今日は,択一試験の発表でした。
合格者数が昨年の半分に減ったことに伴い,合格点は、昨年よりグンとあがって46点以上となっています。試験の難易度は毎年変わるし,相対評価なので,合格点を基準に有意的な分析はできませんが,私の合格したころ(いわゆる500人時代)と同じくらいの難度になっているような印象を受けます。
択一に合格した人に向けた話は明日にして,今日は,択一に落ちた人にお話をしたいと思います。
択一に落ちた人は、今頃、どんよりとした重い気持ちで、思考する気力もないかもしれませんが、気力があろうとなかろうと、未来は必然的に訪れるので、とりあえず今後の進路の参考にでもしてください。
ミカリンさんから,次のような質問を受け,ここ2,3日,どんな答えを書けばいいのか,悩んでいました。
「始めまして、いつも楽しく読ませていただいています。
今年の択一が30点台でしたので、来年の現行試験に向けての勉強をはじめています。
ところで、私の周りでは現行をあきらめ、ロースクールや他の資格への転向をする人が多く、来年は今年以上に大変になるのだ、という不安でいっぱいですが、いままでに比べ、どれほど大変になるのか、という想像がつきません。
来年に向けての覚悟を決めたいと思うので、葉玉先生のお考えをお聞かせいただけないでしょうか。
ちなみに私のいまの状況は,勉強をはじめて3年目、理系出身で試験に関係する知り合いがあまりいません。また、現行しか選択肢がありません。」
おそらく質問の趣旨は,来年の現行試験の合格者数は,今年の合格者数より減少するので,どうしたらよいかということなのでしょう。
一般に択一不合格者の選ぶ道は
1 ロースクールにいくかどうか
2 司法試験をあきらめるかどうか
の2つのポイントで別れます。
ロースクールにいくかどうかについては,さらに
(1)ロースクールに行って,来年は旧試験は受けない。
(2)ロースクールに行って,来年も旧試験は受ける。
(3)ロースクールに行かずに,来年も旧試験を受ける。
の3つの選択肢があります。
まず,あなたが、今日,(1)を選んだとしたら
「今年,旧試験を合格するつもりで受験したんじゃないの?
なんで,1年後の旧試験を受けないの?
2年・3年後の新試験の難易度が,来年の旧試験よりも簡単であるという保障なんか,何もないよ。自分が1年間必死に勉強して,実力を伸ばす自信がないのならば,2年やったって同じ。旧試験を受けるかどうかは,願書出すときに決めればいいのだから,択一の模試や論文答練の結果を見て,そのときに考えればいい。
今の段階から,来年を見送るなんて弱気な考えならロースクールもやめちまえ」
と叱咤することでしょう。
(2)の選択肢は,おそらく一番合理的な選択であり,特にコメントはありません。
(3)の選択肢を選ぶ人には,①ロースクールに行くお金と時間がもったいない,という人と,②ロースクールに行こうと思っても行くお金・時間がないという人がいるのでしょう。
客観的に見れば,現在の司法試験に関する政策は,ロースクール誘導型の政策であり,(3)の選択は,その誘導に反逆している(笑)のですから,一番不利な選択であるということは言うまでもありません。
私は,本来ならば,独学・ロースクール・受験予備校が制度間競争をするのが,日本国憲法が保証する自由主義に則しているのではないかと思いますが,憲法的観点から、公共の福祉を実現するための職業選択の自由等に対する政策的制約として,ロースクールの卒業資格を新司法試験の受験資格とする法制度が採用されてしまったので、司法試験をめざす人にとっては、(3)の選択はどうしても不利になってしまいます。
ところが,ミカリンさんは,(3)の選択しかないということを追記されていますので,私としては,この点に関するアドバイスをする余地はありません。不利であろうとなかろうと、時間的金銭的余裕がなければ、(3)しかないということかもしれません。
とすると,ミカリンさんが,私に聞きたいのは
「私は,来年,旧試験しか受けることができませんが,司法試験をあきらめるべきでしょうか?」
ということなのでしょうか。
それに対する答えを一言で言えば・・・・
「それは,あなたが決めることであり,私が決めることではありません」
ということです。
来年の旧試験は、合格者が減少するから,今年よりも更に合格が難しくなるという一見もっともらしい話をする人がいるので、悩む気持ちは分かります。
しかし、厳しい言い方ですが
「合格率1.5%が1%になったくらいで司法試験をあきらめるのならば、あなたは、法律家になって貰わなくて結構です。」
法律家は、他人の権利を守ることによって、お金をもらう仕事です。
法律家が無能・無気力である場合、迷惑を被るのは、法律家ではなく、依頼者・被害者・当事者です。
法律家になれば、毎年のように、難しい事件にぶち当たり、自分のお腹にグッと力をいれて、ぎりぎりのところで踏ん張りながら、他人の権利を守ってあげなければならない場面に出くわします。
合格率という数字のマジックごときにビビって、あきらめるような人は、法律家に向いていません。
そもそも、合格者数が減っても,それと同じくらい受験者数が減れば,合格率は同じです。今年は,合格者の減少率が受験者数の減少率を上回ったので,合格率も減少しましたが,来年は,受験者数の減少率もかなり大きいかもしれません。特に普段は仕事のため勉強できず,試験だけ受けている人も多いので,1年間必死に受験勉強をして受験する層がどのくらい減少するかが問題です。
また,私が外から眺めている限り,若い人の多くは「ロースクールに行くけど,旧試験は受けない」という選択肢を選んでいるようです。
この傾向,すなわち,頭の良く成長が早い新規受験生が旧試験に流れ込んでこないというのは,旧試験の受験生にとっては朗報です。
はっきり言って,司法試験は,勉強した年数が長ければ長いほど試験に有利ということは全くありません。
私の経験によれば,頭のいい人なら1年,並の人でも2年間,能率的で意欲的な勉強をすれば,10年間,勉強し続けたベテラン受験生に簡単に勝てます。
言い換えれば,後ろから追っかけてくる頭のいい、やる気に満ちた受験生が入ってこないのならば,旧試験は,「今年の受験生から合格者が抜けた余り者同士の戦い」つまり「ドングリの背比べ」状態の中で競争すればよいということになります。
さらに、合格率も合格者数も,数字の遊びという側面があり,私がゼミをしていた頃は,世間の合格率は2%でも,ゼミ生の合格率は20%〜40%くらいでしたら、結局は,どれだけ法律家としての素養を身につけることができるかということの方が、表面的な合格率の動向よりも,ずっと大事なことなのです。
旧試験が終了しても、予備試験制度がはじまりますから、ロースクールに行くことだけが唯一絶対の道ではありません。働きながら勉強する道も残されています。
不安があるのは、誰でも一緒。ロースクールに行ったって、三振の不安は消しきれません。旧試験の受験生も、旧試験が終わるまでに合格しないと自分の行き場がなくなると思いこみ、ロースクール生と同じ、三振恐怖症にかかっています。
しかし、三振の心配ばかりしているバッターは、ヒットも打てません。
試験委員という剛球投手を相手に、三振にならないようにバントばかりねらっていては、3バント失敗で、いずれにせよアウトです。
どんなに速い球でも、しっかり球筋を見極めて、シャープに振り抜くことにより、はじめてヒットになるのです。
ミカリンさんに限らず、択一試験の成績が良くなかった人は、不安と悩みで一杯でしょう。
でも、その悩みの中で、自分の力で人生を「選ぶ」ことができなければ、どんな道に行っても、他人に流される人生になるだけです。
才能豊かな人のことを「選ばれた人」と表現することがありますが、私は、法律の世界で「選ばれた人」など見たことがありません。
何の勉強もせずに、自然と
「9×1が9、9×2じゅうはち、9×3心裡留保、9×4虚偽表示」
などと法律知識が出てくるはずはなく、どんな頭のいい人でも、苦しみながら先人の知恵を身につける努力をしています。
このように、神様から選ばれることがない以上、残る選択肢は、自分の意思で、自分の道を「選ぶ」のか、それとも、「選ばずに、流されるか」のどちらかです。
みんながローに行くから・・・
みんなが他の資格に転向するから・・・
だから、あなたは、みんなと同じ道を歩くのですか?
ところで、「みんな」って、誰ですか。
人はそれぞれ、歳も違う、能力も違う、環境も違う。
「みんな」なんて人はいないのに、「みんな」と同じ道に流されれば、それが、あなたにとってのBest Wayになるなんてことは、ほとんどありえません。
自分で考え、自分で選ぶからこそ、自分に最も相応しい道を進むこと、自分に最も相応しい道を切り開くことができます。
もちろん、人間は、未来を見通すことはできないから、選ぶときには不安があります。特に、現在の生活が苦しければ苦しいほど、歳を取れば取るほど、「一生、司法試験に合格しなかったらどうしよう」という気持ちになるものです。
でも、その不安は、世の中の法律家全員が、受験生時代に持っていた共通の不安感です。
「合格しないかもしれないという不安感」と「それでも、司法試験に合格するんだという決意」は、合格のための必要条件です。
選ぶことを恐れるのをやめましょう。
人生の分かれ道に立ったときには、天使と堕天使が目の前に現れます。
天使と堕天使は、同じ顔をしていますが、世俗的な私には、
天使は清楚だが、魅力に乏しいように見え、
堕天使は、華やかで、魅力にあふれて輝いて見えます(笑)。
そのため、堕天使を天使だと勘違いして選び、波乱と苦悩に満ちた道に迷い込んだことも、一度や二度ではありません。後から思えば、「あの時、天使を選んでいれば、清らかで落ち着いた暮らしができていたかもしれないのに」と思うこともしばしば。
でも、波乱と苦悩を経験したからこそ、努力して得た幸せは、天国で安楽に暮らす喜び以上の感動をもたらしてくれます。疲れながらも、充実した日々を送ることができます。
分かれ道で、どちらも選ばなければ、立ちすくんだまま、老いていくのみです。
決意が全ての出発点です。
私は、ミカリンさんに必要なのは、
(1)悩み抜いて、自分の道を選ぶこと。
(2)道を選んだら、選んだ道に潜む困難を克服するための技を、同じ道を行く先人から教えてもらうこと
(3)教えてもらったら、迷わず、その道を進んでいくこと
の3つだと思います。
特に3年間も勉強していながら、「試験に関係する知り合いがあまりいません」という状態は危険です。どうも、勉強が消極的な勉強になっているのではないかと心配してしまいます。
まず、法律家になるのか、ならないのか、はっきり決めてください。
試験の難易度なんて、どうでもいい。
あなたが行く道を選んでください。
ミカリンさんが、悩み抜いて、どんな苦労をしても法律家になると決意したときに、また次のアドバイスをしたいと思います。
(質問コーナー)
Q1
前提決議を欠く代取の行為の論点と前提決議の瑕疵における判決効果の範囲の論点との関係がよく分かりません。そして、前提決議を欠く代取りの効果のところで93条の類推適用をするのが判例ですが、事例ごとに判断するという一文を基本書で目にします。しかし、93条後段類推適用をすると画一的な判断になってしまうような気がします。
取締役会の決議で目的の範囲外の行為をなした場合に、前提決議を欠く代表取締役の行為として構成することは出来ないのでしょうか。
Posted by 法学部生 at 2006年06月08日 09:31
A1
質問内容がよく分からないところがあります。「前提決議」というのは、取締役会ということでしょうか。
その前提で法学部生さんの質問の内容を推察すると、取締役会が目的の範囲外の行為を決議し、その決議に基づいて代表取締役が法律行為をした場合の行為の効力のことを質問しているような気がします。
とすると、取締役会の決議は無効ですから、当該代表取締役の行為については、民法93条類推で原則有効、ただし、93条ただし類推で相手方が悪意また過失のときには無効ということになります。
93条ただし書が「画一的判断」というのは、意味不明です。過失の有無を判断するので、実質的な判断が可能だと思います。
Q2
商事法務1786号の「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いの解説」P5の表にある設立時代表取締役について質問させて下さい。
①取締役会設置会社での設立時代表取締役選定は設立時取締役による互選しかありえないと考えていたのですが、定款で定めれば発起人や創立総会で選定することも可能なのですか?
②この表の左列にある「定款に選定方法の定め〜」とは、代表取締役の選定方法とは別の、設立時代表取締役の選定方法のことなのでしょうか?
③取締役会設置会社でありながら設立時代表取締役の選定がなされない場合があるのでしょうか?
Posted by chigmog at 2006年06月08日 11:55
A2
①千問Q58に詳しく載っています。発起人や創立総会も可能です。
②すいません。今、1786号が手元にありません。
③取締役会設置会社では、設立時取締役の互選で設立時代表取締役を選定しなければならないので、選定されないことはありません。
Q3
28条に違反する財産引受等の効果について質問させてください。
「会社法100」の第16問(司試平成7年)では、反対説をふまえて、「28条が『その効力を生じない』と規定しているのは同条2号に違反する財産引受については、設立中の会社の実質的権利能力も発起人の権限も及ばず、会社に効果帰属する余地を与えないという趣旨であり、…」と書かれています。
とすると、旧商法と異なり、もはや設立中の会社の実質的権利能力の範囲や同一性説の議論は、会社法では実益がなくなった(28条の趣旨を論じれば足りる)ということなのでしょうか?
Posted by くろむつ at 2006年06月08日 13:34
A3
実質的権利能力や同一性説は、説明の仕方の問題であり、会社法でも、その説明を前提にしていると思います。
ただし、その点についてどの説に立つにしても、要件を充たさない財産引受には効力を認めないことは共通なので(明文上明らか)、その場面においては、まわりくどい説明をする必要はなく、28条の趣旨から論ずれば足りると思います。
Q4
取締役の責任限定について、一旦、426条による取締役会決議の方法を取ろうとしたところ、3%以上の株主の反対があったために取締役会決議による責任免除はできない場合に、その後、同一事象について425条の株主総会特別決議によって責任免除を得ることも制度上は可能と考えてよろしいでしょうか。もっとも監査役全員が同意するかどうかという問題はあるのですが。
Posted by SMOKY at 2006年06月08日 14:19
A4
問題ありません。何度でも免除をチャレンジしてください。
Q5
会社法第205条の規定は第三者割当による募集株式発行手続の場合の規定だと聞いたのですが、株主割当の方法による募集株式の発行手続においてはこの総数引受契約の締結はできないのでしょうか?
株主割当では使えないとする理由がわからないので、ご教授下さい。
Posted by 万年補助者 at 2006年06月08日 17:20
A5
株主割当というのは、株主に募集株式の割当を受ける権利を与える場合のことをいい、株主が、その権利を行使すれば(単独行為)、総数引受契約を締結するまでもなく、引受の効力が生じます。
したがって、単独行為と契約を比べれば、単独行為の方が要件が軽いので、総数引受契約をする意味がありません。
Q6
「論点解説 新・会社法」出版おめでとうございます。
早速買い求めたいと思うのですが、100問同様、すぐに誤植の修正版が出るということはないでしょうか?(笑)
Posted by it at 2006年06月08日 17:58
A6
商事法務は、それをおそれて、目を皿のように誤植チェックしていたので、大規模な誤植の修正版はでないと思います。
もちろん、人間なので誤植があるかもしれませんし、その際は、皆様のご指摘を受けて修正するつもりではありますが、それは当分先のことでしょう。
Q7
社外取締役の登記についてご回答ありがとうございました。
度々の質問で誠に恐縮ですが、社外取締役の登記につき重ねてお尋ねしたいことがあります。
法911条3号25号は
①「責任限定契約についての定款の定め」があるとき
②「社外取締役であるものについて」
社外取締役である旨の登記をしなければならないと定めており、②の「社外取締役」とは法第2条15号に該当する者を全てと理解するのは誤りでしょうか?
なお、千問297ページQ409のA2中の「客観的に社外取締役に該当する者」も「法2条15号に該当する者」でしょうか?
さらに、A2の回答「また」以下の説明は、複数の社外取締役であって、責任限定契約を締結する社外取締役と締結しない社外取締役の両方がある場合のみのことでしょうか?それとも、締結していない社外取締役のみ(1名または複数)の場合も含まれるのでしょうか?
Posted by 悩む担当者 at 2006年06月08日 20:07
A7
Q409の最後の方に記載のあるとおり、法的効果を受けない社外取締役については登記義務はないと解釈しています。
法益効果を受けない社外取締役は、その者又はその者らだけしか社外取締役がいない場合でも、登記義務はありません。
Q8
既出かもしれませんが、基準日について質問をさせて下さい。
基準日は、株主の変動を見越して「一定の日の株主名簿記載の株主に権利行使してもらうための制度」だと理解しています。
従って、基準日を定めることなく、その日現在の株主に権利を付与するのであれば、特段これを定める必要はない。と理解しているのですが間違いないでしょうか?
Posted by greenlemon at 2006年06月08日 21:03
A9
そのとおりです。会社法100問論点<314>です。
Q10
葉玉先生、「千問の道標」さっそく読ませていただいております。
その中で、疑問に思ったのは、Q426で、非取締役会設置会社における代取死亡における平取の代表権につき、いわゆる「非回復説」(会社法349①ただし書の適用存続説)がとられていることです。もし、このケースで、この説をとられるなら、取締役会設置会社の定めを廃止した場合にも、会社法349①ただし書の適用存続が認められても良いと思うのですが?
Posted by 駿佑 at 2006年06月08日 22:48
A10
取締役会設置会社と非取締役会設置会社は、代表取締役の選定方法が異なるので、取締役会を廃止した時点において、非取締役会設置会社の選定方法により選定した代表取締役はいないことになります。そのため、定款に別段の定めがない限り、各自代表の規定が適用されると考えています。
Q11
社債について質問です。
商法300条(割増償還について)が廃止されました。
今後は、割増償還ができなくなったという理解でよいですか?
商事法務1751号の葉玉先生の解説は「券面額=償還額でないといけない」とあり、割増償還禁止のように読めます。
Posted by じゃふ at 2006年06月08日 14:01
A11
割増償還は、できなくなりました。
Q12
旧商法下で「新株予約権証券は、新株予約権者の請求がある場合に限り発行する」と決議されて発行された新株予約権について、現実に請求がなく新株予約権証券が発行されていない場合でも、会社法下では、249条3号ニに定義する「証券発行新株予約権」ではないとして取り扱うのでしょうか。当該新株予約権を取得条項に基いて取得する際には、一度新株予約権証券を発行する等の手続きは不要であると解してよいですか。
Posted by パラリーガール at 2006年06月07日 23:42
A12
ご質問の新株予約権は、「証券発行新株予約権」です。
当該新株予約権は、288条2項と同じ規律に従っているものにすぎません。
最近のコメント