に従前の任期が満了しており、権利義務状態の役員である場合に、定款変更により任期を伸長した場合、権利義務が解消され伸長任期が適用されるますでしょうか?
Posted by ワディ at 2006年07月13日 09:02
A10
任期が終了している以上、終了後に「延長」されることはないと思います。

Q11
取締役会廃止会社における株主総会決議事項は、ほぼ一切の事項となり(会社法295条1・2項)ます。この場合、会社法上で「取締役会」の決議事項となっているもの、例えば362条4項各号に定める事項は、定款で別段の定めがなければ、株主総会ではなく、取締役の決定(取締役の過半数の一致)により決定することになるのでしょうか?
また、同法348条3項1号・2号と362条4項3号・4号が内容的にかぶっている点はどう解釈すればよろしいのでしょうか?
Posted by よっち at 2006年07月13日 12:44
A11
株主総会と取締役の両方が決定権を有します。
ただし、株主総会と反する決定を取締役が行うことは、忠実義務に違反することが多いでしょう。

Q12
会社法の条文を読む上で念頭に置くべき「監査役設置会社とそうでない会社」による規律の違いの、注意点、ポイント、キーワード等がありましたら助言していただきたく、よろしくお願いいたします。
Posted by 必勝 at 2006年07月13日 13:03
A12
質問が漠然としているので、うまくお答えできないかもしれませんが・・・
 普通の監査役、会計監査限定監査役、会計監査人設置会社の監査役は、それぞれ権限が違うので、注意してください。
 特に監査役設置会社と言うのは、通常は、会計監査限定監査役の会社は含まれません。
 千問Q556からQ563まで、および百問のQ78を参照してください。


追伸
某法科大学院生さん、励ましありがとうございます。
会社法100問は、中身が詰まっているので、要領よく勉強してください。

取締役としての権利義務を有する者

ここ数日、Wさんから、「取締役としての権利義務を有する者」についてのご質問をいただいています。

会社法346条は、役員が欠けた場合等には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有すると規定しています。

 この規定は、例えば、取締役会設置会社で、取締役が3名いるときに、一人の取締役が会社が嫌になって辞任したとしても、その辞任した取締役は、次の取締役が就任するまでは、取締役としての権利義務を有するというものであり、辞任等により会社の運営が停滞することがないようにするための制度です。

 この規定は、旧商法の規定を現代語化したものなのですが、「役員としての権利義務を有する」という表現は、何を意味しているのか、不明確な点がありますので、その点をもう少し詳しく分析してみましょう。

 ご承知のように、取締役は、株主総会の決議によって選任された上で、会社と委任契約を締結することにより就任し、取締役が辞任するというのは、委任契約を解除(民法651条1項)して、取締役としての地位を失うということを意味します。

ですから、辞任取締役が「取締役として権利義務を有する者」(面倒なので、以下、「権利義務者」といいます)になったとしても、当初の委任契約自体は、解除により将来に向かって消滅しているということはできるでしょう。

 Wさんが「旧法下では、権利義務者となった時点、つまり辞任や任期満了と同時に会社との委任契約は終了しており、法律の規定に基づいて権利義務者としての地位がある。」という指摘をされていますが、その解釈は、会社法でも同じです。

 しかし、その権利義務者は、会社法346条により、取締役としての権限を行使することができ、また、取締役としての会社法上の義務を負うというだけでなく、会社法330条の規定の適用も受けます。つまり、会社と権利義務者との間の法律関係は委任に関する規定に従うということです。この規定の適用がなければ、民法644条の善管注意義務も適用されないし、その他の受任者の義務規定も適用されなくなってしまいますから、会社法330条が適用されること自体は、Wさんも否定されないものと思います。

 なお、権利義務者について、会社法330条を適用する上で、若干、難しいのは、「受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない」という民法648条1項であり、会社と権利義務者との間の委任契約が完全になくなっているのならば、権利義務者は、タダ働きしなければならないことになるはずです。
 しかし、会社法346条が、なお取締役としての「権利」も有していると規定しているのは、辞任前に定めた報酬特約に基づく権利を有しているという意味も含意されていると解されていますので、民法648条も適用されると解すべきでしょう。

 私が、昨日の回答で「取締役としての権利義務を有する者は、会社との間に委任契約があることを前提としている」といったのは、これまで述べてきたように会社と権利義務者との間では、委任契約と同じ法律関係が形成されることが前提になっているという意味です。

 ただし、権利義務者と会社との間には、意思表示に基づく委任契約は存在しませんし(報酬特約はやや微妙ですが)、会社法346条の趣旨からすれば、新たな取締役が就任するまでは、権利義務者がその地位を辞することはできないと解すべきですから、権利義務者には、少なくとも民法651条による解除は認められないと解すべきです。

 以上を前提に、Wさんの質問である「権利義務者が破産手続きの開始決定を受けた場合」について考えます。

 この問題は、言い換えれば「権利義務者が、会社法330条により、委任の終了事由を定めた民法653条の適用を受けるか?」という問題ですが、Wさんは、「退任の登記をすることができると考える根拠が会社法330条というのは少し弱い気がするのです。」とおっしゃっていて、これを否定する見解を取っているようです。

 Wさんの論理を推測すると
1 権利義務者が死亡すれば、その地位が相続されるわけではないから、単に会社法346条が適用されなくなるだけであり、わざわざ民法653条1号を適用する必要はない。
2 権利義務者が後見開始の審判を受けた場合には、会社法331条2号の欠格事由にあたり、権利義務者は、その権利義務を失うことになるから、民法653条2号を適用する必要もない。
3 権利義務者と会社との間には、委任契約はなく、民法651条の解除の規定も適用されないのだから、委任の終了事由を定めた民法653条も適用されない。
4 また、破産手続きの開始決定が取締役の欠格事由から外された趣旨を考えても、権利義務者については、民法653条は適用されるべきではない。
ということになるように思います。

 しかし、まず、4の価値判断については、取締役が破産した場合には、会社法330条・民法653条が適用されて、委任契約が終了し、取締役としての地位を失い、しかも、その場合には、辞任でも任期満了でもないので、権利義務者になれないと解されているので、権利義務者になった後に破産した場合には、民法653条が適用されないとするのでは、取締役との平仄が取れません。

 また、民法653条は、委任の当事者に、委任契約後に当事者相互の信頼を基礎とする委任関係を継続することができない事情等が生じた場合に、一旦、当事者の保護のために、その法律関係を終了させる趣旨の規定です。ですから、当事者が、委任契約で特約を設けて終了事由を変更することも可能ですし、終了事由が生じた後に、再度、委任契約を締結することも可能です。
 これに対し、取締役の欠格事由は、当事者双方がどんなに望んでも、取締役となることができない事由を定めたものであり、民法653条とは趣旨が異なります。
 
 以上のような民法653条の趣旨を考えれば、同条の適用については、会社と権利義務者との間に現に「委任契約」が存在するかどうかは重要ではなく、受任者に、653条に掲げる事由が生じた場合に、委任関係を継続させるのが妥当かどうかという点が重要であり、その点からすれば、権利義務者について、民法653条の適用を排除する理由はないと思います。

 また、取締役が破産手続きの開始決定を受けたときに、会社法346条が適用されないことからすれば、権利義務者について民法653条が適用され、その地位が喪失したとしても、会社法346条の趣旨を没却することにならないでしょう。

 ということで、私は、権利義務者について、破産手続きの開始決定があった場合には、その時点でその地位を失い、結果的には、破産宣告を欠格事由としていた旧法の取扱いと同じになると考えています。
 なお、この問題は、登記にからむマターであり、もしかしたら、関係者と調整しなければならないかもしれませんので、その節は、また、この論点について記事を書きます。

(質問コーナー)
Q1
7/12のA8でご回答いただきました「株主総会は,定款で定めた事項を決議することができますから(295条2項),取締役会の決議事項とされていることでも,定款で定めることにより株主総会の決議事項とすることはできます。“なお,その場合に取締役会の決議ができなくなるのかどうかは,各規定で,定款で別段の定めができるかどうかによって決まります。”」のなお書きの部分は、具体的にどういうケースがありますでしょうか?
Posted by 悩める株式課員 at 2006年07月13日 12:00
A1
たとえば、362条2項の権限は、定款で別段の定めをすることができるという趣旨の規定がないので、取締役会から奪うことはできません。
 これに対し、139条但し書きのように、「定款に別段の定めがある場合は、この限りでない」等という定めがあれば、取締役会の権限を奪うことは可能です。
 ご質問の募集事項の決定および募集株式の割当てに関しては、株主総会の決議事項とすることはできますが、取締役会から権限を奪うことはできません。

Q2
司試平成16年第2問の関係で質問です(100問に解答例がありません・・・)。
本問で、Cが354条を根拠にA株式会社に手形金を請求する場合、
「表見代理の規定にいう『第三者』は、手形行為の直接の相手方に限り、第三取得者を含まない」
との判例の立場を前提とすれば、Bが悪意の場合には、Cは第三者でないとして請求は認められないことになるのでしょうか。
一般に「」内については、民法110条の適用の可否という文脈で議論されていると思うのですが、354条についても同様な扱いとなるのでしょうか。
Posted by 去年商法G at 2006年07月13日 15:11
A2
 表見代表取締役における「第三者」が直接の相手方に限るかどうかということですね。
 まず、前提問題として、354条の「善意」は、無重過失も要求されていると解するのが通説です。
 「善意」というのは、知らなければいいので、転得者であったとしても、その要件を満たすことができるのですが、「重過失」を要求するとなると、「第三者」が、どのような事情のもとで、代表取締役であると誤信したのかが問題となります。
 このような事情は、A株式会社と直接手形取引をした相手方との関係でのみ問題となりますから、354条の「第三者」に転得者を含むと考えることは困難です。
 ですから、354条についても、民法110条と同様、基本的には、A株式会社の直接の相手方のみを保護する規定であると考えるべきでしょう。

Q3
 会社が株主から株式を買い取ることに備えて、事前にその買取価格(ex昔の額面50円)を会社側で(定款等で)決めておくことはできるのでしょうか?
 取得条項付株式もしくは取得請求権付株式であれば、引き換えに「1株につき金50円」とできると考えますが、それ以外の方法が可能であればご教授いただきたいです。
Posted by かつわ at 2006年07月13日 15:16
A3
会社と株主との間で契約をすることは可能ですが、定款その他の内規で定めることにより、契約をしていない株主を拘束することはできません。

Q4
合名会社について質問させてください。
① 「退社員の持分は払戻をしない」という定款の規定は有効でしょうか?
② ①がダメならば、払戻しの額を出資額とする旨の定めは可能ですか?
Posted by yo at 2006年07月13日 15:39
A4
「退社員の持分は払戻をしない」という定めはできませんが、退社員の持分相当分を算定する方法を定款で定めることはできますので、工夫してください。
 また「払戻しの額を出資額とする旨の定め」は、退社員の持分相当分を算定する方法としてやれそうですが、もう少し工夫しないと、社員全員が退社した場合に、うまくいかないような気がします。
千問Q807を参照してください。

Q5
 会社法370条で、取締役会の決議の省略はできますが、これには規制はないのでしょうか。
A5
 特に規制はありません。

Q6
 会社法370条で言うところの「取締役会決議の省略」については、"千問"の記載によると決議事項についての制限はなく、議事録への出席取締役による記名押印も不要となっています。
 しかし、仮に「代表取締役の選定」決議を当該方法にて行った場合、議事録への押印がどこにも無いことから代表取締役の変更登記が受理されない可能性があるのではないでしょうか?
Posted by 法と実務の間で苦しむ社会人 at 2006年07月13日 17:57
A7
議事録への署名がなくても、代表取締役の選定の決議はあるものとみなされます。
ただ、議事録への署名がない場合には、代表取締役の就任を証する書面にはなりません。

Q8
葉玉先生、こんばんは。証券会社の調査部門で働いているものです。株主優待と株主平等原則に関し一つ質問がございます。最近、保有年数に応じ株主優待の内容を変える(保有年数が長いほど優待を厚くする)企業が出てきています。個人的には個人株主に対する長期保有へのインセンティブとして悪い事ではないと思いますが、保有株数ではなく保有年数で差をつけると株主平等原則に反するとも解釈できそうなのですが、先生のご見解を教えていただければ幸いです。
Posted by 十郎 at 2006年07月12日 23:12
A8
実務に影響が大きそうな話なので、あまり話したくないのですが、場合によっては、株主平等原則に反することもあるでしょうね。

Q9
旧商法上では、設立後・組織変更後の役員の任期は1年内の最終の決算期に係る定時総会終結時まで伸長可能でした。整備法95条により、この任期は、会社法施行後も引続き効力を有しますが、任期満了前に定款変更により任期を伸長すれば、既存の役員は伸長した任期が適用されるのでしょうか?
A9
任期満了前ならば、任期は伸張すると思います。
Q10
Q9と関連して、既に従前の任期が満了しており、権利義務状態の役員である場合に、定款変更により任期を伸長した場合、権利義務が解消され伸長任期が適用されるますでしょうか?
Posted by ワディ at 2006年07月13日 09:02
A10
任期が終了している以上、終了後に「延長」されることはないと思います。

Q11
取締役会廃止会社における株主総会決議事項は、ほぼ一切の事項となり(会社法295条1・2項)ます。この場合、会社法上で「取締役会」の決議事項となっているもの、例えば362条4項各号に定める事項は、定款で別段の定めがなければ、株主総会ではなく、取締役の決定(取締役の過半数の一致)により決定することになるのでしょうか?
また、同法348条3項1号・2号と362条4項3号・4号が内容的にかぶっている点はどう解釈すればよろしいのでしょうか?
Posted by よっち at 2006年07月13日 12:44
A11
株主総会と取締役の両方が決定権を有します。
ただし、株主総会と反する決定を取締役が行うことは、忠実義務に違反することが多いでしょう。

Q12
会社法の条文を読む上で念頭に置くべき「監査役設置会社とそうでない会社」による規律の違いの、注意点、ポイント、キーワード等がありましたら助言していただきたく、よろしくお願いいたします。
Posted by 必勝 at 2006年07月13日 13:03
A12
質問が漠然としているので、うまくお答えできないかもしれませんが・・・
 普通の監査役、会計監査限定監査役、会計監査人設置会社の監査役は、それぞれ権限が違うので、注意してください。
 特に監査役設置会社と言うのは、通常は、会計監査限定監査役の会社は含まれません。
 千問Q556からQ563まで、および百問のQ78を参照してください。


追伸
某法科大学院生さん、励ましありがとうございます。
会社法100問は、中身が詰まっているので、要領よく勉強してください。

2006年7月12日 (水)

司法試験という名のドラマ

 論文試験受験者は,こんなブログなんか見ずに勉強に没頭しているかなあとも思いますが,頭休めに見ている人もいるかもしれないので,論文試験受験者に向けてメッセージを送ります。

 人間は,締め切りが近づくと,
「時間がない。どうしよう・・・」
と焦ります。
 論文試験の受験生は,今頃,
「あと3日間しかない。どうしよう・・・」
と焦っていることでしょう。
 そして,論文試験が始まると,試験時間中に
「げっ,あと30分しかない。どうしよう・・・」
と焦ることになります。

 1年前から「あと30分しかない」という気持ちで勉強を続けてきた人は,既に合格ラインを遙かに超える実力者になっていると思いますが,
「人は,締め切りに間に合わない時になって初めて,締め切りを意識する」
という「夏休みの宿題理論」がある以上,ほとんどの受験生が,この時期に焦るのは,やむをえません。

 私は,中学時代から大学時代まで,演劇をやっていたせいか,試験前の「焦り」を,ほど良い緊張感に変えることができたように思います。

 いい芝居をするためには,数か月にわたって厳しい練習をしなければいけません。
 しかし,どんなに練習をしても,本番で失敗すれば,観客を感動させることができません。
 十分な練習と,本番における集中力が必要であるという点で,演劇と試験は,共通しています。

 そして,演劇と司法試験が,何より似ているのは,台本を丸暗記して,そのまま棒読みしても,観客は感動してくれないことです。

 演劇は,役者と観客がいて初めて成立する生き物であり,10回講演をすれば,1回ごとに笑いのポイント・泣きのポイントが変わります。

 いい役者は,舞台に立ち,観客の視線と息吹を読みながら,間を変え,声音を変え,その「場」に最もふさわしい言葉を紡ぎ出します。
 もちろん,その言葉は,予め台本に書かれたセリフではありますが,役者は,練習の中で,そのセリフを自分の身体の中に染みこませ,舞台上では,生きた言葉として,共演者と観客に語りかけているのです。

 セリフが身体に染みついていれば,途中で,共演者がセリフを変えても,スムーズにアドリブでつなぎ,ドラマは破綻することがありません。
 笑い上戸の観客がいるときは,大いに笑わせ,観客が中だるみしているなと思うときには,客席の中に飛び込んでいって,大声でセリフを叫ぶ。
 役者がその「場」にふさわしい言葉を語れば語るほど,お客さんは,芝居の中に引き込まれ,舞台から目を離すことができなくなります。

 論文試験では,試験委員が観客です。
 あなたは,法律というセリフを身体に染みこませ,1科目2時間という上演時間の中で,観客に語りかけます。
 あなたが,観客の心を読み,自分の心を込めてセリフを語れば,観客は必ず心を動かします。
 もしかしたら,準備不足で,セリフの入りが悪い人がいるかもしれませんが(笑),そんな人は,より一層,観客の心に注意を払い,アドリブを織り交ぜて,自分自身の言葉で熱く語りかけるしかありません。

 いずれにせよ,本番まで,あと3日。
 ドキドキするのは仕方がありません。
 でも,日曜と月曜は,「法曹になりたい」というあなたの気持ちを伝えることができる,一年に一度の貴重な舞台です。
 試験という舞台では,あなたは,様々な難事件を次々に解決していくスーパーロイヤーを演じることになります。
 難事件に悩み苦しみながらも,決して逃げずに,自分の言葉で真剣に,解決の道筋を示す姿を見せることができれば,試験委員は涙を流しながら採点してくれるでしょう(笑)。
 一世一代の名演技を期待しています。

(質問コーナー)
Q1
456条で,455条2項後段の規定の例により計算する場合,計算規則182条の「行使期限日」はどの時点と読むのでしょうか。私は効力発生日かなと思っています。金銭分配請求権を与えるとは限らないので,行使期限日のままでは読めないかなと思っております。
Posted by ik at 2006年07月11日 02:37
A1
「例により」という文言のため,明確でないのは申し訳ありません。
456条の場合は,「効力発生日の前日」と解釈するのが妥当だと思います。効力発生日の午前0時に効力が発生するので,その前日を基準にする必要があるからです。

Q2
Q4の権利義務取締役に関してですが、葉玉先生のご確認のとおり、「取締役が辞任したものの、欠員が生じていたので、なお取締役としての権利義務を有する者となった。その後、破産手続の開始決定がされた。」という事案です。
この場合の処理についてご教授ください。よろしくお願いいたします。
Posted by W at 2006年07月11日 07:49
A2
取締役としての権利義務を有する者については,なかなか難しい問題が山積みなのですが,会社との間に委任契約があることを前提としているものと思います。したがって,取締役と同様,破産手続の開始決定により委任契約が終了すれば,取締役としての権利義務を有する者としての地位を失うと解するべきでしょう。

Q3
基準日の公告(会社法第124条)について
商法では株券を発行していない会社については228条の2で、公告に代えて通知すればよいとの記載がありましたが、会社法ではこの文言がなくなっています。
基準日の公告に代えてすべての株主に通知すれば問題はないのでしょうか?
当社は、非公開であり、株券を発行していません。
Posted by あ!っと法無 at 2006年07月11日 09:36
A3
株券不発行会社について,基準日公告の代わりに通知でよいという制度はなくなりました。もっとも,非公開の株券不発行会社の場合,基準日を設定する必要自体少ないと思いますが。

Q4
参考書類等の修正について、追加質問です。
修正後の周知方法を通知できる事項が、参考書類、事業報告、計算書類、連結計算書類に限定され、狭義の招集通知、監査役会及び会計監査人の監査報告(単体・連結)が対象外にされた趣旨は何でしょうか
A4
 対象外にしているというより,その点について法律上の委任がないので,省令で定めようがないということです。
 もっとも,修正については,省令で認められている場合以外でも,誤記その他実質的内容が変更されない場合等は修正が認められると解釈することは可能だと言う見解もあります。

Q5
合併なども、期日までに、債権者保護が完了しなければ、合併する手段がなくなるのですか。
Posted by みうら at 2006年07月11日 18:51
A5
そのとおりです。債権者保護手続きが終了しない場合には,効力発生日を変更してください。

Q6
 会社法第174条により相続人等に対する株式売渡請求が可能となりましたが、「その他の一般承継」の中に包括遺贈が含まれるのは間違いないと思うのですが、特定遺贈はその他の一般承継の中に含まれるのでしょうか?
A6
 特定遺贈は,一般承継には含まれません。

Q7
会社法第139条1項の定款による別段の定めにより、株式譲渡制限承認機関を「代表取締役」とすることも可能となりましたが、代取が3名(A、B、C)いる場合に、「代取A」又は「代取A又は代取B」を承認機関とする定めは可能でしょうか?
Posted by ワディ at 2006年07月11日 21:19
A7
いずれも可能です。

Q8
公開会社において、会社法所定の事項を決定する場合、同法に「株式会社が公開会社である場合 取締役会の決議」と決定方法が規定(例えば会社法202条3項3号)されている事項についても、定款に定めることにより株主総会の決議によって決定するものとすることは可能でしょうか?
Posted by 悩める株式課員 at 2006年07月12日 10:02
A8
株主総会は,定款で定めた事項を決議することができますから(295条2項),取締役会の決議事項とされていることでも,定款で定めることにより株主総会の決議事項とすることはできます。
 なお,その場合に取締役会の決議ができなくなるのかどうかは,各規定で,定款で別段の定めができるかどうかによって決まります。

Q9
 会社法になって,株式の消却が自己株式の場合だけに限定されることになりましたが,あえて自己株式を消却することの意義はどのようなところにあるのでしょうか?流通株式数は,自己株式の取得・放出によって調整が可能ですし,自己株式の処分が新株発行と同様の手続で認められている以上,自己株式を消却(して新株を発行)する意義はあまりないと思うのですが。
Posted by ボン at 2006年07月11日 15:49
A9
 授権枠が少ないときに,ある種類株式を消却して,別の種類の株式を発行するというのが典型的だと思います。

司法試験という名のドラマ

 論文試験受験者は,こんなブログなんか見ずに勉強に没頭しているかなあとも思いますが,頭休めに見ている人もいるかもしれないので,論文試験受験者に向けてメッセージを送ります。

 人間は,締め切りが近づくと,
「時間がない。どうしよう・・・」
と焦ります。
 論文試験の受験生は,今頃,
「あと3日間しかない。どうしよう・・・」
と焦っていることでしょう。
 そして,論文試験が始まると,試験時間中に
「げっ,あと30分しかない。どうしよう・・・」
と焦ることになります。

 1年前から「あと30分しかない」という気持ちで勉強を続けてきた人は,既に合格ラインを遙かに超える実力者になっていると思いますが,
「人は,締め切りに間に合わない時になって初めて,締め切りを意識する」
という「夏休みの宿題理論」がある以上,ほとんどの受験生が,この時期に焦るのは,やむをえません。

 私は,中学時代から大学時代まで,演劇をやっていたせいか,試験前の「焦り」を,ほど良い緊張感に変えることができたように思います。

 いい芝居をするためには,数か月にわたって厳しい練習をしなければいけません。
 しかし,どんなに練習をしても,本番で失敗すれば,観客を感動させることができません。
 十分な練習と,本番における集中力が必要であるという点で,演劇と試験は,共通しています。

 そして,演劇と司法試験が,何より似ているのは,台本を丸暗記して,そのまま棒読みしても,観客は感動してくれないことです。

 演劇は,役者と観客がいて初めて成立する生き物であり,10回講演をすれば,1回ごとに笑いのポイント・泣きのポイントが変わります。

 いい役者は,舞台に立ち,観客の視線と息吹を読みながら,間を変え,声音を変え,その「場」に最もふさわしい言葉を紡ぎ出します。
 もちろん,その言葉は,予め台本に書かれたセリフではありますが,役者は,練習の中で,そのセリフを自分の身体の中に染みこませ,舞台上では,生きた言葉として,共演者と観客に語りかけているのです。

 セリフが身体に染みついていれば,途中で,共演者がセリフを変えても,スムーズにアドリブでつなぎ,ドラマは破綻することがありません。
 笑い上戸の観客がいるときは,大いに笑わせ,観客が中だるみしているなと思うときには,客席の中に飛び込んでいって,大声でセリフを叫ぶ。
 役者がその「場」にふさわしい言葉を語れば語るほど,お客さんは,芝居の中に引き込まれ,舞台から目を離すことができなくなります。

 論文試験では,試験委員が観客です。
 あなたは,法律というセリフを身体に染みこませ,1科目2時間という上演時間の中で,観客に語りかけます。
 あなたが,観客の心を読み,自分の心を込めてセリフを語れば,観客は必ず心を動かします。
 もしかしたら,準備不足で,セリフの入りが悪い人がいるかもしれませんが(笑),そんな人は,より一層,観客の心に注意を払い,アドリブを織り交ぜて,自分自身の言葉で熱く語りかけるしかありません。

 いずれにせよ,本番まで,あと3日。
 ドキドキするのは仕方がありません。
 でも,日曜と月曜は,「法曹になりたい」というあなたの気持ちを伝えることができる,一年に一度の貴重な舞台です。
 試験という舞台では,あなたは,様々な難事件を次々に解決していくスーパーロイヤーを演じることになります。
 難事件に悩み苦しみながらも,決して逃げずに,自分の言葉で真剣に,解決の道筋を示す姿を見せることができれば,試験委員は涙を流しながら採点してくれるでしょう(笑)。
 一世一代の名演技を期待しています。

(質問コーナー)
Q1
456条で,455条2項後段の規定の例により計算する場合,計算規則182条の「行使期限日」はどの時点と読むのでしょうか。私は効力発生日かなと思っています。金銭分配請求権を与えるとは限らないので,行使期限日のままでは読めないかなと思っております。
Posted by ik at 2006年07月11日 02:37
A1
「例により」という文言のため,明確でないのは申し訳ありません。
456条の場合は,「効力発生日の前日」と解釈するのが妥当だと思います。効力発生日の午前0時に効力が発生するので,その前日を基準にする必要があるからです。

Q2
Q4の権利義務取締役に関してですが、葉玉先生のご確認のとおり、「取締役が辞任したものの、欠員が生じていたので、なお取締役としての権利義務を有する者となった。その後、破産手続の開始決定がされた。」という事案です。
この場合の処理についてご教授ください。よろしくお願いいたします。
Posted by W at 2006年07月11日 07:49
A2
取締役としての権利義務を有する者については,なかなか難しい問題が山積みなのですが,会社との間に委任契約があることを前提としているものと思います。したがって,取締役と同様,破産手続の開始決定により委任契約が終了すれば,取締役としての権利義務を有する者としての地位を失うと解するべきでしょう。

Q3
基準日の公告(会社法第124条)について
商法では株券を発行していない会社については228条の2で、公告に代えて通知すればよいとの記載がありましたが、会社法ではこの文言がなくなっています。
基準日の公告に代えてすべての株主に通知すれば問題はないのでしょうか?
当社は、非公開であり、株券を発行していません。
Posted by あ!っと法無 at 2006年07月11日 09:36
A3
株券不発行会社について,基準日公告の代わりに通知でよいという制度はなくなりました。もっとも,非公開の株券不発行会社の場合,基準日を設定する必要自体少ないと思いますが。

Q4
参考書類等の修正について、追加質問です。
修正後の周知方法を通知できる事項が、参考書類、事業報告、計算書類、連結計算書類に限定され、狭義の招集通知、監査役会及び会計監査人の監査報告(単体・連結)が対象外にされた趣旨は何でしょうか
A4
 対象外にしているというより,その点について法律上の委任がないので,省令で定めようがないということです。
 もっとも,修正については,省令で認められている場合以外でも,誤記その他実質的内容が変更されない場合等は修正が認められると解釈することは可能だと言う見解もあります。

Q5
合併なども、期日までに、債権者保護が完了しなければ、合併する手段がなくなるのですか。
Posted by みうら at 2006年07月11日 18:51
A5
そのとおりです。債権者保護手続きが終了しない場合には,効力発生日を変更してください。

Q6
 会社法第174条により相続人等に対する株式売渡請求が可能となりましたが、「その他の一般承継」の中に包括遺贈が含まれるのは間違いないと思うのですが、特定遺贈はその他の一般承継の中に含まれるのでしょうか?
A6
 特定遺贈は,一般承継には含まれません。

Q7
会社法第139条1項の定款による別段の定めにより、株式譲渡制限承認機関を「代表取締役」とすることも可能となりましたが、代取が3名(A、B、C)いる場合に、「代取A」又は「代取A又は代取B」を承認機関とする定めは可能でしょうか?
Posted by ワディ at 2006年07月11日 21:19
A7
いずれも可能です。

Q8
公開会社において、会社法所定の事項を決定する場合、同法に「株式会社が公開会社である場合 取締役会の決議」と決定方法が規定(例えば会社法202条3項3号)されている事項についても、定款に定めることにより株主総会の決議によって決定するものとすることは可能でしょうか?
Posted by 悩める株式課員 at 2006年07月12日 10:02
A8
株主総会は,定款で定めた事項を決議することができますから(295条2項),取締役会の決議事項とされていることでも,定款で定めることにより株主総会の決議事項とすることはできます。
 なお,その場合に取締役会の決議ができなくなるのかどうかは,各規定で,定款で別段の定めができるかどうかによって決まります。

Q9
 会社法になって,株式の消却が自己株式の場合だけに限定されることになりましたが,あえて自己株式を消却することの意義はどのようなところにあるのでしょうか?流通株式数は,自己株式の取得・放出によって調整が可能ですし,自己株式の処分が新株発行と同様の手続で認められている以上,自己株式を消却(して新株を発行)する意義はあまりないと思うのですが。
Posted by ボン at 2006年07月11日 15:49
A9
 授権枠が少ないときに,ある種類株式を消却して,別の種類の株式を発行するというのが典型的だと思います。

2006年7月11日 (火)

減資の効力発生日の変更

本日は、所用により、質問コーナーのみです。

Q1
449条6項ただし書にひっかかったが,その後,債権者保護手続が無事終了したとき,終了時又は効力発生日にさかのぼって,資本減少の効力が生じるのか,永遠にこの手続は失効することになるのか,です。失効することを前提に作っておられるようにも見えるのですが,文献(商事法務と専門もとい千問の道標)を確認した限りでは,効力発生日時点で債権者保護手続が終了してないなら,効力発生日の変更の必要がある,と述べておられるだけで,その後に債権者保護手続が終了してもだめという趣旨なのかそこまではいっていないか,読み切れませんでした。
Posted by ik at 2006年07月08日 15:55
A1
449条7項は、効力発生日前は、効力発生日を変更することができると規定しており、効力発生日以降には、効力発生日を変更することができません。
したがって、債権者保護手続きが効力発生日において終了していなかったら、その後、効力発生日を変更することができない結果、効力を発生さえる余地がなくなります。

Q2
同じ449条6項です。効力発生日と債権者保護手続の満了日の関係で,たとえば債権者保護手続(公告期間)が3月31日までというとき,公告期間の満了日の翌日なら安全なのはわかるのですが,効力発生日を3月31日としたら,効力発生日において債権者保護「手続が終了していないとき」にあたるのですか。民法141条は期間は末日の終了をもって満了とされています。3月31日の23:59:59から4月1日の0:00にいく一瞬かすっているようにも,すれちがっているようにも見えます。私はこれはだめじゃないか,と思ってるのですが,組織再編行為とセットでスケジューリングするとき問題になりますので,確認させてください。
Posted by ik at 2006年07月08日 16:39
A2
効力発生日を3月31日としたら、3月31日の午前0時に効力を発生しますが、その時点では債権者保護手続きが終了していないので、効力を生ずることができません。
効力発生日を4月1日にすべきです。

Q3
309条2項9号ロは,資本金の減少額が計算書類確定時の欠損額(分配可能額のマイナス分の絶対値)を超えないこととしてます。確定時に決議をしても,効力発生時まで資本金も準備金も減少しない=欠損も埋まらないので同時に欠損額の範囲で準備金の減少をしていたとすると普通決議で減資できるのでしょうか。この場合,準備金減少手続についても,債権者保護手続は資本金減少もしてるので省略できませんが,459条1項2号によって取締役会決議で準備金の減少額と効力発生日を決められるのでしょうか。449条1項2号に該当する場合にあたるのかどうか,の解釈問題だと思います。
Posted by ik at 2006年07月08日 19:34
A3
例えば、1000万円の欠損填補のための1000万円の資本金の減少と1000万円の準備金の減少を定時株主総会の日に行うと、文言上は、どちらも特則にあたりそうですが、資本金の減少額と準備金の減少額の合計額が欠損額である1000万円の範囲内である場合に特則が適用されると考えるべきでしょう。
 ただ、ikさんのように449条1項ただし書でそれを解釈すると、資本金の減少を優先することになりますが、必ずしも、その必要はないので、309条2項9号ロ、459条1項2号の趣旨から限定解釈すればよいと思います。

Q4
権利義務取締役について質問させてください。
権利義務取締役が破産手続き開始の決定を受けた場合、権利義務者としての地位は失うことになるのでしょうか。
委任の規定が適用できない以上、地位を失うと解釈することは無理があるような気もするのですが・・・。
Posted by W at 2006年07月09日 09:40
A4
確認ですが、「取締役が辞任したものの、欠員が生じていたので、なお取締役としての権利義務を有する者となった。その後、破産手続の開始決定がされた。」という事案でしょうか?つまり、取締役の時点では、破産手続きは開始していなかったという場合でしょうか?

Q5
総会も無事終わり、取締役会規則や監査役会規則を見直しております。
そこで、準備金の資本組み入れが、取締役会決議でできる、などという条項を見つけてしまいました。条文・規則のどこをどう探しても総会決議を飛ばして役会決議だけ行うことは無理だと思うのですが、私の理解不足でしょうか。
Posted by ペーペー法務員 at 2006年07月09日 11:36
A5
準備金の資本組み入れは、総会の決議事項になりました。修正してください。

Q6
会計監査人・監査役の報酬等の「等」というのは具体的に何かということですが、金銭以外の便益と考えております。飲食やゴルフの会員権の貸与などと思っていたのですが、間違っていますでしょうか?監査役の場合には具体的には何を指すのか、教示願いいたします。
Posted by ペーペー法務員 at 2006年07月09日 11:41
A6
「報酬」と「等」を区別する意味はなく、むしろ、区別しないことに本条の趣旨があります。賞与も、退職金も、飲食などの現物報酬も、職務執行の対価なら「報酬等」です。

Q7
昨日のA5について、先生のお答えに、私個人としては賛成するのですが、登記実務上は、この条文はほとんど知られていないか、あるいは知っていても「黙殺」されているのが現実だと思います。
Posted by 良之 at 2006年07月10日 00:11
A7
施行前の譲渡制限株式会社は、株式の譲渡について「株式会社」の承認を要する旨の定款変更がされていますが、その株式会社は、施行後取締役会設置会社になる結果、承認機関は、取締役会になります。そのため、登記された承認機関に変更が生じていないので、「取締役会」を「株式会社」に変更すべき義務はありません。

Q8
 商法244条5項には「謄本」を5年間支店に備え置くとなっておりますが、会社法318条3項には「写し」を5年間備え置くとなっています。
 「謄本」と「写し」とでは、何か異なるところはあるのでしょうか。
 もし、同じものだとするとなぜ用語の変更がなされたのでしょうか。
 よろしくお願いします。
Posted by どんまい at 2006年07月10日 13:57
A8
「謄本」は、書面の謄本を意味しますが、「写し」は、書面の謄本のほか、電磁的記録のコピーも含みます。

Q9
 「関連当事者との取引に関する注記」について質問させて頂きます。
 非公開会社は、計算規則129条2項1号で不要とされており、計算規則140条1項柱書で公開会社であっても非会計監査役設置会社であれば同条項1〜3号、7号を開示すればよいとされております。
 私の感覚では、計算規則140条1項の開示は大会社を想定しているように思うのですが、商事法務NO1768のP29には、「中小企業であることが想定される」となっています。
 公開会社の大会社であれば会社法328条1項で会計監査人を置くことを義務付けれておりますので、中小企業は非会計監査設置会社になり、「関連当事者との取引に関する注記」において想定されていないと思うのですが。
 私の条文解釈間違いなのでしょうか。
Posted by てんこもり。 at 2006年07月10日 16:12
A9
商事法務の記事の読み間違いです。140条1項の開示がは、「中小企業であることが想定される」非公開・非会計監査人設置会社には適用されないということを言いたい文章です。

Q10
株主総会招集通知添付書類等の修正について確認させていただきたく、お願いします。公開大会社で、監査役会設置会社の場合です。
定時総会招集通知発出時以降、その記載事項に修正すべき事情が生じた場合、修正後の事項を株主に周知させる方法を、当該招集通知とあわせて通知できる事項は、明文上、
①参考書類に記載すべき事項(施行規則65条3項)
②事業報告の内容とすべき事項(施行規則133条6項)
③計算書類の内容とすべき事項(計算規則161条7項)
④連結計算書類の内容とすべき事項(計算規則162条7項)
になっていると思います。
ということは、狭義の招集通知及び監査役会・会計監査人の監査報告については、この措置を採ることができないということでしょうか。
Posted by んーー悩ましい。。 at 2006年07月10日 16:42
A10
その措置を執ることはできません。

Q11
日本経済新聞朝刊7/8付にT社の会社法による、グループ内資本関係」見直しの記事が掲載されており、これを読んでみて、疑問が生じた為、さしつかえない範囲で教えていただけませんでしょうか。
T社は、グループを編成しており、傘下の非上場会社TW社への出資比率49%を40%未満に減らし、「T社傘下の他の会社であるTS社」が持つT社株の議決権を維持しようとしているとあります。現在、TS社は、TW社の4.8%を保有し、T社から、TS社への出資比率は、25%未満(25%近く)に抑えられています。
連結財務諸表原則上、子会社の判定では、0%以上40%未満の自己の議決権保有割合であっても、自己と緊密者で過半数の議決権を有し(TW社への議決権が、過半数を
割ることはないと推測しています)かつ、取締役会等の意思決定機関の支配等を行っていれば(実際にはほとんどの役員がT社出身者)、40%未満に減らしても、TW社は、会社法でも、T社の子会社であって、TS社が持つT社株の議決権は維持できないのではないかと思うのですが、、、
このようなことを行っても、T社には、「自己との緊密者」が何社もあり、TW社が、子会社からはずれるようなことはないのでは?と思います。以上は、公開情報をもとに考えています。
Posted by ぼけ太郎 at 2006年07月10日 19:39
A11
T社の見直しの結果がどうなるのかは分かりませんが、会社法施行規則では、議決権比率を40%未満に落としても、子会社になる場合もあります。

Q12
取締役の報酬の決定方法について質問します。
 会社法では、三百六十一条で取締役の報酬を定款または株主総会で決議するとされています。
 実務においては、株主総会で総額を決議し、個別金額は取締役会で決定しておりましたが、会社法が施行され、取締役会を設けないこととしましたので、個別金額を取締役に一任する決議を株主総会において行いたいと思います。
 取締役が自分の報酬を決定することとなりますが、この決議は会社法上有効なのでしょうか。
Posted by zeirisijimuin at 2006年07月09日 15:48
A12
 当該委任決議は有効です。
 取締役が複数いる場合には、過半数で決するのだと思いますが。

減資の効力発生日の変更

本日は、所用により、質問コーナーのみです。

Q1
449条6項ただし書にひっかかったが,その後,債権者保護手続が無事終了したとき,終了時又は効力発生日にさかのぼって,資本減少の効力が生じるのか,永遠にこの手続は失効することになるのか,です。失効することを前提に作っておられるようにも見えるのですが,文献(商事法務と専門もとい千問の道標)を確認した限りでは,効力発生日時点で債権者保護手続が終了してないなら,効力発生日の変更の必要がある,と述べておられるだけで,その後に債権者保護手続が終了してもだめという趣旨なのかそこまではいっていないか,読み切れませんでした。
Posted by ik at 2006年07月08日 15:55
A1
449条7項は、効力発生日前は、効力発生日を変更することができると規定しており、効力発生日以降には、効力発生日を変更することができません。
したがって、債権者保護手続きが効力発生日において終了していなかったら、その後、効力発生日を変更することができない結果、効力を発生さえる余地がなくなります。

Q2
同じ449条6項です。効力発生日と債権者保護手続の満了日の関係で,たとえば債権者保護手続(公告期間)が3月31日までというとき,公告期間の満了日の翌日なら安全なのはわかるのですが,効力発生日を3月31日としたら,効力発生日において債権者保護「手続が終了していないとき」にあたるのですか。民法141条は期間は末日の終了をもって満了とされています。3月31日の23:59:59から4月1日の0:00にいく一瞬かすっているようにも,すれちがっているようにも見えます。私はこれはだめじゃないか,と思ってるのですが,組織再編行為とセットでスケジューリングするとき問題になりますので,確認させてください。
Posted by ik at 2006年07月08日 16:39
A2
効力発生日を3月31日としたら、3月31日の午前0時に効力を発生しますが、その時点では債権者保護手続きが終了していないので、効力を生ずることができません。
効力発生日を4月1日にすべきです。

Q3
309条2項9号ロは,資本金の減少額が計算書類確定時の欠損額(分配可能額のマイナス分の絶対値)を超えないこととしてます。確定時に決議をしても,効力発生時まで資本金も準備金も減少しない=欠損も埋まらないので同時に欠損額の範囲で準備金の減少をしていたとすると普通決議で減資できるのでしょうか。この場合,準備金減少手続についても,債権者保護手続は資本金減少もしてるので省略できませんが,459条1項2号によって取締役会決議で準備金の減少額と効力発生日を決められるのでしょうか。449条1項2号に該当する場合にあたるのかどうか,の解釈問題だと思います。
Posted by ik at 2006年07月08日 19:34
A3
例えば、1000万円の欠損填補のための1000万円の資本金の減少と1000万円の準備金の減少を定時株主総会の日に行うと、文言上は、どちらも特則にあたりそうですが、資本金の減少額と準備金の減少額の合計額が欠損額である1000万円の範囲内である場合に特則が適用されると考えるべきでしょう。
 ただ、ikさんのように449条1項ただし書でそれを解釈すると、資本金の減少を優先することになりますが、必ずしも、その必要はないので、309条2項9号ロ、459条1項2号の趣旨から限定解釈すればよいと思います。

Q4
権利義務取締役について質問させてください。
権利義務取締役が破産手続き開始の決定を受けた場合、権利義務者としての地位は失うことになるのでしょうか。
委任の規定が適用できない以上、地位を失うと解釈することは無理があるような気もするのですが・・・。
Posted by W at 2006年07月09日 09:40
A4
確認ですが、「取締役が辞任したものの、欠員が生じていたので、なお取締役としての権利義務を有する者となった。その後、破産手続の開始決定がされた。」という事案でしょうか?つまり、取締役の時点では、破産手続きは開始していなかったという場合でしょうか?

Q5
総会も無事終わり、取締役会規則や監査役会規則を見直しております。
そこで、準備金の資本組み入れが、取締役会決議でできる、などという条項を見つけてしまいました。条文・規則のどこをどう探しても総会決議を飛ばして役会決議だけ行うことは無理だと思うのですが、私の理解不足でしょうか。
Posted by ペーペー法務員 at 2006年07月09日 11:36
A5
準備金の資本組み入れは、総会の決議事項になりました。修正してください。

Q6
会計監査人・監査役の報酬等の「等」というのは具体的に何かということですが、金銭以外の便益と考えております。飲食やゴルフの会員権の貸与などと思っていたのですが、間違っていますでしょうか?監査役の場合には具体的には何を指すのか、教示願いいたします。
Posted by ペーペー法務員 at 2006年07月09日 11:41
A6
「報酬」と「等」を区別する意味はなく、むしろ、区別しないことに本条の趣旨があります。賞与も、退職金も、飲食などの現物報酬も、職務執行の対価なら「報酬等」です。

Q7
昨日のA5について、先生のお答えに、私個人としては賛成するのですが、登記実務上は、この条文はほとんど知られていないか、あるいは知っていても「黙殺」されているのが現実だと思います。
Posted by 良之 at 2006年07月10日 00:11
A7
施行前の譲渡制限株式会社は、株式の譲渡について「株式会社」の承認を要する旨の定款変更がされていますが、その株式会社は、施行後取締役会設置会社になる結果、承認機関は、取締役会になります。そのため、登記された承認機関に変更が生じていないので、「取締役会」を「株式会社」に変更すべき義務はありません。

Q8
 商法244条5項には「謄本」を5年間支店に備え置くとなっておりますが、会社法318条3項には「写し」を5年間備え置くとなっています。
 「謄本」と「写し」とでは、何か異なるところはあるのでしょうか。
 もし、同じものだとするとなぜ用語の変更がなされたのでしょうか。
 よろしくお願いします。
Posted by どんまい at 2006年07月10日 13:57
A8
「謄本」は、書面の謄本を意味しますが、「写し」は、書面の謄本のほか、電磁的記録のコピーも含みます。

Q9
 「関連当事者との取引に関する注記」について質問させて頂きます。
 非公開会社は、計算規則129条2項1号で不要とされており、計算規則140条1項柱書で公開会社であっても非会計監査役設置会社であれば同条項1〜3号、7号を開示すればよいとされております。
 私の感覚では、計算規則140条1項の開示は大会社を想定しているように思うのですが、商事法務NO1768のP29には、「中小企業であることが想定される」となっています。
 公開会社の大会社であれば会社法328条1項で会計監査人を置くことを義務付けれておりますので、中小企業は非会計監査設置会社になり、「関連当事者との取引に関する注記」において想定されていないと思うのですが。
 私の条文解釈間違いなのでしょうか。
Posted by てんこもり。 at 2006年07月10日 16:12
A9
商事法務の記事の読み間違いです。140条1項の開示がは、「中小企業であることが想定される」非公開・非会計監査人設置会社には適用されないということを言いたい文章です。

Q10
株主総会招集通知添付書類等の修正について確認させていただきたく、お願いします。公開大会社で、監査役会設置会社の場合です。
定時総会招集通知発出時以降、その記載事項に修正すべき事情が生じた場合、修正後の事項を株主に周知させる方法を、当該招集通知とあわせて通知できる事項は、明文上、
①参考書類に記載すべき事項(施行規則65条3項)
②事業報告の内容とすべき事項(施行規則133条6項)
③計算書類の内容とすべき事項(計算規則161条7項)
④連結計算書類の内容とすべき事項(計算規則162条7項)
になっていると思います。
ということは、狭義の招集通知及び監査役会・会計監査人の監査報告については、この措置を採ることができないということでしょうか。
Posted by んーー悩ましい。。 at 2006年07月10日 16:42
A10
その措置を執ることはできません。

Q11
日本経済新聞朝刊7/8付にT社の会社法による、グループ内資本関係」見直しの記事が掲載されており、これを読んでみて、疑問が生じた為、さしつかえない範囲で教えていただけませんでしょうか。
T社は、グループを編成しており、傘下の非上場会社TW社への出資比率49%を40%未満に減らし、「T社傘下の他の会社であるTS社」が持つT社株の議決権を維持しようとしているとあります。現在、TS社は、TW社の4.8%を保有し、T社から、TS社への出資比率は、25%未満(25%近く)に抑えられています。
連結財務諸表原則上、子会社の判定では、0%以上40%未満の自己の議決権保有割合であっても、自己と緊密者で過半数の議決権を有し(TW社への議決権が、過半数を
割ることはないと推測しています)かつ、取締役会等の意思決定機関の支配等を行っていれば(実際にはほとんどの役員がT社出身者)、40%未満に減らしても、TW社は、会社法でも、T社の子会社であって、TS社が持つT社株の議決権は維持できないのではないかと思うのですが、、、
このようなことを行っても、T社には、「自己との緊密者」が何社もあり、TW社が、子会社からはずれるようなことはないのでは?と思います。以上は、公開情報をもとに考えています。
Posted by ぼけ太郎 at 2006年07月10日 19:39
A11
T社の見直しの結果がどうなるのかは分かりませんが、会社法施行規則では、議決権比率を40%未満に落としても、子会社になる場合もあります。

Q12
取締役の報酬の決定方法について質問します。
 会社法では、三百六十一条で取締役の報酬を定款または株主総会で決議するとされています。
 実務においては、株主総会で総額を決議し、個別金額は取締役会で決定しておりましたが、会社法が施行され、取締役会を設けないこととしましたので、個別金額を取締役に一任する決議を株主総会において行いたいと思います。
 取締役が自分の報酬を決定することとなりますが、この決議は会社法上有効なのでしょうか。
Posted by zeirisijimuin at 2006年07月09日 15:48
A12
 当該委任決議は有効です。
 取締役が複数いる場合には、過半数で決するのだと思いますが。

2006年7月 9日 (日)

生の事実

 先週は,少し仕事が楽だったため,毎日のように飲み会が入り,しかも,任天堂DSの「逆転裁判」にはまってしまったため,深夜に「異議あり!」と独り言をつぶやく不気味な酔っ払いオヤジと化していました。
 そのため、ブログを書く時間がなくなり、「まずい・・」と思っては朝に更新という悪循環。学校の近くに住んでいる子供ほど遅刻率が高いのと同じで,「余裕がある」と思うと,あっという間にその余裕を食いつぶしてしまうのが人の常であることを痛感した一週間でした。

 さて、週末になっても、いまいち緊張感がないので、今日は会社法の話はやめて,AHEさんの
「先日、キムタクの「HERO」を見ていて思ったのですが、検察官が実際に街に出て司法巡査とともに現場検証を行うことなんて実際にあるのでしょうか???」
という質問に答えながら、検察官の仕事について、ちょっとエッセーしてみます。

 検事を長くやっていると、私みたいに民事局に島流しになったり(笑)、刑事局や矯正局などでバリバリ仕事をしたり、証券取引監視委員会・公正取引委員会・外国の日本大使館等に出向したり、刑事以外の仕事に携わることも多いのですが、任官15年目くらいまでは、全国の地方検察庁で刑事事件の捜査・公判をするのがメインの仕事です。
 かくいう私も、約10年間は、刑事事件ばかりやっていました。

 検察官が、どの程度の事件を平行してやるのかは、事件の種類によって全然違います。独自捜査で贈収賄や経済事件をやる場合には一つの事件に10人以上の検事が数ヶ月もかかりきりになることもありますし、覚せい剤担当の若い検事だと、一人で自己使用ばかり20件以上身柄事件を抱えていることもあると思います。

 とはいえ、大雑把にいえば、同時並行で、身柄事件5―10件と、在宅事件10−20件というのが相場でしょうか。

 皆さんもご承知のように、身柄事件は、検察庁に送致されて10日又は20日で勾留が切れるので、通常その時点で起訴するかどうかを決めなければいけませんし、在宅事件も油断して処理を先延ばしにすると、在庫が増えすぎて、だんだん気が遠くなってしまいますから、限られた時間で、確実に事件処理をしていく必要があります。「時間が先、内容が後」という記事を書いたことがありましたが、身柄事件は、勾留期間を1秒過ぎても、違法勾留になりますから、まさに「時間が先」の極地です。

 また、参考人が、仕事等の都合で、夜や休日しか検察庁に来ることができないのならば、夜や休日に事情聴取をするのは当たり前ですし、参考人が検察庁に来るのが難しいのならば、時間をやりくりして、出張するのも、日常茶飯事。検察官は、
「参考人が勾留21日目まで海外出張で帰ってこないので、勾留期間を21日間にしてください」
というワガママを言うことができないので、自分の仕事時間を証人の都合に合わせざるをえません(裁判所も、裁判員制度が開始されれば、短期間で集中証拠調べをしなければならないので、きっと、証人のために、夜間開廷や休日開廷をしてくれるのではないかと思っているのですが(笑))。

 このように、検察官は、複数の事件を、切迫した時間制限の中で、次々と処理していかなければならないものの、どんなに忙しくても、否認事件などでは、「現場」の確認をします。

 警察官と一緒に現場に赴いて実況見分に立会い、時には、自分一人で現場付近を歩いてみたりして、被疑者、被害者、証人の視野に何が入っていたのかを自分の目で確認するのは、捜査の鉄則です。

 なぜ、検事が現場を大事にするかというと、事実認定は「生(なま)の事実」の把握から出発するからです。

 さて、この「生」という言葉には
1 法的評価・社会的評価を含まない事実
2 今まさに目の前にあるかのような血の通った事実
という2つの意味を込めています。

1 法的評価・社会的評価を含まない事実
 ロースクール生や司法修習生は、下手に法律をかじっているので、よく
 「法的評価を加味しながら、事実認定をする」
という間違いを犯します。

 例えば、葉玉が、息子と一緒にコンビニに言ったところ、息子から「これ買って」と言われて、ウーロン茶のペットボトルを受け取り、そのウーロン茶と現金150円をカウンターに置いたところ、店員さんが、「ありがとうございます」と言って150円をレジに入れたとしましょう。

 この場合、生の事実は、今言ったとおりなのに、いきなり
 「葉玉とコンビニとの間にウーロン茶の売買契約が成立した」
という法的評価が加わった事実を証拠から直接認定しようするのです。
 
 でも,これはダメ。なぜかというと,事実の認定と事実の法的評価を混同すると,法的評価をするだけで思考が停止してしまい、重要な間接事実や証拠を集めようとしなくなる可能性があるからダメなのです。

 例えば、先の事例で、葉玉と店員さんに事情聴取を行い、「ウーロン茶を売り買いしましたか?」と聞いたら、二人とも「はい。」と答えるでしょう。
 ここで「売買は成立した」と思い込んでしまうと、大間違い。

 例えば、店内の防犯カメラを調べたところ、実は、葉玉の息子は、見知らぬオジさんから、その店の商品ではない「毒入り。飲んだら危険。死ぬで。」と書かれたウーロン茶のペットボトルを渡されていて、それを何も知らずに、葉玉に渡していたということが分かり、しかも、そのウーロン茶をPOSに通した結果、未登録の商品だったためエラーが出ていたという証拠が出てきたら、どうでしょう。
 本当に、葉玉とコンビニの間に、そのウーロン茶について「売買契約が成立した」ということができるのでしょうか?

 生の事実を前提にすれば,(1)契約が成立した上で錯誤があるという人もいれば、(2)店員には、店内にある物以外の物を売る代理権がないという人もいれば、(3)葉玉たちには、毒入りウーロン茶の売り買いをする意思はないし、他のウーロン茶を売買する意思を見出そうとしても、サントリーなのかアサヒなのかそれ以外なのか、売買の対象となる物が特定していないから、契約が成立していないという人もいるのではないでしょうか。
 いずれにせよ、「当事者が売買したと証言すれば、売買契約の成立が認められる」という勘違いをして、思考停止をすると、生の事実が判明したときに、大慌てすることになります。

 だからこそ、検察官は、捜査をする際に、法的に意味があるかどうかということをとりあえず度外視して、「生の事実として何があったか」を調べなければならず、一番「生」に近い現場の確認を重視するのです。
 例えば、被疑者が被害者を包丁で刺したという事件で、現場に行って、被疑者の足跡と血痕が50センチしか離れていないのか、2メートル離れているのかによって犯行態様は違いますし,殺意の有無にも影響するかも知れません。もちろん,50センチなのか,51センチなのかというレベルでは,大した違いはないのかもしれませんが,「大した違いはない」という,評価を含んだ事実認定の危険性を知る検察官は,「大した違いがあるのかないのかはともかく,まず生の事実としてどんな事実があるのか」を確認するはずです。
 このように事実認定とは,評価を含まない生の事実を認定することなのです。
 ロースクール生の中には,「新司法試験の問題は,事実認定の問題が多くて難しいです」と言う人もいますが,新司法試験では,このような事実認定の問題は出ておらず,単に
①生の事実の中から,法的に意味のある事実をピックアップしてくる
②ピックアップした事実について法的評価を加える
ということが要求されているだけであり,そこらへんの違いが分からないうちは,マダマダ修行が足りない感じです。

2 今まさに目の前に見えているかのような血の通った事実
 事実認定は,現在,目の前にある証拠を出発点として,時を遡り,過去に存在していた事実にたどり着く時間旅行です。
 しかも,時間は,すべての事象を風化しますから,ハリーポッターの秘密の部屋を一緒に見にいったのが,妻だったのか,昔の彼女だったのかが分からなくなったりするのと同じように,過去の事実は,時間の経過によって,血の通った現実から血の通わない物語へと変化していきます。

 他方,事件と捜査,捜査と審理,審理と判決の間には,必ず時間が流れており,長い裁判となれば,事件から十年以上経過して,証拠調べが行われることさえあるのです。

 ですから,検察官は,①現在ある証拠から確実に認定できる事実を積み上げていき,過去に向かって一歩一歩遡り,犯行時に存在した事実を,フィクションではなく,目の前に見えているかのような血の通った事実として捉えることができるようにする,②自分の目の前に現れた事実が,長い裁判を経ても,血の気を失わないようにするために,適切な形で証拠化する必要があるのです。
 すなわち,検察官の仕事は
 時間との戦い,風化との戦い
であり,この戦いを制するするために
 「現場」
という武器を大事にするのです。

 被疑者の供述であれ,証人の供述であれ,供述証拠は,人の行動や客観的証拠の「意味」を明らかにするために必要な証拠であり,また,裁判官に分かりやすいという利点もあります。
 しかし,供述証拠は,内容自体の正確性は客観的証拠に劣り,また,風化が早く,時には,故意に真実が歪められているときさえあります。
 そのため,供述証拠だけで組み立てられた事件は,安定した基礎がなく,一つの供述が崩れることにより,全体が壊れる危険をはらんだ脆さがあります。

 そこで,検察官は,現場を見て,写真やビデオや実況見分調書により,動くことのない基礎を作った上で,被疑者や証人に現場のことを語らせ,供述者しか気付かなかった現場の状況をさらに写真等で証拠化する・・・。
 こうした作業を通じて,現場という客観的証拠に「事件との関連性」という意味を与えていくともに,供述証拠の中に「風化しない部分」を作り上げていくのです。

 凶器のみつからない事件はありますが,現場がない事件はありません。現場は,どんな事件にも共通して存在する客観的証拠であり,だからこそ,検察官は,立証の確実な拠り所として,現場を大事にし,現場に赴くわけです。

 以上のように,検察庁には,キムタクのように現場に出る検察官はたくさんいます。
 HEROの中の検事は,若干,ドラマ化されているものの,リアルさも兼ね備えているように思いますし,逆に,全国の検察庁では,日々,HERO並のドラマが起こっています。
 ただし,そのドラマを演じている検事が,キムタクや阿部寛並のルックスかどうかについては,黙秘するしかありません。

(質問コーナー)
Q1
会社法の計算規則、財務諸表規則、企業会計基準委員会が出す企業会計基準の関係がよく判りません。会計の勉強をし始めたばかりですので良く分かりません。
Posted by ふるたち at 2006年07月06日 22:36

A1
 以前記事にしたので,そちらにも目を通してもらいたいのですが,一頃に,会計と言っても,何を目的とする会計かによっていろいろな会計があり,誤解をおそれず言えば,メジャーな俗称として,会社法会計,証券取引法会計,税務会計があります。
 会社法会計は,会社法により作成が義務づけられている貸借対照表等や会計帳簿を作成するための会計です。株主に交付したり,公告をする貸借対照表等の作成や分配可能額を明らかにすることを重要な目的としています。
 そして,会社法では,会計帳簿は,一般に公正妥当と認められる会計慣行に従って作成されることとされています。
 この会計慣行がどのようなものかについては,会社法・会社計算規則は,特に規定しておらず,会社計算規則は,そういう会計慣行に従って,会計帳簿を作成する場合の作成方法について規定を置いています。
 証券取引法会計は,有価証券届出書等を提出する場合に提出する財務諸表を作成するための会計です。
 その財務諸表で用いられる会計基準がバラバラだと,投資家が各会社の財務状況を正確に把握することができないので,財務諸表規則1条1項は,「財務諸表」の用語、様式及び作成方法は、財務諸表規則で定められていない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとしています。
 そして,同条2項は,企業会計審議会により公表された企業会計の基準は、1項に規定する一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に該当するものとしています。
 以前は,2項に基づき企業会計審議会により会計基準が公表されていましたが,現在は,民間団体である企業会計基準委員会が開発した会計基準を,金融庁が,財務諸表等規則等に係る事務ガイドラインにおいて,一般に公正妥当と認められる企業会計の基準であると確認することによって,証券取引法会計の基準として使えるようにしています。
 翻って,会社法会計を見ると,会社法は,証券取引法・財務諸表規則・ガイドラインのように企業会計基準委員会が開発した会計基準に法的根拠を与えるようなプロセスを採っていません。それどころか,かつては,商法は商法,証取法は証取法ということで,バラバラの会計基準を用いていました。
 ただ,それでは,会社が似たようなものを沢山作らなくてはいけなくなり,大変なので,企業会計基準委員会が開発した会計基準が正当な会計慣行として認められる限り,会社法会計としても許容できるように,それと矛盾した会計基準を会社計算規則で定めることはしていないのです。

Q2
取締役会書面決議についてお尋ねいたします。
取締役の全員が「書面または電磁的記録により」同意の意思表示をしたとき、とは「書面又は電子メールにより」と解説される場合が多いですが、社内の電子稟議システム等を用いて取締役の全員が同意の意思表示を行い、同一電子稟議内において監査役が異議がない旨の意思表示をなした場合、会社法上の要件をみたすでしょうか。
稟議なので、ある取締役が他の取締役の意思表示をみた後に自らの意思表示を行うこともありえます。各取締役が電子稟議上で同意の意思表示を行った日は確定しますが時刻は記録されません。全員が同意の意思表示を行った後に、その記録を印刷して保存することはできます。
Posted by CCC at 2006年07月06日 15:12
A2
電子稟議システムでも,電磁的記録が残るものであれば,結構です。
電磁的記録ではなく,印刷した書面しか残らないとすると,その書面による同意の意思表示ということになるでしょう。
なお,時刻の記録は,不要です。

Q3
役員の任期の起算日についての質問です。千問のQ380p286には,「なお,株主総会の決議で,選任決議の効力発生時期を遅らせたとしても,任期の起算点については,選任決議の日と解すべきである」旨の記載がありますが,これは,補欠役員の任期の起算日を選任決議の日から起算することにしたことに伴い,通常の役員の選任局面においても選任決議に条件・期限を付したか否かを問わず,起算日を選任決議の日からとする趣旨であり,法制審議会で出されていた条件・期限付選任決議では,条件成就・期限到来の日から起算するという見解を修正したものと理解してよいのでしょうか。
Posted by 猫太郎 at 2006年07月06日 15:47
A3
 旧商法は,起算日は就任時でしのたで,条件成就・期限到来して就任しないと起算することができませんでしたが,会社法は,起算日が選任日なので,選任決議の日から起算します。

Q4
代表取締役と第三者との取引の相手方保護についてお教えください。
内規違反の取引行為における第三者保護において、「一定の取引をなすには取締役会の承認が必要である」という内規の存在について悪意でも、取締役会の承認があったと誤信していた場合には、民法110条類推によって相手方は保護され(p248(三)以下)、
重要な財産の処分など、法令上取締役会の承認が必要な取引において、代表取締役が取締役会の承認をえずに取引をおこなった場合でも、相手方が取締役会の承認があった誤信していた場合には、民法93条類推によって保護される(p249(二)以下)、
とのことですが、両者とも取締役会の意思と代表者の意思表示の不一致なので、前者の方も110条類推ではなくて93条類推とした方がすっきりするように思えるのですが、前者については93条類推とすることができない理論上の問題のようなものがあるのでしょうか?
Posted by てんかお at 2006年07月06日 21:31
A4
その問題は,株式会社における意思決定機関が誰かという問題ではなく,代表取締役の代表権に加えられた制限がされている場合に,その制限を解除するための要件として取締役会の承認が要求されているのだと思います。
 会社の意思決定自体が欠けている場合には,93条類推でいいと思いますが,代表権の制限の解除要件が充たされていないのに,代表取締役が代表権を行使した場合には,民法110条類推の方が正しいと思います。

Q5
会社法施行前から存在する株式会社の株式譲渡制限承認機関について素朴な質問をさせて下さい。
整備法76条3項では、旧株式会社の定款に「新株式会社の承認を要する旨の定め」があるものと擬制しています。旧株式会社の定款にたとえ「取締役会」と規定されていても、同条項により「新株式会社」と擬制されると解されます。であれば、当該会社が取締役会を廃止する場合でも、承認機関については定款変更を行う必要はないと思えるのですが、如何でしょうか?
Posted by chigmog at 2006年07月07日 10:57
A5
定款変更手続をとる必要はありません。
ただし,登記は,みなし規定がないので,取締役会を廃止した場合には,「取締役会の承認」という登記を「株式会社の承認」に変更する必要があります。

Q6
複数の株主が存在する会社で、その内の1名のみに無償で募集株式の発行は可能なのでしょうか?
Posted by ike at 2006年07月07日 19:24
A6
できません。
株式無償割当ては,株主の保有株式数に応じて割当てを行う場合のみ利用できますし,通常の募集株式の募集は,「無償」を認めていません。

Q7
1 会社法151条1項は「質権は・・・金銭等について存在する」と規定し,その他条項においても「質権は・・・〇〇について存在する」と規定していますが,どのような意味を持つのですか。
2 民法では、
(1)366条3項は「質権は、その供託金について存在る」とし、同条4項は「質権者は・・・物について質権を有する」と規定し、
(2) 物上代位に関する304条の「先取特権(質権)は、・・・物に対しても、行使することができる」とし、
(3) 上記(1)と(2)を区別し、(1)の場合は、質権自体が当該財産のうえに存続し、かつ、(元々の質権が対抗要件を具備していれば)対抗要件も維持される趣旨のように思うのですが・・・。
Posted by 田舎の弁護士 at 2006年07月07日 19:52
A7
1 金銭等(金銭の支払い前だと,正確には,金銭交付請求権だと思いますが)に質権の効力が及ぶということです。
2 会社法151条は,旧商法208条の文言を現代語化したものですが,物上代位と解するものと思います。物上代位の場合でも,元の質権が第三者対抗要件を備えていれば,金銭等も対抗要件を備えるものと思いますが,特定性維持のために,差押えは必要です。

Q8
このブログの内容を本にして出版していただくということはやはり無理なのでしょうか。
Posted by 参事官室によく電話する人 at 2006年07月06日 12:24
A8
そうですね。このブログに手を入れるのは大変なので,このまま出版というのは望み薄です。
このブログの質問が貯まったところで,千問の道標を補充することは可能だと思いますが,当分は,無理です。

生の事実

 先週は,少し仕事が楽だったため,毎日のように飲み会が入り,しかも,任天堂DSの「逆転裁判」にはまってしまったため,深夜に「異議あり!」と独り言をつぶやく不気味な酔っ払いオヤジと化していました。
 そのため、ブログを書く時間がなくなり、「まずい・・」と思っては朝に更新という悪循環。学校の近くに住んでいる子供ほど遅刻率が高いのと同じで,「余裕がある」と思うと,あっという間にその余裕を食いつぶしてしまうのが人の常であることを痛感した一週間でした。

 さて、週末になっても、いまいち緊張感がないので、今日は会社法の話はやめて,AHEさんの
「先日、キムタクの「HERO」を見ていて思ったのですが、検察官が実際に街に出て司法巡査とともに現場検証を行うことなんて実際にあるのでしょうか???」
という質問に答えながら、検察官の仕事について、ちょっとエッセーしてみます。

 検事を長くやっていると、私みたいに民事局に島流しになったり(笑)、刑事局や矯正局などでバリバリ仕事をしたり、証券取引監視委員会・公正取引委員会・外国の日本大使館等に出向したり、刑事以外の仕事に携わることも多いのですが、任官15年目くらいまでは、全国の地方検察庁で刑事事件の捜査・公判をするのがメインの仕事です。
 かくいう私も、約10年間は、刑事事件ばかりやっていました。

 検察官が、どの程度の事件を平行してやるのかは、事件の種類によって全然違います。独自捜査で贈収賄や経済事件をやる場合には一つの事件に10人以上の検事が数ヶ月もかかりきりになることもありますし、覚せい剤担当の若い検事だと、一人で自己使用ばかり20件以上身柄事件を抱えていることもあると思います。

 とはいえ、大雑把にいえば、同時並行で、身柄事件5―10件と、在宅事件10−20件というのが相場でしょうか。

 皆さんもご承知のように、身柄事件は、検察庁に送致されて10日又は20日で勾留が切れるので、通常その時点で起訴するかどうかを決めなければいけませんし、在宅事件も油断して処理を先延ばしにすると、在庫が増えすぎて、だんだん気が遠くなってしまいますから、限られた時間で、確実に事件処理をしていく必要があります。「時間が先、内容が後」という記事を書いたことがありましたが、身柄事件は、勾留期間を1秒過ぎても、違法勾留になりますから、まさに「時間が先」の極地です。

 また、参考人が、仕事等の都合で、夜や休日しか検察庁に来ることができないのならば、夜や休日に事情聴取をするのは当たり前ですし、参考人が検察庁に来るのが難しいのならば、時間をやりくりして、出張するのも、日常茶飯事。検察官は、
「参考人が勾留21日目まで海外出張で帰ってこないので、勾留期間を21日間にしてください」
というワガママを言うことができないので、自分の仕事時間を証人の都合に合わせざるをえません(裁判所も、裁判員制度が開始されれば、短期間で集中証拠調べをしなければならないので、きっと、証人のために、夜間開廷や休日開廷をしてくれるのではないかと思っているのですが(笑))。

 このように、検察官は、複数の事件を、切迫した時間制限の中で、次々と処理していかなければならないものの、どんなに忙しくても、否認事件などでは、「現場」の確認をします。

 警察官と一緒に現場に赴いて実況見分に立会い、時には、自分一人で現場付近を歩いてみたりして、被疑者、被害者、証人の視野に何が入っていたのかを自分の目で確認するのは、捜査の鉄則です。

 なぜ、検事が現場を大事にするかというと、事実認定は「生(なま)の事実」の把握から出発するからです。

 さて、この「生」という言葉には
1 法的評価・社会的評価を含まない事実
2 今まさに目の前にあるかのような血の通った事実
という2つの意味を込めています。

1 法的評価・社会的評価を含まない事実
 ロースクール生や司法修習生は、下手に法律をかじっているので、よく
 「法的評価を加味しながら、事実認定をする」
という間違いを犯します。

 例えば、葉玉が、息子と一緒にコンビニに言ったところ、息子から「これ買って」と言われて、ウーロン茶のペットボトルを受け取り、そのウーロン茶と現金150円をカウンターに置いたところ、店員さんが、「ありがとうございます」と言って150円をレジに入れたとしましょう。

 この場合、生の事実は、今言ったとおりなのに、いきなり
 「葉玉とコンビニとの間にウーロン茶の売買契約が成立した」
という法的評価が加わった事実を証拠から直接認定しようするのです。
 
 でも,これはダメ。なぜかというと,事実の認定と事実の法的評価を混同すると,法的評価をするだけで思考が停止してしまい、重要な間接事実や証拠を集めようとしなくなる可能性があるからダメなのです。

 例えば、先の事例で、葉玉と店員さんに事情聴取を行い、「ウーロン茶を売り買いしましたか?」と聞いたら、二人とも「はい。」と答えるでしょう。
 ここで「売買は成立した」と思い込んでしまうと、大間違い。

 例えば、店内の防犯カメラを調べたところ、実は、葉玉の息子は、見知らぬオジさんから、その店の商品ではない「毒入り。飲んだら危険。死ぬで。」と書かれたウーロン茶のペットボトルを渡されていて、それを何も知らずに、葉玉に渡していたということが分かり、しかも、そのウーロン茶をPOSに通した結果、未登録の商品だったためエラーが出ていたという証拠が出てきたら、どうでしょう。
 本当に、葉玉とコンビニの間に、そのウーロン茶について「売買契約が成立した」ということができるのでしょうか?

 生の事実を前提にすれば,(1)契約が成立した上で錯誤があるという人もいれば、(2)店員には、店内にある物以外の物を売る代理権がないという人もいれば、(3)葉玉たちには、毒入りウーロン茶の売り買いをする意思はないし、他のウーロン茶を売買する意思を見出そうとしても、サントリーなのかアサヒなのかそれ以外なのか、売買の対象となる物が特定していないから、契約が成立していないという人もいるのではないでしょうか。
 いずれにせよ、「当事者が売買したと証言すれば、売買契約の成立が認められる」という勘違いをして、思考停止をすると、生の事実が判明したときに、大慌てすることになります。

 だからこそ、検察官は、捜査をする際に、法的に意味があるかどうかということをとりあえず度外視して、「生の事実として何があったか」を調べなければならず、一番「生」に近い現場の確認を重視するのです。
 例えば、被疑者が被害者を包丁で刺したという事件で、現場に行って、被疑者の足跡と血痕が50センチしか離れていないのか、2メートル離れているのかによって犯行態様は違いますし,殺意の有無にも影響するかも知れません。もちろん,50センチなのか,51センチなのかというレベルでは,大した違いはないのかもしれませんが,「大した違いはない」という,評価を含んだ事実認定の危険性を知る検察官は,「大した違いがあるのかないのかはともかく,まず生の事実としてどんな事実があるのか」を確認するはずです。
 このように事実認定とは,評価を含まない生の事実を認定することなのです。
 ロースクール生の中には,「新司法試験の問題は,事実認定の問題が多くて難しいです」と言う人もいますが,新司法試験では,このような事実認定の問題は出ておらず,単に
①生の事実の中から,法的に意味のある事実をピックアップしてくる
②ピックアップした事実について法的評価を加える
ということが要求されているだけであり,そこらへんの違いが分からないうちは,マダマダ修行が足りない感じです。

2 今まさに目の前に見えているかのような血の通った事実
 事実認定は,現在,目の前にある証拠を出発点として,時を遡り,過去に存在していた事実にたどり着く時間旅行です。
 しかも,時間は,すべての事象を風化しますから,ハリーポッターの秘密の部屋を一緒に見にいったのが,妻だったのか,昔の彼女だったのかが分からなくなったりするのと同じように,過去の事実は,時間の経過によって,血の通った現実から血の通わない物語へと変化していきます。

 他方,事件と捜査,捜査と審理,審理と判決の間には,必ず時間が流れており,長い裁判となれば,事件から十年以上経過して,証拠調べが行われることさえあるのです。

 ですから,検察官は,①現在ある証拠から確実に認定できる事実を積み上げていき,過去に向かって一歩一歩遡り,犯行時に存在した事実を,フィクションではなく,目の前に見えているかのような血の通った事実として捉えることができるようにする,②自分の目の前に現れた事実が,長い裁判を経ても,血の気を失わないようにするために,適切な形で証拠化する必要があるのです。
 すなわち,検察官の仕事は
 時間との戦い,風化との戦い
であり,この戦いを制するするために
 「現場」
という武器を大事にするのです。

 被疑者の供述であれ,証人の供述であれ,供述証拠は,人の行動や客観的証拠の「意味」を明らかにするために必要な証拠であり,また,裁判官に分かりやすいという利点もあります。
 しかし,供述証拠は,内容自体の正確性は客観的証拠に劣り,また,風化が早く,時には,故意に真実が歪められているときさえあります。
 そのため,供述証拠だけで組み立てられた事件は,安定した基礎がなく,一つの供述が崩れることにより,全体が壊れる危険をはらんだ脆さがあります。

 そこで,検察官は,現場を見て,写真やビデオや実況見分調書により,動くことのない基礎を作った上で,被疑者や証人に現場のことを語らせ,供述者しか気付かなかった現場の状況をさらに写真等で証拠化する・・・。
 こうした作業を通じて,現場という客観的証拠に「事件との関連性」という意味を与えていくともに,供述証拠の中に「風化しない部分」を作り上げていくのです。

 凶器のみつからない事件はありますが,現場がない事件はありません。現場は,どんな事件にも共通して存在する客観的証拠であり,だからこそ,検察官は,立証の確実な拠り所として,現場を大事にし,現場に赴くわけです。

 以上のように,検察庁には,キムタクのように現場に出る検察官はたくさんいます。
 HEROの中の検事は,若干,ドラマ化されているものの,リアルさも兼ね備えているように思いますし,逆に,全国の検察庁では,日々,HERO並のドラマが起こっています。
 ただし,そのドラマを演じている検事が,キムタクや阿部寛並のルックスかどうかについては,黙秘するしかありません。

(質問コーナー)
Q1
会社法の計算規則、財務諸表規則、企業会計基準委員会が出す企業会計基準の関係がよく判りません。会計の勉強をし始めたばかりですので良く分かりません。
Posted by ふるたち at 2006年07月06日 22:36

A1
 以前記事にしたので,そちらにも目を通してもらいたいのですが,一頃に,会計と言っても,何を目的とする会計かによっていろいろな会計があり,誤解をおそれず言えば,メジャーな俗称として,会社法会計,証券取引法会計,税務会計があります。
 会社法会計は,会社法により作成が義務づけられている貸借対照表等や会計帳簿を作成するための会計です。株主に交付したり,公告をする貸借対照表等の作成や分配可能額を明らかにすることを重要な目的としています。
 そして,会社法では,会計帳簿は,一般に公正妥当と認められる会計慣行に従って作成されることとされています。
 この会計慣行がどのようなものかについては,会社法・会社計算規則は,特に規定しておらず,会社計算規則は,そういう会計慣行に従って,会計帳簿を作成する場合の作成方法について規定を置いています。
 証券取引法会計は,有価証券届出書等を提出する場合に提出する財務諸表を作成するための会計です。
 その財務諸表で用いられる会計基準がバラバラだと,投資家が各会社の財務状況を正確に把握することができないので,財務諸表規則1条1項は,「財務諸表」の用語、様式及び作成方法は、財務諸表規則で定められていない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとしています。
 そして,同条2項は,企業会計審議会により公表された企業会計の基準は、1項に規定する一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に該当するものとしています。
 以前は,2項に基づき企業会計審議会により会計基準が公表されていましたが,現在は,民間団体である企業会計基準委員会が開発した会計基準を,金融庁が,財務諸表等規則等に係る事務ガイドラインにおいて,一般に公正妥当と認められる企業会計の基準であると確認することによって,証券取引法会計の基準として使えるようにしています。
 翻って,会社法会計を見ると,会社法は,証券取引法・財務諸表規則・ガイドラインのように企業会計基準委員会が開発した会計基準に法的根拠を与えるようなプロセスを採っていません。それどころか,かつては,商法は商法,証取法は証取法ということで,バラバラの会計基準を用いていました。
 ただ,それでは,会社が似たようなものを沢山作らなくてはいけなくなり,大変なので,企業会計基準委員会が開発した会計基準が正当な会計慣行として認められる限り,会社法会計としても許容できるように,それと矛盾した会計基準を会社計算規則で定めることはしていないのです。

Q2
取締役会書面決議についてお尋ねいたします。
取締役の全員が「書面または電磁的記録により」同意の意思表示をしたとき、とは「書面又は電子メールにより」と解説される場合が多いですが、社内の電子稟議システム等を用いて取締役の全員が同意の意思表示を行い、同一電子稟議内において監査役が異議がない旨の意思表示をなした場合、会社法上の要件をみたすでしょうか。
稟議なので、ある取締役が他の取締役の意思表示をみた後に自らの意思表示を行うこともありえます。各取締役が電子稟議上で同意の意思表示を行った日は確定しますが時刻は記録されません。全員が同意の意思表示を行った後に、その記録を印刷して保存することはできます。
Posted by CCC at 2006年07月06日 15:12
A2
電子稟議システムでも,電磁的記録が残るものであれば,結構です。
電磁的記録ではなく,印刷した書面しか残らないとすると,その書面による同意の意思表示ということになるでしょう。
なお,時刻の記録は,不要です。

Q3
役員の任期の起算日についての質問です。千問のQ380p286には,「なお,株主総会の決議で,選任決議の効力発生時期を遅らせたとしても,任期の起算点については,選任決議の日と解すべきである」旨の記載がありますが,これは,補欠役員の任期の起算日を選任決議の日から起算することにしたことに伴い,通常の役員の選任局面においても選任決議に条件・期限を付したか否かを問わず,起算日を選任決議の日からとする趣旨であり,法制審議会で出されていた条件・期限付選任決議では,条件成就・期限到来の日から起算するという見解を修正したものと理解してよいのでしょうか。
Posted by 猫太郎 at 2006年07月06日 15:47
A3
 旧商法は,起算日は就任時でしのたで,条件成就・期限到来して就任しないと起算することができませんでしたが,会社法は,起算日が選任日なので,選任決議の日から起算します。

Q4
代表取締役と第三者との取引の相手方保護についてお教えください。
内規違反の取引行為における第三者保護において、「一定の取引をなすには取締役会の承認が必要である」という内規の存在について悪意でも、取締役会の承認があったと誤信していた場合には、民法110条類推によって相手方は保護され(p248(三)以下)、
重要な財産の処分など、法令上取締役会の承認が必要な取引において、代表取締役が取締役会の承認をえずに取引をおこなった場合でも、相手方が取締役会の承認があった誤信していた場合には、民法93条類推によって保護される(p249(二)以下)、
とのことですが、両者とも取締役会の意思と代表者の意思表示の不一致なので、前者の方も110条類推ではなくて93条類推とした方がすっきりするように思えるのですが、前者については93条類推とすることができない理論上の問題のようなものがあるのでしょうか?
Posted by てんかお at 2006年07月06日 21:31
A4
その問題は,株式会社における意思決定機関が誰かという問題ではなく,代表取締役の代表権に加えられた制限がされている場合に,その制限を解除するための要件として取締役会の承認が要求されているのだと思います。
 会社の意思決定自体が欠けている場合には,93条類推でいいと思いますが,代表権の制限の解除要件が充たされていないのに,代表取締役が代表権を行使した場合には,民法110条類推の方が正しいと思います。

Q5
会社法施行前から存在する株式会社の株式譲渡制限承認機関について素朴な質問をさせて下さい。
整備法76条3項では、旧株式会社の定款に「新株式会社の承認を要する旨の定め」があるものと擬制しています。旧株式会社の定款にたとえ「取締役会」と規定されていても、同条項により「新株式会社」と擬制されると解されます。であれば、当該会社が取締役会を廃止する場合でも、承認機関については定款変更を行う必要はないと思えるのですが、如何でしょうか?
Posted by chigmog at 2006年07月07日 10:57
A5
定款変更手続をとる必要はありません。
ただし,登記は,みなし規定がないので,取締役会を廃止した場合には,「取締役会の承認」という登記を「株式会社の承認」に変更する必要があります。

Q6
複数の株主が存在する会社で、その内の1名のみに無償で募集株式の発行は可能なのでしょうか?
Posted by ike at 2006年07月07日 19:24
A6
できません。
株式無償割当ては,株主の保有株式数に応じて割当てを行う場合のみ利用できますし,通常の募集株式の募集は,「無償」を認めていません。

Q7
1 会社法151条1項は「質権は・・・金銭等について存在する」と規定し,その他条項においても「質権は・・・〇〇について存在する」と規定していますが,どのような意味を持つのですか。
2 民法では、
(1)366条3項は「質権は、その供託金について存在る」とし、同条4項は「質権者は・・・物について質権を有する」と規定し、
(2) 物上代位に関する304条の「先取特権(質権)は、・・・物に対しても、行使することができる」とし、
(3) 上記(1)と(2)を区別し、(1)の場合は、質権自体が当該財産のうえに存続し、かつ、(元々の質権が対抗要件を具備していれば)対抗要件も維持される趣旨のように思うのですが・・・。
Posted by 田舎の弁護士 at 2006年07月07日 19:52
A7
1 金銭等(金銭の支払い前だと,正確には,金銭交付請求権だと思いますが)に質権の効力が及ぶということです。
2 会社法151条は,旧商法208条の文言を現代語化したものですが,物上代位と解するものと思います。物上代位の場合でも,元の質権が第三者対抗要件を備えていれば,金銭等も対抗要件を備えるものと思いますが,特定性維持のために,差押えは必要です。

Q8
このブログの内容を本にして出版していただくということはやはり無理なのでしょうか。
Posted by 参事官室によく電話する人 at 2006年07月06日 12:24
A8
そうですね。このブログに手を入れるのは大変なので,このまま出版というのは望み薄です。
このブログの質問が貯まったところで,千問の道標を補充することは可能だと思いますが,当分は,無理です。

2006年7月 6日 (木)

ゆとり教育

昨日、ふと、次の文章を目にしました。

「我々はこれからの子供たちに必要となるのは、いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力であり、また、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性であると考えた。たくましく生きるための健康や体力が不可欠であることは言うまでもない。我々は、こうした資質や能力を、変化の激しいこれからの社会を[生きる力]と称することとし、これらをバランスよくはぐくんでいくことが重要であると考えた。」

これは、1996年に中教審が「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」という諮問に対する第1次答申の中で掲げた、いわゆる「ゆとり教育」の出発点となった文章です。

どこかで見たような文章だなあと思って、調べたところ、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律2条は、法曹養成の基本理念の理念として、次のように規定されていました。
「法曹の養成は、国の規制の撤廃又は緩和の一層の進展その他の内外の社会経済情勢の変化に伴い、より自由かつ公正な社会の形成を図る上で法及び司法の果たすべき役割がより重要なものとなり、多様かつ広範な国民の要請にこたえることができる高度の専門的な法律知識、幅広い教養、国際的な素養、豊かな人間性及び職業倫理を備えた多数の法曹が求められていることにかんがみ、国の機関、大学その他の法曹の養成に関係する機関の密接な連携の下に、次に掲げる事項を基本として行われるものとする」

2つの文章は、ともに教育に関する理念を述べた文章だけあって、言おうとしていることは、よく似ています。

私も、これらの理念にはどちらも大賛成ですが・・・。

ただ、「ゆとり教育」の実現方法として採られた学習内容の削減や教育時間の削減等の政策については、正直「こいつら、本当の意味の生きる力を分かってるのか?」という気持ちを10年間抱き続けており、「自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力」を養うためには
1 知識習得の楽しさ
2 基本的な知識の反復練習
3 応用的な問題について、教師による丁寧なフォローの中でのトライ
4 問題を解いた生徒に与える客観的評価(良かったか悪かったかを明確にし、良かったら褒め、駄目なときは、なぜ駄目だったかその原因を教師がともに考え、励ますこと)
5 1から4を実現するための教育時間の増加
が必要不可欠だと考えています。
ところが、実際の「ゆとり教育」は、そのような教育ではありませんでした。

 ゆとり教育の理念で目指していたものは、ジーコが目指していたブラジルのサッカーによく似ています。
 しかし、ブラジル人が、自分で考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決するサッカーができるのは、子供のころからサッカーボールを蹴り続け、数限りないリフティング・ドリブル・パス・シュートの練習をし、先生や先輩が、驚くようなプレイで難しい局面を打開する姿を直接見て、それを自分の具体的イメージとして捉えて、自分のものにするために更に練習を繰り返すからです。
 川渕キャプテンが、「サッカーの練習内容を削減し、練習時間を減らせば、ブラジル人のようなサッカーができるようになるはずだ。」と高らかに宣言したら、即座に辞任を迫られるでしょう。

 「ゆとり教育」に欠けているもの、例えば、「基本の反復練習」の大切さをきちんと分かっていた陰山先生は、「100マス計算」で名をあげました。
 100マス計算で実現しようとしたことは、すごく当たり前のことですが、基本の反復練習を一種のゲームとして成立させたところに鋭い視点があります。

 陰山先生は
 生きる力を身につけるためには、「基本の反復練習」を楽しくやること
と考えていたのではないでしょうか。

 法曹として生きる力を身につける場合も同じです。
 法科大学院が、その理念を実現するためには、「基本の反復練習」をはじめ上記のような色々な訓練を楽しくやらせることが必要であることを認識する必要があると思います。
 
 条文がどこにあるかを探せない生徒に、分厚い最高裁判決を読ませるのは、憲法の禁止する残虐な刑罰にあたります(笑)。
 条文の文言を見たことがない生徒に、難しい要件事実を流れるように語っても、その流れの中で、生徒の目が泳ぐだけです。
 条文の趣旨も知らない生徒に、自分の意見を語らせても、青年の主張以上の意味はなく、法律家としての表現力は身につきません。

 ロースクールの生徒に限らず、旧司法試験、司法書士試験、公認会計士試験の受験生等法律を勉強する者は、何よりもまず、①条文を探す訓練、②条文の文言を事実に形式的にあてはめる訓練、③条文の趣旨を言えるようにする訓練をするのが出発点です。
 そして、その反復練習によって身につけた知識をベースに、先生の丁寧なフォローのもとでいろいろな応用問題をこなし、ときには先生の驚くべき能力で見事な解決を示してもらい、それを真似る。

 そうした訓練の延長線上にしか
「多様かつ広範な国民の要請にこたえることができる高度の専門的な法律知識、幅広い教養、国際的な素養、豊かな人間性及び職業倫理を備えた」専門家
は誕生しません。

 ゆとり教育が犯した間違いを、法科大学院が後追いする必要はないので、法曹を目指す若者のために、理想を実現する素晴らしい教育を行って欲しいと切に思っています。
 それができなければ、課題によって、生徒のゆとりすら奪ってしまうというのは避けるべきなんでしょうね。

(質問コーナー)
Q1
早速ですが、実際に株券を発行している会社が譲渡制限と株券不発行を同時にする場合の手続きについてご教示ください。
全株主が株券不所持申し出をし、当該会社の株主名簿にその旨に記載し、または記録されたときに、株券は無効となります。
そうすれば、株式の譲渡制限の設定及び株券廃止の通知等の省略が可能と思われますが、いかがでしょうか?
もちろん株式買取請求権の20日期間はあけてのことです。
法219条但書により、譲渡制限は通知も不要と解せますが、株券廃止の通知に関しては、条文根拠をうまく探せず、少々不安です。よろしくお願いいたします。
Posted by 法務部員1 at 2006年07月05日 11:54
A1
全株主が株券不所持申し出をしている場合が前提ですね。
譲渡制限の設置の通知については、219条1項1号の株券提出公告及び通知は不要ですが(219条ただし書)、116条3項の株式買取請求権の告知のための通知は省略することができません。
株券廃止の通知というのは、218条1項の公告及び通知のことだと思いますが、これは、株券が全くでていない場合でも、省略することはできません。219ただし書のような規定がありませんから。

Q2
私が現物出資財産等填補責任(52条1項)の趣旨を株式引受人間の公平の確保に絞りきれない理由は、不足の現物出資等を行った発起人以外の発起人は、いわば「被害者」のように思えて、そのような「被害者」に同責任を負わせる「必要性」が、発起設立の場合にはよくわからないからです。すなわち極端な例では、発起人が2人で発起設立を行う場合に、一人が不足の現物出資を行い、もう一人が金銭出資を行った場合に、金銭出資を行った方の発起人が同責任を負うことの「許容性」があるのはわかるのですが、「必要性」があるのかよくわからないのです。また何か誤解があるものと存じますが、ご教示頂けますと幸いです。
Posted by kiji at 2006年07月05日 13:44
A2
発起人の間でも、実際には、設立事務を行う上での役割分担はあり、金銭出資しかしていないけれども、発起人代表として設立事務の中心を担っている人もいれば、ほとんど設立事務は行わず、単なる引受人と変わらないように人もいます。単なる引受人のような人は、現物出資の客観的価額が不足しているような場合には、発起人代表の人に「お前が責任をもって設立事務をやっていたんだから、ちゃんと補填しろ」と言いたくなるでしょう
だから、現物出資をしたかどうかにかかわらず、発起人であることを根拠に填補責任を認める必要があります。
もちろん、単なる引受人的な発起人も、その責任を負うことになりますが、法律上、その発起人と設立の中心人物との間を区別する指標がありませんし、その発起人が填補責任を履行した場合には、現物出資発起人に対して求償することができますから、最終的には、引受人間の公平を図ることができます。

Q3
6月30日に質問させて頂きました、旧試ナブルな人です。自分本位な書き方をしてしまい、すみませんでした。
要件1・2・3とは、会社法100問の論点<687>「事業」の意義で出てくる、
1・一定の事業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産の全部または一部の譲渡行為であって、
2・その財産によって営んでいた活動の全部または一部を譲受人に受け継がせ、
3・譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に21条に定める競業避止義務を負う場合、のことです。
そして、質問を一言でまとめますと、
事例問題で出題された時に、この要件3をどのような言い回しであてはめればよいのか。
ということになります。
Posted by 旧試ナブルな人 at 2006年07月05日 15:02
A3
3の要件は、21条の義務を負わない特約をした場合に、467条1項が適用されないというためにあると考えればよいと思います。

Q4
 商法時代から存続している株式会社(譲渡制限なし)が、会社法施行後になってから譲渡制限をつけた場合、みなし規定などの関係で何か留意すべき事項というのはあるでしょうか?大会社以外に限定してということで結構なのですが。
Posted by 濱田 at 2006年07月05日 15:58
A4
話が抽象的なので、なんとも言いようがありませんが、譲渡制限をつけること自体については、会社法の普通の手続きを取ればよいと思います。

Q5
法第319条320条及び同370条371条の株主総会、取締役会の決議・報告の省略についてお教え下さい。
会社法施行規則72条、101条のそれぞれ4項でこの場合にも「議事録」を作成すると定められており、議事録に記載すべき事項も定められています。商法時には株主総会の決議の省略について議事録を作成するのではなく、代表取締役が株主の同意した書面を添付して決議内容を証明した書面を作成し、登記等の際にはそれを添付していたと思います。
会社法施行規則には議事録の記載内容としては全員が同意の意思表示をしたことを明確に記載する必要は必ずしもなく、また、取締役会については出席ということもないので、この議事録には法369条3項の署名捺印義務は無いと理解して良いのでしょうか。
例えば施行規則101条3項5号の記載も不要ですか。
記載事項は実質議事録の用途、必要性により異なるとは思いますが、規則の3項と4項の関係について教えてください。
Posted by 中小企業の味方 at 2006年07月06日 00:30
A5
「議事録の記載内容としては全員が同意の意思表示をしたことを明確に記載する必要は必ずしもなく」というところがどういう意味で書かれているのかが気になるところですが、役会決議の省略が行われた場合には、取締役会に出席した取締役はいないので、議事録の署名義務はありません。
また、役会決議の省略の場合には、101条3項は適用されません。

Q6
「千問の道標」Q41の回答で、払込みを証する書面に関して、預金通帳の写しについて、「残高証明を求めなければならないものではなく、また具体的な入金の事実が明らかとならない残高証明では、預金通帳の写し等に代えることはできない。」との回答ですが、これは「残高証明では足りない」という意味だけでなく、「預金通帳の残高は関係ない」と解釈してよろしいでしょうか。
Posted by みかえる at 2006年07月06日 01:31
A6
登記申請時の残高は関係ありません。残高証明は不要です。

Q7
 私、とある自治体の法務担当職員なのですが、公益法人行政で
関係部局の意見が割れているため、ご意見を聞かせていただければ幸いです。
 事案は、とある施設の指定管理者が、今回の会社法施行で特例有限会社化した法人なのですが、株式会社に組織変更しようとしています。
 当県では「指定管理者は、その名称、主たる事務所の所在地又は代表者に変更があったときは、指定管理者変更事項届出書(第二号様式)により、速やかにその旨を知事に届け出なければならない。」という規則を置いているのですが、今回の特例有限会社の株式会社への移行は、「名称の変更」で捉えることができるのかどうか、ご教示頂けると幸いです。
(私個人は見出しの「移行」の言葉からも実態に着目して名称変更で捉えられると思うのですが、、)
A7
その規則の解釈は、その県で決めるべきことなので、私は口出しすることはできません。
ただ、特例有限会社は、株式会社であり、「株式会社に組織変更」するのではなく、単に商号を「有限会社」から「株式会社」に変更するだけです。

ゆとり教育

昨日、ふと、次の文章を目にしました。

「我々はこれからの子供たちに必要となるのは、いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力であり、また、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性であると考えた。たくましく生きるための健康や体力が不可欠であることは言うまでもない。我々は、こうした資質や能力を、変化の激しいこれからの社会を[生きる力]と称することとし、これらをバランスよくはぐくんでいくことが重要であると考えた。」

これは、1996年に中教審が「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」という諮問に対する第1次答申の中で掲げた、いわゆる「ゆとり教育」の出発点となった文章です。

どこかで見たような文章だなあと思って、調べたところ、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律2条は、法曹養成の基本理念の理念として、次のように規定されていました。
「法曹の養成は、国の規制の撤廃又は緩和の一層の進展その他の内外の社会経済情勢の変化に伴い、より自由かつ公正な社会の形成を図る上で法及び司法の果たすべき役割がより重要なものとなり、多様かつ広範な国民の要請にこたえることができる高度の専門的な法律知識、幅広い教養、国際的な素養、豊かな人間性及び職業倫理を備えた多数の法曹が求められていることにかんがみ、国の機関、大学その他の法曹の養成に関係する機関の密接な連携の下に、次に掲げる事項を基本として行われるものとする」

2つの文章は、ともに教育に関する理念を述べた文章だけあって、言おうとしていることは、よく似ています。

私も、これらの理念にはどちらも大賛成ですが・・・。

ただ、「ゆとり教育」の実現方法として採られた学習内容の削減や教育時間の削減等の政策については、正直「こいつら、本当の意味の生きる力を分かってるのか?」という気持ちを10年間抱き続けており、「自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力」を養うためには
1 知識習得の楽しさ
2 基本的な知識の反復練習
3 応用的な問題について、教師による丁寧なフォローの中でのトライ
4 問題を解いた生徒に与える客観的評価(良かったか悪かったかを明確にし、良かったら褒め、駄目なときは、なぜ駄目だったかその原因を教師がともに考え、励ますこと)
5 1から4を実現するための教育時間の増加
が必要不可欠だと考えています。
ところが、実際の「ゆとり教育」は、そのような教育ではありませんでした。

 ゆとり教育の理念で目指していたものは、ジーコが目指していたブラジルのサッカーによく似ています。
 しかし、ブラジル人が、自分で考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決するサッカーができるのは、子供のころからサッカーボールを蹴り続け、数限りないリフティング・ドリブル・パス・シュートの練習をし、先生や先輩が、驚くようなプレイで難しい局面を打開する姿を直接見て、それを自分の具体的イメージとして捉えて、自分のものにするために更に練習を繰り返すからです。
 川渕キャプテンが、「サッカーの練習内容を削減し、練習時間を減らせば、ブラジル人のようなサッカーができるようになるはずだ。」と高らかに宣言したら、即座に辞任を迫られるでしょう。

 「ゆとり教育」に欠けているもの、例えば、「基本の反復練習」の大切さをきちんと分かっていた陰山先生は、「100マス計算」で名をあげました。
 100マス計算で実現しようとしたことは、すごく当たり前のことですが、基本の反復練習を一種のゲームとして成立させたところに鋭い視点があります。

 陰山先生は
 生きる力を身につけるためには、「基本の反復練習」を楽しくやること
と考えていたのではないでしょうか。

 法曹として生きる力を身につける場合も同じです。
 法科大学院が、その理念を実現するためには、「基本の反復練習」をはじめ上記のような色々な訓練を楽しくやらせることが必要であることを認識する必要があると思います。
 
 条文がどこにあるかを探せない生徒に、分厚い最高裁判決を読ませるのは、憲法の禁止する残虐な刑罰にあたります(笑)。
 条文の文言を見たことがない生徒に、難しい要件事実を流れるように語っても、その流れの中で、生徒の目が泳ぐだけです。
 条文の趣旨も知らない生徒に、自分の意見を語らせても、青年の主張以上の意味はなく、法律家としての表現力は身につきません。

 ロースクールの生徒に限らず、旧司法試験、司法書士試験、公認会計士試験の受験生等法律を勉強する者は、何よりもまず、①条文を探す訓練、②条文の文言を事実に形式的にあてはめる訓練、③条文の趣旨を言えるようにする訓練をするのが出発点です。
 そして、その反復練習によって身につけた知識をベースに、先生の丁寧なフォローのもとでいろいろな応用問題をこなし、ときには先生の驚くべき能力で見事な解決を示してもらい、それを真似る。

 そうした訓練の延長線上にしか
「多様かつ広範な国民の要請にこたえることができる高度の専門的な法律知識、幅広い教養、国際的な素養、豊かな人間性及び職業倫理を備えた」専門家
は誕生しません。

 ゆとり教育が犯した間違いを、法科大学院が後追いする必要はないので、法曹を目指す若者のために、理想を実現する素晴らしい教育を行って欲しいと切に思っています。
 それができなければ、課題によって、生徒のゆとりすら奪ってしまうというのは避けるべきなんでしょうね。

(質問コーナー)
Q1
早速ですが、実際に株券を発行している会社が譲渡制限と株券不発行を同時にする場合の手続きについてご教示ください。
全株主が株券不所持申し出をし、当該会社の株主名簿にその旨に記載し、または記録されたときに、株券は無効となります。
そうすれば、株式の譲渡制限の設定及び株券廃止の通知等の省略が可能と思われますが、いかがでしょうか?
もちろん株式買取請求権の20日期間はあけてのことです。
法219条但書により、譲渡制限は通知も不要と解せますが、株券廃止の通知に関しては、条文根拠をうまく探せず、少々不安です。よろしくお願いいたします。
Posted by 法務部員1 at 2006年07月05日 11:54
A1
全株主が株券不所持申し出をしている場合が前提ですね。
譲渡制限の設置の通知については、219条1項1号の株券提出公告及び通知は不要ですが(219条ただし書)、116条3項の株式買取請求権の告知のための通知は省略することができません。
株券廃止の通知というのは、218条1項の公告及び通知のことだと思いますが、これは、株券が全くでていない場合でも、省略することはできません。219ただし書のような規定がありませんから。

Q2
私が現物出資財産等填補責任(52条1項)の趣旨を株式引受人間の公平の確保に絞りきれない理由は、不足の現物出資等を行った発起人以外の発起人は、いわば「被害者」のように思えて、そのような「被害者」に同責任を負わせる「必要性」が、発起設立の場合にはよくわからないからです。すなわち極端な例では、発起人が2人で発起設立を行う場合に、一人が不足の現物出資を行い、もう一人が金銭出資を行った場合に、金銭出資を行った方の発起人が同責任を負うことの「許容性」があるのはわかるのですが、「必要性」があるのかよくわからないのです。また何か誤解があるものと存じますが、ご教示頂けますと幸いです。
Posted by kiji at 2006年07月05日 13:44
A2
発起人の間でも、実際には、設立事務を行う上での役割分担はあり、金銭出資しかしていないけれども、発起人代表として設立事務の中心を担っている人もいれば、ほとんど設立事務は行わず、単なる引受人と変わらないように人もいます。単なる引受人のような人は、現物出資の客観的価額が不足しているような場合には、発起人代表の人に「お前が責任をもって設立事務をやっていたんだから、ちゃんと補填しろ」と言いたくなるでしょう
だから、現物出資をしたかどうかにかかわらず、発起人であることを根拠に填補責任を認める必要があります。
もちろん、単なる引受人的な発起人も、その責任を負うことになりますが、法律上、その発起人と設立の中心人物との間を区別する指標がありませんし、その発起人が填補責任を履行した場合には、現物出資発起人に対して求償することができますから、最終的には、引受人間の公平を図ることができます。

Q3
6月30日に質問させて頂きました、旧試ナブルな人です。自分本位な書き方をしてしまい、すみませんでした。
要件1・2・3とは、会社法100問の論点<687>「事業」の意義で出てくる、
1・一定の事業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産の全部または一部の譲渡行為であって、
2・その財産によって営んでいた活動の全部または一部を譲受人に受け継がせ、
3・譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に21条に定める競業避止義務を負う場合、のことです。
そして、質問を一言でまとめますと、
事例問題で出題された時に、この要件3をどのような言い回しであてはめればよいのか。
ということになります。
Posted by 旧試ナブルな人 at 2006年07月05日 15:02
A3
3の要件は、21条の義務を負わない特約をした場合に、467条1項が適用されないというためにあると考えればよいと思います。

Q4
 商法時代から存続している株式会社(譲渡制限なし)が、会社法施行後になってから譲渡制限をつけた場合、みなし規定などの関係で何か留意すべき事項というのはあるでしょうか?大会社以外に限定してということで結構なのですが。
Posted by 濱田 at 2006年07月05日 15:58
A4
話が抽象的なので、なんとも言いようがありませんが、譲渡制限をつけること自体については、会社法の普通の手続きを取ればよいと思います。

Q5
法第319条320条及び同370条371条の株主総会、取締役会の決議・報告の省略についてお教え下さい。
会社法施行規則72条、101条のそれぞれ4項でこの場合にも「議事録」を作成すると定められており、議事録に記載すべき事項も定められています。商法時には株主総会の決議の省略について議事録を作成するのではなく、代表取締役が株主の同意した書面を添付して決議内容を証明した書面を作成し、登記等の際にはそれを添付していたと思います。
会社法施行規則には議事録の記載内容としては全員が同意の意思表示をしたことを明確に記載する必要は必ずしもなく、また、取締役会については出席ということもないので、この議事録には法369条3項の署名捺印義務は無いと理解して良いのでしょうか。
例えば施行規則101条3項5号の記載も不要ですか。
記載事項は実質議事録の用途、必要性により異なるとは思いますが、規則の3項と4項の関係について教えてください。
Posted by 中小企業の味方 at 2006年07月06日 00:30
A5
「議事録の記載内容としては全員が同意の意思表示をしたことを明確に記載する必要は必ずしもなく」というところがどういう意味で書かれているのかが気になるところですが、役会決議の省略が行われた場合には、取締役会に出席した取締役はいないので、議事録の署名義務はありません。
また、役会決議の省略の場合には、101条3項は適用されません。

Q6
「千問の道標」Q41の回答で、払込みを証する書面に関して、預金通帳の写しについて、「残高証明を求めなければならないものではなく、また具体的な入金の事実が明らかとならない残高証明では、預金通帳の写し等に代えることはできない。」との回答ですが、これは「残高証明では足りない」という意味だけでなく、「預金通帳の残高は関係ない」と解釈してよろしいでしょうか。
Posted by みかえる at 2006年07月06日 01:31
A6
登記申請時の残高は関係ありません。残高証明は不要です。

Q7
 私、とある自治体の法務担当職員なのですが、公益法人行政で
関係部局の意見が割れているため、ご意見を聞かせていただければ幸いです。
 事案は、とある施設の指定管理者が、今回の会社法施行で特例有限会社化した法人なのですが、株式会社に組織変更しようとしています。
 当県では「指定管理者は、その名称、主たる事務所の所在地又は代表者に変更があったときは、指定管理者変更事項届出書(第二号様式)により、速やかにその旨を知事に届け出なければならない。」という規則を置いているのですが、今回の特例有限会社の株式会社への移行は、「名称の変更」で捉えることができるのかどうか、ご教示頂けると幸いです。
(私個人は見出しの「移行」の言葉からも実態に着目して名称変更で捉えられると思うのですが、、)
A7
その規則の解釈は、その県で決めるべきことなので、私は口出しすることはできません。
ただ、特例有限会社は、株式会社であり、「株式会社に組織変更」するのではなく、単に商号を「有限会社」から「株式会社」に変更するだけです。

2006年7月 4日 (火)

株主総会議事録の作成者

 ここ数日,取締役が各自代表になっている非取締役会設置会社が取締役会を置く旨の定めを置いたときに
(1)各自代表取締役が,平取締役になるのは,いつか。
(2)取締役会により選定された代表取締役は,退任・重任の登記をする必要がないのか。
という点について,お答えしてきました。
 また,内藤卓さんから,千問Q58の表(P40)取締役会設置会社の設立において,設立時代表取締役による互選がなかった場合に,各自代表になるような記載はおかしいのではないかというご指摘を受けました。
 
 以上の2点について,いろいろと考えて,なるべく会社に負担のないような解釈をするために関係者と調整したいので,どちらも回答をしばらく保留します。ここ数日のこの点についての回答は一旦忘れてください(笑)。

 調整マターといえば,FKさんから「6月23日で、結論を保留された「株主総会議事録の作成者」の結論は出されたのでしょうか。」という厳しいつっこみを頂きました(笑)。
 調整するというのは,回答にすごく時間がかかるということを意味しますので,本当は,もうちょっと待ってくださいといいたいところなんですが,なんとか調整がつきましたので,今日は,興味のない人には興味がなく,興味ある人には,とっても興味がある
「株主総会議事録の作成者」
についてお話しします。

 この問題は,「株主総会議事録の作成者は,改選前の旧取締役か,改選後の新取締役か。」という単純な話ではありますが,株主総会議事録は,登記の添付書面となることから,特に司法書士さんにとっては,重要な問題です。

 以前,私は,この問題について,会社法では,出席取締役の議事録への署名義務がなくなったこと等から,改選後に議事録を作成する場合には,改選後の取締役が作成するべきであると回答していましたが,その後,いろいろな場面を想定したり,調整した結果,次のように回答を変更いたします。

1 株主総会議事録の作成者は,改選前の旧取締役のうちの一人でも,改選後の新取締役のうちの一人であってもよい。ただし,その取締役は議事録を作成する権限が必要である。
2 二人以上の取締役で議事録を作成することもできる。
3 株主総会の議事録の署名義務はないが,登記の添付資料として用いる場合には,署名を要する場合もある。

 まず,改選後の新取締役が,議事録の作成をすることができるというのは,これまで述べてきたところですが,もう一度,理由を整理すると
(1)会社法318条は,株主総会議事録について,議長及び出席取締役の署名義務を廃止し,さらに,会社法施行規則72条3項は,議事録の作成者を「議事録の作成に係る職務を行った取締役」とし,議長及び出席取締役の全員が株主総会議事録を作成するのではなく,取締役のうちで議事録の作成に係る職務を行う者が株主総会議事録を作成することとしている。
(2)この議事録の作成者である取締役は,代表取締役や出席した取締役に限定されていないから,出席したかどうかにかかわらず,当該議事録を作成した時点の取締役のことをいうと解すべきである。
  したがって,議事録の作成が,定時株主総会の終結後に行われたものである場合には,原則として,改選後の新取締役の一人が作成者となる。
(3) 改選前の旧取締役に限定すると解すると,改選前の旧取締役が作成しない場合や死亡等により作成できない場合に,株主・債権者が株主総会議事録の閲覧をすることができない。改選後の取締役は,総会の内容を調査して,議事録を作成することができるのだから,閲覧等のために議事録を作成する義務を有すると解さざるをえない。
というところです。

 次に,「改選前の取締役」が議事録を作成することができるという結論が付け加えられた理由についてお話しします。

 よく考えてみると,株主総会議事録は,株主総会の議事の進行中(つまり,改選前の取締役がまだ取締役である間)に作成することもできます。

 とすると,例えば,定款で,予め出席した取締役の中で議事録の作成者を定めていれば,当該取締役(出席した改選前の取締役)は,
(1)株主総会の最中には,取締役として議事録を作成をする権限及び義務を負い
(2)定時株主総会の終結後,取締役でなくなった場合であっても,議事録は早急に作成しなければならないことから,取締役としての議事録の作成義務自体は存続する(会社法330条・民法654条参照)
と解されます。

 そこで,当初の結論に加え,改選前の取締役も議事録を作成することができるという結論に達したわけです。

 実務上は,定款に,出席した取締役が議事録を作成するという定めがある場合が多いと思いますが,そのような場合には,出席した取締役は,退任したとしても,議事録の作成権限を有し,その義務を負うこととなるでしょうね。

 では,具体的な事例に則して,旧商法下における取扱いと会社法での取扱いの変更点をまとめてみましょう。

(1)任期満了による改選の場合
旧商法 改選前の取締役
会社法 改選前の取締役の一人又は改選後の取締役の一人
(コメント)
 上記の旧商法の取扱いは,任期を定時株主総会の終結時までに伸長する定款の定めの有る場合の取扱いですが,会社法は,(特に任期を短縮する旨の定めを置かない限り),定時株主総会の終結時までを任期としているので,同じ土俵で比べています。

(2)辞任による改選の場合
a  総会前に辞任
旧商法 改選後の取締役
会社法 改選後の取締役の一人
(コメント) 改選前の辞任した取締役は,株主総会の時点で,すでに取締役ではなくなっているので,議事録の作成権限はありません。

b  総会の中途において辞任
旧商法 改選前の取締役及び改選後の取締役
会社法 改選前の取締役の一人又は改選後の取締役の一人
(コメント)
旧商法では,辞任した取締役にも署名をもらわなければならなくて苦しかったと思いますが,会社法は,改選後の取締役が作成していいので楽です。

(3) 右(1)(2)の場合を通じて,定款又は法令に定めた員数を欠くとき
旧商法 改選前の取締役及び改選後の取締役
会社法 改選前の取締役の一人又は改選後の取締役の一人
(コメント)
ここも「又は」になっているので,会社法の方が楽です。

(4) 総会において取締役を解任し,後任者を選任したとき
旧商法 改選後の取締役
会社法 改選後の取締役の一人
(コメント)
旧商法では,出席した取締役であっても,解任されると,明文に反して,なぜか署名しなくてよいということになっていましたが,会社法では,改選前の取締役は,解任されたので,仮に,その者が議事録作成の職務権限を有するものであったとしても,解任と同時に,その義務も消滅すると解されるので,改選前の取締役が議事録を作成する権限がないことを合理的に説明することができます。

以上のように,会社法下における議事録の作成権者についての考え方は,論理的一貫性と妥当性を具備していますし,従来の実務どおりに議事録を作成していたとしても,その議事録が無効になる場面はないないので,実務的にも受け入れやすいと考えています。

(質問コーナー)
Q1
 種類株式発行会社において、ある種類の既発行株式の一部を別の種類株式に変更(転換)する場合、従来から転換株式等以外では明文規定がなく、実務的には全株主の同意により行ってきたと思います(普通株式から無議決権配当優先株式への変更がよく見られたという印象です)。
 会社法を見ましても、やはり明文化はされていないようですが、明文化しなかった理由は何かありますでしょうか。
2)また、1)の手続きは従前通り全株主の同意にて行うこととなりますでしょうか。他の株主の不利益が生じない内容であれば、全株主の同意まで必要ないと思うのですが…。
3)千問のP57の図表2-2で、既存株式の全部について内容を変更の枠のなかで、「その他」剰余金の配当等108条関係のものに「株主総会の特別決議」の枠がかかっております。誠に失礼ながら、種類株式発行会社以外の株式会社と脚注にありますので、この枠は誤記ではないでしょうか?
A1
1) あんまり普通のことではないし,明文にすると,他の色々な場面でも似たような話が出てくるので,そんなことは,オウンリスクの解釈でやってほしいからです(笑)。
2)はっきり言って,やや問題のあることをやっているので,全株主同意でなければ,正当性が維持できないでしょうね。登記も受け付けてくれないでしょう。
3)おっしゃるとおりですね。調子に乗って,枠が拡大していました。ご指摘ありがとうございました。

Q2
 現物出資財産等填補責任(52条)に関するご説明ありがとうございました。ただ恐縮ですが、まだ理解しきれないところがございまして、重ねて質問させて下さい。まず46条1項を根拠として、設立時取締役に同責任を負わせるとすると、設立時監査役が同責任を負わない理由がわかりませんでした。
 また、46条1項自体につきましても、同条項1,2号は検査役の調査が省略される場合のみ適用されると思いますので、検査役の調査がある場合には、同責任を負わせる根拠とはならないように思いました。さらに46条1項3,4号を根拠とするのも、文言上無理な気が致しました。そもそも、同責任が現物出資等を行った発起人のみならず、金銭出資を行った発起人及び設立時取締役にも、発起設立の場合にも、課されていることから、同責任の趣旨を株主引受人間の公正の確保にのみ求めることはできない気が致しました。
 すなわち、確かに総株主の同意によって同責任を免除しうる(55条)ことから、同責任の第一次的な趣旨は株式引受人間の公平の確保にあると思われますが、同責任が現物出資等を行った発起人以外の者にも、発起設立の場合にも課されていることから、同責任の第二次的な趣旨として、いわゆる資本充実とは異なるところの、「現物出資等財産として記載された価額(28条1,2号)を限度とする可及的な会社財産の確保」を挙げざるを得ないように思いました。宜しくお願い致します。
Posted by kiji at 2006年07月04日 15:53
A2
52条1項において,設立時取締役が責任を負い,設立時監査役が責任を負わないのは,旧商法と同じですが,その理由は,今も昔も,監査役の実態を鑑みると,設立時監査役に不足額てん補責任を負わせることは,過酷であるという政策的理由以外ないと思います。
 次に,kajiさんのいう第二次的趣旨を導くための,論理がよく分からないのですが,不足額てん補責任が現物出資等を行った発起人以外の者にも、発起設立の場合にも課されているのは,発起人が設立事務を行うものである以上,それぞれが引受人間の平等に配慮する義務を負っているからであり,その点では設立時取締役の責任と根拠は同じです。
 現物出資などを行っていない発起人が責任を履行したら,現物出資をした発起人に求償をすることにより,引受人間の平等を図ることができます。
 なお,調査義務と不足額填補責任についてのkajiさんの指摘がよく分からなかったのですが
検査役の調査がある場合→設立時取締役は調査義務を負うが,52条1項の責任は負わない
検査役の調査がない場合→設立時取締役は調査義務を負い,52条1項の責任も負う
です。

Q3
会社法336条3項の「・・・定款によって、任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとすることを妨げない」との規定を受け、定款に「任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期は、退任した監査役の任期の満了する時までとする」と定めたのですが、こうしておくことにより、同法329条2項に基づき予選しておいた補欠監査役が実際に監査役に就任した場合の任期についても適用されるという理解で宜しいでしょうか? 「“退任した”監査役の補欠として選任された」とあるので、ニュアンスとして、退任する前から予選しておいた補欠監査役の任期については適用されないことはないだろうかと少々心配になりました。
Posted by 悩める株式課員 at 2006年07月04日 17:26
A3
最近も答えましたが,予選した補欠監査役についても,336条3項は適用されます。千問Q423

Q4
取締役会への報告の省略についてお聞かせ下さい。
会社法は、原則として通知による報告省略を認めつつ(372条1項)、代表取締役・業務執行選定取締役(?)については3ヶ月に1回の「自己の職務の執行の状況」の報告義務を課しています(同条2項、363条2項・1項)。
これについていくつか疑問があります。
(1)「取締役会へ報告すべき事項」とは、会社法で報告しなければならないとされる事項を指すのでしょうか?それとも取締役会規程で定めてある報告事項を指すのでしょうか?
(2)報告の内容にも関連しますが、たとえば3・6・9・12月に職務執行状況の報告をする場合、通知で済ませた1・2月の分についても3月に報告する必要があるのでしょうか?
(これではあまり意味がないというのが社内での感想です)
(3)363条1項2号では「業務を執行する取締役」、同条2項では「職務の執行の状況」と、「業務」と「職務」を使い分けているようですが、具体的にどう違うのでしょうか?
 千問の290頁を見ますと「業務の執行」<「職務の執行」というイメージですが、「『業務の執行』とは(中略)会社の目的である具体的事業活動に関与すること」というのがよくわかりません。
 たとえば経理部担当取締役が多額でない借入金の報告をする場合や、総務部担当取締役が会計監査人と監査契約を締結する場合はどちらに含まれますか?
Posted by 総務1年生 at 2006年07月04日 18:30
A4
(1)法律,定款その他の規定により取締役会に報告すべき事項はすべて含みます。
(2)363条2項の規定による報告ならば,そもそも1月2月分の報告を省略することはできません。自己の職務執行の状況の報告以外の報告ならば,省略できますので,意味はあると思いますが,それしか報告していないのならば,確かに意味はないでしょう。省略せずに報告をしてください。
(3) 業務の執行に関する規範定立は,千問に書いたとおりであり,当てはめのは,具体的な職務に応じて個々に判断してください。基本的には,監査・監督部分が外れると思っておけば安全です。
 経理部担当取締役が多額でない借入金の報告をする場合・・経理部担当だったら,報告とかなんとか言う前に,そもそも業務執行をしていると思います。
 総務部担当取締役が会計監査人と監査契約を締結する場合・・総務部担当も業務執行しているはずです。ただ,会計監査人と監査契約を締結すること自体は,業務執行ではないと思います。

株主総会議事録の作成者

 ここ数日,取締役が各自代表になっている非取締役会設置会社が取締役会を置く旨の定めを置いたときに
(1)各自代表取締役が,平取締役になるのは,いつか。
(2)取締役会により選定された代表取締役は,退任・重任の登記をする必要がないのか。
という点について,お答えしてきました。
 また,内藤卓さんから,千問Q58の表(P40)取締役会設置会社の設立において,設立時代表取締役による互選がなかった場合に,各自代表になるような記載はおかしいのではないかというご指摘を受けました。
 
 以上の2点について,いろいろと考えて,なるべく会社に負担のないような解釈をするために関係者と調整したいので,どちらも回答をしばらく保留します。ここ数日のこの点についての回答は一旦忘れてください(笑)。

 調整マターといえば,FKさんから「6月23日で、結論を保留された「株主総会議事録の作成者」の結論は出されたのでしょうか。」という厳しいつっこみを頂きました(笑)。
 調整するというのは,回答にすごく時間がかかるということを意味しますので,本当は,もうちょっと待ってくださいといいたいところなんですが,なんとか調整がつきましたので,今日は,興味のない人には興味がなく,興味ある人には,とっても興味がある
「株主総会議事録の作成者」
についてお話しします。

 この問題は,「株主総会議事録の作成者は,改選前の旧取締役か,改選後の新取締役か。」という単純な話ではありますが,株主総会議事録は,登記の添付書面となることから,特に司法書士さんにとっては,重要な問題です。

 以前,私は,この問題について,会社法では,出席取締役の議事録への署名義務がなくなったこと等から,改選後に議事録を作成する場合には,改選後の取締役が作成するべきであると回答していましたが,その後,いろいろな場面を想定したり,調整した結果,次のように回答を変更いたします。

1 株主総会議事録の作成者は,改選前の旧取締役のうちの一人でも,改選後の新取締役のうちの一人であってもよい。ただし,その取締役は議事録を作成する権限が必要である。
2 二人以上の取締役で議事録を作成することもできる。
3 株主総会の議事録の署名義務はないが,登記の添付資料として用いる場合には,署名を要する場合もある。

 まず,改選後の新取締役が,議事録の作成をすることができるというのは,これまで述べてきたところですが,もう一度,理由を整理すると
(1)会社法318条は,株主総会議事録について,議長及び出席取締役の署名義務を廃止し,さらに,会社法施行規則72条3項は,議事録の作成者を「議事録の作成に係る職務を行った取締役」とし,議長及び出席取締役の全員が株主総会議事録を作成するのではなく,取締役のうちで議事録の作成に係る職務を行う者が株主総会議事録を作成することとしている。
(2)この議事録の作成者である取締役は,代表取締役や出席した取締役に限定されていないから,出席したかどうかにかかわらず,当該議事録を作成した時点の取締役のことをいうと解すべきである。
  したがって,議事録の作成が,定時株主総会の終結後に行われたものである場合には,原則として,改選後の新取締役の一人が作成者となる。
(3) 改選前の旧取締役に限定すると解すると,改選前の旧取締役が作成しない場合や死亡等により作成できない場合に,株主・債権者が株主総会議事録の閲覧をすることができない。改選後の取締役は,総会の内容を調査して,議事録を作成することができるのだから,閲覧等のために議事録を作成する義務を有すると解さざるをえない。
というところです。

 次に,「改選前の取締役」が議事録を作成することができるという結論が付け加えられた理由についてお話しします。

 よく考えてみると,株主総会議事録は,株主総会の議事の進行中(つまり,改選前の取締役がまだ取締役である間)に作成することもできます。

 とすると,例えば,定款で,予め出席した取締役の中で議事録の作成者を定めていれば,当該取締役(出席した改選前の取締役)は,
(1)株主総会の最中には,取締役として議事録を作成をする権限及び義務を負い
(2)定時株主総会の終結後,取締役でなくなった場合であっても,議事録は早急に作成しなければならないことから,取締役としての議事録の作成義務自体は存続する(会社法330条・民法654条参照)
と解されます。

 そこで,当初の結論に加え,改選前の取締役も議事録を作成することができるという結論に達したわけです。

 実務上は,定款に,出席した取締役が議事録を作成するという定めがある場合が多いと思いますが,そのような場合には,出席した取締役は,退任したとしても,議事録の作成権限を有し,その義務を負うこととなるでしょうね。

 では,具体的な事例に則して,旧商法下における取扱いと会社法での取扱いの変更点をまとめてみましょう。

(1)任期満了による改選の場合
旧商法 改選前の取締役
会社法 改選前の取締役の一人又は改選後の取締役の一人
(コメント)
 上記の旧商法の取扱いは,任期を定時株主総会の終結時までに伸長する定款の定めの有る場合の取扱いですが,会社法は,(特に任期を短縮する旨の定めを置かない限り),定時株主総会の終結時までを任期としているので,同じ土俵で比べています。

(2)辞任による改選の場合
a  総会前に辞任
旧商法 改選後の取締役
会社法 改選後の取締役の一人
(コメント) 改選前の辞任した取締役は,株主総会の時点で,すでに取締役ではなくなっているので,議事録の作成権限はありません。

b  総会の中途において辞任
旧商法 改選前の取締役及び改選後の取締役
会社法 改選前の取締役の一人又は改選後の取締役の一人
(コメント)
旧商法では,辞任した取締役にも署名をもらわなければならなくて苦しかったと思いますが,会社法は,改選後の取締役が作成していいので楽です。

(3) 右(1)(2)の場合を通じて,定款又は法令に定めた員数を欠くとき
旧商法 改選前の取締役及び改選後の取締役
会社法 改選前の取締役の一人又は改選後の取締役の一人
(コメント)
ここも「又は」になっているので,会社法の方が楽です。

(4) 総会において取締役を解任し,後任者を選任したとき
旧商法 改選後の取締役
会社法 改選後の取締役の一人
(コメント)
旧商法では,出席した取締役であっても,解任されると,明文に反して,なぜか署名しなくてよいということになっていましたが,会社法では,改選前の取締役は,解任されたので,仮に,その者が議事録作成の職務権限を有するものであったとしても,解任と同時に,その義務も消滅すると解されるので,改選前の取締役が議事録を作成する権限がないことを合理的に説明することができます。

以上のように,会社法下における議事録の作成権者についての考え方は,論理的一貫性と妥当性を具備していますし,従来の実務どおりに議事録を作成していたとしても,その議事録が無効になる場面はないないので,実務的にも受け入れやすいと考えています。

(質問コーナー)
Q1
 種類株式発行会社において、ある種類の既発行株式の一部を別の種類株式に変更(転換)する場合、従来から転換株式等以外では明文規定がなく、実務的には全株主の同意により行ってきたと思います(普通株式から無議決権配当優先株式への変更がよく見られたという印象です)。
 会社法を見ましても、やはり明文化はされていないようですが、明文化しなかった理由は何かありますでしょうか。
2)また、1)の手続きは従前通り全株主の同意にて行うこととなりますでしょうか。他の株主の不利益が生じない内容であれば、全株主の同意まで必要ないと思うのですが…。
3)千問のP57の図表2-2で、既存株式の全部について内容を変更の枠のなかで、「その他」剰余金の配当等108条関係のものに「株主総会の特別決議」の枠がかかっております。誠に失礼ながら、種類株式発行会社以外の株式会社と脚注にありますので、この枠は誤記ではないでしょうか?
A1
1) あんまり普通のことではないし,明文にすると,他の色々な場面でも似たような話が出てくるので,そんなことは,オウンリスクの解釈でやってほしいからです(笑)。
2)はっきり言って,やや問題のあることをやっているので,全株主同意でなければ,正当性が維持できないでしょうね。登記も受け付けてくれないでしょう。
3)おっしゃるとおりですね。調子に乗って,枠が拡大していました。ご指摘ありがとうございました。

Q2
 現物出資財産等填補責任(52条)に関するご説明ありがとうございました。ただ恐縮ですが、まだ理解しきれないところがございまして、重ねて質問させて下さい。まず46条1項を根拠として、設立時取締役に同責任を負わせるとすると、設立時監査役が同責任を負わない理由がわかりませんでした。
 また、46条1項自体につきましても、同条項1,2号は検査役の調査が省略される場合のみ適用されると思いますので、検査役の調査がある場合には、同責任を負わせる根拠とはならないように思いました。さらに46条1項3,4号を根拠とするのも、文言上無理な気が致しました。そもそも、同責任が現物出資等を行った発起人のみならず、金銭出資を行った発起人及び設立時取締役にも、発起設立の場合にも、課されていることから、同責任の趣旨を株主引受人間の公正の確保にのみ求めることはできない気が致しました。
 すなわち、確かに総株主の同意によって同責任を免除しうる(55条)ことから、同責任の第一次的な趣旨は株式引受人間の公平の確保にあると思われますが、同責任が現物出資等を行った発起人以外の者にも、発起設立の場合にも課されていることから、同責任の第二次的な趣旨として、いわゆる資本充実とは異なるところの、「現物出資等財産として記載された価額(28条1,2号)を限度とする可及的な会社財産の確保」を挙げざるを得ないように思いました。宜しくお願い致します。
Posted by kiji at 2006年07月04日 15:53
A2
52条1項において,設立時取締役が責任を負い,設立時監査役が責任を負わないのは,旧商法と同じですが,その理由は,今も昔も,監査役の実態を鑑みると,設立時監査役に不足額てん補責任を負わせることは,過酷であるという政策的理由以外ないと思います。
 次に,kajiさんのいう第二次的趣旨を導くための,論理がよく分からないのですが,不足額てん補責任が現物出資等を行った発起人以外の者にも、発起設立の場合にも課されているのは,発起人が設立事務を行うものである以上,それぞれが引受人間の平等に配慮する義務を負っているからであり,その点では設立時取締役の責任と根拠は同じです。
 現物出資などを行っていない発起人が責任を履行したら,現物出資をした発起人に求償をすることにより,引受人間の平等を図ることができます。
 なお,調査義務と不足額填補責任についてのkajiさんの指摘がよく分からなかったのですが
検査役の調査がある場合→設立時取締役は調査義務を負うが,52条1項の責任は負わない
検査役の調査がない場合→設立時取締役は調査義務を負い,52条1項の責任も負う
です。

Q3
会社法336条3項の「・・・定款によって、任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとすることを妨げない」との規定を受け、定款に「任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期は、退任した監査役の任期の満了する時までとする」と定めたのですが、こうしておくことにより、同法329条2項に基づき予選しておいた補欠監査役が実際に監査役に就任した場合の任期についても適用されるという理解で宜しいでしょうか? 「“退任した”監査役の補欠として選任された」とあるので、ニュアンスとして、退任する前から予選しておいた補欠監査役の任期については適用されないことはないだろうかと少々心配になりました。
Posted by 悩める株式課員 at 2006年07月04日 17:26
A3
最近も答えましたが,予選した補欠監査役についても,336条3項は適用されます。千問Q423

Q4
取締役会への報告の省略についてお聞かせ下さい。
会社法は、原則として通知による報告省略を認めつつ(372条1項)、代表取締役・業務執行選定取締役(?)については3ヶ月に1回の「自己の職務の執行の状況」の報告義務を課しています(同条2項、363条2項・1項)。
これについていくつか疑問があります。
(1)「取締役会へ報告すべき事項」とは、会社法で報告しなければならないとされる事項を指すのでしょうか?それとも取締役会規程で定めてある報告事項を指すのでしょうか?
(2)報告の内容にも関連しますが、たとえば3・6・9・12月に職務執行状況の報告をする場合、通知で済ませた1・2月の分についても3月に報告する必要があるのでしょうか?
(これではあまり意味がないというのが社内での感想です)
(3)363条1項2号では「業務を執行する取締役」、同条2項では「職務の執行の状況」と、「業務」と「職務」を使い分けているようですが、具体的にどう違うのでしょうか?
 千問の290頁を見ますと「業務の執行」<「職務の執行」というイメージですが、「『業務の執行』とは(中略)会社の目的である具体的事業活動に関与すること」というのがよくわかりません。
 たとえば経理部担当取締役が多額でない借入金の報告をする場合や、総務部担当取締役が会計監査人と監査契約を締結する場合はどちらに含まれますか?
Posted by 総務1年生 at 2006年07月04日 18:30
A4
(1)法律,定款その他の規定により取締役会に報告すべき事項はすべて含みます。
(2)363条2項の規定による報告ならば,そもそも1月2月分の報告を省略することはできません。自己の職務執行の状況の報告以外の報告ならば,省略できますので,意味はあると思いますが,それしか報告していないのならば,確かに意味はないでしょう。省略せずに報告をしてください。
(3) 業務の執行に関する規範定立は,千問に書いたとおりであり,当てはめのは,具体的な職務に応じて個々に判断してください。基本的には,監査・監督部分が外れると思っておけば安全です。
 経理部担当取締役が多額でない借入金の報告をする場合・・経理部担当だったら,報告とかなんとか言う前に,そもそも業務執行をしていると思います。
 総務部担当取締役が会計監査人と監査契約を締結する場合・・総務部担当も業務執行しているはずです。ただ,会計監査人と監査契約を締結すること自体は,業務執行ではないと思います。

2006年7月 3日 (月)

100%「減資」

 6月末期限の重めの仕事を持っていたため,6月下旬は,私の頭の中のCPU占有率がそちらに90%ほど割かれていました。
 今の気持ちは,夏休みの宿題を出した小学生のような感じであり,晴れ晴れしい気持ちで7月を迎えております。

ふと気付くと,沢山の質問がブログにたまっているので,順番にやっつけようと思ったのですが,「古い頭で」さんから,いわゆる100%減資について,次のような質問を受けましたので,今日は,100%減資についてお話します。

「千問の道標Q125について、ご教示ください。
Q125では、100%減資の定義を「株式会社の既存の全株主を株主でなくしたうえで、新しい出資者に出資させること」とされています。私が過去に100%減資を行ったときは、もちろん結果として上記定義のとおりなのですが、破綻会社の再生の場合は、資本金を減少させて資本の欠損填補に充てていました。会社法ではこのような考え方はないのでしょうか。破綻会社の再生では、欠損金を減らしておくことも重要だと思いますが、資本金を減らさないで株主だけ入れ替えても新株主にそれだけの負担が残ったままではないでしょうか。これは、もう古い考えなのでしょうか。」

 そうですね。古いといえば古いですが,決しておかしい考えではありません。例をあげて説明しましょう

 私立法務大学の松本教授と,法曹川教授は,未習ロースクール生の補習用の塾をやれば儲かるのではないかと思い,
松本教授が800万円出資して800株
法曹川教授が200万円出資して200株
を取得し,株式会社「初心社」(資本金1000万円)を設立しました。
 法曹川教授は取締役に就任し,自分の担当である教室の賃貸借契約や生徒の募集などを着々とこなし,初心社は,大変,繁盛していました。
 ところが,代表取締役である松本教授が「私が初心者用オリジナルテキストを作る」と言って出版社等との契約をしたにもかかかわらず,締め切りを過ぎても全く原稿を出さなかったため,初心社は,出版社に多額の損害賠償をしなければならなくなり,純資産額がマイナス1000万円となり,運転資金も枯渇しました。
 それを見た,株式会社「魁!葉玉塾」の葉玉社長は,
 「初心社には,生徒も沢山いるし,先生達もいいので,自分が経営したら,再生できるはずだ」
と考え,3000万円を初心社に出資してもよいと,松本教授に申し入れ,松本教授も,
「このまま倒産すると,初心社の銀行借入についての連帯保証を追及されるのは嫌だなあ。ただでさえ,家のローンがあるのに・・」
と思い,魁!葉玉塾の出資を受け入れることに合意しました。

 ここで,破綻状態にある初心社の基本データを
資本金      1000万円
純資産     △1000万円
発行済株式総数  1000株
          800株 松本教授
200株 法曹川教授
一株あたり純資産額 マイナス1万円
株式の客観的価値  0円
ということにします。

 魁!葉玉塾が,この状態のまま,初心社に3000万円を出資し,1株1円で新株発行を受けるとすると,

・資本金と純資産額が3000万円増えて,初心社は資本金4000万円,純資産額2000万円になり

・株主構成は,魁!葉玉塾3000万株,松本教授800株,法曹川教授200株になります。

このプランは,魁!葉玉塾として嫌な点が,いくつかあります。
1 出資後も2000万円の資本の欠損が出たままになっている。
2 資本金が3000万円増えると登録免許税がかかる
3 株主に松本教授と法曹川教授が残ると,今後の株主総会の運営が面倒くさい。特に法曹川教授は,「松本教授のせいで破綻した」と恨みに思っていて,今後,株主として口出しさせると大変だ。
4 本来,松本教授と法曹川教授の株式の価値は0円だったのに,自分が3000万円出資したおかげで,一株あたり純資産が約1円になり,株式の価値が生じてしまう。
などなど。

そこで,登場するのが「いわゆる100%減資」です。

まず,松本教授が80%の大株主であることを利用して,松本教授に株主総会でがんばってもらい,定款変更をして株式に全部取得条項を付け,さらに,その取得決議をして,松本教授・法曹川教授の株式を対価0円で初心社に全部取得してもらえば,株主のいない会社になり,3と4の問題は解決します。

さて,残るは,前記1と2の問題であり,これが「古い頭で」さんの問題意識に関係するところです。

株式の全部取得をしても,資本金は減少しませんから,放っておけば,魁!葉玉塾の出資前の時点では,資本金は1000万円,純資産額マイナス1000万円,欠損2000万円のままです。

「古い頭で」さんが「資本金を減らさないで株主だけ入れ替えても新株主にそれだけの負担が残ったまま」というのは,前記1の問題のことで,「このまま魁!葉玉塾に対し新株発行をしても,2000万円の欠損が残ったままになり,今後,2000万円以上の利益が出ない限り,配当ができなくなってしまう。」ということだと思います。

 そこで,1の問題が気になる人は,「資本金の額の減少」を実施することが考えられます。
 つまり,松本教授に頼んで,全部取得の総会決議をする前に,「資本金の額の減少」の決議して,資本金を0円にしてもらうのです。
 これだと「100%減資」の名にふさわしい感じです。

 でも,本件の場合,債務超過なので,全部取得前の時点で資本金を0円まで減少しても,新株発行をすると債務超過分である1000万円は欠損が出てしまいます。
 そこで,2番目の方法として,新株発行後に,株主である魁!葉玉塾が株主総会で,欠損の額である2000万円分の「資本金の額の減少」をすることにより,資本の欠損をなくすことが考えられます。
 しかし,2番目の方法だと,4000万円に資本金が増加したあと,2000万円に資本金を減少させることになり,いわゆる往復ビンタを食らうので,登録免許税が高くつきます。
 つまり,上記2の問題がより深刻になるのです。

 そこで,第3の方法として,自己株式の処分がクローズアップされてきます。

 そもそも,魁!葉玉塾が,初心社の資本金を増やしても大して意味はないし,何より登録免許税は安い方がいいに決まっています。

 そういう場合には,初心社が,松本教授と法曹川教授の株式合計1000株を全部取得した後,その取得した自己株式1000株を,魁!葉玉塾に処分するのです(払込価額3000万円で)。

 そうすると,自己株式の処分では,資本金は増えませんから,
 資本金    1000万円
 純資産額   2000万円
 発行済み株式 1000株 株主 魁!葉玉塾
という会社のできあがり。
 資本金も,発行済株式総数も変動しないので,登録免許税もかからず,欠損も消え,株主も魁!葉玉塾一人になりますから,前記1から4までの悩みは全て解消,ハッピーエンド。

 以上のように,いままで「100%減資」と呼ばれていた手法は,「減資」に拘ると,あまり良いことがないので,もう「100%減資」という呼び名には拘らない方がいいのではないかなと思っている次第です。

Q1
千問のQ440で、使用人兼務取締役の使用人分給与は会社法361条の承認の対象とはならないとされております。この点は、従来どおりという理解で良いかと思いますが、この問題に関連してお伺いします。定款に取締役報酬の定めがなく株主総会で報酬の確定枠を決定した際「使用人兼務取締役の使用人分給与を含まない」旨を明示しなかった場合でも、その確定枠とは別に使用人分給与を支給できるという理解で良いのでしょうか?
Posted by みひろ at 2006年06月30日 02:00
A1
使用人分給与の支払いについては,特に規制はありません。Q440のとおりです。ただし,開示義務がかかる場合はあります(Q441)。

Q2
①取締役会の設置から代表取締役が就任するまで従来の代表取締役は権利義務を承継するとのことですが,会社法351条1項では,権利義務を承継する退任事由を「任期満了又は辞任」に限定しています。「取締役会設置による退任」の場合も,この規定が類推適用されるという理解でよろしいでしょうか。
②登記上,退任→権利義務承継→再就任の場合には(退任即再就任の場合とは異なり),原則どおり退任及び就任の登記をしなければならないとされています。質問のケースのAは権利義務承継期間を経ているにもかかわらず,質問のケースのAは後者に該当することになるにもかかわらず何の登記もいらないという結論は,新たに便宜的な取扱いが認められたという理解でよろしいのでしょうか。
Posted by sara at 2006年06月30日 12:44
A2
 代表取締役の任期については,もともと法律上の規定は設けられていませんが,会社法は,機関設計の変更による退任を任期満了として考えているので(千問Q374),取締役会設置による退任も,任期満了若しくはそれに準ずるものとして,351条1項が適用されるものと考えています。
 登記がどうしてそうなのかを説明することは控えますが,登記上は,代表取締役Aについては,何の登記もいらないということで決着がついています。

Q3
出資財産等不足額填補責任(52条1項)に関して、設立時取締役が同責任を負う理由を質問させて下さい。同責任の趣旨が、株式引受人間の公平の確保にあるのならば、本来同責任は現物趣旨等を行った発起人のみが負うべきにもかかわらず、金銭出資を行った発起人も、後に求償しうるとはいえ、同責任を原則として負う許容性は、千問の34にございますように、発起人は当該現物出資財等を一定の価額で評価することについて合意をなす点にあると思いました。しかし、設立時取締役は、そのような合意に参加しないため、同責任を負わせる許容性がなく、また仮に発起人以外の引受人の保護を強調しても、発起設立の場合には通用しないと思いました。宜しくお願い致します。
Posted by kiji at 2006年06月30日 14:36
A3
設立時取締役は,現物出資財産の価額が相当であるかどうか等について調査義務を負っており(46条1項),しっかりと調査しなかったために,引受人間に不平等が生じてしまったことから,52条1項で責任を負ってもらっています。

Q4
 譲渡制限株式の譲渡承認手続に関し、以下の理解で良いか確認させてください。
「会社が譲渡承認を不承認とし指定買取人を指定する場合、旧商法においては、譲渡の相手方指定通知の日から10日以内に売渡請求をしなければならないという時間的制限があった(旧商法204条の3第1項)が、会社法においては会社法142条第1項の通知の時間制限はなくなった。したがって、指定買取人が譲渡不承認通知の日から10日経過後に会社法142条1項の通知を行った場合でもその時点で売買契約が成立する。その後、会社が譲渡不承認通知から40日以内に会社法139条2項による通知を行わなかった場合には、同法145条2号により譲渡が承認されたものとみなされるが、譲渡承認請求者は売買契約を破棄できない限り、当初の譲渡承認請求における買主に対し売却することはできない。」
Posted by 弁護士S at 2006年06月30日 16:11
A4
ちょっと確認ですが,「会社法139条2項による通知を行わなかった場合」というところに勘違いか,誤記があるのではないでしょうか?

Q5
3月決算会社で、3ヶ月以内に総会を開くことになっているのですが、19年度では一ヶ月のみ事業を行い、4月で解散し、5月まで存続する予定です。
このような場合、19年6月に株主総会を開く必要があるのでしょうか。
それとも第一回清算株主総会を実施するためそれにより代替(株主総会を実施しないとする)できるのでしょうか。
Posted by たけ at 2006年06月30日 19:47
A5
4月で「解散」というのは,総会の解散決議ではないという前提ですね。
清算株式会社になれば,清算の開始原因が生じた日の翌日から1年間が清算事務年度(494条)になりますので,それまでの事業年度とは別になります。
 したがって,6月に定時株主総会を開く必要はありません。ちなみに,以前も記事に書きましたが,3月決算会社で3か月以内に総会を開くというルールは,もともと会社法にはありません。

Q6
467条1項1号・2号の「事業」の意義において判例の基準に立つ場合の、要件3のあてはめの仕方がよく分からず困っています。
まず前提として私の判例の要件3の理解ですが、判例は要件3を、
→譲渡会社がその事業に応じ「法律上当然に」21条に定める競業避止義務を負う場合
としていますが、この「法律上当然に」というのを、
→競業避止義務を負わない旨の特約のない限り
という意味に私はとっています。
すなわち、21条1項が「当事者に別段の意思表示のない限り」としていることから、競業避止義務を排除することもできる。
しかし、その旨の特約のない限り「要件1・2を充たす場合は必ず競業避止義務が発生する」、と理解しているのですが正しいでしょうか。
A6
 要件1・2・3って何を指しているのでしょうか?それが分からないと,答えられないのですが。

Q7
決算公告について質問があります。
非上場の子会社を有している場合において、親会社がHPに決算公告を行っており、当該HPに子会社の決算公告を載せる方法により子会社の官報での決算公告を省略することは可能なのでしょうか。それとも、子会社が自分のHPを作りそのページに載せなければだめなのでしょうか。
Posted by 丈ちゃん at 2006年07月01日 15:16
A7
HPアドレスは,何でも結構です。
葉玉ブログのコメント欄でも(笑)。ただし,5年間はこのブログは持たないので,このブログが途切れた時点で公告義務が生じます。

Q8
ストックオプション(以下SO)に関して
世の中には有償SOと呼ばれているものがあります(無償発行以外をSOと呼ぶかは別にして)。未上場の会社でも適正に株価を算定し、行使価額を時価以上に設定して、新株予約権の価額を払い込ませるものです。これだと有利発行ではないため、公開会社では取締役会決議で発行が可能となっています。
ここで、この有償SOを会社の取締役に付与する場合でも361条1項の総会決議は必用となると言うことで宜しいでしょうか?
Posted by ネットくん at 2006年07月01日 19:40
A8
ストックオプションという言葉は,どうでもいいのです。
それが,職務執行の対価ならば,報酬決議は必要だし,一般人と同様の第三者割当てをしているのならば,報酬決議は不要です。

Q9
最近の著書によると、葉玉先生と共に立案に携わった郡谷さんは、現在、司法修習生のようですが、司法試験にはいつ合格されたのでしょうか?葉玉先生が、受験指導などをされたのでしょうか?
Posted by 玉屋 at 2006年07月02日 01:38
A9
郡谷さんのプライバシーに関わることを無断でお答えすることができませんが(笑),私は,受験指導していません。

Q10
 株式譲渡の承認は139条但書きによると、定款で定めればどこがやってもよいように読めますが、解説本では株主総会・取締役会以外の機関と書いてありましたので、「親会社の代表取締役」というのは不可でしょうが、「代表取締役」「取締役の多数決」などはよいとして、「監査役の承認をうけなければならない」など業務執行を行わない機関を承認機関とすることはよいのでしょうか。
A10
監査役は,その職務の性質上,承認機関となることはできないものと解されます。

Q11
 補欠監査役の任期は前任者の任期を引き継げますが、旧商法では、監査役が1名のときは補欠にならないというのが登記実務でしたが、会社法では1名でも補欠として任期を引き継げるという取扱いになりました。この場合の補欠監査役は、329条で定める事前に定めた監査役のみを指すのか、欠員が生じてから選任した監査役も補欠監査役とするのかで解釈が分かれております。前者のみを指すと考えますがいかがでしょうか。
Posted by みかえる at 2006年07月02日 17:46
A11
予選した監査役でなくても,336条3項の適用はあります。
以前記事に書きましたが,その問題ですか?


Q12
 会社法施行前から存在する株式会社が取締役会を廃止した場合、譲渡制限の承認機関が取締役会となっているため、その規定も変更しなければなりませんが、この変更をしない場合は、139条の原則により株主総会になると解してよいでしょうか。また登記申請は取締役会の廃止と譲渡制限の変更は両方同時に申請しないと却下されるようですが、却下できるのでしょうか。
Posted by みかえる at 2006年07月02日 17:49
A12
取締役会を廃止した場合,株式の譲渡に取締役会の承認を要する旨の登記は,内容が不実になるので,変更せざるをえません。

Q13
 現物出資をする場合、金銭債権について、負債の帳簿価額を超えないときは、検査役の調査は不要ですが(207条9号四)、商業登記法56条3項において会計帳簿を添付することになっています。しかし、当該金銭債権に係る出資額が500万円以下の時は会計帳簿の添付は不要という扱いになっていると聞きましたが、条文上明確にそのように書いてあるところはありません。仮に商業登記法56条3項が、検査役の調査が不要な500万円以下の出資であれば、3号に掲げる書面の添付の必要がないということであるならば、金銭債権は負債額を超えない限り、金額の大小に関わらず、もともと検査役の調査は不要なので、500万円以下かどうかで添付書類が変わるのは、金銭債権については考えられないのですが、どうでしょうか?
Posted by みかえる at 2006年07月02日 17:49
A13
商業登記法の解釈は,申し訳ありませんが,答えられません。

Q14
事前警告型の買収防衛策に最近見られる取得条項付新株予約権について質問させてください。当該取得条項は、株式を対価とし差別的に適用されるのですが(20%以上の買付者の分は取得しない)、差別的行使条件と異なり、会社法上このような差別的取得条項は認められないのではと思っています。20%保有者は行使できないといった差別的行使条件の場合には、他人に譲渡することによって当該買付者は経済的なロスを回避することができますが、取得条項の場合は、取締役会が決めた特定の日をやり過ごしてしまったら会社がもう一度取得を決めてくれない限りどうしようもないですよね。273条2項のかっこ書きが、一部取得の場合において取得対象外の株主を通知の相手としていないので、立法段階ではこういう差別的取得条項は予定されていなかったのでは?と思ってます。
Posted by attorney to be at 2006年07月03日 00:04
A14
 合理的な差別的取得条項は予定しています。
 ただし,問題となっている取得条項付新株予約権の発行が差し止められるかどうかは,ケースバイケースですし,経済的損害を特定の株主に生じさせれば,取締役に対する損害賠償請求ができる場合もあるでしょう。

Q15
当社の会計監査人である中央青山が資格喪失により退任となりました。そして7月1日以降、一時会計監査人を選任・登記し、また、総会決議により、9月1日から中央青山を(正)会計監査人として再任しました。この場合、9月1日をもって、一時会計監査人は法律上、自動的に退任したものとみなされるのでしょうか? それとも、一時会計監査人の退任の手続き(辞任)をとらない限り、(正)会計監査人が選任されても、一時会計監査人はそのまま存続するのでしょうか?
A15
一時会計監査人は,会計監査人が選任された時点で,自動的に退任します。辞任手続は不要です。

100%「減資」

 6月末期限の重めの仕事を持っていたため,6月下旬は,私の頭の中のCPU占有率がそちらに90%ほど割かれていました。
 今の気持ちは,夏休みの宿題を出した小学生のような感じであり,晴れ晴れしい気持ちで7月を迎えております。

ふと気付くと,沢山の質問がブログにたまっているので,順番にやっつけようと思ったのですが,「古い頭で」さんから,いわゆる100%減資について,次のような質問を受けましたので,今日は,100%減資についてお話します。

「千問の道標Q125について、ご教示ください。
Q125では、100%減資の定義を「株式会社の既存の全株主を株主でなくしたうえで、新しい出資者に出資させること」とされています。私が過去に100%減資を行ったときは、もちろん結果として上記定義のとおりなのですが、破綻会社の再生の場合は、資本金を減少させて資本の欠損填補に充てていました。会社法ではこのような考え方はないのでしょうか。破綻会社の再生では、欠損金を減らしておくことも重要だと思いますが、資本金を減らさないで株主だけ入れ替えても新株主にそれだけの負担が残ったままではないでしょうか。これは、もう古い考えなのでしょうか。」

 そうですね。古いといえば古いですが,決しておかしい考えではありません。例をあげて説明しましょう

 私立法務大学の松本教授と,法曹川教授は,未習ロースクール生の補習用の塾をやれば儲かるのではないかと思い,
松本教授が800万円出資して800株
法曹川教授が200万円出資して200株
を取得し,株式会社「初心社」(資本金1000万円)を設立しました。
 法曹川教授は取締役に就任し,自分の担当である教室の賃貸借契約や生徒の募集などを着々とこなし,初心社は,大変,繁盛していました。
 ところが,代表取締役である松本教授が「私が初心者用オリジナルテキストを作る」と言って出版社等との契約をしたにもかかかわらず,締め切りを過ぎても全く原稿を出さなかったため,初心社は,出版社に多額の損害賠償をしなければならなくなり,純資産額がマイナス1000万円となり,運転資金も枯渇しました。
 それを見た,株式会社「魁!葉玉塾」の葉玉社長は,
 「初心社には,生徒も沢山いるし,先生達もいいので,自分が経営したら,再生できるはずだ」
と考え,3000万円を初心社に出資してもよいと,松本教授に申し入れ,松本教授も,
「このまま倒産すると,初心社の銀行借入についての連帯保証を追及されるのは嫌だなあ。ただでさえ,家のローンがあるのに・・」
と思い,魁!葉玉塾の出資を受け入れることに合意しました。

 ここで,破綻状態にある初心社の基本データを
資本金      1000万円
純資産     △1000万円
発行済株式総数  1000株
          800株 松本教授
200株 法曹川教授
一株あたり純資産額 マイナス1万円
株式の客観的価値  0円
ということにします。

 魁!葉玉塾が,この状態のまま,初心社に3000万円を出資し,1株1円で新株発行を受けるとすると,

・資本金と純資産額が3000万円増えて,初心社は資本金4000万円,純資産額2000万円になり

・株主構成は,魁!葉玉塾3000万株,松本教授800株,法曹川教授200株になります。

このプランは,魁!葉玉塾として嫌な点が,いくつかあります。
1 出資後も2000万円の資本の欠損が出たままになっている。
2 資本金が3000万円増えると登録免許税がかかる
3 株主に松本教授と法曹川教授が残ると,今後の株主総会の運営が面倒くさい。特に法曹川教授は,「松本教授のせいで破綻した」と恨みに思っていて,今後,株主として口出しさせると大変だ。
4 本来,松本教授と法曹川教授の株式の価値は0円だったのに,自分が3000万円出資したおかげで,一株あたり純資産が約1円になり,株式の価値が生じてしまう。
などなど。

そこで,登場するのが「いわゆる100%減資」です。

まず,松本教授が80%の大株主であることを利用して,松本教授に株主総会でがんばってもらい,定款変更をして株式に全部取得条項を付け,さらに,その取得決議をして,松本教授・法曹川教授の株式を対価0円で初心社に全部取得してもらえば,株主のいない会社になり,3と4の問題は解決します。

さて,残るは,前記1と2の問題であり,これが「古い頭で」さんの問題意識に関係するところです。

株式の全部取得をしても,資本金は減少しませんから,放っておけば,魁!葉玉塾の出資前の時点では,資本金は1000万円,純資産額マイナス1000万円,欠損2000万円のままです。

「古い頭で」さんが「資本金を減らさないで株主だけ入れ替えても新株主にそれだけの負担が残ったまま」というのは,前記1の問題のことで,「このまま魁!葉玉塾に対し新株発行をしても,2000万円の欠損が残ったままになり,今後,2000万円以上の利益が出ない限り,配当ができなくなってしまう。」ということだと思います。

 そこで,1の問題が気になる人は,「資本金の額の減少」を実施することが考えられます。
 つまり,松本教授に頼んで,全部取得の総会決議をする前に,「資本金の額の減少」の決議して,資本金を0円にしてもらうのです。
 これだと「100%減資」の名にふさわしい感じです。

 でも,本件の場合,債務超過なので,全部取得前の時点で資本金を0円まで減少しても,新株発行をすると債務超過分である1000万円は欠損が出てしまいます。
 そこで,2番目の方法として,新株発行後に,株主である魁!葉玉塾が株主総会で,欠損の額である2000万円分の「資本金の額の減少」をすることにより,資本の欠損をなくすことが考えられます。
 しかし,2番目の方法だと,4000万円に資本金が増加したあと,2000万円に資本金を減少させることになり,いわゆる往復ビンタを食らうので,登録免許税が高くつきます。
 つまり,上記2の問題がより深刻になるのです。

 そこで,第3の方法として,自己株式の処分がクローズアップされてきます。

 そもそも,魁!葉玉塾が,初心社の資本金を増やしても大して意味はないし,何より登録免許税は安い方がいいに決まっています。

 そういう場合には,初心社が,松本教授と法曹川教授の株式合計1000株を全部取得した後,その取得した自己株式1000株を,魁!葉玉塾に処分するのです(払込価額3000万円で)。

 そうすると,自己株式の処分では,資本金は増えませんから,
 資本金    1000万円
 純資産額   2000万円
 発行済み株式 1000株 株主 魁!葉玉塾
という会社のできあがり。
 資本金も,発行済株式総数も変動しないので,登録免許税もかからず,欠損も消え,株主も魁!葉玉塾一人になりますから,前記1から4までの悩みは全て解消,ハッピーエンド。

 以上のように,いままで「100%減資」と呼ばれていた手法は,「減資」に拘ると,あまり良いことがないので,もう「100%減資」という呼び名には拘らない方がいいのではないかなと思っている次第です。

Q1
千問のQ440で、使用人兼務取締役の使用人分給与は会社法361条の承認の対象とはならないとされております。この点は、従来どおりという理解で良いかと思いますが、この問題に関連してお伺いします。定款に取締役報酬の定めがなく株主総会で報酬の確定枠を決定した際「使用人兼務取締役の使用人分給与を含まない」旨を明示しなかった場合でも、その確定枠とは別に使用人分給与を支給できるという理解で良いのでしょうか?
Posted by みひろ at 2006年06月30日 02:00
A1
使用人分給与の支払いについては,特に規制はありません。Q440のとおりです。ただし,開示義務がかかる場合はあります(Q441)。

Q2
①取締役会の設置から代表取締役が就任するまで従来の代表取締役は権利義務を承継するとのことですが,会社法351条1項では,権利義務を承継する退任事由を「任期満了又は辞任」に限定しています。「取締役会設置による退任」の場合も,この規定が類推適用されるという理解でよろしいでしょうか。
②登記上,退任→権利義務承継→再就任の場合には(退任即再就任の場合とは異なり),原則どおり退任及び就任の登記をしなければならないとされています。質問のケースのAは権利義務承継期間を経ているにもかかわらず,質問のケースのAは後者に該当することになるにもかかわらず何の登記もいらないという結論は,新たに便宜的な取扱いが認められたという理解でよろしいのでしょうか。
Posted by sara at 2006年06月30日 12:44
A2
 代表取締役の任期については,もともと法律上の規定は設けられていませんが,会社法は,機関設計の変更による退任を任期満了として考えているので(千問Q374),取締役会設置による退任も,任期満了若しくはそれに準ずるものとして,351条1項が適用されるものと考えています。
 登記がどうしてそうなのかを説明することは控えますが,登記上は,代表取締役Aについては,何の登記もいらないということで決着がついています。

Q3
出資財産等不足額填補責任(52条1項)に関して、設立時取締役が同責任を負う理由を質問させて下さい。同責任の趣旨が、株式引受人間の公平の確保にあるのならば、本来同責任は現物趣旨等を行った発起人のみが負うべきにもかかわらず、金銭出資を行った発起人も、後に求償しうるとはいえ、同責任を原則として負う許容性は、千問の34にございますように、発起人は当該現物出資財等を一定の価額で評価することについて合意をなす点にあると思いました。しかし、設立時取締役は、そのような合意に参加しないため、同責任を負わせる許容性がなく、また仮に発起人以外の引受人の保護を強調しても、発起設立の場合には通用しないと思いました。宜しくお願い致します。
Posted by kiji at 2006年06月30日 14:36
A3
設立時取締役は,現物出資財産の価額が相当であるかどうか等について調査義務を負っており(46条1項),しっかりと調査しなかったために,引受人間に不平等が生じてしまったことから,52条1項で責任を負ってもらっています。

Q4
 譲渡制限株式の譲渡承認手続に関し、以下の理解で良いか確認させてください。
「会社が譲渡承認を不承認とし指定買取人を指定する場合、旧商法においては、譲渡の相手方指定通知の日から10日以内に売渡請求をしなければならないという時間的制限があった(旧商法204条の3第1項)が、会社法においては会社法142条第1項の通知の時間制限はなくなった。したがって、指定買取人が譲渡不承認通知の日から10日経過後に会社法142条1項の通知を行った場合でもその時点で売買契約が成立する。その後、会社が譲渡不承認通知から40日以内に会社法139条2項による通知を行わなかった場合には、同法145条2号により譲渡が承認されたものとみなされるが、譲渡承認請求者は売買契約を破棄できない限り、当初の譲渡承認請求における買主に対し売却することはできない。」
Posted by 弁護士S at 2006年06月30日 16:11
A4
ちょっと確認ですが,「会社法139条2項による通知を行わなかった場合」というところに勘違いか,誤記があるのではないでしょうか?

Q5
3月決算会社で、3ヶ月以内に総会を開くことになっているのですが、19年度では一ヶ月のみ事業を行い、4月で解散し、5月まで存続する予定です。
このような場合、19年6月に株主総会を開く必要があるのでしょうか。
それとも第一回清算株主総会を実施するためそれにより代替(株主総会を実施しないとする)できるのでしょうか。
Posted by たけ at 2006年06月30日 19:47
A5
4月で「解散」というのは,総会の解散決議ではないという前提ですね。
清算株式会社になれば,清算の開始原因が生じた日の翌日から1年間が清算事務年度(494条)になりますので,それまでの事業年度とは別になります。
 したがって,6月に定時株主総会を開く必要はありません。ちなみに,以前も記事に書きましたが,3月決算会社で3か月以内に総会を開くというルールは,もともと会社法にはありません。

Q6
467条1項1号・2号の「事業」の意義において判例の基準に立つ場合の、要件3のあてはめの仕方がよく分からず困っています。
まず前提として私の判例の要件3の理解ですが、判例は要件3を、
→譲渡会社がその事業に応じ「法律上当然に」21条に定める競業避止義務を負う場合
としていますが、この「法律上当然に」というのを、
→競業避止義務を負わない旨の特約のない限り
という意味に私はとっています。
すなわち、21条1項が「当事者に別段の意思表示のない限り」としていることから、競業避止義務を排除することもできる。
しかし、その旨の特約のない限り「要件1・2を充たす場合は必ず競業避止義務が発生する」、と理解しているのですが正しいでしょうか。
A6
 要件1・2・3って何を指しているのでしょうか?それが分からないと,答えられないのですが。

Q7
決算公告について質問があります。
非上場の子会社を有している場合において、親会社がHPに決算公告を行っており、当該HPに子会社の決算公告を載せる方法により子会社の官報での決算公告を省略することは可能なのでしょうか。それとも、子会社が自分のHPを作りそのページに載せなければだめなのでしょうか。
Posted by 丈ちゃん at 2006年07月01日 15:16
A7
HPアドレスは,何でも結構です。
葉玉ブログのコメント欄でも(笑)。ただし,5年間はこのブログは持たないので,このブログが途切れた時点で公告義務が生じます。

Q8
ストックオプション(以下SO)に関して
世の中には有償SOと呼ばれているものがあります(無償発行以外をSOと呼ぶかは別にして)。未上場の会社でも適正に株価を算定し、行使価額を時価以上に設定して、新株予約権の価額を払い込ませるものです。これだと有利発行ではないため、公開会社では取締役会決議で発行が可能となっています。
ここで、この有償SOを会社の取締役に付与する場合でも361条1項の総会決議は必用となると言うことで宜しいでしょうか?
Posted by ネットくん at 2006年07月01日 19:40
A8
ストックオプションという言葉は,どうでもいいのです。
それが,職務執行の対価ならば,報酬決議は必要だし,一般人と同様の第三者割当てをしているのならば,報酬決議は不要です。

Q9
最近の著書によると、葉玉先生と共に立案に携わった郡谷さんは、現在、司法修習生のようですが、司法試験にはいつ合格されたのでしょうか?葉玉先生が、受験指導などをされたのでしょうか?
Posted by 玉屋 at 2006年07月02日 01:38
A9
郡谷さんのプライバシーに関わることを無断でお答えすることができませんが(笑),私は,受験指導していません。

Q10
 株式譲渡の承認は139条但書きによると、定款で定めればどこがやってもよいように読めますが、解説本では株主総会・取締役会以外の機関と書いてありましたので、「親会社の代表取締役」というのは不可でしょうが、「代表取締役」「取締役の多数決」などはよいとして、「監査役の承認をうけなければならない」など業務執行を行わない機関を承認機関とすることはよいのでしょうか。
A10
監査役は,その職務の性質上,承認機関となることはできないものと解されます。

Q11
 補欠監査役の任期は前任者の任期を引き継げますが、旧商法では、監査役が1名のときは補欠にならないというのが登記実務でしたが、会社法では1名でも補欠として任期を引き継げるという取扱いになりました。この場合の補欠監査役は、329条で定める事前に定めた監査役のみを指すのか、欠員が生じてから選任した監査役も補欠監査役とするのかで解釈が分かれております。前者のみを指すと考えますがいかがでしょうか。
Posted by みかえる at 2006年07月02日 17:46
A11
予選した監査役でなくても,336条3項の適用はあります。
以前記事に書きましたが,その問題ですか?


Q12
 会社法施行前から存在する株式会社が取締役会を廃止した場合、譲渡制限の承認機関が取締役会となっているため、その規定も変更しなければなりませんが、この変更をしない場合は、139条の原則により株主総会になると解してよいでしょうか。また登記申請は取締役会の廃止と譲渡制限の変更は両方同時に申請しないと却下されるようですが、却下できるのでしょうか。
Posted by みかえる at 2006年07月02日 17:49
A12
取締役会を廃止した場合,株式の譲渡に取締役会の承認を要する旨の登記は,内容が不実になるので,変更せざるをえません。

Q13
 現物出資をする場合、金銭債権について、負債の帳簿価額を超えないときは、検査役の調査は不要ですが(207条9号四)、商業登記法56条3項において会計帳簿を添付することになっています。しかし、当該金銭債権に係る出資額が500万円以下の時は会計帳簿の添付は不要という扱いになっていると聞きましたが、条文上明確にそのように書いてあるところはありません。仮に商業登記法56条3項が、検査役の調査が不要な500万円以下の出資であれば、3号に掲げる書面の添付の必要がないということであるならば、金銭債権は負債額を超えない限り、金額の大小に関わらず、もともと検査役の調査は不要なので、500万円以下かどうかで添付書類が変わるのは、金銭債権については考えられないのですが、どうでしょうか?
Posted by みかえる at 2006年07月02日 17:49
A13
商業登記法の解釈は,申し訳ありませんが,答えられません。

Q14
事前警告型の買収防衛策に最近見られる取得条項付新株予約権について質問させてください。当該取得条項は、株式を対価とし差別的に適用されるのですが(20%以上の買付者の分は取得しない)、差別的行使条件と異なり、会社法上このような差別的取得条項は認められないのではと思っています。20%保有者は行使できないといった差別的行使条件の場合には、他人に譲渡することによって当該買付者は経済的なロスを回避することができますが、取得条項の場合は、取締役会が決めた特定の日をやり過ごしてしまったら会社がもう一度取得を決めてくれない限りどうしようもないですよね。273条2項のかっこ書きが、一部取得の場合において取得対象外の株主を通知の相手としていないので、立法段階ではこういう差別的取得条項は予定されていなかったのでは?と思ってます。
Posted by attorney to be at 2006年07月03日 00:04
A14
 合理的な差別的取得条項は予定しています。
 ただし,問題となっている取得条項付新株予約権の発行が差し止められるかどうかは,ケースバイケースですし,経済的損害を特定の株主に生じさせれば,取締役に対する損害賠償請求ができる場合もあるでしょう。

Q15
当社の会計監査人である中央青山が資格喪失により退任となりました。そして7月1日以降、一時会計監査人を選任・登記し、また、総会決議により、9月1日から中央青山を(正)会計監査人として再任しました。この場合、9月1日をもって、一時会計監査人は法律上、自動的に退任したものとみなされるのでしょうか? それとも、一時会計監査人の退任の手続き(辞任)をとらない限り、(正)会計監査人が選任されても、一時会計監査人はそのまま存続するのでしょうか?
A15
一時会計監査人は,会計監査人が選任された時点で,自動的に退任します。辞任手続は不要です。

« 2006年6月 | トップページ | 2006年8月 »

最近のトラックバック

2009年11月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30