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2006年4月29日 (土)

常勤と社外の関係についての質問等

Q1
社外監査役を同一会社の常勤監査役に選任することができますか。
A1
 社外と常勤は、なんら矛盾するものではないので、社外監査役を常勤に選定することはできます。また、責任限定契約と常勤性も関係ありませんから、常勤監査役が責任限定契約を締結することも可能です。
 社外取締役が監督権行使のために毎日出勤しても、社外性を失うわけでもなく、責任限定契約が無効になるわけでもないのと同じです。

Q2
よく定款に附則を設け、その最後の項に「本附則は、○○○となったときは削除する。」と定めているケースがありますが、このように定めておいた場合において、当該○○○を満たしたときは、株主総会で附則の削除を改めて決議することなく、例えば代表取締役の権限で削除してしまって良いものなのでしょうか?
A2
条件付廃止も有効でしょう。代表取締役の権限で削除するのではなく、時限的規定が期限到来により廃止されるので、代表取締役は、その廃止後の定款の内容に従って、形式的に文面を補正したものにすぎません。

Q3
仮に「選任後1年・・」と言う定款変更を今年6月開催の定時株主総会でする場合、この昨年12月選任の取締役の任期はいつになりますか?この取締役は"選任後"1年以内の定時株主総会は今年の6月のものしかないので、ここで重任するんでしょうか?また、重任しない場合の当該取締役の任期はいつでしょうか?
Posted by ネットくん at 2006年04月28日 08:39
A3
今年の6月の定時株主総会の終結時が任期なので、重任しなければならないですね。重任しなければ、欠員になり、なお権利義務を有する者になります。

Q4
361条に関して確認させてください。
取締役へのストックオプション付与は1号で上限を決めるのだったと思いますが、総会決議ではなく定款で定めることが可能だとすると
①複数年の上限は可能でしょうか?
②過去の付与分はどうするのでしょうか?
また、当該ストックオプションに譲渡制限が付与されていないとすると
③一度他の法人・個人に付与されたものを、この取締役が譲り受ける場合の額も、当該上限に含まれていなければならないのでしょうか?「職務執行の対価」ではないので、可能(含まれていなくてもよい)な気がするのですが。。
Posted by ネットくん at 2006年04月28日 09:30
A4
①定款はもちろんのこと、総会決議でも複数年の上限は可能です。
②過去の付与分というのは、決議をやり直すべきかということでしょうか。それは不要です。
③それは、報酬じゃないので、上限には含まれないでしょう。そもそも、質問の行為は、会社の行為ではないですよね。

Q5
葉玉先生、早速のご回答ありがとうございました。決議の有効期間について、会社法下では縛りはないものの、業務執行・監督の観点から考えた場合に再考が必要かとも思われますので、社内検討を促してみます。(一般的には3ヵ月、6ヵ月程度でしょうか)
Posted by 資金調達担当者 at 2006年04月28日 09:49
A5
現行商法の下で、法務省・大蔵省で例示していたのは3か月でしたので、「1年」はどうかなと思ったのですが、会社法施行後は、1年であろうと10年であろうと、構いませんので、社内検討をする必要はありません。

Q6
仮装払込に関してまだ頭が晴れません。
①預合いの罪はあるのに、見せ金の罪はどうして制定されていないのですか?
②第三者から資金を借入れ払込み、登記直後に当該資金を引き出して返済・・これを見せ金と称すると思いますが、この「直後」はどのくらいでしょうか?問題は、最初から「見せ金」の意思だと思いますので、直後でなくてもそう言う意思があれば、見せ金になる可能性はありますか?(逆に言うと、それだけ期間の余裕があれば弁済の資力ありと判断され見せ金になりませんよね?)
③上場会社等は、よく資金使途を「借入金返済」として資金調達をします(目論見書に記載)。その直前にブリッジで金融機関から借り入れていることがあります。この場合は別次元のお話しでしょうか?
Posted by ネットくん at 2006年04月28日 09:55
A6
①刑罰を新設するのは、構成要件を明確化しなければならないなど、非常に大変だからです。
②フィーリングです。論理的には意思があれば、見せ金になるでしょうが、そのような立証は不可能なので、現実的な議論ではありません。また、引受人に弁済の資力があるかどうかは、見せ金かどうかと論理的な関連性はありません。お金持ちの引受人が、代表取締役になって、会社の金を横領して、自己の借入金の返済にあてても、見せ金は見せ金です。
③その借入金返済は「会社の借入金」の返済のことではないでしょうか。見せ金は、「引受人の借入金」を返済することで、別問題です。

Q7
株券提出公告(219条)において、
「譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること(107条1項1号)についての定款の定めを設ける定款の変更をする場合」には株券提出公告が必要とされているが、「譲渡による当該『種類の』株式の取得について当該株式会社の承認を要すること(108条1項4号)についての定款の定めを設ける定款の変更をする場合」には株券提出公告が要求されていないのは、どのような理由によるものですか?
Posted by 必勝 at 2006年04月28日 11:25
A7
219条1項1号のカッコ書を見ると、108条1項4号の場合を含むつもりで書いているように思いますが、連休明けにでも、ちょっと確認します。

Q8
会社法336条1項の解釈(正確には要綱の該当部分)については,江頭先生が商事法務1722号15頁において,「『選任』とは,通常は選任決議時を意味するが,選任決議においてとくに選任の効力の発生時点を後に定めることは可能とされている。そうした措置をとることにより,現行の「就任」を起算点とするのと大きく変わらない運用をすることも可能である」と述べておられます。また,現行商法273条1項の解釈として,加美和照先生は,「監査役の任期の始期について,…(中略)…,昭和49年改正法では,監査役については就任の時とすることが明定された」と述べておられます(新版注釈会社法(6)437頁)。
これらを考え合わせると,会社法336条1項で,監査役の任期の始期は「選任時」=「選任決議時」に変更され,前に御質問したような総会集結時までの監査役の定員超過という問題が生じる可能性があるのではないかと思うのですがいかがでしょう。
Posted by T.I.ネットワーク(2/2) at 2006年04月28日 11:39
A8
役員と会社との関係について、契約が必要かどうかという問題とからめて、かつて、始期が選任か、就任かという争いがありましたが、いまや、就任であることは当然であり、あえて明文の規定を置くまでもないと思います。旧法でも、「就任後」という規定により、直接、始期を示していたものではありません。また、336条1項も、始期は規定していません。

Q9
葉玉先生、教えてください。会計基準上共同支配関係になる「子会社(=50%超保有)」は、会社法上はどのように判断<分類?>されるのでしょうか。
Posted by パラリーガール at 2006年04月28日 17:25
A9
すいません。質問の意味がよく分かりません。会社上、子会社にあたるかどうかは、子会社の定義にあたるかどうかです。財務諸表規則の子会社とは、言葉は違えども、同義と思っても結構です。

Q10
営業報告書等に出てくる条文には(旧)とつけなければならないということでしょうか。
旧法に基づく招集手続で旧法に基づく書類を作成しているのだから、(旧)とつける必要はないと考え、(旧)とつけるのは、新法の場合のみなのでしょうか。
それにプラスしまして、会計監査人の監査報告書に出てくる条文にも(旧)とつける必要があるのでしょうか。
Posted by 丈ちゃん at 2006年04月28日 17:42
A10
表記の仕方は、なんでもいいです。


Q11
公告方法は日刊新聞紙掲載を定めている株式会社を想定しています。
会社法第810条2項3号によって公告すべき計算書類に関する事項につき、直近の決算期の公告を怠っているため、新設分割に関する公告をする時点において、施行規則第208条1号イロハのどれにも該当するものがなく、同2号乃至6号にも該当しない場合、同7号に該当するものとして日刊新聞紙でなく官報で公告してよいものでしょうか。
それとも株式会社には決算公告義務がありますので、官報で新設分割にかかる公告をする前提として、あくまで定款所定の日刊新聞紙において公告をしなければならないのでしょうか。
また、前者が同7号に該当しない場合、同号の予定する事例はどのようなものでしょうか。
Posted by 頭がウニ at 2006年04月28日 18:06
A11
質問の意味がよく分からないところがありますが、810条2項3号は、会社分割の官報公告の内容として、施行規則208条7号に掲げる事項を掲載しなさいということを規定しているわけです。分割の公告としては、それだけの話。しかし、440条による決算公告義務はあるので、その会社は、日刊新聞紙に貸借対照表の公告をしなければならないのは当然です。ただし、その公告を怠っても、分割の公告は有効です。

Q12
監査役設置会社における監査役の責任の免除についてご教示下さい。
425条、426条の手続を取るに当たり、取締役の責任の免除の場合には、監査役の同意が必要ですが(425条3項、426条2項)、監査役の責任を免除する手続を進める場合には、この同意は不要であり、それは425条3項括弧書で「取締役(監査委員であるものを除く。)又は執行役の責任の免除に限る。」という部分に示されているという理解でよろしいでしょうか。
A12
条文に書いてあるとおり、監査役の責任免除には、監査役の同意は不要です。

Q13
法務省令99条の表題の「社債を引き受ける者」、同103条1項の「備え置く場所」、同117条の「附属明細書に係るもの」を法制局読みすると、「しゃさいをいんきじゅけるしゃ」、「びえちくばしょ」、「ふぞくめいさいしょにけいるもの」と読むことになるのでしょうか。
Posted by ウルトラアイ at 2006年04月28日 18:16
A13
常識的な一般人は、そのように読むことはありません。しかし、特殊な職業人はそのように読むときがあります。

Q14
種類株式に関し発行までに発行決議機関に委任できる場合に定款で定めるべき要綱につきお教えください。現在,既存の株式会社の定款の定時総会での変更案を作成しています。
まだ具体的には発行していない優先株式に関する定めとして「当会社は,いつでも優先株式を買い受けることができる。」との定めがあるのですが,この定めは取得条項付種類株式の定めとみなされると考えます。
この場合,対価に関する要綱としてはその種類だけを定めればよいので,対価が金銭であるとしてもその額の決定の基準となるような事項を示す必要はないと考えるのですが,いかがでしょうか?(例えば,「当会社は,当会社が別に定める日において,優先株式を,その発行に際して定める一定の額の金銭をもって,取得することができる。」といったものです。)
登記記録例の通達では,「時価」で取得とし,その時価の定義を登記するものとされているのですが,そこまで定めないといけないのだろうか,という点が気になっております。
Posted by たつきち at 2006年04月28日 22:14
A14
既に現行法上、有効な定めについては、それだけで要綱は定められていると思われますので、新たな要綱を定める必要はないと思います。

Q15
現任取締役の監査役への選任議案ですが、
①現任取締役は、総会終結時をもって取締役を任期満了により退任し、その後監査役に就任予定とを明記する。
②就任承諾書は、取締役退任を停止条件とするものを選任前に予め取得する(従って、参考書類には就任承諾をもらってませんとは書かない)。
以上により、監査役の任期は選任後からスタートするが、就任は取締役を辞めた後なので、兼任禁止にひっかからないという理解でよいのでしょうか。
それとも、選任議案の効力そのものを、候補者の取締役退任を条件とすることを参考書類に明記しなければならないのでしょうか(この場合は任期は取締役退任時からスタートですよね)。
Posted by 参事官室によく電話する人 at 2006年04月28日 23:09
A15
箸の上げ下ろしまで答えるのは、あまりよくないので、これまでの答えの中から考えてみてください。どちらでもいいということがわかるはずです。

Q16
剰余金の配当に関する経過措置についてお教え願いたいのですが。
整備法100条の「決算期に係る剰余金の配当」とはどこまでのことを言うのでしょうか?
具体的には18年度中に随時の配当が出来るかどうかです。
例えば3月決算の会社で,6月末や12月末を基準に配当を出来るかどうか?配当の原資は基本的に18年3月決算の剰余金になりますので,18年3月期にかかる配当と考えれば,従前の例に従い随時の配当は出来ないと考えていいのでしょうか。
つまり5月以降に決算期を迎えないと随時の配当は出来ないと言う理解でいいのでしょうか
Posted by pipi at 2006年04月28日 21:32
A16
18年度中でも随時配当は可能です。詳しくは、経過措置本127頁を見てください。

2006年4月27日 (木)

日経金融新聞の一面

本日の日経金融新聞の一面トップに、なんと「会社法であそぼ」が取り上げられました。

新聞の一面トップに載るのは、数年前に商法違反事件で、被疑者と一緒に写真が載り、友人知人から「誰が見ても、お前が総会屋に見えた」と揶揄されて以来です。

日経金融新聞の記事は、『法制度の隙間を埋める民間などの自主的なとりきめである「ソフトロー」の役割が増している』という橋本慎一さんという記者の方の署名入りのものであり
 「ブログも基準に」
という見出しの中で、このブログが法務担当者に注目されており、ソフトロー的なものとして機能しているという趣旨の好意的な評価をしていただきました。

 このブログは、ソフト・ローというより、ロー入りソフトクリーム(ただし辛子付)という感じのものであり、口当たりのよい事例を使った説明で、読者の皆さんに、今まで気付かなかった会社法上の秘密を発見してもらったり、会社法で生じた疑問とストレスを少しくらい解消してもらったりする場を提供しているものにすぎません(最近は、施行直前で、味気ない記事が多いのですが、潤いのある記事を求める方は、このブログの上にリンクを張っていますmさんの目次を使って、興味のある表題をクリックしてください)。

 記事の中で、石塚弁護士がおっしゃった「会社法の運用に大きな影響力をもちつつある」というありがたいお言葉も「8割引きくらいで聞いておこうと思いますが、企業法務の最前線に立つ有能な先生から励ましの言葉をいただいたのは、嬉しい限りです。

 この記事のおかげで、朝昼晩の質問責めにより急降下しつつあるモチベーションを回復することができました。橋本記者には、深く感謝いたしております。

 ただし、記事中の「所属官庁の了解を得ているものの、基本的にこのブログを個人で運営している」という部分については、「上司もたまに見てくれてますが、特に文句を言われたことはありません。もっぱら、個人的に、開けっぴろげ、かつ、お気楽にやっています」というあたりが、もっとも正確な表現だろうと思います。

では、今日も、質問コーナーに移ります。

Q1
会計監査人の任期について質問させていただきます。会社法338条1項では、「…選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時…」と規定されておりますが、この条文中の「…のうち最終のもの…」という表現は必要なのでしょうか?取締役の任期の「2年以内」や監査役の任期の「4年以内」のように複数年の場合には、どの「定時株主総会」かを特定するために、この表現が必要なのは理解できるのですが、そもそも「1年以内」であれば「定時株主総会」は1つに特定できると思われます。
A1
事業年度が6か月の会社は、1年に2回、事業年度が来ます。

Q2
"100%子会社への金銭貸付"は(投資)事業だと思うのですが、この"事業(債権)"を債務者である当該子会社に対して吸収分割することは可能でしょうか?
子会社が承継するのは"自己に対する貸付"なので、現実にはその事業が消滅してしまうため、「子会社に対する貸付」は事業には当たらないのでしょうか?でも承継する会社が当該子会社でない場合はその事業は継続するので、その場合は事業に該当すると思うのですが。。。
Posted by honma at 2006年04月27日 09:43
A2
子会社に対する貸付債権だけでは、事業には該当しないと思いますが、会社分割の対象は、事業に関する権利義務であって、事業そのものである必要ありません。
したがって、親会社が、貸付債権のみを子会社に会社分割により承継することもできます。
なお、会社分割後に、承継会社が事業を継続することも会社分割の要件ではありません。

Q3
当社では社債の包括決議を本年3月に有効期間1年で実施しているのですが、会社法施行後(仮に本年6月中)に社債を発行する場合には、根拠となる法律は会社法という理解で問題ないでしょうか?
整備法第103条第6項後段部分は「発行の手続きについては、なお従前の例による。」と「手続面」についてのみの言及であり、社債の内容自体については会社法上で決定すべき項目を決定すべしと理解しているのですが、一部では旧商法を根拠法として社債の内容自体を決めるべきとの考えもあるとのことで混乱しております。整備法の法解釈の部分があるかと思うのですが、ご教授の程宜しくお願い申し上げます。
Posted by 資金調達担当者 at 2006年04月27日 10:13
A3
有効期間「1年」で包括決議をしているということについては、若干言いたいことがあるのですが、その決議が有効であることを前提にして回答しますと、結論としては、旧法に基づく社債発行決議においては、旧法を前提とした決議内容を定めることになりますが、発行した社債は、会社法上の社債になります。

Q4
昨日のA9の、「整備法により」とありますのは、整備法96条(取締役会の権限行使に関する経過措置)のことと理解してよろしいでしょうか。ご教示いただければ幸いです。
Posted by 内部統制難民 at 2006年04月27日 10:21
A4
そのとおりです。

Q5
例えば3月決算の会社で、取締役の任期を定款にて、「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」としている場合の話です。
当該取締役が前期の定時株主総会での選任ではなく、期の途中で、例えば昨年12月の臨時総会での選任、同時に定款を「選任後1年・・」と改訂した場合、任期は次のいずれでしょうか?
①今年の6月開催の定時総会終結時
②来年の6月開催の定時総会終結時
③いずれでもなく、例えば今年の12月?
Posted by ネットくん at 2006年04月27日 10:48
A5
定款の変更により、任期は短縮されますから、今年6月です。

Q6
株式譲渡制限付与の手続きについて質問が3点ございます。
1.商法において、譲渡制限付与の効力は、株券提供公告期間の満了時に生じるとされていましたが(商350条2項)、会社法では効力発生日に関する規定が無いように思われます。①株主総会決議(定款変更)/②株主への通知(116条3項4項)/③株券提供公告(219条)をいずれも経ていれば会社が自由に効力発生日を定めることができるという理解でよろしいでしょうか。
2.1の理解が正しいとすると、株券不発行手続き(218条)と並行して譲渡制限付与手続きを行う場合、譲渡制限の効力発生日を株券不発行の効力発生日より後(もしくは同日)に定めれば、219条1項但書が適用になり、株券提供公告義務が消滅すると考えられますが、いかがでしょうか(4月27日のA5では、条文上、株券提供公告は必要ということでしたが・・)。
3.譲渡制限付与に伴う登記申請の添付書面の「当該株式の全部について株券を発行していないことを証する書面」には、株券不発行公告も該当するようにも思われますが、いかがでしょうか(具体的にどのようなものが当たるのがご教示いただけると幸いです)。
Posted by まいたけごはん at 2006年04月27日 10:50
A6
1 適法な手続きを経ることを前提とすれば、株主総会の決議で効力発生日を定めることは可能です。
2 昨日の回答を書いているときに、効力発生日で調整することも可能だろうと思ったのですが、登記が、それで受けてくれるかどうか不安なので、書きませんでした。
 実質的・論理的には、不要だと思いますが、調整マターです。
3 添付書面については、管轄外でございます。

Q7
親会社100%支配の子会社で、親会社がその子会社の株券を所持しており、親会社が単一株主であっても、効力発生日に1か月先立つ通知・公告は必要なのでしょうか。
このような状況なら、1か月の告知期間を待たずとも、親子会社間で処理を行なっても問題ないように思いますが、それでも219条の手続きは絶対なのでしょうか。
Posted by 会社法勉強中 at 2006年04月27日 11:58
A7
法律は法律なので、そう簡単に省くことはできません。株主全員の同意があれば、通知・公告を省略できるかということは、なかなか難しい問題ですね。普通はダメですが、新株発行はOKとかいう、ローカル・ルールがあり、法務局に相談してもらうしかないでしょうね。

Q8
昨年、資本金の規模から大会社であった親会社100%支配の子会社を減資しました。減資の手続きは司法書士の先生に指導いただき、減資は確か昨年の8月初めくらいから有効となっていますが、減資を行なった決算期いっぱい(H18.4末決算)は大会社の適用を受けると聞いています。
ということは、5月1日以降の新会社法下では大会社の適用は受けないという理解でよろしいでしょうか。実はその決算期の株主総会(H18.7末)までが大会社だという説が社内にあり、混乱しているのですが。ご教示の程をお願いいたします。
Posted by 会社法勉強中 at 2006年04月27日 12:01
A8
最初の段落が間違った知識です。大会社が大会社でなくなった場合、次の定時株主総会の終結までは、大会社特例規定の適用を受けます。
経過措置政令8条によって、次の定時株主総会まで、監査役会・会計監査人が設置されます。

Q9
総会終結時に退任を予定する取締役が監査役として選任される場合、選任議案自体は取締役退任を条件とするものである為兼任禁止にひっかからないと従来説明されていますが、それは会社法でも同じと考えていいのでしょうか。
役員候補者が事前の就任承諾をしていない場合は、参考書類にその旨記載しなければなりません。
上記の場合には、参考書類にその旨明記して就任承諾を総会終結後に取るという扱いでよいのでしょうか。また、それ以外に、「取締役を退任後に就任することについて予め承諾」という事前の就任承諾をとって参考書類には何も書かないというのもありそうです。
Posted by 参事官室によく電話する人 at 2006年04月27日 17:15
A9
条件付の選任議案ならば、兼任禁止にはあたらないと思います。
株主総会参考書類は、法令上の問題というより、兼任禁止にかからないことを株主に説明するためにどうしたら分かりやすいかという話のように思います。

Q10
 有限会社の資本の減少手続に関する経過措置として整備法第29条の規定が置かれています。有限会社においては、資本の額と出資総額との一致が要求されていることから、資本の減少においては、出資1口の金額の減少、又は、出資口数の減少(持分の併合又は消却)のいずれかが必要とされていますが、郡谷編著「会社法施行前後の法律問題」(商事法務)171頁の解説では、「資本の減少の規定に従う持分の消却については、整備法第29条の規定は適用されない」とされており、併合についても同様であると解されます。
 とすると、施行日前に、有限会社の資本の減少手続に着手し、整備法第29条が適用される場合には、単に減少する資本の額のみを決議し、施行日後に併合又は消却の手続を任意に行えばよいということになりますね。
 定款変更により出資1口の金額を減少させる方法も、整備法第5条第1項の規定により、記載又は記録がないものとみなされる以上、無益であり、行う必要はないように思います。
 という理解でいいように思いますが、いかがでしょうか。
Posted by 内藤卓 at 2006年04月27日 17:35
A10
 おおむねその理解で正しいと思います。ただ、施行日前には出資口数の減少義務等が生じているものの、施行によってそれが消滅するに過ぎません。

Q11
事業全部の意義および「事業の一部の譲受け」については規制がない理由についてご教示賜りたくお願い申しあげます。
江頭先生は 「簿外債務は引受けない旨を約したとしても,文言上,営業全部の譲受けに該当しないわけではない」とされています。一方「商事法務No.1747P.5では「・・・会社が行うべきものの総体については,個々の営業とは区別して,事業と表記する・・・」とあります。「事業の全部の譲受け」とは①「債務も含めた(もちろん個別の債務引受けの手続は経た上ですが)事業の全部」なのか,②「債務は除外したとしても事業の全部といえる」のかいずれでしょうか。
Posted by 短答式が近くて夜も眠れずにいる47歳 at 2006年04月27日 18:08
A11
 会社は、事業に関する財産ばかりもっているわけではないでしょうから、ある会社が、事業を全部譲渡した後に、事業と関係のない財産(物・債権・債務)が残ることはあるでしょうね。ということは、債務を除外したとしても事業の全部といえる場合はあるでしょう。

なぜ会社法が改正されたか?

 昨日のギターの流しの代金について、次のような質問をいただきました。

『[合コン1回」は刑法的には問題がないと思いますが、既婚者として、社会的又は家庭内的に問題はないでしょうか?(笑)。
Posted by 同じく既婚者 at 2006年04月26日 03:35
社会的にはともかく、家庭内的には「家事2回」で償っているものと想像しますがいかがでしょうか?
Posted by bank-N at 2006年04月26日 09:02』

 私は、自分の信念に基づいた行った行動(「合コンくらいで、信念出すな〜」というツッコミ希望)については、社会的制裁は全くおそれていません。
 しかし、我が家は、特別権力関係理論を基礎とし、夫に対しては、憲法の人権規定の適用が排除されておりますので、家庭内的制裁は、熾烈を極めるものと思われます(「家事2回」は、3ケタほど回数が違うだろうと予想されます)。
 我が家の統治機構については、女王陛下を頂点とする絶対王政が採用されており、私は、共和制、いや、せめて立憲君主制に転換すべく、ここ10年ほど革命運動を展開してきましたが、その度に鎮圧されてまいりました。そうした立場を鑑み、合コンの要求は謹んで取り下げさせていただこうと思います。貴重なコメント、ありがとうございました・・・・・

ということで、気を取り直し、今日の質問コーナーに行きましょう。

Q1
何で今頃こんな質問をという感じですが、なぜ会社法は改正されたのでしょうか。何が目的でしょうか。
会社の周りの人に一言で何と聞かれて簡潔に返答できません。結構困っています。先生は何と答えますか。
Posted by 会社法って何? at 2006年04月26日 01:17
A1
 現行商法は、株主や債権者を保護するため、会社の活動を、どのように規制するかという視点で作られてきました。
 しかし、バブル崩壊後、会社の活力が弱まるにつれ、「単に会社の活動を規制するだけでは株主や債権者は保護されない。会社が、競争力をつけ、健全な活動を行い、多くの利益を得ることが、結局は、株主や債権者の保護につながる」ということが認識され、国民の皆さんから、会社法制について、規制を中心とした法律から脱皮してほしいという要望が多数寄せられました。
 そこで、会社法は、商法という殻から飛び出して、規制緩和を核として、適正かつ活発な企業活動を助力する法律として生まれ変わったわけです。

Q2
「会社法施行前後の法律問題」(商事法務)216〜217頁に、整備法90条の適用により現行商法に従って招集される株主総会では、会社法で新たに設けられた内容を含む定款変更決議を行えない場合がある(現行商法に当該変更内容に相当する制度が無いものは、多数決では変更し得ず、総株主の同意が必要となる)旨の記載があります。
公開大会社であり総株主の同意を得ることが困難な会社が、例えば現行商法には存在しないWeb開示制度を導入したい場合、招集手続きは現行商法ではなく会社法を選択するしか無いのでしょうか?
現行商法と会社法のいずれで招集決議をするかの判断に影響がありそうですので教えて下さい。
Posted by 法務ヘルパー at 2006年04月26日 00:40
A2
216頁の記載は、決議要件が加重されていて現行商法では決議できない事項を念頭に記載されたものに過ぎません。
現行商法に基づいて株主総会が開催された場合であっても、会社法上の制度を導入するための定款の変更をすることはできます。

Q3
拒否権条項付株式を唯一引き受けたCの賛成を含めて発起人の議決権の過半数で設立時取締役を決定した場合、これとは別にCの種類株主としての決定は必要となるのでしょうか。また、仮にCの決定が必要となるとしても、Cが賛成していることをもって当初の決定をCの種類株主としての決定を含むものと理解することはできないのでしょうか。
Posted by 猫太郎 at 2006年04月26日 09:31
A3
Cの賛成をどのように評価するかというだけですね。創立総会・種類創立総会のように手続きがあるわけではないので、猫太郎さんのように評価することはできると思いますm。あとは、どのように証拠化するかというだけでしょう。

Q4
計算書類や招集通知で、条文がでてきますが、その条文はいつから会社法ベースに置き換える必要があるのでしょうか。
例えば、商法特例法18条や商法施行規則43条というのがそれです。
Posted by 丈ちゃん at 2006年04月26日 12:51
A4
3月決算会社では、計算書類は、今年は旧法で、来年から新法です。
招集通知は、施行前(もうすぐですが)に招集決定をしていたら今年は旧法、施行後に招集決定をしたら今年から新法です。

Q5
親会社の方針で、18年5月下旬開催の各子会社の定時株主総会で、(1)整備法76条4項で株券発行会社とみなされるので、この機会にすべての子会社を株券廃止とする旨と、(2)今まで株式譲渡制限がなかった一部の子会社について、この機会に株式譲渡制限を設ける旨の決議をするのですが、この場合、(1)特例有限会社は株券廃止公告等の手続きはいらないんですよね?(整備法にも株券発行会社とみなす規定はないようですし)(2)株券を廃止するのに、「株式条制限設定につき株券提出公告」を打って株券を提出させるのですか?(会社法218・219条関係?)違う方法があるのなら教えてください。
Posted by くびくろ星人 at 2006年04月26日 13:02
A5
(1)特例有限会社は、株券発行会社ではないので、株券廃止の定款変更は不要であり、公告も不要です。
(2)株券発行会社である株式会社が、株券を発行する旨の定めを廃止する場合には、株券提供は不要です。ただし、218条の通知・公告が必要です。
 しかし、株式譲渡制限をつけるときには、株券提供公告が必要(219条)なので、218条と219条の通知・公告を兼ねたものを、効力発生日の1か月前までに行うことが合理的であると思います。
 実質的には、株券を廃止するので、株式譲渡制限のために、株券を提供させる必要はないのですが、条文上、219条の手続きをやらざるをえないでしょうね。

Q6
会社法第749条第1項2号イの「当該吸収合併存続会社の資本金及び準備金の額に関する事項」について、合併契約(書)において、
「会社計算規則第59条の規定に従い、(効力発生日の前日までに、)甲が定め計算した金額とする。」と定めることは可能でしょうか。
Posted by moremi at 2006年04月26日 16:12
A6
甲は、存続会社ですよね。微妙な問題がいくつかあります。もう少し検討させてください。

Q7
合同会社の計算に関する質問です。合同会社では、業務執行社員の過半数一致により,会社が社員に対して出資の履行をすべきことを請求する権利に係る債権を資産として計上した場合、資本金の額が増加するとされていますが(計算規53Ⅰ②)、これは、どのような場合のどのような状況で問題となるのでしょうか。
Posted by 猫太郎 at 2006年04月26日 16:27
A7
合同会社とありますが、計算規則53条1項2号は、通常は、合名会社・合資会社に適用される規定です。合名会社・合資会社の社員は、設立までに出資の履行をする必要がないので、会社は、設立後、そのような社員に対し、出資の履行を請求する権利を有します。
 その請求権自体を資産とした場合には、出資が履行された場合と同様、資本金に組み入れる基礎としろというのが、その規定の意味です。
 合同会社は、設立前に出資の履行をしなければならないので、通常は、会社が社員に対し出資の履行を請求する権利を持つことはありません。

Q8
会社計算規則165条には、「法第440条第2項の規定により貸借対照表の要旨又は損益計算書の要旨を公告する場合における・・・」と規定されています。
会社法第440条第2項には、「・・・前項に規定する貸借対照表の要旨を公告することで足りる」とあり、損益計算書の要旨の公告には触れていないようですが、どう理解すればよいのでしょうか、ご教授ください。
官報や日刊紙に公告する会社は、損益計算書の要旨の公告は必要でしょうか、それとも不要でしょうか?
Posted by GENDO at 2006年04月26日 18:19
A8
損益計算書の要旨の公告は必要です。
440条2項は「前項に規定する貸借対照表」とされています。1項に規定する貸借対照表とは、「貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)」ですから、大会社では、2項を読むときに「貸借対照表及び損益計算書」として読み替えることになるのです。分かりにくいかもしれませんが、このような引用の仕方は、結構沢山あります。

Q9
内部統制システム構築の基本方針(会社法362条4項6号)について、帝人が3月30日の取締役会で決議したことが発表されています。
先生は、経過措置政令14条について、「以前、私が、施行後すみやかに決定すべきであるとお答えしましたが、それでは、ちょっとかわいそうなので、施行日以後最初に開催される取締役会において決定すれば足りることになりました。」と述べておられます。
また、マスコミ報道においても、「新会社法では、大会社は同法の施行後の最初の取締役会で内部統制の構築を決議しなければならない。」(日本経済新聞 2006年4月25日付朝刊)との記述も見られるところです。
そこで、帝人のケースのように、会社法施行前に行った取締役会決議の有効性について、経過措置政令との関係を含め、ご見解をいただければと存じます。
Posted by 内部統制難民 at 2006年04月26日 18:21
A9
内部統制システムは、必ず会社法施行後に定めなければならないものではなく、会社法の要件を充たしたものを施行前に決定することもできます。施行前の取締役会決議も、整備法により、会社法の取締役会の決議とみなされますから。

Q10
会社法8条1項の「不正の目的」について教えてください。商法と違い「営業」ではなく、他の「会社」と誤認されると・・・と規定されました。この度、清算手続中(解散登記済)の既存会社と同一商号・同一目的で本店所在場所が1番地だけ違う隣地に会社設立をしようといている知人がおります。役員は半数ほどが同一人兼任です。このような場合、新会社法では類似商号の規制を受けないため、設立登記はできてしまいそうですが、既存の清算中の会社の長年の信用(安心感)や歴史(キャリア)を利用しようと考えると「不正の目的」に該当して、過料の適用を受けるのではないかと心配です。
Posted by 会社法難民 at 2006年04月26日 18:48
A10
すいません。具体的な事案の相談について、私がお答えすると、非弁活動で捕まってしまうおそれがあります。まあ、「違法すれすれ」より「李下に冠を正さず」の方が商売は長続きします。そういえば、ホリエモンが保釈になりそうですね。

Q11
今回は監査役の任期について御質問させていただきます。現行商法273条1項では,任期の始期が「就任」時になっていますが,一方会社法336条1項では,「選任」時になっています。監査役の任期の始期が「選任」時となったことにより,選任決議の時から,定時株主総会の終結の時まで,わずかの時間ではありますが,定款で定められた定員を超える監査役が存在するという違法状態(?)が生じる可能性があります。
こういう状態が生じることを避ける根本的な解決として,定款で「監査役の任期は,就任後四年以内に…」あるいは「監査役の任期は,選任された株主総会の終結後…」というような規定を設けることは可能でしょうか?
Posted by T.I.ネットワーク at 2006年04月26日 21:39
A11
監査役の任期を定める336条1項は、その期間の最終時点を規定しているので、監査役が就任していない限り、定時株主総会の間、定員をオーバーするということはありません。定時株主総会の終結後に就任承諾をもらえば、それで解決します。
ちなみに、監査役の任期は、336条2項3項以外、縮めることも伸ばすこともできません。

Q12
会社法29条の「法律の規定に違反しない」とは,どこまでの「硬さ」を持つ概念なのでしょうか。明文に書いていない限り定款で定めてはいけない,というところまで読むのか,それとも法律の趣旨に反しない限り定款自治を許容すると読むのか。後者の方が妥当だと思いますが,郡谷さんがかつて商事法務で前者のような記載をなさっていてどうなんだろうか,と思っています。具体的には,「請求」とある場合に定款で書面により請求しなければならないと方式を限定してよいのか,会社法847条1項の提訴請求の方法を法務省令が電磁的方法を許容しているにもかかわらず,定款で書面に限定してよいか(書面に限定可能とした場合,定款に根拠のある株式取扱規程ではどうか,単に社内規程で限定することはどうか。)。
 私は,法律が複数の方法を積極的に許容する趣旨でないならば,合理的な理由がある限り合理的方法で制限してよいと思います。ITによる議決権行使の場合,制度を採用する以上,電磁的方法による議決権行使を絶対制限できないのですがそれだと実務的に電磁的方法の管理(メールアドレスをどれにするのかなど)が大変なので株式会社の承諾を要求していると思います。しかし,提訴請求は,単に記載の明確性から書面または電磁的記録にしただけであって,書面とメール両方を絶対に確保すべしという趣旨ではないのではないか,と考えています。そうだとすれば,定款その他の社内規則により書面に限定することもできるのではないか,と思うのですが,いかがでしょうか。
Posted by ik at 2006年04月25日 21:54
A12
基本的には、ikさんの考え方で結構です。
提訴請求の方法の限定は、29条の「その他の事項」に該当するので、「法律の規定に違反しない」かどうかが問題になります。
 847条1項は、請求の内容を明確にするため、提訴請求の方法を書面または電磁的方法に限定する趣旨なので、会社が、事務処理上の便宜という異なる観点から、書面に限定する旨の定款の定めを設けることは、29条に違反しません。ただし、株主権の行使の方法の制限は、会社の基本的規則である定款または定款の委任に基づき作成された株式取扱規程によるべきでしょう(ikさんのいう「社内規則」は、株式取扱規程ということですよね?)。
 なお、このことは、他の単独株主権・少数株主権の行使方法を制限する場合も、同様です。

2006年4月25日 (火)

公告方法

 施行前の駆け込みで、公私を問わず、マイナーかつ切実な質問を、多数浴びせかけられています。
 最近、知り合いの弁護士さんからは「悪いですけど、それブログに書いてもらえますか?」と頼まれることがあるのですが、個人的には「こんなブログで本当にいいのか、おまえー・・・」とビミョーな気持ちになります。
 とはいえ、今日の気分は「流しのギター弾き」ですので、リクエストにお答えして、「公告方法」について書きます。

 公告方法とは、会社(外国会社を含む。)が公告(この法律又は他の法律の規定により官報に掲載する方法によりしなければならないものとされているものを除く。)をする方法のことです(2条33号)。

現行商法にも、株式会社の公告方法を官報、時事に関する日刊新聞紙、電子公告に限定する規定がありますが、公告方法についての定義自体は設けられていませんでした。

 会社法が、公告方法について定義を置いたのは、会社が他の法律に基づいて公告が求められている場合(例えば、銀行法20条1項等)に、会社法上の公告方法でしなければならないのかどうかが、不明確であったためです。

 そして、先ほどの定義に書かれているとおり、会社法では、会社は、会社法の規定に基づき公告しなければならない場合だけではなく、他の法律の規定に基づき公告しなければならない場合も、定款で定めた公告方法により公告しなければならないこととして整理したわけです。

 ただし、会社法又は他の法律により官報公告が義務づけられている場合(たとえば、金融機関の合併及び転換に関する法律26条2項等)には、その規定に従い、定款に定めた公告方法ではなく、官報によって公告することになります。

 なお、定款で定める公告方法は、その会社の組織法上の要請に基づいて、コーポレート・アクション等があったときに、「その会社自身の」株主・債権者などの利害関係人の利益を保護するための公告をする場合の方法を定めたものです。

 したがって、他の法律の規定により、会社に公告が義務づけられる場合であっても、信託法69条2項や社債等登録法・同施行令に基づく公告のように、その会社自身のコーポレートアクション等とは無関係に、事業の遂行の一環として公告を義務づけられるものについては、定款で定める公告方法によることを要しません。その場合、信託法も、社債等登録法も、特に公告方法について限定を加えていないので、官報等任意の方法によることになるでしょう。

 以上、味も素っ気もない文章ではありますが、流しのギター弾きとして、一曲歌わせていただきました。代金は、合コン1回をお願いしております(なお、左の文章は、「職務の執行に関し」という要件を充たさないので、賄賂要求罪は成立しないと解します)。

(質問コーナー)
Q1
ご指導願います。会社法165条2項で取締役設置会社は、市場取引等により・・・とありますが、この等は具体的には何を指すのですか。譲渡制限の非公開会社に何か該当する事はありますか。ご指導お願い申し上げます。
Posted by 迷える子羊 at 2006年04月24日 22:48
A1
条文を見れば分かるとおり、市場取引と公開買い付けです。非公開会社にはありません。

Q2
100%親子会社間における分割型吸収分割についての質問です。
これまでの実務においては、子会社から資産等が分割され、100%親会社が承継するとき、親会社から子会社へ株式を割り当てないということがなされていたそうなのですが(江頭先生の本の、自己株式の取得のところににも「当該新株・出資の割当てにより自己株式・自己持分を発生させるか、割当てをしないかは、会社の自治に委ねてよい。」という記述があります)、計算規則2条3項41号の分割型吸収分割の定義では、剰余金の配当の事項や株主に対する交付が必要とされているため、株式を割当てないと、分割型吸収分割には該当しないようにも思えます。
これまでの株式発行をしないという実務は、会社法の下では分割型吸収分割としてはできなくなってしまったのでしょうか(無償の物的分割として整理するしかないのでしょうか)。お忙しいところ申し訳ありません。よろしくお願い致します。
Posted by 参事官室によく電話する人2 at 2006年04月25日 02:23
A2
 対価を出さないということは、無償の物的分割です。
 そうでなければ、自己株式を取得した後、消却してください。

Q3
昨日のQ3での回答ありがとうございます。しかし、会社法45条は、発起設立における設立時役員等の選任についての特則であり、種類株主総会同様の種類株主による決定が問題となるはずです。Q3の質問の趣旨は、単に「株主総会の決議について種類株主総会の決議を要する」旨の内容の拒否権条項付株式でも、会社法45条1項1号の「取締役の全部または一部の選任又は解任」についての定めがあるものと解釈できるか否かです。ご面倒でももう一度、再質問としてお願いします。
Posted by 猫太郎 at 2006年04月25日 08:59
A3
すいません。質問の意味を種類株主総会の決議の省略というような制度があるかという意味と取り違えていました。「株主総会の決議について種類株主総会の決議を要する」としう定めは、すべての事項について拒否権を与えたものなので、取締役の全部または一部の選任または解任についても含むものと思われます。
したがって、その場合、C一人の決定で、足ります。

Q4
会社法194条では,売渡請求となりましたが,従来,買増請求と呼ばれていました。
そのせいか,各社の定款変更案を見ると,「買増請求」としている例がほとんどで,「売渡請求」と改めたものは,まず見当たりません。
会社法は,会社から見て,「買取」「売渡」というように表現を整理したものかと思いますので,定款も「売渡請求」と改めたほうが良いと思うのですが,いかがでしょうか?
Posted by southalps at 2006年04月25日 14:29
A4
言葉の問題です。改めた方が会社法とリンクしやすいですが、改めないからといって、定めが無効になるわけではないでしょう。

Q5
株主総会の議決権行使の期限について2点質問します。
①議決権の集計を代行機関で行っている場合、会社法施行規則69条・70条の「営業時間の終了時」とは、会社の営業時間を指すのかそれとも代行機関の営業時間を指すのかいずれでしょうか?②また、営業時間終了時とは営業窓口の終了時間を指すのかそれとも就業時間の終了時を指すのかいずれでしょうか?(銀行等であれば、前者は15時ですが、後者であれば17時となる等異なる場合があります。)
Posted by 法務課員 at 2006年04月25日 15:15
A5
会社の営業時間です。
営業時間は、会社で定めるものなので、「窓口」か「就業時間」かは、私が答えるべきものではありません。
ちなみに、営業時間を「就業時間」と解した場合、民事局商法グループの営業時間は、ときどき午前9時から午前4時までになることがあります(笑)。

Q6
取締役会で会社法施行規則63条3号ロ・ハの特定の時を決定した場合に、招集通知の発送に手間取り、発送から特定の時までが2週間を切ってしまった場合、再度取締役会を開催して、特定の時についての決議を取り消さなくとも、議決権の行使期限は規則69条・70条の原則に戻るのでしょうか?それとも取締役会を開催して特定の時に関する決定を取り消す必要があるのでしょうか?それとも、2週間を切ってしまった行使期限をそのまましておくことも許されるのでしょうか?
Posted by 法務課員 at 2006年04月25日 15:16
A6
特定の時の定めが無効なので、69条の原則に戻ると思います。


Q7
買取請求権の有無について質問させてください。
事業の重要な一部を譲渡する場合で,譲渡する資産の規模が小さい場合(467Ⅰ②:簿価が総資産額の20%以下)には,譲渡会社において株主総会の決議が不要であり,譲渡会社の株主に株式買取請求権は認められていないのでしょうか。
神田先生の「会社法」第八版P.291には「ない」とかかれていますが,他の先生方の御著書には記述が見つかりません。
Posted by 短答式が近くて夜も眠れずにいる47歳 at 2006年04月25日 20:04
A7
小規模の一部譲渡は、「467条1項2号」から除外されているため、「事業譲渡等」に含まれません。したがって、それをやったとしても「事業譲渡等をする場合」(469条1項)に該当しないので、買取請求権はありません。
事業の全部譲り受けについては、467条1項3号で「事業譲渡等」に含めた上で、468条2項で、簡易全部譲受を定めているので、469条1項の適用により、買取請求が認められます。

Q8
その1
109条2項では、有限会社法で認められていたように、非公開会社については、定款で定めれば、配当金を受ける権利や議決権等について株主ごと(属人的)に異なる取扱いをすることを認めています。
ところで、有限会社法での解釈では、特に議決権については、ある株主には議決権が「ない」というような定款の定めはできないとするのが通説だったようです。
この有限会社法での解釈は、新会社法109条2項でも維持されるのでしょうか?会社法では無議決権株式も認められる以上、このような解釈を維持することはナンセンスな気もします…
Posted by アイシス at 2006年04月25日 00:05
A8
ある株主に議決権がないような定めも有効です。


Q9
非公開会社が、新たに会社法109条2項の定款の定めを置く場合には、会社法309条4項により、その定款変更を行う株主総会の決議は、総株主の半数以上で総株主の議決権の4分の3以上という特殊決議が必要とされています。
この規定は、有限会社法での特別決議の要件(有限会社法48条)を維持したもの、と説明されています。
ところで、有限会社法での解釈では、通常の定款変更は特別決議でできるが、一定の場合、特に社員の議決権についての定款の定めの変更には総社員の同意が必要、と解する説が多くありました。
そうすると、会社法309条4項は、従来の有限会社法での「一定の場合、特に社員の議決権についての定款の定めの変更については、総社員の同意が必要である」という解釈を明確に否定した、と考えられます。
この点、これでよいのでしょうか?
Posted by アイシス at 2006年04月25日 00:09
A9
条文に書かかれているとおり、総社員の同意は必要ではありません。

2006年4月24日 (月)

代表社員である外国会社

巷では、「外国会社が、100%出資して、持分会社を設立することができるか」が話題になっているようです。

 社員の資格を定めている規定はないので、直感的には、
「そんなの、当然、できるでしょう。」
と思うのですが、何が問題かというと
「会社の代表者のうち少なくとも一人は、日本に住所地を有している者でなければならない」
というルールとの関係です。

持分会社に、明文でそのルールが規定されているわけではありませんが、株式会社の代表者については通達(昭和60年3月11日民4・1479号民事局第4課長回答)で、少なくとも一人が日本に住居地があることを求められ、外国会社の日本における代表者も同じルールが法律で定めれている(817条1項)ことから、持分会社の代表者も、同じルールが適用されることになります。

他方、持分会社は、所有と経営が一致していることから、出資をした社員しか代表者になることができないというルールがあります。そのため、外国会社が、持分会社の唯一の社員である場合には、外国会社自身が代表者にならざるをえません。他の人を代表者にするわけにいかないのです。

そして、この2つのルールが組み合わされると、
「外国会社が持分会社を設立することはできないのではないか」
という疑問がわいてくるわけです。

この疑問を解決するためには、法人代表社員に関する、どのような「住所地」を日本国内に要求するかということを明らかにする必要があります。

可能性として考えられるのは、
(1)法人の本店所在地
(2)法人の代表者の住所地
(3)法人の職務執行者の住所地
の3つです。

「代表者の一人が日本に住所地がなければいけない」というルールが存在する理由は、いろいろな見解があるのですが、持分会社の本店がもぬけのからの場合、自然人である代表者に対する送達をしたいというのがよく言われている理由です(その見解の当否は別として)。

その点からすると、代表者の住所地を考えるに際しては、代表権を行使する「自然人」の住所地であることが重要であり、その点において、(1)代表社員である法人の本店所在地が日本にあることは、要件にならないと考えるべきです。

そして、持分会社の代表権を行使するのは、(2)代表社員である法人の代表者ではなく、(3)その法人が指定した自然人である職務執行者なのですから、結論としては、(3)法人の職務執行者の住所地が日本にあればよいということになります。

このことは、外国法人の場合に限らず、日本法人が自分だけで持分会社を設立する場合も同様であり、いくら日本に本店があり、日本に住所地を持つ代表者がいる日本法人であっても、
指定した職務執行者が、サウジアラビア在住のマッサン・ハッダマという人
では、登記することができません。

もっとも、職務執行者は、二人以上指定できるので、マッサン君のほかに、日本在住のマサミ・ハダマが職務執行者になれば、いいんですけんどね。

(質問コーナー)
Q1
自己株式取得は株主総会決議で実施可能(156条)で、また特定の株主から取得する場合も、株主総会決議で実施可能(160条)で、これらを市場取引等で実施する場合には取締役会でできる旨を定款で定めることができる(165条)ことになっています。他方、自己株式の取得は剰余金の配当の一形態と位置づけられ、459条でも自己株式取得について(160条以外)定めることができるようになっています。後者の規定によるかぎり、取締役の任期は1年ということになります。剰余金の分配を株主総会でやる場合には、取締役会で自己株式取得を行う定款を設けていれば、取締役の任期を1年にする必要はなく、また特定の者からの取得の場合も、現行法のルールではTST‐NET2を利用すれば、取締役会で決議で自己株式取得できるということでよろしいでしょうか。
Posted by 法律小僧 at 2006年04月24日 11:24
A1
最後の一文の質問の意味が分かりません。
トストネット2による取得は、市場取引による株式の取得であり、157条から160条までの規定は適用されません。
したがって、定款で市場取引等により自己株式を取得することを取締役会の決議によって定めることができる旨を定款で定めた場合(165条2項)には、取締役の任期にかかわらず、取締役会で自己株式を取得することができます(165条3項)。

Q2
 招集通知発出後の営業報告書等の修正について質問させてください。
 先日の施行規則・計算規則の改正で、整備法99条定により作成される営業報告書・計算書類・連結計算書類についても発出後の修正方法を通知できるとする改正がなされました。
①これは株主総会の手続等を会社法に基づいて行う会社にのみ適用され、商法に基づき行う会社には適用されないということでしょうか?(参照「施行前後の法律問題」209頁)施行規則附則4条3項、計算規則附則9条・10条にはそのような限定がないのですが、どのような法的構成なのでしょうか?
②商法に基づき行う会社はa.修正方法を通知すること、b.実際修正することは、できないのでしょうか?
Posted by はまっ子 at 2006年04月24日 00:56
A2
①株主総会の手続を商法に基づき行う会社には、施行規則・計算規則は適用されませんので、附則も適用されません。
②解釈に委ねられています。それが、あいまいだから、施行規則を置いたということです。

Q3
会社法の施行後の設立についての質問です。普通株式を発起人ABが引き受け、拒否権条項付種類株式(単に「株主総会の決議について種類株主総会の承認を要する」内容)を発起人Cが引き受ける発起設立で、Cの賛成を含めて発起人の議決権の過半数で設立時取締役を決定した場合、これとは別にCの種類株主としての決定は必要となるのでしょうか(会45Ⅰ)。また、仮にCの決定が必要となるとしても、Cが賛成していることをもって当初の決定をCの種類株主としての決定を含むものと理解することはできないのでしょうか。
Posted by 猫太郎 at 2006年04月24日 08:33
A3
取締役の互選による設立時取締役の選任については、拒否権は定められていないので、種類創立総会のようなものは不要です。

Q4
先日の先生のご回答では、役員報酬枠の改定議案には、報酬算定の基準の記載が参考書類に必要だとのことでした。
それでは、本年役員賞与を利益処分案の中で支給する場合はどうでしょうか(来年以降も賞与支給議案をを確定額で株主総会に諮っていく会社も同じですが)。
賞与支給総額は完全な確定額として示されます。また、規則上の要請から、支給される役員の人数も記載されます。個人的にはこれで十分と考えているのですが、これ以上に、内部的な賞与配分基準の概要まで記載しなければならないのでしょうか。ちなみに商事法務1761号では、賞与については確定額をかけてば算定基準も示したことになるのでいいんでは?的な解説がなされていましたが・・。
Posted by 参事官室によく電話する人 at 2006年04月24日 12:16
A4
361条1項1号の決議で、確定額を定めるのは、当然であり、それを前提にとして、株主総会参考書類への記載を要求しているのですから、先日記載したような基準を書く必要があると思います。「なぜ、そのような賞与総額になったのか」、その額が算出された根拠となる基準について客観的なものであれ、主観的なものであれ、書いてください。
(ちなみに、商事法務1761号の当該記述は、私たちが書いた論文ではありません)。

Q5
今日は。利益の資本組み入れに関してご教授をお願いします。
商法第293条ノ2の規定によって従前の株式会社は利益から直接資本に組み入れが可能でした。会社法でも第450条に引き継がれています。ところが、会社計算規則第48条第1項第2号のカッコ書きで「その他資本剰余金に係る額に限る」となっています。利益剰余金は認められていません。そうしますと、一旦株主配当を行い新たに増資の手続きをしなくてはならないのでしょうか。
Posted by 会社法初心者 at 2006年04月24日 15:00
A5
どうしても、利益剰余金を資本金に組み入れたければ、剰余金の配当と新株発行ですね。


Q6
会社法第319条第1項の規定により株主総会の決議があったものとみなされた場合にも、会社法施行規則第72条第4項により、株主総会議事録を作成しなければならないとされています。この規定に関連して、以下の理解で宜しいでしょうか。
1.この規定は、総株主の同意書とは別に、備置義務のある総会議事録としても作成しなければならない。
2.会社法319条第1項では「取締役又は株主が。。提案」とありますが、会社施行規則第74条4項1号ロ「イの事項の提案をした者の氏名又は名称」とは、例えば取締役会設置会社において合併についての提案を行う場合は「当社取締役会」という表示になる。
3.商業登記法第46条3項においては、「前項の議事録に代えて、当該場合に該当することを証する書面を提出しなければならない。」とあるため、1.の議事録ではなく、総株主の同意書そのものを添付することになる。
Posted by moremi at 2006年04月24日 20:29
A6
1 そのとおりです。
2 提案は、取締役が行うので、取締役会となることはないと思います。
3 既出ですが、決議省略の議事録も、「当該場合に該当することを証する書面」になります。

Q7
株式会社の清算と破産の関係について一点ご教授ください。
旧商法では破産手続開始決定があれば株式会社は解散(404条1号、94条5号)し、破産手続で破産管財人が置かれるために清算人が置かれないものの、形式上は清算手続に入っていた(417条1項2項)と思います。
これに対して会社法では破産手続開始決定で会社が解散する(471条5号)のは変わらないものの、形式上も破産手続が終了するまで清算手続には入らない(475条1号括弧書)ことになってると思います。これは事実上の扱いに法的形式を合わせたものだと思います。
そこで本題なのですが、この場合の解散したけれど清算手続していない会社というものの代表者は清算人と取締役のどちらでしょうか?
Posted by 倒産法選択受験生 at 2006年04月22日 22:56
A7
破産手続の終了前は、清算株式会社にはなりませんので、その場合の代表者は、代表取締役です。

Q8
本日、100%子会社(兄弟会社)間の無対価吸収合併についてご質問をさせて頂きます。
合併に際して資本金又は準備金として計上すべき額に関連して会社法及び省令には、「株式を交付するときは(会社法749条1項2号)」「金銭等が吸収合併存続会社の株式であるときは(会社法749条1項2号イ)」「対価の全部又は一部が吸収合併存続会社の株式であるときは(計算規則59条、61条の前提、62)」とありますが、(上記事例で)無対価の場合には、これらの規定の適用はないのでしょうか。
会計基準には、「共通支配下の取引」については、対価に関する記載がないようなのですが。株式を発行しても資本金を増加しないことはできるけれどもその逆はなく、適用はないとした場合、どのような規定・基準にしたがって、会計処理を行うことになるのでしょうか。
また、存続会社の合併承認決議において、合併の効力発生を停止条件として同時に剰余金の額を減少して資本金の額を増加することは可能でしょうか。
Posted by 林 伸子 at 2006年04月23日 18:04
A8
1 会計処理は、公正な会計慣行に従いますが、計算規則では、計算規則17条が適用されるものと思います。同条は、共通支配下関係であることのみを要件としており、対価が株式であることを要件としていません。
2 合併と、剰余金の資本金への組入れは、別の手続ですので、合併承認決議において、当該組入れをすることはできませんが、同じ株主総会中に別の議題として、当該組入れの決議をすることはできます。

Q9
端株制度を引き続き採用する会社においては、端株原簿名義書換代理人という登記項目は、このまま存続するということでした。そこで、そのような会社が今回定款変更するにあたり、株主名簿管理人とは別に、端株について、(端株原簿)名義書換代理人を置く、といった規定を残す必要があるのでしょうか。
A9
どちらでも、いいと思いますが、附則で置くのも明確ですね。

新株発行関係等の質問

Q1
募集株式の発行(株主割当(公開会社ですが、継続開示会社ではありません。))について教えて下さい。
Ⅰ.202条4項では、申込期日の2週間前に株主に対して①募集事項、②割当募集株式数、③申込期日を通知しなければならないとありますが、同時に203条1項を見ますと、「第199条第1項の募集に応じて募集株式の引受の申込みをしようとする者に対し、①商号、②募集事項、③払込取扱場所、④規則41条で定める事項を通知しなければならないとなっております。これは、株主割当の場合にもしなければいけないのでしょうか。募集事項について、また通知をしなければならないというのは、少々迂遠のような気がしますし、株主割当で割当株数まで分かっているのに、わざわざ商号も含めて周知させることもあるのでしょうか。
かといって、199条1項については、株主割当の場合でも適用除外になっていませんし、払込場所に関しては、203条1項の通知によってしか、株主に知らせることができませんので、やはり必要なのかとも思ってしまうのですが、筑波大学の弥永教授の新版のフローチャートを見ますと、さも203条1項の通知は要らないような書き方にもなっているので、悩んでしまいました。そして、もし203条1項の通知が必要であるということでしたら、いつのタイミングで通知することになるのでしょうか。
Posted by 会社法でなやも。 at 2006年04月22日 22:26
A1
 株主が、割当てを受ける権利を行使する場合にも、募集株式の引受けの申込みをしなければいけません。したがって、この場合にも、203条は適用され、原則として、株式会社は、申込みをしようとする株主に対し、203条1項の通知を行い、株主は、同条2項の書面を会社に交付しなければならないことになります。
 タイミングは,申込をしようとする時でもいいと思いますし,株主割当の場合は,その前の株主割当の通知時でもよいと思います。

Q2
 基準日ですが、商事法務の解説を見ますと、法律上は義務づけられていないということでした。神田教授の会社法第8版でも、法は基準日の設定を要求しないとなっています。とすると、株主割当の場合、202条4項の通知をする相手となる株主を決めるために、敢えて124条の基準日公告を2週間前までにしなくても良いということで宜しいでしょうか。
Posted by 会社法でなやも。 at 2006年04月22日 22:27
A2
そのとおりです。ただし,上場会社の場合には,常に株主が変動しているので,事実上,基準日を定めずに新株発行を行うことは無理でしょう。株券保管振替制度上の実質株主通知も基準日を設定しないとしてくれません。

Q3
 今度は会社法202条4項の通知ですが、これについてはいままでどおり、2週間前に通知が必要とはあっても、全株主の期間短縮の同意書さえあれば、期間短縮が可能であるということで宜しいでしょうか。
Posted by 会社法でなやも。 at 2006年04月22日 22:28
A3
 それは,実は微妙な問題なのですが,株主全員の同意書があれば,登記はできるという,これまでの取扱いは変わらないでしょう。

Q4
 改正後の商法では依然として「営業」譲渡と規定されています(商法16条みだし)。
 しかし、会社法では、21条1項で「事業」を譲渡と使い分けられており、さらに同法9条で「事業又は営業」と規定されています。
 葉玉先生のブログを拝見したところ、過去に「会社の仕事全体を指す概念である『事業』を個人商人の業態に着目した『営業』と区別して採用したことによる変更」という書き込みがありました。
 自分なりに考えた結果、この書き込みと同じように考えているのですが、このような理解で使い分けられているという理解でよろしいのでしょうか。
Posted by 新米法規担当 at 2006年04月22日 16:14
A4
まあ,大体,そうですが,厳密に使い分けられているかというと,そうでもないかもしれません。なぜ使い分けなかったかは,大人の事情です。

Q5
そもそも平成18年3月期決算にかかる計算書類で連結配当規制適用会社となれるのですか?
Posted by 某法務担当者 at 2006年04月22日 18:07
A5
既出論点ですが,なれます。省令の経過措置を見てください。


Q6
当社は定款を印刷に出し、紙で保存し閲覧請求が会った時にこれを渡します。これをいわゆる電磁的記録(ワード等に)に保存し、閲覧が合った時に社内印刷し、請求者に渡すということにしたいのですが、当然問題なしですよね(会31条)?
Posted by つまらない質問 at 2006年04月23日 01:07
A6
全く問題ありません。

Q7
いわゆる委任状勧誘制度について、所管外かもしれませんが、教えていただければ幸いです。
 委任状制度を採用する平成18年3月決算の上場会社が、定時株主総会の手続について現行商法を選択した場合であっても、委任状勧誘規則は、特段の経過措置がない以上、4/20に公布された改正府令に基づき参考書類を記載することとなると思われますが、どうでしょうか。
 また、WEB開示制度は採用されていますが(改正府令1④)、修正事項の周知方法は改正府令には記載されておらず、採用されていないと思われますが、どうでしょうか。
Posted by にわ先生 at 2006年04月23日 01:43
A7
知っていても,答えられません。金融庁にお問い合わせ下さい。

Q8
非公開大会社の監査役会について教えていただきたい点があります。
整備法により監査役会を置く旨の定款の定めがあるものとみなされる非公開会社の大会社(3月決算会社)が、平成18年5月に臨時総会を開き、定款変更をして、非監査役会設置会社となることは可能でしょうか。
整備法99条により平成18年3月期の監査報告書は監査役会が作成することになりますが、仮に平成18年5月に定款変更をして監査役会を非設置化することが可能だとすると、平成18年3月期の会計監査(監査報告書の作成等)については、どのような扱いをすることになるのでしょうか。
Posted by あれれ? at 2006年04月23日 16:34
A8
いつでも,非監査役会設置会社になることはできます。

まず,経過措置というより,一般的な問題として,定時株主総会前に,監査役会や会計監査人を置いたり,外したりしたときの監査方法をどうするかということですね。
 監査役会を置く旨の定めを外してしまえば,監査役会は存在しないのですから,監査役が監査報告を作成するしかありませんね。
 なお,従前の例によるのは,監査の方法に適用される規定の話ですから,監査役設置会社としての監査の方法を旧法でやることになるでしょう。

2006年4月22日 (土)

施行直前で・・

施行直前でバタバタしているので、昨日はブログをお休みさせていただきました。
今日は、プライベートなことでバタバタしていたので(決して修羅場になっているわけではありません。)、質問コーナーのみです。質問は全部答えるつもりなのですが、たまに「明日調べよう」と思って、見送ったところ、そのまま忘れてしまうこともあるので、忘れられている人は、もう一回最新の記事にコメントしてください。

それにしても、質問だけなのに、長いですねえ。
同僚のH検事から「葉玉さんのブログは、最近、長いので、私の悪口が書いてないかどうかだけ監査しています。」と言われたので、コンパクトにしたいと思っているのですが、当分は、無理そうです。

Q1
再び連結配当規制についてお伺いします。例えば平成18年3月期決算にかかる計算書類で連結配当規制適用会社となった場合、所謂“会計方針の継続性”の問題はどう考えればよろしいのでしょうか。
仮に会社法上“継続性”の問題は議論されないとするならば、別途会計サイド(ASBJ?JICPA?)から連結配当規制の継続性について何らかの指針が出る可能性はあるのでしょうか?
Posted by Y永先生門下生 at 2006年04月20日 13:19
A1
連結配当規制は、会計帳簿の問題ではなく、分配可能額の計算の問題なので、会計方針の継続性とは、直接関係がないように思われます。

Q2
370条の「電磁的記録による意思表示」というのはどういった方法を想定されているのでしょうか?最初はメールかな?とも思ったのですが「電磁的方法」ではなく「電磁的記録」としている以上単なるメール審議では足りないように思えます。
Posted by 匿名法務部員 at 2006年04月20日 13:44
A2
取締役が提案に対する同意を会社宛にメールをすれば、会社のパソコンのハードディスクに同意を記録したファイルができます。このファイルが電磁的記録による意思表示です。

Q3
以下のケースの監査役の任期満了時についてズバリ教えてください。前提条件:①すべて2月決算②4月中に定時株主総会招集手続き、5月の定時株主総会は商法で開催③当初監査役の選任は平成16年5月でした。
1.非公開会社の小会社が、本年年5月下旬開催の定時株主総会で監査役の監査の範囲を業務まで拡大する定款変更を行うとき
2.非公開会社の中会社が平成18年2月中に減資を行って小会社になり、本年5月下旬開催の定時株主総会で監査役の監査の範囲を業務まで拡大する定款変更を行うとき
3.公開会社の大・中会社が平成18年2月中に減資を行って小会社になり、本年5月下旬開催の定時株主総会で監査役の監査の範囲を業務まで拡大する定款変更と全部の株式に株式譲渡制限を付す定款変更を行うとき
Posted by 匿名グループ事業部員 at 2006年04月20日 19:55
A3
経過措置本(「会社法施行前後の法律問題」)62頁以下に詳しく整理されています。
1 監査の範囲が広がったときに任期終了なので、その定款変更の効力発生時です。したがって、通常、その定時総会で監査役を選任しなおす必要があるでしょう。
2 5月1日の時点で小会社特例規定の適用がないので、普通の監査役ですね。施行日に会計監査権限限定監査役になりますが、これは任期には関係なし。次の定時株主総会で、監査の範囲が広がったので、その時に任期満了です。
3 どちらの会社も、小会社特例規定の適用がされていないので、施行時において監査役は業務監査権限がありますね。そして、公開会社なので、整備法による会計監査権限限定のみなし定款の適用がないので、監査役の任期は、平成16年5月から4年後の定時株主総会の終結時までです。ちなみに、監査範囲を拡大する定款の定めというものは不要です。

Q4
当社は非公開会社ですが、現在6月の総会に向けて定款変更準備をすすめておりますが、株式の章「基準日」に「毎年3/31の最終の株主名簿に記載または記録された議決権をを有する株主(実質株主含む)をもって、その決算期に・・・」と、現定款では記載しておりますが、そもそも非公開会社に実質株主というものは存在するのでしょうか。この記載は過去の誤りでしょうか?ご指導願います。
Posted by 新庄 at 2006年04月20日 22:51
A4
実質株主は、保振法の概念であり、現在、株券保管振替機構は、譲渡制限株式の預託をしていないと思いますので、非公開会社には、実質株主は存在しないと思います。

Q5
当社は12月決算会社で3月に総会を終えたばかりで、とりあえず、新会社法対応での総会は、しばらく後と安心をしていましたが、なんとこの6月に緊急で役員変更が起こることになりました。この場合、臨時株主総会を開催することになると思うのですが、定款変更については、ここでみなし定款変更は強制的にする必要があるのでしょうか?それとも挟み込みのままで来年の定時株主総会まで何もしなくて良いのでしょうか。
登記は役員変更登記時に、会計監査人や監査役会の登記を同時にすればよいのでしょうか?
また何か特に注意する点はありますか?それぞれご指導願います。
Posted by RICHA at 2006年04月20日 22:57
A6
整備法による、みなし定款変更のことでしょうか?もし、そうなら、何もしなくても、みなされていますので、77条が問題になるだけです(強制的にするという意味がわかりません。)。
会計監査人や監査役会を置く旨の定めは、施行日より6か月以内(それ以前に登記申請をするときは、その申請時)ですから(経過措置本・85頁)、RICHAさんのところでは、役員変更登記時に申請することになりそうですね。
                                        
Q7
会計監査人があらたに登記事項とされましたが、現時点で商法特例法上の大会社である場合、平成18年5月末の定時総会では、みなし規定により、「会計監査人設置会社」であることになるため、並びに、会社法338条2項により、別途選任決議する必要はなく、同定時総会に係る取締役の重任登記と同時に登記すればよいのでしょうか?
A7
いずれも、そのとおりです(Q6参照)。

Q8
2月末事業年度の会社が平成19年1月に効力が発生するように資本金の額の減少を行った場合、会社法2条1項6号イに定める「最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であること」に照らせば、平成19年2月末以降に大会社でなくなるということになるのは間違いないのですが、「2月以降」というのは、2月末時点のことを指すのか、又は、その後の定時総会終結時を指すのか、どちらなのでしょうか?
会計監査人の任期として会社法338条で、「選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」とあるので、やはり総会終結時という解釈が自然な気もします。
A8
貸借対照表は、定時総会で報告・承認されたものですので、その報告・承認した時に大会社でなくなります。

Q9
会社法施行規則第82条(取締役の報酬等に関する議案)1項1号の解釈について教えてください。取締役の報酬改訂にあたり、現行の商法施行規則第13条1項5号は「算定の基準“又は”改定の理由を参考書類に記載せよ」と定めていたことから、当社はこれまで月額報酬総額とその改訂の理由を記載してきました(算定の基準は記載していません)。
 今回、会社法下で定時株主総会を開催し、取締役の報酬改訂議案の提出を予定していますが、会社法施行規則 第82条1項を見ますと報酬額、改訂の理由等に加えて、その「算定の基準」を記載することが必要なようにも読めるのですが、理解として正しいでしょうか。
 また、仮にそうだとすると、月額報酬額総額(上限)を明記したうえで更に付記が求められる「基準」とは、具体的にどのようなことを想定されているのでしょうか。
A9
以前、このブログでも答えたと思いますが、算定の基準とは、当該報酬等の案を決定する上で用いた基準のことをいいます。報酬等の算定が適正かどうかを判断するのに必要な情報を記載する。その基準は、基本となる額、役職、勤続年数等を要素として数式化した基準であるのが通常でしょう。取締役の報酬総額の上限額しか定めないので、その枠がどのように使用されるかの参考のために記載します。

Q10
小会社から中会社になった場合、監査役の任期は商法特例法で最初の定時株主総会まで継続しますが、この状態で5月1日を迎えた場合、商法特例法の経過規定は継続すると考えてよいでしょうか、それとも会社法施行に伴い商法特例法は廃止され経過規定の適用も受けられなくなるので、5月1日までに監査役を選任しなおさなければならないのでしょうか
A10
商法特例法の経過規定は、施行後は適用されません。非公開会社であるという前提に立てば、小会社特例規定の適用のある中会社は、会計監査権限限定監査役がいる時点で、施行日を迎え、施行日に、会計監査権限限定のみなし定款がないので、その時点で監査役の任期が終了しますので、その後、遅滞なく、選任しなおしてください。ただし、旧監査役は、なお監査役(業務監査権限あり)としての権利義務を有するもので、新監査役が就任するまで、その事務を行います。

Q11
昨今、株式市場には多くの公開会社たる会社が新規に上場しております。
その新規上場会社が新たに上場する際の募集株式の払込金についてご教授下さい。
現在、新規上場会社が上場する際の株式募集に関しては、ほとんど証券会社の買取引受方式となっており、次の様な扱いがなされております。
①「発行価格」:投資家が証券会社に払い込む金額
②「引受価額」:証券会社が新規に上場する会社(新株発行会社)へ払い込む金額
③「発行価額」:商法上の発行価額
(①と②は、いわゆるブックビルディングと呼ばれる、投資家の需要に応じて変動する関係上、③の商法上の発行価額を別途決めているわけです。)
(①と②の差額が、引受証券会社の手取金、いわゆる手数料相当額となります。)
(ブックビルディングにより②が上下する可能性があるため、③は②より若干下の金額を取締役会により決めています。)
そこで問題なのですが、会社法で「払込金額」が資本組入額のベースになると、現在の上記手法が取れなくなると思うのです。そうすると②=③とするしかないのかなぁ?とか考えているわけでして・・・。
A11
201条2項がブックビルディングのための規定ですが、それじゃダメでしょうか?
資本組入が、募集の方法を限定することになるとは考えにくいのですが。

Q12
社外監査役の件で1点教えていただけませんでしょうか。社外取締役の社外性の要件は、子会社概念の実質化により社外性の要件を満たさなくなった場合でも、会社法施行後最初の定時株主総会終了するまでは満たすものとみなすという規定があります(規則附則2条2項)が、この規定の適用を受けるのは、現在の監査特例法18条の監査役に限定されています。整備法令10条で、厳格化する前の監査特例法18条の適用を受けている会社については「なお同条の例による」とされているものの、この附則10条の経過規定は監査役の員数と就任5年前という条件の関係だけであったと記憶しております。
そうすると下記のようにカバーしている範囲が違うため現在この附則10条の経過規定を受けている監査役が子会社概念の実質化に伴って社外性の要件を満たさなくなった場合には会社法施行時に別の社外取締役を選任しなおさなければならなくなると考えられますが、いかがでしょうか。
●施行規則附則:子会社の実質化に関する社外性
■改正附則10条:員数+年限に関する社外性
この考え方は郡谷様が最近出された本の考え方とは違うと思われますが、この辺の説明がなかったため、教えていただけると助かります。また、施行規則2条2項の監査役の範囲を監査特例法18条のものに限定した理由とともに教えていただければ幸いです。宜しくお願い致します。
Posted by S at 2006年04月20日 20:46
A12
商法等改正法附則(改正附則)10条は、「員数等」についてなお従前の例によるものとした規定ですが、これを「年限に関する社外性」と限定解釈する必要はないでしょう。同条は、監査役会の員数等については、商法等改正前の規律を適用するということですから、旧監査特例法18条だけではなく、その当時の子会社の定義についても適用されることになると思います。
 そして、経過措置政令10条により、改正附則10条の例によるとされているのですから、会社法施行後も、監査役会の員数等については、商法等改正法による改正前の規律が適用されることになります。
 そのため、施行規則2条2項を、経過措置政令10条・改正附則10条が適用されている会社に適用する必要はないと思います。

Q13
現物出資規制について質問があります。
それは、会社設立時の不足額填補責任は55条の総株主の免除できるのに対して、募集株式発行時や新株予約権発行時にはこれに該当する条文がないように思うのですが、どうしてでしょうか??
A13
 不足額填補責任は、株主間の実質的平等の確保するためのものですから、本来、現物出資者である引受人に対して不足額を徴求することにより、その目的は達成でき、発起人・設立時取締役・取締役の責任は、二次的なものにすぎません。
 いいかえれば、取締役の不足額填補責任が免除されても、現物出資者から取れば十分だし、取締役自身が利得を得るようなものでもないので、本来なら、総株主の同意を要しなくてもよいように思います。
 ただ、設立時株主は、皆同じ機会に出資した者なので、平等を確保する要請が強く、また、現物出資者=発起人であり、濫用の虞も大きいということから、発起人以外の引受人の権利保護の見地から、総株主の同意が要求されているのでしょう。
(確か、現行商法も同じ整理だったと思いますが、手元に、古い六法がありませんので、確認できません)
 この点については、いろいろ言いたいことがあるのですが、それは、またいつか。

Q14
 会社法309条4項に関して教えて頂けないでしょうか。
 決議要件として「総株主の半数以上であって、総株主の議決権の4分の3以上に当たる多数をもって・・・」と定められているのですが、この『総株主(頭数)』の中には「議決権のない株主」も含まれるのでしょうか?
特例有限会社における特別決議に関しては、議決権のない株主も特別決議の頭数要件の算定基礎とするようなので、株式会社についてはどうなのか調べたのですが、見当たりませんでした。
Posted by hige at 2006年04月21日 12:14
A14
 総株主には、議決権のない株主も含まれます。

Q15
会社法施行規則第2条第3項18(特定関係事業者)について、イ 当該株式会社の親会社並びに当該親会社の子会社及び関連会社、とあります。当該株式会社に親会社が存在しない場合のイの条文の読み方として「当該株式会社の子会社及び関連会社」と解するべきとの説を聞きましたが、そのように読むべきでしょうか。
Posted by りらっくま at 2006年04月21日 19:50
A15
すいません。ちょっと問題意識がわかりません。親会社が存在しなければ、特定関係事業者にあたらないと思います。

2006年4月20日 (木)

労働基準法とストック・オプション

ストック・オプション関係をもう一題。

tyさんが、次のようなコメントをつけてくれました。

「自社の従業員に対するSOは、有利発行決議を取らないと「必ず」労基法24条と抵触するとの見解が出回っているようですが、間違いだと考えています。
日本企業がこれまでやってきたような自社従業員向けSOは、「労働の対償」には該当しないし、そのようなSOであっても、職務執行の対価としての性質は有するからです。」

そのとおりです。

労働基準法24条1項は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と定めており、ストックオプションが労働基準法24条1項に違反するかどうかというのは古くて、新しい論点です。

この問題について、労働基準法の解釈を私が示しても、何の役にも立たないので、厚生労働省の解説本などを見てみたところ、ストック・オプションは、賃金にあたらないと書いてありました。

 その理由を簡単にいうと
1 ストック・オプションは、インセンティブであるである。
2 ストック・オプションによる現実的利益を取得するかどうかは、労働者の自由に委ねられている。
ということらしいです。

 そこで、私は、「会社法であそぼ」的見地から、労働基準法で「賃金」に該当しないとされている
1 「インセンティブ・福利厚生目的」の利益の供与が「報酬等」にあたるか。
2 「現実的利益を取得するのが将来であり、かつ、その取得の有無が、権利者の自由に委ねられている」権利を付与することが「報酬等」にあたるか。
という点についてお話ししたいと思います。

 まず、1の点については、361条の「職務執行の対価」は、「インセンティブ・福利厚生目的」の利益の供与も含まれると考えます。
 361条は、1項1号で、定額の月給のように職務執行をした期間と受けた利益の関係が明確なものの上限を定めることを要求しているだけではなく、1項2号で、業績連動報酬などインセンティブを含む不確定的利益の付与をも、報酬等決議の対象としています。
 さらに、社宅や車による送り迎えのような福利厚生目的ないし会社財産についての便宜供与についても、1項3号で報酬等に該当することを明らかにしています。

 しかも、会社法361条は、現行商法では報酬決議の対象となっていなかった賞与をも例示として掲げた上で、「職務執行の対価」について株主総会の決議を要求しており、かつ、「報酬」ではなく「報酬等」として必ずしも「報酬」に該当しないもの(「等」の部分)も361条の対象としていることからすれば、会社法は、取締役がその地位に基づいて受領する利益であれば、名目を問わず、広く「職務執行の対価」と捉えて、株主総会のコントロールの下に置いているものと考えるべきです。
 したがって、インセンティブであろうが、福利厚生目的であろうが、その利益が取締役としての地位に基づいて給付されるものである以上、すべて「報酬等」にあたります。

 次に2の点ですが、現実的利益を取得するのが将来であり、かつ、その取得の有無が、権利者の自由に委ねられている権利であっても、その権利自体に価値があると評価され、会社に資産の減少・費用負担が生じるようなものであれば、お手盛り防止という361条の趣旨を実現するために、それは「報酬等」に該当すると思います。
 労働基準法の賃金は、賃金の受領者である労働者の保護という観点から解釈されるのに対し(労働者がどれだけ確実に利益を確保できるかが焦点になる)、会社法は、会社の資産・利益に減少をもたらす虞の高い要因(お手盛り)をできる限り株主総会のコントロール下に置くという観点から解釈されるところから、似た言葉であっても、こうした差異が生じているのでしょう。

以上のように、インセンティブ等によるストック・オプションであっても、361条の「報酬等」に該当する場合があるということからすれば、会社法になって、役員に対するストック・オプションが「報酬等」に含まれることになったからと言って、従業員に対するインセンティブ等を目的とするストック・オプションが「賃金」になるわけではないでしょう。

 次に、ストック・オプションについて、有利発行決議が不要となったこととの関係についてお話しします。

 そもそも、ストック・オプションの発行によって労働者が受け取る利益も、会社がストック・オプションを付与することによって得られる利益も、現行商法と会社法との間で、何の違いもありません。

 何が変わったかと言うと、「特に有利」の判断において、商法は「払込価額」と新株予約権の公正価値を単純に見比べていたのに対し、会社法では「払込価額」に加え、これまで有利性の判断で無視されてきた「労働者が頑張って仕事をしてくれる期待に対する価値等」を加味して、新株予約権の公正価値と見比べることになったということに過ぎません。
 
 このように、会社と労働者との間の実態(会社が労働者から受ける役務及び会社が労働者に与える利益)は全く変化しておらず、会社法の新株予約権の発行手続を区別するメルクマールが変わっただけなのに、「有利発行でなければ、労働基準法24条1項に違反する」というのは、論理の飛躍以外の何者でもありません。

 さらに、ストック・オプション会計で、費用計上されることとなったことについても、株主や投資家に、ストック・オプションが会社に与える影響をきちんと示してあげようという趣旨で、会計基準を変えただけで、実態の方は何も変わってはいません。
 ちなみに、有利発行の株主総会決議で付与しようと、取締役会決議で付与しようと、ストック・オプションの会計上の処理は同じですから、その点でも「有利発行でなければ、労働基準法24条1項に違反する」という見解は意味がよく分かりません。

以上のように、「報酬等」の解釈、発行手続、会計の3点において、会社法が従来と異なる取扱いをするようになったことが、労働基準法24条1項の解釈に影響を与える論理的根拠は何もなく、これまで同項の「賃金」に当たらなかったものが、会社法の改正によって「賃金」にあたるようになるというのは、幻想に過ぎないのではないかと思う次第です。

 なお、最近、ストック・オプション関係の質問が多いので、近々、T&Aマスターで、郡谷さん(+αの著者がいるかもしれません)が、詳しい論文を書く予定です。また、千問にも、以上の記事の内容を簡潔かつマイルドにして書くことにしています。社内決裁等で必要な方は、適宜ご参照ください。

(質問コーナー)
Q1
百問328ページによると、ストックオプションは361条1項1号・3号に該当すると、整理されています。
しかし、株主総会決議後に到来する割当日の株価をベースに発行価額を計算する設計のストックオプションの場合、361条1項2号・3号の組み合わせということもありうると思うのですが、いかがでしょうか?
Posted by 東風 at 2006年04月19日 00:16
A1
1号は、確定額で上限を定める場合の規定であり、株主総会決議後に到来する割当日の株価をベースに発行価額を計算する設計のストック・オプションであっても、「付与時点の公正価額の合計額が1億円以下」というような制限をする場合には、1号・3号でやります。
2号は、計算式で上限を定める場合の規定であり、確定額ではなく、ストック・オプションの公正価額の算定式をベースに上限を設定するならば、2号・3号の組み合わせの決議を行います。

Q2
株式会社が、株主の相続人から合意によって自己株式を有償取得する場合、財源規制(461Ⅰ)はかかるでしょうか?
461Ⅰ②は、163・165Ⅰに限定しています。
461Ⅰ③の157Ⅰは、神田先生の教科書によれば、すべての株主から取得する場合の規定で、特定の株主からの取得は対象外というように読めます。
財源規制はかからないのでしょうか?
Posted by stu.rkky at 2006年04月18日 22:34
A2
 162条の相続人から合意によって自己株式を有償取得する場合も、157条1項の取得になり、461条1項3号で財源規制がかかります。
 160条1項が「158条第1項の規定による通知を」と規定しているとおり、160条1項は、157条1項の取得に関する手続について、158条の例外を定めたものです。
 そして、162条は、160条1項の適用があることを前提に、160条2項3項の適用を除外しているものですから、この場合の取得も157条1項の取得ということになります。

Q3
次の登記がされている新株予約権について
「会社が新株予約権を消却することができる事由及び消却の条件」
②当社は、当社が取得し保有する新株予約権をいつでも無償で消却することができる。
経過措置政令13条により取得条項付新株予約権の取得事由として登記が必要と解答されていますが、取得事由とすると、
「当会社は、当会社が取得し保有する新株予約権をいつでも無償で取得することができる。」
という変な規定になってしまう気がします。
私は、登記不要(抹消されればよい)と思っていますので、もう少し解説をして頂ければと思います。
Posted by パラリーギャル at 2006年04月18日 22:40
A3
すいません。私は、「当社は、当社の新株予約権をいつでも無償で消却することができる」と思いこんでいました。
確かにQは「当社は、『当社が取得し保有する』新株予約権をいつでも無償で消却することができる」という定めは、当然のことを定めただけで、取得条項を含まないので、登記は不要だと思います。それにしても、そもそも、なんで、そんな定めを、今、置いているのか?しかも、「無償」でという文言を入れているのか?よく分かりません。

Q4
 取締役会の設置のない株式会社や特例有限会社においての意思決定機関は、取締役が1人の場合は当該取締役、複数の場合はその取締役の過半数の賛成とされています。
 ただし、場合によっては株主総会による決定もありえますが、参考書では、例えば「多額の借財」において、取締役が1人の場合は、定款を確認し、特に何も定めがなければ株主総会を開催してもらうのがよいとあります。
 法的には当該取締役とされているのに、株主総会まで求めるのは過剰と思いますが、いかがでしょうか?
Posted by てつ at 2006年04月19日 01:34
A4
その参考書は、意味不明です。

Q5
当社は役員賞与に関して、来年から毎年の総会議案としますが、月額報酬については従来から設定している枠内で支給していく予定ですが、特に問題はないでしょうか。
また、役員退職金支給も従来同様、総会決議ですがこれも問題ないでしょうか。特に報酬枠に入れこむ必要はないという理解ですがよろしいでしょうか。
Posted by 初めての質問 at 2006年04月19日 04:27
A5
最近の記事でも書きましたが、それで、いいと思います。


Q6
株主割当により募集株式の発行をする場合にも,会社法第204条第1項の規定の適用はあるのでしょうか。
Posted by W at 2006年04月19日 20:24
A6
株主は、割当てを受ける権利の行使により、当然に株式の引受人としての地位を取得するので、204条1項から3項までの割当手続は不要です。

2006年4月19日 (水)

子会社の役職員へのストック・オプション

今日は、子会社の役職員に対するストック・オプションについてお話しします。

 以前、お話ししたとおり、私達は、会社が自己の役員に対してストック・オプションを付与することについては、報酬等の決議が必要ではあるものの、有利発行の特別決議なしで(取締役会の決議)発行することができると考えています。
 その考え方を応用すれば、会社が、自己の使用人(従業員のことです)にストック・オプションを付与する場合にも、取締役会の決議で発行することができるということになるでしょう。

 それでは、親会社が子会社の役員や使用人に対してストック・オプションを付与する場合も、「有利発行にあたらない」ということができるでしょうか。

 一般人からみると、
「子会社もグループの一員なんだから、親会社が子会社の使用人にストック・オプションを与えることができるのは、当たり前」
という感じだと思いますが、ちょっと法律をかじった人にとっては
「子会社の使用人は、子会社との間で雇用契約があるだけで、親会社との間には契約関係がないのだから、親会社が、子会社の役職員にストック・オプションを与える法的根拠がないのでは?」
と疑問に思うことでしょう。

確かに、法律をかじった人の考えもよくわかるのですが、他方、金融機関のようにホールディング・カンバニーである親会社の株式が上場していて、銀行や証券など実業をやっている100%子会社は非公開会社であるという場合には、親会社のストック・オプションでなければ、子会社の役職員へのインセンティブにはならないし、子会社の新株予約権なんか配ったら100%子会社ではなくなってしまって、元も子もないので、
「親会社が子会社の役職員にストック・オプションを与える」
ということを認める必要性は高いのです。

最も単純なやり方は、親会社と、子会社の役職員との間には何の契約関係もないものと考え、第三者に対する有利発行として、親会社の株主総会の特別決議を取って、新株予約権を発行することでしょう。

ただ、会社が自己の役職員にストック・オプションを付与するときは特別決議がいらないことを考えると、もう一工夫して、取締役会の決議で出せないかと考えるのが人情というものです。

そこで、いくつかの法律構成が考えられると思いますが、親会社、子会社、役職員という三者間の法律関係を組み合わせて、方法を考えてみると
(1) 子会社は、役職員に対し、報酬支払義務を負っているので、その報酬支払い義務を親会社が併存的債務引き受けをした上で、子会社の役員・従業員が、新株予約権に係る払込義務を、債務引き受けされた報酬請求権で相殺する。
(2) 子会社の役員・従業員が、新株予約権の払込義務の履行として、子会社に対する報酬請求権を代物弁済する。
という方法を思いつきます。
 
 (1)(2)とも、新株予約権の公正価額を払込価額としておけば、有利発行にはならないので、取締役会の決議で新株予約権を発行することができますよね。

 ただ、(2)は、親会社が子会社に対する報酬請求権を取得することとなるため、最終的には親会社が報酬請求権を放棄することになるのでしょうが、これは税の取扱いが難しそうです。(1)も税のことは考慮しなければいけませんが、こちらの方が筋が良さそうな感じがします。

 (1)(2)のほかに方法を考えるとすると、親会社と、子会社の役職員との間で、直接の契約関係を想定することになるでしょう。
 
 例えば、親会社が、子会社の役職員から提供を受けた役務・サービスの提供の対価として、新株予約権を交付する契約を締結するという構成が考えられます。

 この考え方は、親会社が子会社に出向した役職員に給料を支払うのと同じようなことですが、よくよく考えると、いろいろなパターンがあって

A 子会社の役職員が、親会社との関係でも雇用契約を締結しており、子会社で働くことが、親会社の従業員としての業務でもある場合
B 子会社の役職員が、子会社とは無関係に、親会社の事業活動について直接的な役務・サービスを提供し、その提供に対して対価を受領する場合(委任・請負の報酬のような場合)
C 子会社の役職員が、子会社を通じて、親会社に役務・サービスの提供を行い、その提供に対して対価を受領する場合
などなど。

 このうち、Cは、子会社を通じて、親会社に役務・サービスの提供を行っているのに
「なんで、親会社から対価をもらえるんだ?」
と不思議がる方もいっらっしゃるかもしれません。

 しかし、例えば、ヨーロッパのレストランで、ウェイターさんが、お客さんにサービスを提供したときに、レストランから給料をもらいつつ、お客さんからもチップをもらっているように、役職員の活動が、子会社の業務の一貫として行われていても、それが同時に親会社の業務としての側面も有するならば、両者から対価をもらってもよいはずです。

 そして、親会社が、子会社の役職員に与えるストック・オプションの公正価額が、親会社が役職員から提供を受けた役務・サービスの価値と見合うのならば、親会社が自己の役職員にストック・オプションを付与するときに用いた法律構成を取ることによって、有利発行の特別決議をすることなく、ストック・オプションを付与することができます。

 他にも、いろいろな法律構成が考えられるものの、親会社と、子会社の役職員は、子会社というワンクッションが入っているので、会社法又は税法上の問題が生じないように、実態に則したすっきりした構成を考えておくべきでしょう。

 なお、どのような法律構成を取ろうと、実態において、親会社が子会社の従業員にストック・オプションを付与していると認められる場合には、ストック・オプション会計が適用されます。

 会社法と税と会計のトライアングルをどう調整するか、個人的には、もう少しツッコミたいところはあるものの、眠くて仕方がないので、今日はここで幕引きです。

2006年4月18日 (火)

難しい質問が多いなあ

施行が近づき、実務を構築しようとすると、会社法の解釈にいろいろ疑問が沸いてきます。最近の質問は、より具体性が増し答えるのが難しい質問が多くなってきました。
 答えるのが難しいというのは
1 登記等と調整を図る必要がある。
2 会社法や省令の文言が、いまいちうまくできていない。
3 旧商法時代から、問題点の多い処理がされていて、それが実務となっており、会社法では、もはやそんな実務を止めてもらいたいと思っているけれど、止めろと大きな声でいうのは、波紋が大きいので、歯切れの良い答えができない。
というような場合です。

 法務省という立場だと「答えにくい質問は、答えない」というのが最も安定的なんですが、ここは葉玉個人なので「答えにくい質問でも、考えの方向性は示す」ということで、なんとか回答しています。

 今日も、いくつかあまり答えたくない質問があるのですが、果敢に回答していきたいと思います。

Q1
 会社法783条2項で、「(以下この条において「合併対価等」という。」という文言がありますが、784条1項にも「合併対価等」という文言があります。784条の「合併対価等」は、783条2項の「合併対価等」の意味の説明は他の条文でしているのだと思い探しましたが見つかりません。783条2項と784条1項の「合併対価等」は同じ意味と解釈していいのでしょうか?
A1
 いやあ、よく読み込んでますね。貴見のとおりです。担当者に伝えます。

Q2
 特例有限会社から通常の株式会社に移行するのに伴い取締役会を設置する旨の定款変更をするとして、代表取締役の選定は、商号変更の効力発生前に取締役会を開催して選定決議をすることができるのでしょうか?それとも取締役会がいまだ存在しない以上,株主総会で定め,または取締役の過半数の一致で定めるのでしょうか?
Posted by W at 2006年04月15日 11:29
A2
 商号変更の効力発生前には、取締役会を置く旨の定めを置くことができませんので、取締役会で代表取締役を選定する余地はありません。
 登記上は、商号変更に伴う有限会社の解散の登記と株式会社の設立の登記をした上で、代表取締役の変更登記をしなければならないと思います。ここは、自信がないので、

Q3
株式会社民事放送局の例ですと、施行規則3条3項1号の自己所有等議決権数とは、「従業員持株会」に対する議決権だと思います。一方、ムラムラ何とかの部分は葉玉OR従業員持株会が民事放送局の株式を保有している事を前提に、その会社に対する議決権を会社側の見方につけるという意味だと思います。
子会社に対する議決権と、当該会社(親会社)の議決権と混在している気がするのですが。
つまり、民事放送局と葉玉さんが従業員持株会の議決権を保有していて、その行使にあたって両者が同一の意思表示をすることを決めている場合に、自己所有等議決権数が100%になるのではないかと思います。
Posted by dunk at 2006年04月15日 23:40
A3
おっしゃるように、自己所有等議決権数は、従業員持株会に対する議決権について、会社の意思どおりに行使するかどうかで決定されます。
記事でも、そのように説明していると思うのですが、dunkさんが、気にされているのは、私が、株式会社民事放送局の剰余金の配当の例を出したので、株式会社民事放送局の株主総会における議決権のことを問題にしているのではないかと思われたのではないかと思うのです。
 私が言おうとしたのは、従業員持株会の運営の一貫として、株式会社民事放送局の議決権の行使をどのように行うかについての決定は、従業員持株会に対する議決権の行使の結果によって決まりますが、その従業員持株会に対する議決権の行使を会社の意思に従ってやると、従業員持株会に対する自己所有等議決権数が100%になってしまいますよ、ということです。

Q4
社員の無限責任、有限責任とおありますが、これは=株主の責任と言うことですよね。有限会社の場合は有限責任なので出資の範囲で責任を負うと言うことでよいのですよね。では役員はどうなのでしょうか、実際には共通の場合が多いので今まで考えた事もなかったのですが、実際に役員と株主が別人の場合、その会社の債務について株主は出資の範囲で責任を負い、役員が無限の責任を負うということでしょうか?この場合代表取締役の単独責任ですか、それとも取締役全員の責任ですか?ここをすっきりさせたいのですが、、、よろしくお願いいたします。
Posted by sato at 2006年04月16日 19:09
A4
 有限責任・無限責任は、出資者=社員・株主についてのみ問題となる概念であり、役員は、基本的には、会社債権者に対する責任を負いません。
 ただし、役員は、不法行為責任や429条1項の責任を負うことがあります。
 いわゆる無限責任というのは、社員の過失の有無をとわず、会社の債務を連帯保証するようなことをいい、不法行為責任や429条1項の責任とは別物です。
 429条1項の責任については、責任を負う役員の連帯責任となります。

Q5
組織再編時の反対株主の株式買取請求権の効力発生日について質問させてください。
 ① 事業譲渡等の株式買取請求権の効力発生日は、代金支払時
 ② 吸収合併の場合は、効力発生日
 ③ 吸収分割の場合は、代金支払時
 ④ 株式交換の場合は、効力発生日
 ⑤ 新設合併の場合は、会社成立の日
 ⑥ 新設分割の場合は、代金支払時
 ⑦ 株式移転の場合は、会社成立の日
 と条文上はなっております。この規定の違いが良く分かりません。特に③の吸収分割の場合と⑥の新設分割の場合が分かりません。
しかし、会社の株式価格は一義的に決まるものではなく、協議等が必要となる。
 従って、会社法は代金支払時を効力発生日とすることを原則とした(117条5項)。
 しかし、吸収型組織再編においては、再編の効力は効力発生日に生じる。
 よって、吸収型組織再編においては例外的に、買取請求権の効力発生日も組織再編の効力発生日とした。一方、新設型組織再編においては、再編の効力は会社成立日に生じる。
 よって、新設型組織再編においては例外的に、買取請求権の効力発生日も会社成立時とした。この思考過程からいくと、吸収分割の場合と新設分割の場合に会社法の原則に戻り、代金支払時が効力発生日となる理由が分かりません。
Posted by 司法書士受験生 at 2006年04月16日 22:09
A5
 思考過程は、かなりいいところまでいっていますが、ちょっと違います。
 代金支払時が原則であるのですが、組織再編の目的を達成できない場合には、組織再編の効力を優先します。すなわち、合併は、消滅会社を消滅させる必要があり(買取請求の対象となる株式も消滅する)、また、株式移転は、完全子会社の株式をすべて完全親会社に移転させる必要があるので(買取請求の対象となる株式も完全親会社に移転する)、組織再編の効力発生日と、株式買取請求権の効力発生日をそろえています。
 しかし、新設分割と吸収分割は、分割会社の法人格や株式については、分割により変化が生じないので、分割会社の株式買取の効果を会社分割の効力発生日にあわせる必要がありません。したがって、原則通り、代金支払時となっているのです。

Q6
超実務的な質問ですが、当社は3月決算会社でかつ4月に総会招集手続きを行いましたので全て旧法対応でいきますが、そこで以下疑問がわきました。
①6月に株主に配布する招集通知に記載する旧商法の引用
(注記や社外監査役の要件など)がありますが、会社法施行後なので何か注釈を入れるものですか。それとも何も記載しないものでしょうか。
②同じく日刊新聞に掲載する決算公告でも評価差額金の注記を旧商法を引用していますが、ここに何か記載すべきでしょうか。
③さらに株主総会後、株主には従来、決議通知と伴に事業報告書というタイトルで計算書類等を送付していますが、今年度は旧法対応ですので「事業報告書」で問題ないのでしょうか。逆に来年からは営業報告書が事業報告になったので、総会後に株主等におくるものはなんというべきでしょうか。
Posted by 会社法初級  at 2006年04月17日 00:13
A6
 すいません、今ひとつ問題意識が共有できていないかもしれませんが、省令の経過措置で必要とされているもの以外は、旧法に従ってやればよいと思います。

Q7
当社は非上場会社で上場会社の2社がそれぞれ20%と80%の割合で株主になっております。そこで現在、当社では役員の責任免除(役会授権や、限定契約)の定款規定をするか検討していますが、そもそもこのように株主が親会社だけの場合、責任免除は意味あるものなのでしょうか。さらに、当社社外取締役は親会社の社長です。この場合、当社では責任限定契約を結ぶ意味があるのでしょうか。
Posted by 会社法はつらい at 2006年04月17日 00:26
A7
 意味があるかどうかは、私が語るべきことではないでしょう。あえて言えば、株主である2社が仲がよく、親会社の社長思いの良い会社ならば、責任限定契約はほとんど意味がないでしょう。でも、いつまでも2社が仲良しとは限らないし、親会社の社長が子会社の経営で失敗して、反対派閥に追い出されたりすると、親会社がその社長さんを守ってくれる保証はないですよね。

A8
会社法施行規則§100の取締役会決議については、同§118で「内容」を事業報告に記載しなければならないとあります。これは現行法で委員会等設置会社の同様決議については「概要」となっていたものを開示強化されたものと理解していました(最近の実務指南書にもそのような記述があります)が、山口先生の「ビジネス法務の部屋」4月16日の記事には『「取締役会における決議事項の概要」(決議したことの全てではありません、ここは訂正省令で訂正されているところですのでご注意を。訂正省令は事業報告書に関するものですが・・・」とあります。「訂正省令」がどれか分かりませんが、「概要」に戻ったのでしょうか。
Posted by mm at 2006年04月17日 08:30
Q8
 最新版の118条は、「決定又は決議の内容の概要」です。

A9
 研修会で税務大学校のTさんに「法務省の人間に聞いたら、会社法では自己株式を資産と考えていると言われてびっくりした」と聞きました。言うまでもなく会計そして会社法でも純資産の部でマイナス項目としているからですが・・・。
Posted by 濱田 at 2006年04月17日 09:58
Q9
 Tさんが誰か容易に想像がつきますし、そのTさんの影響力を考えると、ここで安易にお答えをすることができなくなってしまいますね(笑)。「自己株式を資産と考えている」というところまで断定してはいないと思いますけど。

Q10
社債権者集会の決議要件に関して、724条2項の「議決権者の議決権の総額」は、723条1・2項(自己社債以外の発行済社債全額)なのでしょうか、それとも723条3項の提示済みのものだけなのでしょうか。
A10
 自己社債以外の発行済社債の全額です。

Q11
持分会社の法人社員は2名以上の「業務執行社員の職務を行うべき者」を選任・通知することはできるのでしょうか。
Posted by 大杉謙一 at 2006年04月17日 13:24
A11
普通、1名を予定していますが、2名以上が絶対ダメかどうかは、調整マターなので、明日、検討してきます。

Q12
持分会社において、払込資本を資本金と資本剰余金に計上するときに、「2分の1以上は資本金に計上せよ」といったルールは存在するのでしょうか?
Posted by 大杉謙一 at 2006年04月17日 13:41
A12
 資本金の組入額に制限はありません。
 払込み・給付財産の価額のうち資本金に組み入れない部分は、資本剰余金になります。

Q13
135条についてご教示賜りたくお願い申し上げます。
百問のP.136ページですが,子会社が135条1項に違反して親会社株式を取得した場合心裡留保の規定を類推適用し原則有効とされていますが,これは判例の立場なのでしょうか。
リーガルマインド10版P.67「原則として無効であるが,子会社は譲渡人の悪意を立証しないかぎり,取得の無効を主張できない。」とあります。公認会計士試験では短答は判例の立場ででるので,ご多用中恐れ入りますが,よろしくお願い申し上げます。
Posted by SUZUKAZU at 2006年04月17日 19:19
A13
 心裡留保の類推適用は、判例の立場ではありません。

Q14
会社法施行規則124条1項3号に規定されている「使用人」は、「法598条第1項の使用人」と解釈すれば良いのでしょうか?
Posted by ワインの会 at 2006年04月15日 17:05
A14
法598条1項には「使用人」はないと思うのですが?
ちなみに、使用人は、会社法上何度も出てきますが、定義はありません。

Q15
公開会社である旧小会社の取扱いに疑問があり、投稿申し上げます。
公開小会社については、会社法の施行により既存監査役は任期満了退任と理解しています。一方、昭和25年改正商法前に成立の会社では、たとえ譲渡制限規定が定められていても、同改正商法の施行で当該規定が禁止されたため、登記簿上も譲渡制限規定が職権抹消されています。その後41年改正法で譲渡制限規定が容認されたのですが、職権での復活等はなかったようです。昭和25年改正前商法による会社で、原始定款に譲渡制限規定が明確に記載され、その後の職権で公開会社となった場合でも、監査役任期につき救済策等はないのでしょうか?
Posted by しずおか書士 at 2006年04月14日 14:51
A15
設問の会社でも、救済規定はありません。


Q16
第1は、取締役会設置会社における代表取締役の選定ですが(P44)、「取締役会設置会社にあっては、会社は、取締役会の決議により、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない」及びP48(2)アからは、取締役会で選定しなければならない、定款で株主総会の権限とすることはできないと読めるのですが、とすれば、商事法務での担当官の方の見解と異なるということになりそうですよね。
Posted by 軌道修正中のイカロスくん at 2006年04月15日 10:00
A16
通達は、典型的な場面を前提にしていますので、定款で異なる定めをした場合は、個別対応だと思います。

Q17
設立の際の本店の所在場所の決定等3.31通達P5(9)では、発起人の議決権の過半数となっていますが、添付書面に関するP11セ(イ)では、発起人の過半数になっています。商事法務上の担当官の方の見解は、後者だったと記憶しているのですが。
Posted by 軌道修正中のイカロスくん at 2006年04月15日 10:08
A17
発起人は一人一議決権なので、本店の所在場所の決定において、発起人の過半数と議決権の過半数が異なる場面というのは、想像できないのですが、どんな場面を想定されているのでしょうか。

Q18
株式の分割と発行可能株式総数の増加について、会社法184条2項は、「株主総会の決議によらないで」とあり、商事法務の解説では、「会社法においては、現行法とは異なり、この定款変更を行うべき機関については法定されておらず、適宜の業務執行者が行いうることとされている」とされていますが、通達は、「旧商法と同様に、・・・株主総会の決議に代えて、取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)により」とあります。会社法184条2項は、会社法194条と同じであって、取締役会設置会社において、取締役会の決議によることとはしていませんよね。もし、通達のようであるのであれば、単元株式数の変更に関する会社法195条と同様の定め方でなければならないと思うのですが、いかがでしょうか?
Posted by 軌道修正中のイカロス君 at 2006年04月16日 22:39
A18
株式会社の業務執行決定権は、取締役一人の会社は取締役、二人以上は取締役の過半数、取締役会設置会社では取締役会で決めるのが原則であり、特に取締役に委任を禁止していない場合には、取締役に決定を委任することもできます。
 184条2項は、「株式会社」が主語であり、以上述べた業務執行決定権者が決定しますから、通達の書き方は、原則的な場合を書いたものとして間違いではありません。
 195条は、取締役会が取締役に委任することができない点において、184条2項と表現が変えられているのだと思います。

Q19
日本法上の社債への日本法の域外適用について、将来出されるコメンタール等では「国際私法の問題だ period」という以上に踏み込んでいただけないでしょうか。原田見解(管理者規定は域外適用される)があり、かつ、「国際私法の問題だ」と突っ放されれば、実務上、域外適用のあることを前提にせざるを得ないからです(ノーアクションレター制度もありません)
A19
私達が踏み込んで、何かを言って、皆さんが得をする場合と損をする場合があります(笑)。
まあ、いろいろな考えがあって良いんじゃないでしょうか。

Q20
ブログの「社債類似証券」について。昨夏の相沢一問一答Q175で「こういう妙な債券を発行できるのかな、特に日本国内で」と思いましたが、その後の商事法務1751号14頁に「(日本国内で流通させる目的で日本国内で発行する場合、法例にいう公序に反するものとして)当事者が選択した準拠法の適用が排除される」とあるのを知りました。その先の解釈がわかりません。選択した法が排除された場合、割当および償還の実態が日本法の内容と類似するならば、日本の会社法の社債規定が適用されるでしょうか。それとも、法例上の「有価証券性」がないことから、日本国内ではあくまで一般の債権とされるのでしょうか。
A20
設問の場合、割当及び償還が会社法に基づいていないことが前提となるでしょうから、単なる指名債権になると思われます。

Q21
ユーロ債発行当事者が、「準拠法は日本法であるが、社債管理者規定等は外す」とする「社債類似証券」を発行することは不可能でしょうか
Posted by ユーロ債 at 2006年04月17日 06:42
A21
割当と償還は会社法によるが、その他の社債の内容などは英国法によるということは可能です。この場合は、「社債」になりますm。
その逆で、割当又は償還は会社法ではないので、社債ではない(社債類似証券である)という場合には、社債管理者の規定は適用されません。その社債類似証券が、手形ならば、日本法上の有価証券ですが、それ以外の場合は、有価証券の法的根拠なく有価証券を発行できるかという問題ですね。

Q22
「百問百答」を5月連休に読破を計画しています。そこで、お尋ねなのですが、初版の修正が2刷りでされましたが、2刷りの誤植は、3刷りで修正されたのでしょうか。もしくは、2刷りですでに誤植修正は完了しているのでしょうか
Posted by 学生 at 2006年04月16日 14:18
A22
今、4刷だと思うのですが、刷る度に誤植は修正しています。

2006年4月15日 (土)

省令の改正

 本日4月14日に,会社法施行規則等の一部を改正する省令が公布されました。

 2月7日に施行規則,計算規則,電子公告規則が公布された後,3月29日に「非訟事件手続法による財産管理の報告及び計算に関する書類並びに財産目録の謄本又は株主表の抄本の交付に関する手数料の件の廃止等をする省令」の附則で,一度,改正し,さらに,先日パブコメを取ったものについて,本日改正したので,二度目の改正ということになります。

 間違い直しの部分については,大変,皆様にご迷惑をおかけしたことをおわびします。
 間違い直しとは言えない実質改正部分については,最初の公布後,会社実務の立場から,様々なご質問やご意見を頂き,スムーズな会社法施行のために明確化した方がよいと思われることや,会社実務に過度な負担をかけないように微調整した方がよいことがあり,施行前であっても,実務上ベターな解決が得られるならば,積極的に改正しようというスタンスで改正をしたものです。

 今回の改正で,施行前の改正は,最後ですので,総会準備は,このバージョンでお願いいたします。

 施行前の改正については,「拙速に公布するからである」というお叱りを受けることがあり,その点は,返す言葉もございません。
 限られた時間の中で
(1)総会準備のために一刻も早く省令の内容を知りたいという実務ニーズを充たし
(2)省令の正確性を追求し
(3)省令が明らかになった後に,それを実務に活用しようとしたときに生じた疑問点に対するアフターケアを万全にする
という要請を同時に実現することの難しさを痛感する次第です。

 人間の仕事ゆえ,なかなか完璧にならないのですが,お気づきの点があれば,ご指摘くだされば幸いです。
 総会集中日が近づいていますから,それまでは,動かすことはできませんが,今後の改正の参考にさせていただきたいと思います。

(質問コーナー))
Q1
法326条1項の「株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない。」の「一人又は二人以上」は「一人以上」と同義なのではないでしょうか。「一人以上」でも「取締役は一人でも可」と読めると思いますが、なぜ「一人又は二人以上」としているのでしょうか?何らかの事情があるのでしょうか?
Posted by MY at 2006年04月14日 11:15
A1
これまでの法令の用例で,そのようになっているからであり,それ以上の事情はありません。

Q2
弊社は端株制度採用会社であり、現実に端株が発生しており、もちろん
端株原簿名義書換代理人の登記もしております。登記項目である「端株原簿名義書換代理人の氏名及び住所並びに営業所」は、この項目名のまま残ることになるという理解でよろしいのでしょうか?
Posted by 悩める株式課員 at 2006年04月14日 14:44
A2
端株については,なお従前の例による以上,その項目名のまま残ると解することになると思います。ただ,登記項目のことなので,月曜日にでも担当部署に確認し,違っていたら訂正します。

Q3
取締役の任期がない特例有限会社から株式会社へ移行して新たに取締役の任期を定めた場合、取締役の任期の起算点は有限会社の取締役として就任した日と理解しておりますが正しいでしょうか?
この任期計算で、任期満了日が平成18年の5月より相当前になった場合でも退任日は当該満了日になってしまうのですよね?
また同様に特例有限会社が特例有限会社のままで、新たに取締役の任期を定めた場合はどうでしょうか。
Posted by 日産マーチ at 2006年04月14日 16:36
A3
株式会社になった場合には,332条が適用されますので,就任の時からではなく,選任の時から起算されると思います。
退任日が,計算上は,株式会社への商号変更の前になってしまうような場合でも,遡及効があるわけではありませんので,そのような場合は,商号変更時に退任したことになります。
特例有限会社が定めをした場合,特例有限会社の任期については,332条が適用除外されているので,起算点を含めて,好きなように定めることになるでしょう。したがって,満了日も,定めに従って計算された日が満了日になります。

Q4
株券の不所持制度について、質問いたします。
商法226条ノ2は株主は定款に別段の定めある場合を除く外株券の所持を欲しない旨を会社に申出づることを得、となっていました。そこで定款に「不所持の申出を受けない」と規定することも可能だったと理解しております。ところが、会社法217条をみるとこの「定款に別段の定めある場合を除く外」がなくなっています。すると会社法施行後(経過措置も見当たりません)は、この規定は変えざるをえず、定款にこの「申出を受けない」とするこの規定があっても株主からの不所持の申出は受けるほかないということでしょうか。
Posted by 白梅 at 2006年04月14日 18:01
A4
おっしゃるように,会社法は,株券発行会社が,定款で,株券不所持を採用しないことを認めないこととしています。ですから,旧商法の会社がその旨の定款の定めを置いている場合,その定めは無効となると思います。

Q5
会社法施行規則§100③第3項では「監査役に報告」をするための体制と規定されていますが、最近の出版物・資料では「監査役会に報告」「監査役会又は監査役に報告」となっているものがいくつかあります。会社法§357の報告先が「監査役会」になっていること、パブコメ版省令では「監査役会又は監査役」となっていたことが根拠のようなのですが、ここはあくまでも「監査役に報告」が正式だと考えて良いでしょうか。§357を考えると「報告先は場合によって監査役会又は監査役になる」というのが本当のところだとは思うのですが、取締役会議案では念を入れて「法文に忠実かつ正確な引用」をしておきたいと考え、お尋ねする次第です。
A5
100条3項3号は,「監査役」に報告をするための体制です。
監査役は,監査委員と異なり,あくまでも独任性の監査機関なので,監査役会への報告も,監査役全員に報告するための手段に過ぎないので,357条の報告をするための体制も,100条3項3号に含まれると思います。

2006年4月14日 (金)

すいません(ペコリ)

 今日は、所用で外に出たため、相澤参事官をホテルに缶詰にすることができませんでした。そのため、千問は、5月初旬にずれ込むことになりそうです(涙)。

 「施行前に千問を出して、スムーズな移行を促す」という気持ちで、頑張ってきたのですが、省令の改正という思わぬ伏兵があったため、施行に間に合わせることができず、大変、申し訳ありませんでした。幸い、この本は、経過措置についてはあまり触れておらず、担当参事官・局付の思考を知るためのタネ本、又は会社法を使い倒すためのアイデア本みたいなものなので、「どうしても、今」ということではないのかもしれませんが、昨日のような社債発行事務に必要な事項や、事業報告等の記載事項等総会準備に必要な事項も含まれていますから、施行に間に合わないのは、やはり心苦しいところです。
 なお、以前もお知らせしましたが、この時期に一番必要な経過措置本(郡谷大輔編著・商事法務)は、明日あたり、大きな本屋には並ぶはずです。経過措置については、かなり詳しく書いてありますので、経過措置が不明な方は参考にしてください。
 

(質問コーナー)
Q1
非公開会社、監査役設置会社において、定款で監査役の権限を会計監査に限定した場合、定款で取締役会の書面決議を定めることはできないって会社のお偉いさんが言っていたんですけど、これってホントでしょうか?
A1
いいえ、ホントじゃありません。370条を見てもらえば分かるとおり、業務監査権限のある監査役がある監査役設置会社では監査役の異議がない場合という要件が加わりますが、会計監査権限限定監査役の会社は、監査役の異議なしで、決議の省略ができます。

Q2
監査役は、株式会社の執行役を兼ねることができるのでしょうか?会計参与については333条3項1号があるのですが、執行役にはそれに相当する規定が見当たりません。どの条文を見ればいいのでしょうか?
A2
基本的な理解が間違っています。執行役は、委員会設置会社のみが置ける機関ですが、委員会設置会社では、監査役を置くことができませんから、監査役と執行役が同時に存在することはありえません。

Q3
自分の会社は、現在のところ商法特例法の「みなし大会社」です。(以前は負債が200億以上だったのですが、今はゼロのため)
会社法の件がなければ、今度の定総において中会社になるはずだったのですが、5月1日からはいわゆる中小会社になると思っていました。
ところが、別の法務担当者から「経過措置政令8条に書いてあるから大会社のままだ」と聞きました。
しかし、8条には定款に会計監査人等を置いてあるものとみなす旨の記載があるだけで、みなし大会社は大会社になるとは書いていません。
Posted by のぶ at 2006年04月13日 11:58
A3
現行法と会社法に、それぞれ誤解があります。
まず、(1)みなし大会社(特例法2条2項の定めがある会社)と(2)中会社であって特例法20条1項により大会社特例規定の適用がある会社とは、別のものなのですが、どちらなのでしょうか(たぶん、質問から推測すると(2)ではないかと思いますが・・)
(1)の場合には、整備法52条により、監査役会及び会計監査人設置会社になります。
(2)の場合には、経過措置政令8条により、一旦、監査役会及び会計監査人設置会社になりますが、今年の定時株主総会で、監査役会及び会計監査人を置く定めが廃止され、監査役設置会社になります。
 それから、大会社かどうかは、整備法や経過措置と無関係に定まるので、のぶさんの書き込みから予想すると、今年の定時株主総会の終了時点で大会社ではなくなります。

Q4
さて,「配当金の除斥期間」について御質問させていただきたく存じます。
株懇現行モデル第41条で「利益配当金および中間配当金は,支払開始の日から満三年を経過してもなお受領されないときは,当会社はその支払義務を免れる。」となっている配当金の除斥期間は,同新モデル40条では「配当財産が金銭である場合は,支払開始の日から満三年を経過してもなお受領されないときは,当会社はその支払義務を免れる。」となっていますが,商法下の「利益配当金および中間配当金」は会社法下の「(配当財産である)金銭」とは異なると思うのですが,商法下で支払った利益配当金と中間配当金については,定款の附則で経過規定を設けておいた方がよいのでしょうか?
3か月前からこの問題で悩んでおりますので,簡単にお答えいただければ望外の幸せに存じます。
Posted by T.I.ネットワーク at 2006年04月13日 22:01
A4
 触れたくないテーマが来ましたね。確か、大昔の判例で「除斥期間」を認めたんだったと思いますが、その性質がよく分からないので、本当は正確な答えができません。
 が、株主が利益配当金及び中間配当金を放棄するという意味だとすると、3年たった時点での定款の効力が問題になるでしょうから、経過措置を設けた方が安全かもしれませんね。忘れても、利益配当と剰余金の配当は同じ性質のものだと言い張ればいいのかもしれませんが。

Q5
議決権行使期限について確認させていただきたいのですが、議決権行使書と電磁的方法の両方を採用する会社が行使期限を取締役会で決議する場合、それぞれの行使期限を異なる時間とすることに問題はありませんか?
Posted by 会社法小僧 at 2006年04月12日 08:58
A5
別々の行使期限を定めることもできると思います。

Q6
種類株式について教えてください。
現行商法では、既発行の普通株式を種類株式に変更する場合(転換予約権に基づく転換ではなく、あくまでも変更です)、全株主の同意を得れば可能と、実務相談株式会社法では解説されていました。
新会社法の施行後も同様の手続きで、普通株式を種類株式に変更することが可能なのでしょうか?
Posted by 会社法で大混乱 at 2006年04月12日 09:40
A6
会社法では、原則として、特別決議で普通株式を種類株式に変更することができます。
ただし、取得条項付株式に変更する場合(110条、111条)や、譲渡制限を付す場合(111条2項、309条3項1号)、全部取得条項を付す場合(111条2項)に特則が置かれています。また、種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合には、種類株主総会が必要です(322条)。

Q7
1の種類の株式につき定款では内容の「要綱」(会社法108条3項)のみ定め、初めて発行する時に、同時に(すなわち『その発行時期に応じて』ではなく)異なる優先配当額(を初めとした株式の内容にかかる具体的細目)を定めることは、許されるものと理解してよろしいでしょうか。
Posted by Y永先生門下生 at 2006年04月12日 20:54
A7
できません。ご質問のようなことを許せば、1種類の株式について要綱のみ定めることにより、2種類以上の株式を作れるということになってしまいます。

Q8
組織再編のいわゆる対価の柔軟化については会社法の附則で経過措置が設けられていますが、1年を経過する前でも、吸収型再編をする場合において、消滅会社の株主等に対して、存続会社の対価を交付しないことは可能なのでしょうか?それとも、株式以外の金銭等を交付することができないのと同様に、対価を交付しない吸収型再編も1年を経過する前にはできないのでしょうか?
Posted by こばやし at 2006年04月13日 23:15
A8
無対価吸収合併はできると思います。

2006年4月13日 (木)

社債の定義

 会社法成立以来、毎日、会社法の質問を受けていますが、不思議なことに、似たような質問が集中する時期があります。私が「ブーム」と呼んでいるその現象は、業界の集まり等で、誰か一人が疑問を口にしたことがきっかけで、尾ヒレがつきながら、あっという間に、その業界全体に不安が広がることが原因で生まれているようです。

 「社外役員の開示」「内部統制」「今年の総会が旧法か新法か」など様々なブームがありましたが、最近は、「ユーロ債」ブームです。

 ユーロ債というのは、ユーロ市場で発行される債券のことです。債券というのは、一般的には、金銭支払請求権が乗っている有価証券のことをいいますから、ユーロ債というのは、たとえば、「1000万円支払う」「1万ドル支払う」というようなことが書かれている有価証券のうち、ユーロ市場で取引されているもののことをいうわけです。

 ところで、ユーロ市場というと、
  「このクロコのケリーは、1万ユーロよ。」とか
  「ユーロビートに揺られて。」とか
いうように「ヨーロッパ」の市場という意味だと思われがちです。

 しかし、ユーロ市場は、正確には、ユーロマネー(外国の金融機関に預けられた自国の通貨や外国人が持っている自国の通貨)を対象にした取引がされている市場のことを言います。最初にこの手の市場が始まったのがヨーロッパであることから、「ユーロ市場」と呼ばれているものの、現在では、市場の場所とは関係なく、ユーロマネー関係の市場は、なんでもユーロ市場です。

 ユーロマネーの定義からも分かるように、例えば、私が1万円札を持って、ロンドンの銀行にそれを預けると、それが「ユーロ円」と呼ばれるようになるだけで、1万円札に「ユーロ」と書き込んだり、「1万ユーロ円札」みたいなものがあるわけではありません(「ユーロ円」というのは、EUの通貨単位のユーロとは何の関係ありません。ちなみに、ユーロ市場で出回っているユーロは「ユーロ・ユーロ」です。)
 
 さて、このユーロ市場では、沢山のお金が行き交い、魅力的な投資商品を作れば、有利な条件で資金調達をすることができますから、日本の会社も、ユーロ市場を対象に円建てのユーロ円債や、ドル建てのユーロドル債など色々な種類の債券を発行しています。

このユーロ債を発行するときに、昔から法律家が頭を悩ませている問題が
「社債管理者の設置強制」
問題です。

 「社債」と言うと受験生は、「なんか難しそうだし、試験には出そうにないから」と言って敬遠するんですが、社債に関する会社法の規定は、1時間ほど私の講義を聴けば理解できるくらい簡単なものです。

 社債の規定(第4編)は、大きく分類すれば
(1)発行の手続きや社債の譲渡・質入れについて規定した第1章(これは、株式や新株予約権の規定とよく似ているので受験生にもなじみやすい)と
(2)社債権者の保護のために社債特有の制度として設けられた社債管理者・社債権者集会を規定した第2章・第3章(こっちが縁が薄いのでなじみにくい)
に分かれます。

 社債管理者というのは、社債権者の代わりに、社債発行会社に対して、利息の支払いや元本の支払い(償還)を請求したり、受け取ったお金を社債権者に配ったり、社債に関する管理をしてくれる者のことをいいます。

 社債も金銭債権なので、普通の貸金や手形と同じように、債権者が、直接、社債発行会社に請求すればよさそうなものですが、社債は、幅広く一般人(公衆)に対して発行されることが多いので、法的な知識があまりない人でも、確実に権利を行使したり、保全したりすることができるようにするために、会社が、社債を発行するときには、原則として、社債管理者を置かなければならないことになっているのです(702条)。

 簡単に言えば、一般人が安心して社債を買えるようにするため、社債権者全員のための「召使い」を用意しなさいということですね。
 そして、この召使いは、10億円とか、100億円とかいう単位の現金を取り扱うことになるので、会社法は、そのような現金を目の前にすると持ち逃げするような葉玉みたいな人間を社債管理者にすると大変な問題になることを考えて、社債管理者になることができる者を銀行など信用できる法人に限定しているのです。

このように社債には、貸し金や手形と違って、信用ができる専用の召使いがいるわけですが、メイドカフェにおいて、可愛いメイドさんに
「ご主人様、お帰りなさいませ。」
と言ってもらう代わりに、コーヒーや焼きそばの値段は、法務省の地下食堂の値段の2倍取られれるのと同じように、社債管理者を置くためには、コストがかかります。

そのため、会社法及び施行規則で、
(1)1単位1億円以上の社債だけを発行する場合
 (こんな社債は、一般人は買えないので、わざわざ召使いをつけなくても、自分で召使いを雇えという趣旨)
または
(2)全部で50単位未満の場合
 (このタイプは、発行会社が、少人数の知り合いに頼んで買ってもらうようなものなので、問題が起こっても、内輪で解決してねという趣旨)
には、社債管理者を置かなくてよい、つまり、召使いを雇うコストを省略していいことにしているのです。

ユーロ債の社債管理者の設置強制問題も、基本的にはコストの問題であり、ユーロ債のように、外国会社の債券と熾烈な競争をしなければならないところで、社債管理者というコスト高のものをつけていたのでは、競争に負けてしまうため、事実上、社債管理者を置くことができないので、
「どうしたら、社債管理者を置かなくていいようになるのだろう」
ということなのです。

 一つの解決方法は、現行商法のもとでも使われている国際私法的な解決方法です。
 つまり、国際私法(法例)上の解釈として、「外国において、外国法に準拠して発行された社債については、日本法上の社債管理者の設置義務はかからない」等の見解を採用することにより、社債管理者の設置義務が及ばない領域を作ることです。

 もう一つの解決方法は、会社法の社債の定義を利用した解決方法。
 これは、会社法が社債を「この法律の規定により会社が行う割当てにより発生する当該会社を債務者とする金銭債権であって、第六百七十六条各号に掲げる事項についての定めに従い償還されるもの」と定義したこと(2条23号)を利用して、会社法の規定に基づかずに割当てや償還をすることにより、会社法の「社債」ではない有価証券を発行することです。

 この社債の定義は、現行商法にはないのですが、社債管理者の設置強制や強行法規である社債権者集会の規定が適用されるのに、「どのような金銭債権について、それらの規定が適用されるか」という要件が何も書かれていないのはまずい、ということで、会社法で新たに定義されたものです。

 例えば、コマーシャル・ペーパーと呼ばれる短期で償還される債券は、昔は、手形で出していましたが、社債等振替法が施行され、かつ、手形についての税の恩典がなくなったとたん、短期社債に置きかわってしまいました。
 短期社債は、明文で社債管理者の設置強制等を適用除外しているので問題はないのですが、それにしても、実態は同じなのに、昨日までは手形で出して、今日からは社債で出すということができるのは、なぜなのかを明確にする必要があります。
 そうしなければ、沢山の「手形」を使って資金を調達した場合でも、「それは、一般公衆に対して資金調達のために有価証券を出しているから、社債に該当するよ」などと言われ、社債の規定を強制的に適用されることになりかねません。
 また、外国会社が日本で「社債」を出すときも、どんな債券であれ、社債の規定を適用されるリスクも生じます。
 
 そこで、会社法は、社債の定義を置き、簡単に言えば、
「会社が、『会社法の規定に基づいて』割当てと償還をすることを『選択』して発行するときは、社債の規定を適用するが、会社法の規定以外の法的根拠に基づいて有価証券を発行するときは、社債の規定を適用しない」
ということを明確にしているのです。

 この結果、会社が、手形を大量に出す場合でも、シンジケート・ローンのように機能的には社債的な要素を持つ指名債権を発生させる場合でも、社債の規定が適用されることはなくなり、また、外国会社も、「会社」じゃないから、日本の会社法上の「社債」の規定が適用されることはなくなりました。

 このような社債の定義を利用すれば、ユーロ債でも、日本の会社法の規定によらずに、外国法に基づいて、割当てや、償還を行うことを定めることにより、会社法上の社債の規定は適用されないことになります。

 このように大まかに言って、2つの回避方法があるのですが、素人さんがこれだけを読むと、「なーんだ。外国法を準拠法として発行すれば、社債の規定が飛ばせるのか。ラッキー」と思って、日本で「社債類似証券」を出そうとすると、それは有価証券ではないということになりかねないので、注意が必要です。

 また、社債の定義は、あくまでも「割当て及び償還」が会社法の規定に基づくかどうかを問題にしているのであって、割当てと償還以外の社債発行契約の内容や、社債の管理方法等について外国法に準拠していても、「割当て及び償還」が会社法の規定に基づいて行われるものであれば、それは会社法上の「社債」に該当します。

 そのため、会社法の施行後であっても、会社法上の「社債」に該当するユーロ債を発行することは当然できますし、その場合において、社債管理者の設置義務が生ずるかどうかについては、現行商法において国際私法上の解釈でこれを生じないという見解があるのと同様、会社法においても、それは国際私法上の解釈に委ねられているということになります。

 以上の内容は、商事法務から出版する予定の「千問」に、もうちょっと真面目な文章で載せることになっています。
 これは、宣伝のために言っているのではなく、弁護士さんが社債発行時にオピニオンを書くときに「葉玉ブログに書いてあった」とはいえない(笑)と思われるので、「もう少し信用のおける根拠を用意する予定です」ということを告知して、5月1日の施行後に直ぐにオピニオンが書けるようにしているのです。

 ところで、千問につきましては、その記述の信用性を高めるために、なんと、会社法担当参事官として名高い相澤参事官も「編著者」となってくれることを承諾していただいております。
 そのため、相澤参事官も、1月ほど前から休日返上で必死の形相で原稿の朱入れをしているのですが、なにせ700頁を超えるものであるため、もしかしたら、4月下旬という発行予定が、ほんのちょっとだけ、遅れるかもしれません・・・・(汗)。
 明日までに最終稿があがれば、4月末には発行できると思われるのですが(それも、まだ不可能ではありません)、何せ多忙な相澤参事官を巻き込んでしまった関係上、それが可能かどうかは、私が、今日、相澤参事官をホテルに缶詰めにして原稿を書かせる勇気があるかどうかにかかっています。
 もし万一、発行が5月初旬にずれこんだときは、「あーっ、葉玉は、監禁で逮捕されるのが怖くて、ブログの読者を裏切ったんだな。」と思ってください(涙)。
 本日は、苦悩に満ちた面持ちで、ブログを閉めさせていただきます。

2006年4月12日 (水)

報酬等の包括決議(2)

ikさんから、昨日の報酬等の記事について、次のようなコメントをいただきました。

「定型性」というのはかなりのマジックワードだと思います。役員賞与にしても一定の業績評価を前提にしつつ,ほぼ定型的になっていることはありますし,退職慰労金も役位がわかればほぼ「定型」です。会社法の関心はお手盛り防止であって株主にとってどの程度の支出になりうるのかがわかれば足りるはずです。あくまで法解釈としては,生活保障給であろうが賞与であろうが退職慰労金であろうが,1号報酬の枠内でよいはずです。賞与を毎年取っていたのは利益処分でやっていたからであり,退職慰労金を枠内でやろうとすると,枠取の上限が著しく大きくなるからだろうと思います。理論的には,退職慰労金規程を2号報酬として一度決議すればそれでもよかったはずです(平成14年改正時に当時の法務省の方にもそれはそうだといっていただきました。)。

昨日の記事でも触れたように、賞与でも、退職慰労金でも、ストックオプションでも、「理論的に」一度決議すれば、それを変更しない限り、二度と株主総会決議は不要であるという解釈も、「理論的には」可能であると思いますが、その考え方に対して、私は、「怖い」という、あまり理論的ではない感覚を持っています。

「Aができるのだから、Bもできると解するのが理論的である」ということを、私も含めて法律家はよく言うわけですが、その理論は、「Aができる」という命題が正しく、かつ、「Aができるという理由が、Bにも当てはまる」ということが必要です。

今回、私が「怖い」という感覚を持つのは、まずAに当たる部分「一度、総会で枠取りの報酬決議をすれば、その枠取りを変更しない限り、二度と決議を経る必要がない」という実務の取扱いが、どの程度、裁判に耐えうるだけの強度をもった規範なのかを読み切れないというところにあります。

その実務を否定するつもりは毛頭なく、センシティブな話もあまりしたくはないのですが、株主総会が枠取り決議をしたときに、株主総会参考書類や取締役の説明によって明らかにされていた前提事実が変更になった場合には、いくら実際の報酬が枠の中に入っていたとしても、枠取り決議の趣旨に反するような報酬というのは出せないのではないかという疑念があります。

 たとえば、枠取りのときに、代表取締役が「当社は10人の取締役がいます。一人平均2000万円程度は確保したいので、総額2億円の枠を提案しました。よろしくお願いします。」という説明をして、2億円の枠の決議がされたとしましょう。
 ところが、総会後に、取締役10人のうちの7人があっという間にやめて、残り3人になってしまいました。

このとき、代取が「総額で枠が2億円あるから、退職慰労金を、辞めた取締役に1000万円ずつあげよう。そして、残りを3で割ろう。」というのは、ちょっと無理だと思うのです。

そのため、「賞与や退職慰労金でも、枠の中だったらいいだろう」と形式的に割り切られると違和感があり、まず、枠取りするとき決議の趣旨がどのあたりにあるかを明確にする必要があるだろうと思います。

また、361条1項2号の業績連動型報酬とは別の概念である「賞与」というものが、客観的な基準で決まるものなのかどうか。決まるのならば、2号でやればよいわけですが、決まらないのならば、1号でやる必要があります。でも、賞与のように業績によって左右されることを前提とするものについて、何年も前の「枠」の中で承認していると言いいきれるのか。そのときの株主総会参考書類や相当性の説明で、本当にその趣旨が読み取れるように説明したのか。うーん、という感じです。

 また、退職慰労金は、現在の実務では、退職の度に決議をやっているわけですが、ikさんの理論によれば、通常の報酬の枠取りのほかに、1度だけ「役員が退職した場合には、退職慰労金支給規定に従って退職慰労金を支給する」という決議をすればよいはずであり、なぜ、そのような実務にしていないのか、気になります。

 さらに、こうした不安は、「1度の決議でよい」という点について、先例として信頼できる判例がほとんどなく、実務相談でも、「毎年、黙示の承認をしていると考えて良いでしょう」みたいなことが書かれていることによって、さらに増大しています。

 というわけで、ikさんのように考えたいと思っているものの、「1度の決議でよい」という範囲を無秩序に広げる勇気は沸いてこないので、昨日のような慎重な記事になったわけです。
 私は、企業の方や企業法務をやられている弁護士さんとよくお話しするので、「実務=善」みたいになりがちなのですが、冷静に裁判官がどんな判決をするのかを予測すると、ある程度、謙抑的な姿勢も大事なような気がします。

(質問コーナー)
Q1
もう一つストックオプションですが,役員に割り当てる場合,無償でも特に有利な条件でない,というのは,実質的に労務提供を受けているはずということを考慮している,労務出資的なものを考慮していいのは募集新株予約権の対価であって資本充実と直接関係ないからだ,という理解なのでしょうか。
仮にこうした考えでいく場合,役員の労務提供の価値を決めて,それとの比較で特に有利でないといわないといけないような気もいたします。しかしその価値は決めようがないと思います。その結果,この見解だとおよそ役員・従業員など会社に何らかのサービスを提供していると有利発行でない,極端な話,弁護士に予約権を無償で出しても公正発行ということになりはしませんか?
Posted by ik at 2006年04月11日 07:44

A1
ストック・オプションの発行については、資本充実と直接の関係はないです。
ikさんは、「役員の労務提供の価値が決めようがない」とおっしゃいますが、それでは、報酬も決めようがなくなってしまいますので、きっと決めることはできるはずです(少なくとも、会社による評価は可能です)。
 役員・従業員・弁護士に無償で出しても公正発行ということはありうるでしょう。なぜなら、役員・従業員・弁護士に報酬として金銭を交付した上で、募集新株予約権を割当て、公正価額でその金銭を払い込みしてもらえば、公正発行ですから。

Q2
現物報酬としてSOを支給する場合、
1.予算を確定額をもって限定する方法(1号決議)と、
2.付与数をもって限定する方法(3号決議)
のいずれかを選択すればよいと考えるべきではないでしょうか。
(もっとも、実務的には相殺払込方式を選択すると思いますが。。)
Posted by ty at 2006年04月11日 14:13
A2
解釈は自由ですが、現物報酬としてSOを交付する場合、私達は、確定額を上限とする場合には、1号3号、上限を定めない場合には、2号3号の決議が必要だと考えています。
それは、株主総会が新株予約権という現物を支給することについて明示的に決議する必要があると考えられるからです。
もちろん、相殺払込方式であれば、3号の決議は不要です。ただし、この場合、一旦、金銭を取締役に与えることになりますので、取締役が「俺は、新株予約権なんかいらない。金がいい」ということができます。取締役だと、そんなわがままな人はいないかもしれませんが、従業員に対するストックオプションだと、そんな人が出てくる可能性は高いでしょう。
 とすると、相殺払込方式ではなく、従業員に現金という選択をさせない現物報酬方式が好まれるでしょうが、その場合においても、「有利発行決議は不要である。」という解釈を取ることができるのが、会社法100問や商事法務の解説で私達が示している解釈のメリットです。


Q3
①吸収合併の事前開示書類として,「最終事業年度に係る計算書類等の内容」が定められています(会社法施行規則18 2号5号イ,191条3号イ)。施行日後に合併契約書を作成する合併について,事前開示書類の備置開始時点では,整備法99条に則って従前の例に倣って作成した貸借対照表,損益 計算表,営業報告書,利益処分案,附属明細書しか存在しない場合には,これらを開示すればよく,株主資本等変動計算書,個別注記表の開示は必要ないと考えてよいでしょうか。
Posted by FK at 2006年04月07日 23:12
A3
そのとおりです。

Q4
吸収合併契約等の備置開始日後,吸収合併の効力発生日までの間に新たな最終事業年度が存することとなった場合には,当該新たな最終事業年度の末日後に生じた事象の内容のみを開示すればよいこととされています(規則182条5号 ハ括弧書き,191条3号ハ括弧書き)が,新たな最終事業年度が存することとなった場合には,既に開示している計算書類を,当該新たな最終事業年度に係る計算書類に差し替える必要はありますか。
Posted by FK at 2006年04月07日 23:13
A4
最終事業年度の計算書類が変われば、最新ものにアップデートする必要があるでしょう。

Q5 
会計監査人設置会社である旨の登記の際の添付書面について当該会社の代表取締役の証明書を添付した場合は、下記①及び②の書類に該当することになると思いますが?
①会計監査人を選任した株主総会議事録等
②会計監査人の就任したことを証する書面(承諾書又は契約書)
A5
まず②については代表取締役の証明書では該当しないと思います。
①は、10年以内であれば、保存義務があるので出してもらいたいところですが、応相談というところではないでしょうか。

Q6
なぜ人的分割がなくなったのでしょうか?(ほんとはなくなっていなかったのですね)
Posted by 江崎一恵 at 2006年04月11日 09:56
A5
単なる規定の整理です。

Q7
昨日のQ10&A10について
 月刊登記情報2006年4月号に早貸解説が出ています。①は不要、②は必要であると考えられる、です。しかし、このようにすっきり割り切れるケースは稀で、例えば「行使の要件に該当しなくなったときは消却できる」旨の規定だと第287条により消滅してしまうので、取得条項に該当しないように思われ、経過措置政令第13条は、実務家にとっては悩ましい規定です。
A7
早貸さんの解説で問題意識が分かりました。
結論から言えば、②は必要、①は不要な場合も多いが、必要な場合もあるということです。
つまり、対価が無償であるかどうかにかかわらず、消却条項付新株予約権については、経過措置政令13条が適用されるので、登記義務が発生するのが原則ですが、合併における消滅会社の新株予約権については、必ず消滅するので、あえて取得条項付新株予約権の取得事由を定める必要はないという論理です。
 ただ、早貸解説のうち、株式交換、株式移転における完全子会社となる新株予約権については、新株予約権が承継される場合には、完全子会社の新株予約権は消滅するので、取得事由を定める必要はないのですが、「株式交換・株式移転により新株予約権が承継されない場合であっても新株予約権を消滅させる」という趣旨の消却条項である場合には、取得事由を定めて、新株予約権を取得する必要があります。したがって、そのような場合には、登記する必要があると思います。

Q8
 既存の会社について、職権で「当会社の承認を要する」と書き換えられるわけではないので、それとの整合性からすると具体的承認機関を登記することも可能と考えられます。商業登記の通達では、記録例が未だ公表されていませんので、このあたりは明らかではありません。
Posted by 内藤卓 at 2006年04月11日 10:09
A8
登記システムに関係するところなので、保守的な答えをしていたのですが、今日確認したところ、承認機関の登記もできそうですので、昨日の答えを変更しました。

Q9
剰余金の配当について異なる取り扱い
100問の24の「3について」ですが…、25頁に、「ただし、非公開会社である場合には、株主ごとの別異取り扱いができるので定款を変更できる」と回答があります。
これが「株主毎の取り扱い」になるということは、「従前の株主は、19年以降は新規に株式を取得しない」という前提ですか?
非公開会社の場合は、株主は新株を取得する予定なので、その後、混じってしまいます。そうすると、「株主ごとではなく、株式ごとの異なる取り扱い」になると思うので、よ〜く、意味が分からなくて、超初心者ですみません。
Posted by 江崎一恵 at 2006年04月11日 10:55
A9
 株式ごとと言っても、同一種類の株式の中で区別をつける場合には、株主平等の原則の例外である109条2項を適用せざるをえません。とすると、「19年以降に発行されている株式を保有している株主」について異なる取扱いをするという構成をとる必要があるでしょう。

Q10
 株式分割しようとするときは,183条2項1号により基準日の決定が義務付けられていますが,株式無償割当ての場合には基準日について定めるようにはなっていません。株式無償割当ての場合には124条で処理すればいいということなのでしょうか。神田教授の「会社法 第八版」P.105では会社分割の基準日の義務付けについて「振替制度との関係」となっています。ご多用中恐れ入りますが,ご教示賜りたくお願い申し上げます。
Posted by SUZUKAZU at 2006年04月11日 12:45
A10
株式分割の基準日も124条の基準日です。
株式無償割当ももちろん124条で基準日を設定することができます。
もっとも、株式無償割当の場合には、基準日を設定せず、「今日現在の株主」に割当をするということも可能です。

Q11
会社法350条に基づく賠償請求の場合の要件事実
Posted by 川上憲一 at 2006年04月11日 15:24
A11
会社法350条は、民法44条1項とほぼ同じ構造です。したがって要件事実についても、民法44条1項と同様の取扱いになります。個人的には、会社法350条は、もう少し、現代的な規定にしたかったのですが、下手に代えると、民法44条1項の解釈に影響が出る可能性もあり、わりとおとなしい規定になっています。川上さんの要件事実の考え方は、条文の解釈としては比較的素直だと思いますが、民法44条1項に関する通説とは異なると思います。

Q12
①現在のみなし小会社の監査役については、特に定款変更を行わない場合には、会社法施行時に新たに選任しなおす必要があるところ、選任し忘れている場合、その間は、会社法施行時の監査役が施行後も監査役としての権利義務を負うと理解して宜しいのでしょうか(法346条1項)。また、この権利義務の範囲についても業務監査権限まで広がると理解して良いのでしょうか。
②内部統制については、4月中に会社法対応の規定等を5月以降も適用する旨を決議しておけば、施行後改めて決議しなおす必要はないと理解しておりますが、問題ありませんでしょうか。
Posted by 通りすがりで迷う人 at 2006年04月11日 15:43
A12
① 頻出論点ですが、そのとおりです。
② そのとおりです。

Q13
会社計算規則149条について質問いたします。この条文は計算関係書類の監査についての通則規定なのですが、第1項では、「…監査(…略…)については、この章の定めるところによる。」となっています。しかし「この章」は該当する条文がその通則規定のみでありまして、これで本当によいのかという疑問を持ちました。監査については、「この編」の規定によるのではないのでしょうか。
Posted by 白梅 at 2006年04月11日 18:39
A13
うむっ。ぐーっ。ってかんじです。検討します。

Q14
(1)整備法第90条の「施行日前に株主総会…の招集の手続が開始された場合」
(2)新株予約権について、目的たる株式について調整後1株未満が生じた場合には切り捨てに関する規定があり、それ以外は現金調整ということになっています。この点、単元株式制度を利用している場合、単元未満株を切り捨てるとすることは法律上可能なのでしょうか。
Posted by 亡羊 at 2006年04月11日 20:44
A14
(1)頻出論点ですが、株主総会の日時場所で足ります。
(2)単元未満株を切り捨てることはできません。

Q15
連結配当規制についてお伺いします。連結配当規制の適用手続については特別の規定はなく、計算書類の作成過程において注記に計算し、その注記を含めて取締役会で承認するものと理解しております。
ここで、3月決算会社を前提とした場合、平成18年3月期決算にかかる計算書類は旧商法ベースで作成するため、会社法ベースでの計算書類作成は平成19年3月期決算からと理解しておりますが、となると連結配当規制の適用は早くとも平成19年3月期にかかる計算書類の取締役会承認以降、との理解でよろしいでしょうか。
それとも、例えば平成18年5月1日以降に取締役会で連結配当規制の適用を決議した場合、当該決議以後は連結配当規制適用会社として分配可能額の計算を行うことも可能ということでしょうか 。
A15
 平成18年3月期決算の計算書類については、計算規則附則8条により、連結配当規制適用会社になることができます。

2006年4月11日 (火)

報酬等の包括決議

 勉強中さんから次の質問を頂きました。
 「新会社法100問の326ページに取締役の任期中の全額の報酬を定時株主総会で決定できると解釈されていますが、任期以前つまり5年程度前の定時株主総会の役員報酬決議しかない場合は、その決議の範囲内での役員報酬の支払いは有効なのでしょうか。それとも少なくとも任期毎に総会決議が必要なのでしょうか。お手盛り防止の趣旨からすれば、5年前の総会決議でも、有効であるとかんがえるのですが。」

 株主総会の報酬等の決議をどれだけ抽象的にやれるかという問題は、基本的ですが、難しいところです。

 もちろん、役員ごとの個別の決定は不要であり、取締役全員の報酬総額の決定で足りるという点は解決済みであり、省令もそれに則して株主総会参考書類の開示事項を規定していますので、そこを問題視するつもりはありません。

 しかし、ある年の株主総会で、一回だけ報酬等の包括決議をすれば、永遠にその決議だけで足りるのかという点については、あまり大胆に「何でもできる」と解釈するのは、怖い感じがします。

現行法の実務では、
1 月給については、一度包括決議をしているから、その枠を変更しなければならないような場合を除き、毎年決議を取るようなことはしない。
2 退職金は、報酬決議であるが、役員が退職するときに、「退職慰労金支給規定に従って支給する」という決議を取る。
3 賞与は、利益処分案で、毎年、株主総会の承認を取る。
4 ストック・オプションは、有利発行として株主総会の特別決議で枠取りをして、その後発行する(ただし、1年しか枠取りの決議の効力が続かない)。
というのが一般的でしょう。

 会社法では、1から4まで全部、報酬等の決議が必要ですが、逆に言うと、「お手盛り防止」というキーワードさえ言っておけば、月給でも、賞与でも、退職金でも、ストックオプションでも、総額が一定の枠内にとどまっている限り、一回の包括決議で、永遠にそれ以上の株主総会決議はいらないという解釈を主張する人が出てくる可能性もあります。

 しかし、月給分については、毎年株主総会の決議をしなくてもよいという解釈を取ることができる根拠は、月給分は比較的定型性の高い報酬であるからだと思いますので、私には、退職金や賞与に、その考え方を応用していく勇気はありません。私なら、退職金と賞与は、支給時に株主総会に議案を提出し、株主総会参考書類できちんと必要事項を開示して、決議を取る道を選びます。

 ただし、ストック・オプションを役員の身分に応じて定型的に付与する場合には、定型性が強いので、一度、包括決議を取れば、毎年、報酬等の決議を取る必要はないと解釈することは可能であると考えています。

 この場合、包括決議においては、通常、付与するストック・オプションの公正価額の総額の上限を確定額として決議し(361条1項1号)、かつ、当該ストック・オプションの内容が具体的に決定しているかどうかにかかわらず、「報酬等のうち金銭でないもの」(361条1項3号)として、株主総会において、同号に従い「その具体的内容」を決議することが必要です。

 この点、「具体的内容」の解釈によっては、包括決議ができないということになりかねませんが、361条はあくまで「報酬の枠」の決議を求める趣旨であることから、ストック・オプションの決議においては、付与する予定の新株予約権の要綱、すなわち、新株予約権の行使により発行される株式数の上限や新株予約権の譲渡の可否等程度を定めれば、具体的な内容を定めたものと解してよいと思います。

とすると、1号でストックオプションの公正価額と月給分の総額の上限を定め、3号でストック・オプションの要綱を定めれば、その決議後は、その枠内で発行する限りにおいては、新たに報酬決議を取ることなく、取締役会の決議でストック・オプションを付与することが可能になります(ストック・オプションは、有利発行に当たらないということは、100問に書いたとおりです)。

 もっとも、現行法の報酬決議には、ストック・オプションの公正価額は含まれていませんので、会社法施行後にストック・オプションの包括決議をする場合には、1号の枠が十分にあったとしても、1号の枠の趣旨を明確にするために、3号の決議だけではなく、1号の決議も行う方が安全だと思われます。

 このことは、監査役にストック・オプションを付与する場合に特に問題になります。
 監査役の報酬は、361条1項3号に相当する規定はありませんから、場合によっては、現行法で行われた包括決議の枠内で、ストックオプションを発行するならば、新たに株主総会の報酬決議はいらないと考える方がいるかもしれませんが、当初の包括決議が予定していなかったことを実行しようとする以上、会社法施行後に新たに決議を得るべきでしょう。

(質問コーナー)
Q1 
経過措置政令13条5項では、施行日前に「公告又は通知がされた場合」における新株予約権の消却については、なお従前の例による、とされています。これは施行日前に公告又は通知を掲載又は発すれば(施行日前に公告又は通知期間が経過していなくても)なお、従前の例によることができるという理解でよろしいでしょうか。
Posted by sk at 2006年04月07日 21:32
A1
そのとおりです。期間の経過は関係ありません。

Q2
株式交換完全子会社の株主ごとに、Aには親会社の株式を、Bには現金を交付する内容の株式交換契約は、総株主の同意があってもできないでしょうか。会社法768条3項によれば、できないとのことになると思いますが、両社の総株主の同意があってもできないのでしょうか。
A2
合併の手続きの中には、株主ごとに異なる対価を交付する手続が用意されていないので、総株主の同意があってもできません。総株主の同意が取れる状態であれば、親会社株式と現金をA,Bに交付して交換するという手段を用いるか(税の問題がありますが)、現金又は株式を対価とする親会社の取得請求権付新株予約権を出すとかの工夫をする必要があるでしょう。

Q3
 株式交換交付金の交付は、会社法施行後1年間はできないのでしょうか。
A3
 端数については別ですが、いわゆる交付金合併は1年間できません。

Q4
会社分割の場合、非按分型会社分割(人的分割)が認められていたと思いますが、会社法施行後は、人的分割がなくなり、物的分割+剰余金の配当となるため、不可能になるのでしょうか。
A4
物的分割+剰余金の配当が、いわゆる人的分割ですね。同じ事を違うルートでやることができるということです。

Q5
3月末日の株主総会で合併承認決議をし、7月1日を合併期日とする合併の効力発生日は、7月1日(土曜日)でしょうか、それとも7月3日(月曜日、登記申請日)でしょうか。
A5
 旧法の手続きによるので、合併の効力発生日である7月1日、登記申請日である7月3日でもなく、「登記された日」になります。但し、登記がきちんとされた場合、「登記受付日」が「登記された日」になります。

Q6
 監査役設置会社の定義について、条文を素直に読めば、「この法律の規定により監査役を置かなければならない株式会社」とは、公開会社(第327条第1項第1号、同条第2項)または大会社(第328条第1項、同条第2項、第327条第3項)に該当する株式会社であり、定款に「監査役を置く」旨の定めの有無、実際の選任の有無を問わない、とするのが妥当であると考えます。
Posted by 内藤卓 at 2006年04月08日 02:22
A6
 「置かなければならない」を抽象的義務と捉えるか、具体的義務と捉えるかという問題だと思います。二義を許さず、分かりやすいというのが理想の条文ではありますが、用例や他の条文との関係その他、いろいろな人の好みなどにより、ある人にとっては分かりやすいが、ある人にとっては分かりにくいというものがあります。
 内藤さんが「素直」と感じる解釈では、38条2項のように「監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)」というようにカッコ書で、非公開取締役会設置会社で会計監査限定の定めがある会社を加えている条文の説明がつかないと思いますし、その他監査役設置会社に関する規定について整合的な解釈を加えることはできないでしょう。
 そういう点を加味して考えれば、監査役設置会社の定義における「監査役を置かなければならない会社」というのは、実際に監査役を置く旨の定めを置いてない会社に限定せざるをえません。
 書きぶりの巧拙についてのご批判は分からなくはないのですが、条文は、様々な縛りの中でできあがるものなので、「こう書くべきだ」と思う表現をそのまま書くことができる方がまれです。
 また、以上の解釈について、取締役会設置会社と監査役設置会社の定義で違いはありません。石井さんの解説は原稿の段階で私もチェックしていますので、今から考えると「誤解を生んでしまったかな」と反省していますが、監査役設置会社の定義そのものには、法制的な問題はないと思います。

Q7
これまでの商法下で役員に付与されている新株予約権は職務執行へのインセンティブを与えるというところにありますので、これも広い意味では職務執行の対価と考えて良いということでしょうか。
逆に開示しなくて良い現行商法下又は会社法下の新株予約権等は、例えば株主割当で新株予約権を付与されたとか、買ったとか、役員であることと全然関係ない理由で入手したものという理解でよろしいでしょうか。
Posted by 参事官室によく電話する人 at 2006年04月08日 12:21
A7
 その理解で結構だと思います。目安としては、現行商法で、役職員に有利発行されたものはおそらく全て職務執行の対価としての側面があるでしょうし、有利発行されていないものは、職務執行の対価とはいえないものが多いのではないでしょうか。

Q8
 上場会社では役員持株会を設置しているところがありますが、この場合構成員である役員は施行規則3条3項2号イ(2)の「緊密な関係がある者」に該当しそうな気がするのですがいかがでしょうか。
A8
 すべて事実認定に関わる問題なので断言はできませんが、常に「緊密な関係がある者」に該当するとまではいえないと思います。工夫の余地はあるでしょう。

Q9
取締役・監査役の責任免除定款規定および社外取締役との責任限定契約定款規定についての質問です。
株懇の定款モデルでは根拠条文番号が従前の「商法266条12項の規定により」が「会社法426条1項の規定により」と置き換えられていますが、この場合本年4月30日以前に発生した任務懈怠責任は当該方法により免除できるのでしょうか。(整備法78条を見ると施行日前の行為に基づく損害賠償責任は従前の例によるとなっていますので、従前の責任免除(限定)規定を定款の附則として残しておくべきなのではと思ってしまいます)
Posted by 法務太郎 at 2006年04月08日 13:34
A9
 会社法426条1項の規定による免除は、施行前に生じた責任を免除することはできません。
 ただし、商法266条12項の規定により免除することができる旨の定めを改正した趣旨が、「施行前に生じた責任ついては、一切、取締役の責任免除を認めない」というものではなく、「施行前に生じた責任について、商法266条12項の免除を認めるが、施行後に生じた責任については、会社法426条1項の規定により免除する」というものであれば、免除できます。
 改正の趣旨が前者か、後者かは、解釈によりますが、法的安定性を確保したいのならば、定款の附則で経過措置として商法266条12項の免除を認める規定を置いた方がいいかもしれません。

Q10
次の登記がされている新株予約権について
「会社が新株予約権を消却することができる事由及び消却の条件」
①当社が消滅会社となる合併契約書承認の議案が当社株主総会で承認された場合、又は当社が完全子会社となる株式交換契約書承認の議案もしくは株式移転の議案が当社株主総会で承認された場合、当社は新株予約権を無償で消却できる。
②当社は、当社が取得し保有する新株予約権をいつでも無償で消却することができる。
A ①及び②とも取得条項付新株予約権の取得事由として登記する必要はないと思いますが、この場合「会社が新株予約権を取得することができる事由及び取得の条件」の変更登記の申請は不要でしょうか?
B 不要の場合、上記の登記事項は、存置のままとなるのでし ょうか?
C 必要とする場合は、如何なる登記事項となるのでしょうか?
Posted by kntm at 2006年04月10日 09:31
A10
もう一つ問題意識が分からないのですが、経過措置政令13条に該当しないということでしょうか?取得条項付新株予約権と見なされた上で、登記義務を負うように思うのすが・・。

Q11
内部統制の決議義務(318条4項)は、施行後最初の取締役会終了時まで適用されないとされています(整備法令14条)。ここで、取締役会で決定しなければならないのは、内部統制に関する基本的な方針であることから(企業会計5月号106頁・相澤)、この最初の取締役会で決議されていなければならないのは、内部体制整備に関する基本的な方針で足り、細目については、この時点で定められていない事項があっても良いと考えておりますが、このような理解で宜しいでしょうか。
Posted by 通りすがりで迷う人 at 2006年04月10日 14:59
A11
最初の取締役会で、法定の事項の全てについて基本的な方針を決定しなければいけませんが、細目は必ずしも取締役会で決定する必要はありません。したがって、その時点で細目について定められてない場合もあるでしょう。

Q12
「会社法をなまぼ・入門編」の2回目を読みました。楽しく・深く、やっぱり、これは会社法入門の決定版です。さて、この50pに株式の譲渡制限について、「登記だけでは何が承認機関なのかは分からないようになっています」旨の記述があります。これは、承認機関が登記能力を有せず登記不可の意味なのか、旧法のように「取締役会の承認を要する」旨の登記は可能であるが必要的ではないという意味なのか、いずれなのでしょうか。
Posted by 猫太郎 at 2006年04月10日 18:52
A12
承認機関を具体的に登記することもできます(4月11日に訂正しました)。

Q13
①Web開示ですが、これまで招集通知に記載していた「報告事項に関する添付書類」や「財務諸表の一部」等をインターネット開示することを定款に定めればできるというものであって、会社法299条等に定める招集通知及び総会参考書類の電磁的提供とは別のものですよね?
②単元未満株主の権利についてですが、定款をもってしても奪えない権利はさまざまな書籍にでてますが、では定款で制限できる権利とは?代表訴訟提起権などと記載されてる例は多いですが、この「など」とは何?共益権のうち代表訴訟提起権・総会決議取消請求権などの株主による監督是正権全般を指すということでよろしいのでしょうか?
A13
① WEB開示と招集通知や株主総会参考書類の電磁的提供は全然違います。制度も違いますし、前者はホームページ、後者はメール等ですから、方法も違います。
② 法律及び省令で列挙されている権利以外はすべて制限ができます。自益権も、共益権も制限できます。それを具体的にあげるのは、株主の権利のほとんどを書けと言っているようなものなので、勘弁してください(1000問には株主の権利の一覧表を載せる予定なので、それで制限できないものをチェックしてください)。

2006年4月 7日 (金)

従業員持株会関係等の質問

 春になって、飲み会が続いています。
 今日は、六本木で焼き肉を食べながら、マッコリという韓国のにごり酒をたらふく飲んだので、頭からマッコリが吹き出しそうです。
 でも、実務的に大事な質問が沢山来ているので、濁った頭ではありますが、質問バスターとなります。
 明日からは、またビュ・アーな気持ちで記事を書きたいと思いますので、乞うご期待。

(質問コーナー)
Q1
 平成14年に日本証券業協会がまとめた持株制度に関するガイドラインによると、持株会の議決権は理事長が行使するものの、組合員は理事長に対し議決権の不統一行使の指示ができるとあります。
 通常公開会社ではこのガイドラインに従って持株会を運営しているので、議決権の行使については組合員の意思が反映されており、ご指摘のような事態は殆ど発生しないのではないかと思います。
 実務感覚からしても、従業員持株会が自社株を購入できなくなるような結論はとり得ない気がします。
Posted by 参事官室によく電話する人 at 2006年04月07日 11:37
A1
 私も、従業員持株会が自社株を購入できなくなるような結論は採り得ないだろうと思う気持ちから、万が一にも、会社の思うがままに、議決権を行使するようなことがないように注意喚起をするつもりで、記事にしました。
 ガイドラインが、組合契約の内容に組み入れられているならばよいと思いますが、ガイドライン=契約ではありませんので、注意が必要です。
 また、子会社の認定で問題となる議決権は、会社の株主総会における議決権ではなく、従業員持株会の運営に関する議決権なので、株式会社の議決権の不統一行使とは直接関係ないので、そこも丁寧に理論構成しておく方がよいでしょう。

Q2
商事法務1744号90頁では、監査役設置会社の定義について「監査役設置会社とは、監査役を置く株式会社またはこの法律の規定により監査役を置かなければならない株式会社のうち、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを設けた会社を除いたもの」と説明されています。法第2条第9号では、「株式会社」が2回出てくるところ、最初の「株式会社」の部分しか監査権限の範囲言及する括弧がありません。そのため、監査役設置義務のある取締役会設置会社は(法327条3項)、監査役設置会社でなくなる場合がないようによめるのですが、第2条第9号の読み方を教えて下さい。
A2
「この法律の規定により監査役を置かなければならない株式会社」とは、監査役設置義務を負うにもかかわらず、監査役を置く旨の定めを置いていないため、監査役を置かなければならない株式会社のことです。
 取締役会設置会社であっても、監査役を置く旨の定めを置いていれば(会計監査権限のみの場合も含めて)、すでに設置義務を履行しているので、「監査役を置かなければならない株式会社」には該当しません。

Q3
特例有限会社が商号変更して株式会社になる場合の登記の添付書類についての質問です。
ここでも紹介のありました那谷大輔先生の本では、定款のみとなっていますが、先日出ました「会社法施行に伴う商業登記事務の取扱いについて(通達)」では、定款と議事録となっております。
私は、定款については、整備法136-20により添付が必要、議事録については、整備法136-22(当該登記申請については、新商業登記法の申請書の添付書面に関する規定は、適用しない。)により添付不要と理解しておりました。
一方、通達では、商登法46を根拠に議事録の添付が必要となっています。整備法136-22は、無意味な規定になってしまったのでしょうか?
Posted by パラリーギャル at 2006年04月06日 15:39
A3
定款と議事録が正解です。
整備法136条22項は、有限会社の解散の登記と、株式会社の設立の登記の申請を同時に行う場合に、有限会社の解散の登記について商業登記法の規定を適用しないという意味であり、株式会社の設立の登記については、商業登記法46条の適用があります。
 したがって、定款変更の株主総会の議事録も必要です。

Q4
施行規則123条が最近改正され、事業報告書に記載しなければならない新株予約権等は「職務執行の対価として交付されたもの」のみになりました。
ところで、現行商法の新株予約権や大昔の商法下のストックオプションは、特に職務執行の対価として交付されたものという扱いではなく、報酬としても開示されていませんし、費用計上もされていないと理解しています。
そうすると、結局事業報告書で開示すべきものは、会社法下で発行され、報酬として費用計上される新株予約権であり、現行商法下(あるいは旧、旧々・・商法下)で特に報酬扱いされてこなかった新株予約権やストックオプションはもう開示しなくてよいのでしょうか。
Posted by 参事官室によく電話する人 at 2006年04月06日 19:20

A4
有利発行かどうかと、費用計上されているかどうかと、職務執行の対価かどうかは、すべて無関係です。
 現行商法で、有利発行決議を経たもので、費用計上されていないものであったとしても、職務執行の対価として新株予約権の発行を受けている場合には、事業報告で開示する義務を負います。

Q5
 整備法108条で、施行日前に解散事由が生じた場合の継続は従前の例によるとされていることによって、会社法での継続の手続と従前の例による継続の手続とでどのような相違点があるのでしょうか?
Posted by たつきち at 2006年04月06日 22:55
A5
 旧法によるのか、新法によるのかというのを明らかにしているだけで、具体的な相異点はなかったと思います。

Q5
施行規則234条の意味は、書面で作成されたものを例えばPDFファイル等の電磁的な記録にしたものという解釈でよろしいでしょうか?
また、このなかに、法433条の会計帳簿が入っていないのは何故でしょうか?
Posted by dunk at 2006年04月05日 22:47
A5
 E文書法の5条は、文書で閲覧・謄写させる義務をかけている場合に、文書を電子化して、電子で見せたり、その電子を文書にして見せたりできるという規定です。
 会計帳簿が入っていないのは、うーん、よく分かりません(笑)。

Q6
大会社の要件を満たしているが商法特例法の大会社適用を受けていない会社(資本金5億円以上となってから定時株主総会を経ていない会社)についても、5月1日より最初の取締役会で内部統制システムを決議する義務があるのでしょうか?
Posted by Aki Ota at 2006年04月06日 07:54
A6
その会社は、会社法では、まだ大会社になっていないので、内部統制システムを決議する義務はないと思います。

Q7
整備法105条の合併に関する経過措置について質問させてください。会社法施行前に合併契約の締結と株主総会の承認を行い、施行後、債権者保護手続を行う場合、債権者保護手続は従前の商法に基づいて行うのでしょうか。整備法105条の解釈がよく理解できませんので宜しくお願いします。
Posted by 会社法苦手くん at 2006年04月06日 15:14
A7
旧商法で行います。
詳しくは、松本さんの経過措置本を見てください。


Q8
会社法第427条に「・・・定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の・・・」とあり、また、株懇モデルでは「・・・当該契約に基づく責任の限度額は、●●●万円以上であらかじめ定めた金額または法令が規定する額のいずれか高い額とする。」とありますが、ここでいう定款で定めた額を法令が規定する額と同額とした場合、「・・・当該契約に基づく責任の限度額は、法令が規定する額とする。」となり、つまり比較する対象がなくなりますが、これは認められるのでしょうか
>開幕ダッシュの新人法務担当さん
A8
 当然認められます。同じ額ならば、その額です。

Q9 
会社法33条7〜9項に関する質問です。
旧法においては、「変更の通告後2週間以内に株式の引受を取り消した者がいない時は、定款は裁判所の通告に従って変更されたものとみなされる」となっていましたが、会社法ではこの様な規定が見つかりません。
1.会社法でいう「決定」とは旧法でいう「通告」と同じものでしょうか?
2.会社法では決定の「確定」という言葉が出てきますが、これは抗告などの不服申立が出来るということですか
3.ある予備校答練の解説に「変更決定の確定により定款変更の効力が生ずる」との記載がありました。これと会社法33条8、9項を併せて読むと「変更決定の確定により一旦定款変更の効力が生じ、当該決定に不服のある者が取消等をした場合は再度定款変更をしなければならない」と読めるのですが正しいでしょうか?
>murasameさん
A9
1 商法173条4項の「変更を加えて通告」というのが「決定」と、まあ同じと言えるでしょう。
2 33条7項の規定による裁判は、872条4号により即時抗告ができます。
3 定款変更命令が確定すれば定款は変更されます。33条8項により、設立時発行株式の引受けに係る意思表示を取り消したからといって、当然に、定款変更の効力が生ずるわけではありません。33条9項により変更された定めを廃止する旨の定款の変更はできます。

                               
Q10
会社法に対応するための剰余金の配当に関する定款変更につきまして、全株懇モデル(取締役の任期が2年のケース)によりますと、
第○条(剰余金の配当の基準日)
当会社の期末配当の基準日は、毎年3月31日とする。
2.前項のほか、基準日を定めて剰余金の配当をすることができる。
第○条(中間配当)
当会社は、取締役会の決議によって、毎年9月30日を基準日として中間配当をすることができる。
という内容にしていますが、「(剰余金の配当の基準日)」の第2項を定めなかったとしても、これと同様のことはできるという理解で宜しいものでしょうか?
それが可能ということであれば、例えば、
第○条(剰余金の配当)
当会社は、株主総会の決議によって、毎年3月31日を基準日として期末配当をすることができる。
2.当会社は、取締役会の決議によって、毎年9月30日を基準日として中間配当をすることができる。
のように一条にまとめ、スッキリさせることができると思うのですが、いかがでしょうか?
A10
2項がなくても、剰余金の配当はできます。
まとめるのは、別に良いと思います。 

Q11
施行規則113条2号ロにおいて役員の在職年数を退職慰労金算定の係数としていますが、例えば2006年6月の定時株主総会で取締役が退職したとすると、2006年についてはここの「年数」にいれてしまっていいのでしょうか?
お手数ですがよろしくお願いします。
Posted by 匿名法務部員 at 2006年04月06日 13:49
A11
1年当たりの報酬を算出するためのものなので、5.2年というように小数ないし分数で在職年数をあてはめるべきでしょう。

Q12
会社法296条3項は、株主総会の招集を「取締役」が行なうと定めていますが、この規定は委員会設置会社にも適用されることから、委員会設置会社の株主総会の招集は、代表執行役ではなく、取締役が行うと考えてよいでしょうか。そうなるとつまり、296条3項にいう「取締役」は、代表取締役を指すものではなく、抽象的に取締役を指すものと解することになりそうです。そして、定款や社内規程において特段の定めを置かない限り、取締役であれば、誰でも招集できそうです。
このような理解でよろしいでしょうか。
Posted by ty at 2006年04月06日 09:26
A12
総会の招集は、業務の執行ではないので、代表取締役や執行役のように業務執行権のあるものが行うのではなく、株主総会で選任された経営の責任者である取締役が行うということにしています。
 したがって、tyさんのご理解で結構です。

Q13
先生著作の「新・会社法100問」に関して質問させてください。
この本は、「オウムの力」養成のため?フォントを変えているところ(赤字・太字)がございます。このフォントの違いは、重要部分(キーワード)だという理解は出来るのですが、赤字と太字はどういう基準で区分してあるのかが分かりません。
Posted by ネットくん at 2006年04月06日 10:03
A13
 赤字と太字は、私のフィーリングでわけています。ただ赤字は、赤い
シートをかぶせると見えにくくなるので、覚えてもらいたいようなところに線を引いてます。

従業員持株会関係等の質問

 春になって、飲み会が続いています。
 今日は、六本木で焼き肉を食べながら、マッコリという韓国のにごり酒をたらふく飲んだので、頭からマッコリが吹き出しそうです。
 でも、実務的に大事な質問が沢山来ているので、濁った頭ではありますが、質問バスターとなります。
 明日からは、またビュ・アーな気持ちで記事を書きたいと思いますので、乞うご期待。

(質問コーナー)
Q1
 平成14年に日本証券業協会がまとめた持株制度に関するガイドラインによると、持株会の議決権は理事長が行使するものの、組合員は理事長に対し議決権の不統一行使の指示ができるとあります。
 通常公開会社ではこのガイドラインに従って持株会を運営しているので、議決権の行使については組合員の意思が反映されており、ご指摘のような事態は殆ど発生しないのではないかと思います。
 実務感覚からしても、従業員持株会が自社株を購入できなくなるような結論はとり得ない気がします。
Posted by 参事官室によく電話する人 at 2006年04月07日 11:37
A1
 私も、従業員持株会が自社株を購入できなくなるような結論は採り得ないだろうと思う気持ちから、万が一にも、会社の思うがままに、議決権を行使するようなことがないように注意喚起をするつもりで、記事にしました。
 ガイドラインが、組合契約の内容に組み入れられているならばよいと思いますが、ガイドライン=契約ではありませんので、注意が必要です。
 また、子会社の認定で問題となる議決権は、会社の株主総会における議決権ではなく、従業員持株会の運営に関する議決権なので、株式会社の議決権の不統一行使とは直接関係ないので、そこも丁寧に理論構成しておく方がよいでしょう。

Q2
商事法務1744号90頁では、監査役設置会社の定義について「監査役設置会社とは、監査役を置く株式会社またはこの法律の規定により監査役を置かなければならない株式会社のうち、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを設けた会社を除いたもの」と説明されています。法第2条第9号では、「株式会社」が2回出てくるところ、最初の「株式会社」の部分しか監査権限の範囲言及する括弧がありません。そのため、監査役設置義務のある取締役会設置会社は(法327条3項)、監査役設置会社でなくなる場合がないようによめるのですが、第2条第9号の読み方を教えて下さい。
A2
「この法律の規定により監査役を置かなければならない株式会社」とは、監査役設置義務を負うにもかかわらず、監査役を置く旨の定めを置いていないため、監査役を置かなければならない株式会社のことです。
 公開会社であっても、監査役を置く旨の定めを置いていれば(会計監査権限のみの場合も含めて)、すでに設置義務を履行しているので、「監査役を置かなければならない株式会社」には該当しません。

Q3
特例有限会社が商号変更して株式会社になる場合の登記の添付書類についての質問です。
ここでも紹介のありました那谷大輔先生の本では、定款のみとなっていますが、先日出ました「会社法施行に伴う商業登記事務の取扱いについて(通達)」では、定款と議事録となっております。
私は、定款については、整備法136-20により添付が必要、議事録については、整備法136-22(当該登記申請については、新商業登記法の申請書の添付書面に関する規定は、適用しない。)により添付不要と理解しておりました。
一方、通達では、商登法46を根拠に議事録の添付が必要となっています。整備法136-22は、無意味な規定になってしまったのでしょうか?
Posted by パラリーギャル at 2006年04月06日 15:39
A3
定款と議事録が正解です。
整備法136条22項は、有限会社の解散の登記と、株式会社の設立の登記の申請を同時に行う場合に、有限会社の解散の登記について商業登記法の規定を適用しないという意味であり、株式会社の設立の登記については、商業登記法46条の適用があります。
 したがって、定款変更の株主総会の議事録も必要です。

Q4
施行規則123条が最近改正され、事業報告書に記載しなければならない新株予約権等は「職務執行の対価として交付されたもの」のみになりました。
ところで、現行商法の新株予約権や大昔の商法下のストックオプションは、特に職務執行の対価として交付されたものという扱いではなく、報酬としても開示されていませんし、費用計上もされていないと理解しています。
そうすると、結局事業報告書で開示すべきものは、会社法下で発行され、報酬として費用計上される新株予約権であり、現行商法下(あるいは旧、旧々・・商法下)で特に報酬扱いされてこなかった新株予約権やストックオプションはもう開示しなくてよいのでしょうか。
Posted by 参事官室によく電話する人 at 2006年04月06日 19:20

A4
有利発行かどうかと、費用計上されているかどうかと、職務執行の対価かどうかは、すべて無関係です。
 現行商法で、有利発行決議を経たもので、費用計上されていないものであったとしても、職務執行の対価として新株予約権の発行を受けている場合には、事業報告で開示する義務を負います。

Q5
 整備法108条で、施行日前に解散事由が生じた場合の継続は従前の例によるとされていることによって、会社法での継続の手続と従前の例による継続の手続とでどのような相違点があるのでしょうか?
Posted by たつきち at 2006年04月06日 22:55
A5
 旧法によるのか、新法によるのかというのを明らかにしているだけで、具体的な相異点はなかったと思います。

Q5
施行規則234条の意味は、書面で作成されたものを例えばPDFファイル等の電磁的な記録にしたものという解釈でよろしいでしょうか?
また、このなかに、法433条の会計帳簿が入っていないのは何故でしょうか?
Posted by dunk at 2006年04月05日 22:47
A5
 E文書法の5条は、文書で閲覧・謄写させる義務をかけている場合に、文書を電子化して、電子で見せたり、その電子を文書にして見せたりできるという規定です。
 会計帳簿が入っていないのは、うーん、よく分かりません(笑)。

Q6
大会社の要件を満たしているが商法特例法の大会社適用を受けていない会社(資本金5億円以上となってから定時株主総会を経ていない会社)についても、5月1日より最初の取締役会で内部統制システムを決議する義務があるのでしょうか?
Posted by Aki Ota at 2006年04月06日 07:54
A6
その会社は、会社法では、まだ大会社になっていないので、内部統制システムを決議する義務はないと思います。

Q7
整備法105条の合併に関する経過措置について質問させてください。会社法施行前に合併契約の締結と株主総会の承認を行い、施行後、債権者保護手続を行う場合、債権者保護手続は従前の商法に基づいて行うのでしょうか。整備法105条の解釈がよく理解できませんので宜しくお願いします。
Posted by 会社法苦手くん at 2006年04月06日 15:14
A7
旧商法で行います。
詳しくは、松本さんの経過措置本を見てください。


Q8
会社法第427条に「・・・定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の・・・」とあり、また、株懇モデルでは「・・・当該契約に基づく責任の限度額は、●●●万円以上であらかじめ定めた金額または法令が規定する額のいずれか高い額とする。」とありますが、ここでいう定款で定めた額を法令が規定する額と同額とした場合、「・・・当該契約に基づく責任の限度額は、法令が規定する額とする。」となり、つまり比較する対象がなくなりますが、これは認められるのでしょうか
>開幕ダッシュの新人法務担当さん
A8
 当然認められます。同じ額ならば、その額です。

Q9 
会社法33条7〜9項に関する質問です。
旧法においては、「変更の通告後2週間以内に株式の引受を取り消した者がいない時は、定款は裁判所の通告に従って変更されたものとみなされる」となっていましたが、会社法ではこの様な規定が見つかりません。
1.会社法でいう「決定」とは旧法でいう「通告」と同じものでしょうか?
2.会社法では決定の「確定」という言葉が出てきますが、これは抗告などの不服申立が出来るということですか
3.ある予備校答練の解説に「変更決定の確定により定款変更の効力が生ずる」との記載がありました。これと会社法33条8、9項を併せて読むと「変更決定の確定により一旦定款変更の効力が生じ、当該決定に不服のある者が取消等をした場合は再度定款変更をしなければならない」と読めるのですが正しいでしょうか?
>murasameさん
A9
1 商法173条4項の「変更を加えて通告」というのが「決定」と、まあ同じと言えるでしょう。
2 33条7項の規定による裁判は、872条4号により即時抗告ができます。
3 定款変更命令が確定すれば定款は変更されます。33条8項により、設立時発行株式の引受けに係る意思表示を取り消したからといって、当然に、定款変更の効力が生ずるわけではありません。33条9項により変更された定めを廃止する旨の定款の変更はできます。

                               
Q10
会社法に対応するための剰余金の配当に関する定款変更につきまして、全株懇モデル(取締役の任期が2年のケース)によりますと、
第○条(剰余金の配当の基準日)
当会社の期末配当の基準日は、毎年3月31日とする。
2.前項のほか、基準日を定めて剰余金の配当をすることができる。
第○条(中間配当)
当会社は、取締役会の決議によって、毎年9月30日を基準日として中間配当をすることができる。
という内容にしていますが、「(剰余金の配当の基準日)」の第2項を定めなかったとしても、これと同様のことはできるという理解で宜しいものでしょうか?
それが可能ということであれば、例えば、
第○条(剰余金の配当)
当会社は、株主総会の決議によって、毎年3月31日を基準日として期末配当をすることができる。
2.当会社は、取締役会の決議によって、毎年9月30日を基準日として中間配当をすることができる。
のように一条にまとめ、スッキリさせることができると思うのですが、いかがでしょうか?
A10
2項がなくても、剰余金の配当はできます。
まとめるのは、別に良いと思います。 

Q11
施行規則113条2号ロにおいて役員の在職年数を退職慰労金算定の係数としていますが、例えば2006年6月の定時株主総会で取締役が退職したとすると、2006年についてはここの「年数」にいれてしまっていいのでしょうか?
お手数ですがよろしくお願いします。
Posted by 匿名法務部員 at 2006年04月06日 13:49
A11
1年当たりの報酬を算出するためのものなので、5.2年というように小数ないし分数で在職年数をあてはめるべきでしょう。

Q12
会社法296条3項は、株主総会の招集を「取締役」が行なうと定めていますが、この規定は委員会設置会社にも適用されることから、委員会設置会社の株主総会の招集は、代表執行役ではなく、取締役が行うと考えてよいでしょうか。そうなるとつまり、296条3項にいう「取締役」は、代表取締役を指すものではなく、抽象的に取締役を指すものと解することになりそうです。そして、定款や社内規程において特段の定めを置かない限り、取締役であれば、誰でも招集できそうです。
このような理解でよろしいでしょうか。
Posted by ty at 2006年04月06日 09:26
A12
総会の招集は、業務の執行ではないので、代表取締役や執行役のように業務執行権のあるものが行うのではなく、株主総会で選任された経営の責任者である取締役が行うということにしています。
 したがって、tyさんのご理解で結構です。

Q13
先生著作の「新・会社法100問」に関して質問させてください。
この本は、「オウムの力」養成のため?フォントを変えているところ(赤字・太字)がございます。このフォントの違いは、重要部分(キーワード)だという理解は出来るのですが、赤字と太字はどういう基準で区分してあるのかが分かりません。
Posted by ネットくん at 2006年04月06日 10:03
A13
 赤字と太字は、私のフィーリングでわけています。ただ赤字は、赤い
シートをかぶせると見えにくくなるので、覚えてもらいたいようなところに線を引いてます。

従業員持株会と子会社

 受験生は試験が近づいてきて、「本当にこのままでいいのかな」と焦りと不安が募ってきていることでしょう。
 企業の法務担当者も、会社法の施行日が近づいてきて、実際の業務に会社法を落とし込んでみて、「ほんまに、これでええんかい?」となぜか関西弁になってしまうほど焦りと不安が募ってきているのではないでしょうか。

 今日は、小ネタのようで、案外大きな問題である「従業員持株会と子会社」についてお話しします。

 従業員持株会は、会社法上の制度ではないので、特に定義があるわけではありませんが、一般的には、株式会社の従業員が、組合を作って、その会社の株式を購入する制度のことをいいます。

 実態調査をしたわけではないものの、その多くは
1 株式会社の従業員(使用人)が給料の一部から資金を拠出して、民法上の組合に加入し、従業員中の数名の業務執行組合員が、組合の業務を執行する。
2 組合は、従業員の拠出した資金を用いて、当該株式会社の株式を取得する。
3 業務執行組合員が、組合の保有する株式の議決権を行使する。
4 従業員が退職するとき、組合を退会し、規約で定まった払戻金を受け取る。
という仕組みになっていると思います。

この従業員持株会について、最近特に多い質問は
「会社法で、子会社の範囲が組合にも拡大されたため、従業員持株会も子会社に該当してしまうのではないでしょうか」
ということです。

 もし子会社に該当してしまうと、親会社株式の取得禁止(135条)の規定が適用され、「従業員持株会なのに、株式が持てない」という、大笑いのようで笑えない話になってしまいます。

 子会社の定義は、施行規則3条に規定されているので、当てはめをすれば、子会社にあたるかどうか判断できるはずなのですが、とっつきにくい規定なので、結論がよく分からないまま、不安が広がっているという感じです。

 そこで、まず、不正確ながら、簡単な判断基準を提示すれば、
「現在、連結決算の対象となっていないならば、子会社ではない」
というのが一応の目安になります。

 ただ、「一応の目安」を言われても、法務担当者は安心できないでしょうから、施行規則3条3項の当てはめをやってみましょう。

<議決権の意義>
施行規則3条3項の解釈で、最初のポイントとなるのは、「議決権」とは何かということです。

 株式会社であれば、機関の権能がある程度決まっているので「議決権」は、株主総会の議決権ということになります。

 これに対し、民法上の組合は、組合契約は組合員の全員の合意により締結・変更されることや、原則的には、各組合員の過半数で業務執行を決定すること(670条1項)を考えると、何の規約もなければ組合員が1人1議決権を有するのが原則だと思いますが、組合契約により、業務執行を委任しているときは、業務執行者(「理事」と呼ばれることもあります)の過半数で業務執行を決定することになりますし(670条2項)、従業員持株会の場合、組合契約で一般の組合員の権限を非常に限定していますので、業務執行者の議決権が、施行規則3条3項1号の「議決権」に該当する場合もありうるように思います。
 
 言い換えると、施行規則3条3項1号の「議決権」は、「その会社等の財務及び事業の方針を決定するための議決権」と解釈すべきであり、組合契約により一般組合員が「財務及び事業の方針を決定するための議決権」を行使することができないような場合には、当該決定を行うことができる業務執行者の議決権が、施行規則3条3項1号の「議決権」に該当することになるということです。

 従業員持株会の規約を見なければ、子会社性の判断において、組合員である従業員の議決権をベースにするのか、業務執行者の議決権をベースにするのか、なんとも言えませんが、組合員の決定権が非常に弱い従業員持株会は、業務執行者の議決権をベースに考えた方がよいかもしれません。

<自己の計算において所有している議決権の数>
次に、3条3項1号2号に該当するかを検討します。

3条3項1号2号が適用されるためには、株式会社が自己の計算において所有している従業員持株会の議決権の数が、全体の50%(1号)又は40%(2号)を超えていることが必要です。

 この「自己」には、株式会社のの子会社及び子法人等を含みますが、従業員持株会の組合員・業務執行者は、全員が従業員であって、会社やその子会社等ではないのが通常なので、3条3項1号2号が従業員持株会に適用されることは通常ありません(会社が、持株会に直接資金を拠出するような仕組みの場合には、会社自身が組合員と評価される場合もありますが、通常は、組合への資金の拠出者は従業員です)。

<自己所有等議決権数の割合が50%を超えている場合>
そのため、従業員持株会が子会社になりうるとすれば、3条3項3号の「自己所有等議決権数の割合が百分の五十を超えている場合(自己の計算において議決権を所有していない場合を含む。)であって、前号ロからホまでに掲げるいずれかの要件に該当する場合」だと思います。

まず、自己所有等議決権数とは、何かというと、3条3項1号に定義が置かれていて
 (1) 自己の計算において所有している議決権
 (2) 自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者が所有している議決権
(3) 自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権
の合計数のことをいいます。

 従業員持株会の場合、(1)は通常存在しないはずですが、(2)(3)は、ちょっと危ないところです。

 最初のポイントで述べたように「議決権」が業務執行者の議決権であるとした場合、業務執行者が、会社との緊密な関係があることにより会社の意思と同一の内容の議決権の行使すると認められてしまったり、業務執行者が会社の指示に従い議決権を行使することに同意したりしていると、当該業務執行者の議決権は「自己所有等議決権数」にカウントされてしまいます。

 例えば、株式会社民事放送局の従業員の葉玉が、従業員持株会の唯一の業務執行者であったとしましょう。
 4月のある日、取締役のA沢さんは、葉玉を役員室に呼び出し
「大株主のムラムラファンドが、我が社の利益剰余金の多さにムラムラしてしまい、株主提案で多額の剰余金の配当議案を出すことになってしまった。葉玉君、いつものことだ。分かってるよな。魚心あれば水心だよ。」
などと言ってきたときに、葉玉が
「わかりました。」
等と同意したりすると、自己所有等議決権数が100%となり、しかも、3条3項2号ロにも該当するので、
「すいません。従業員持株会が、子会社になってしまいました〜」
ということになりかねません。

もちろん、従業員持株会の組合契約の内容によっては、3条3項の議決権は「組合員の議決権」でカウントすべき場合もあるでしょう。その場合には、組合員の一人である葉玉の議決権は自己所有等議決権数にカウントされますが、それ以外の従業員の議決権はカウントされないので、3条3項3号は適用されません。

ただし、ここら辺は、事実認定の世界で、どのように裁判所が判断するかは、蓋を開けてみなければ分からないので、相当怖い感じです。
それで、私の心からのアドバイスとしては
「従業員持株会の業務執行社員(理事)の皆さん。
 議決権の行使について、会社の指示を受けるのはやめましょう。
 会社側提案だからといって、中身も検討せずに、賛成するのはやめましょう。
 株主提案だからといって、闇雲に、反対するのもやめましょう。」
というものです。

 アフラック的に表現すれば
「よ〜く、考えよ〜う。議決権は大事だよ〜。う〜う、う〜う」
という感じでしょうか。

2006年4月 5日 (水)

持分会社の法人社員

 先日、ある会合で、ある会社の法務担当者の方から「持分会社の話は、しないんですか?楽しみにしているんですが」と言われました。

 カラオケでも、リクエストがあるとどんな歌でも歌う性格なので、今日は、「持分会社の法人社員」の話をします。

現行商法では、
(1)会社は、会社の無限責任社員となることができず(現行商法55条)
(2)有限責任社員は、会社の業務を執行したり、会社を代表したりすることができない(現行商法156条)
ということから、会社は、無限責任社員になることも、業務執行社員になることもできないこととされていました。

 これに対し、会社法は、現行商法55条に相当する規定を設けず、また、有限責任社員であっても原則として業務執行権を有することとした上で、法人が業務執行社員である場合の特則として598条を設けているので、法人(会社だけではなく、会社以外の法人も含みます)が、持分会社の無限責任社員や業務思考社員になることができます。

 例えば、葉玉とトヨタ自動車株式会社と学校法人立教大学が、合資会社トヨタマリッキョウを作ることとした場合に、私が無限責任・業務執行社員、トヨタと立教大学が業務執行権のない有限責任社員である場合と、その逆である場合では、後者の方が、トヨタマリッキョウの信用度があがるのは自明なので、会社法は、そうした当たり前のことができるようにしているだけです。

 また、合同会社で、ジョイントベンチャーでやろうとすると、複数の会社だけで合同会社を作ることになりますから、法人業務執行社員を認めることは必要不可欠です。これを認めないと、業務執行社員とするために、わざわざ自然人を一人、出資者に加えなければならなくなる上、その自然人である出資者にジョイント・ベンチャーの生死を左右されることになりかねないため、合同会社の使い勝手が著しく悪くなります。

 以上ような理由から、法人業務執行社員が認められているわけですが、
 「法人が持分会社の業務を執行する」
と言っても、ピンと来ませんよね。
 
 毎日、法人くんが、ネクタイを締めて、カバンを片手に出勤してきたり、「おーい、法人くん、今日は、新入社員の歓迎会だから、7時に六本木のアマンド前ね。飲み過ぎるなよ。」なんて言われたりするのも楽しい感じはしますが、ちょっと現実を見る必要があるので、会社法は、法人が業務執行社員になったときは、「業務執行社員の職務を行うべき者」(職務執行者)を選んで、持分会社に通知しなければならないこととしています(598条)。

(特に、法人が代表業務執行社員である場合には、その代表権を有する法人の職務執行者が誰なのかを取引の相手方にも確認してもらう必要があるので、代表権のある法人業務執行社員については職務執行者が登記事項にもなっています(912条7号、913条9号、914条8号))。

 この職務執行者は、社員である法人の代表者である必要はなく、代表者以外の役員であってもいいし、従業員であってもいいし、それ以外の者であっても構いません。例えば、法人社員が、その顧問弁護士、顧問税理士又はコンサルタント等を職務執行者として指定することもできます。資格に制限はありませんし、選任方法も法人社員の自由であり、他の社員の承諾は不要です。

 このように、業務執行者は、法人社員というクッションを介して、会社と関係を持つようになった自然人ではありますが、会社の業務執行や代表を行うことになる以上、会社に対する善管注意義務を負うなど業務執行社員に関する会社法上の義務がかかることとされています(598条2項)。

ところで、業務執行社員については、一定の義務違反その他の不適任な事由がある場合には、訴えをもって、業務執行権の消滅を請求することができることとされていますが(860条)、職務執行者には、そのような制度はありません。

 これは、職務執行者については、特に選任手続が法定されているわけではなく、仮に、職務執行者の権限を消滅させる請求を認容する判決が確定しても、再度、当該法人の判断限りで、再任することができるため、制度として実効性を欠くからです。

 したがって、不適任な職務執行者が選定された場合には、法人社員に対して、その変更を促して、任意に変更してもらうか、業務執行社員である法人を被告として業務執行権の消滅の訴え等(860条)を提起することになるでしょう。


(質問コーナー)
Q1
 会社法第186条2項等の、「株主の所有する株式の数に応じて」という、いわゆる”持株比率”の取扱についてどなたか教えていただけませんでしょうか?
この比率の算定方法は一般的に、”小数点第3位以下を四捨五入する”という方法で、例えば、”66.78%”のように取り扱われると思うのですが、このような小数点以下がある比率で、株式の割り当てをすると、割当て総数によっては、端数が生じてしまうので、それを回避したいと考えています。その方法として、持株比率を、小数点以下(第1位)四捨五入し、きれいな整数倍、上記の例では67%として取り扱うのは、株主平等原則の強制規定であるという位置づけの、同条に違反してしまうのでしょうか?
Posted by ワディ at 2006年04月03日 22:32
A1
 かつてのヤフーのように1株1億円の会社で、小数点第3位以下を四捨五入すると、49万9999円が切り捨てられてしまいますね。ちょっと、まずそうです。
 株式無償割当は、株主に割り当てる数の算定方法を決定することもできますから(186条1項1号)、まず1株につき1.2株を割り当てるというような感じで定めるのでしょう。
 そうした上で、個々の株主に割り当てられる株式の数に端数が出るときは、234条1項3号で、端数相当分のお金を払います。計算上、1円未満の数が出たら、それは四捨五入でよいと思います。

Q2
募集株式の割当てについて,204条1項は「株式会社は・・・割当てを受ける者を定め・・・」とあります。これがいわゆる「割当自由の原則」なのでしょうか。また,取締役会設置会社において譲渡制限株式でない株式の割当ての決定は①代表取締役とか執行役とかの業務執行者,②取締役会 のいずれが行うのでしょうか。なにとぞご教示賜りたくお願い申し上げます。
Posted by SUZUKAZU at 2006年04月01日 12:19
A2
 割当自由の原則の意味次第でしょうが、要するに、株式会社が誰に割当をするかについて、特に制限はありませんから、「上戸綾には割り当てるが、シズちゃんには割り当てない」ということは、自由に決めてください。
 割当ての決定を行うのは、業務執行の決定機関が行います。譲渡制限株式の場合は、定款で別段の定めがある場合を除き、取締役や執行役に委任できませんが、譲渡自由の株式は、委任することができます。

Q3
 清算株式会社では、取締役会を置くことができませんが(会477条6項),清算の開始原因が生じる前に取締役会設置会社であった株式会社における「取締役会を置く」旨の定款の規定は,清算の開始原因が生じたことによって,失効するのでしょうか?
また,失効するとすれば,継続に際して,取締役会設置会社として継続したい場合には,継続決議の際に,上記の定款規定を置く旨の決議をする必要があるという理解でよいのでしょうか?
商業登記法73条が,清算人の登記にあたっては「清算人会を置く」旨の定款規定の有無を判断するために定款を添付書面としているのに対し,継続の際には特に規定がないため,気になっております。
A3
 477条6項で第4章第2節の規定が適用除外されているので、取締役会を置く旨の定款の定めは、清算株式会社では効力を失います。
 清算株式会社が、取締役会設置会社として継続したい場合には、継続決議の際に、取締役会を置く旨の定款の定めをしなければいけません。

 

いつもの質問コーナー

 4月に入って2日ほど仕事を休み、子供達をあちこち連れ回して社会勉強させていたのですが、その間に質問が貯まったので、今日は、まとめて質問をやっつけたいと思います。

Q1 
先生がブログで頻繁におっしゃる「大人の事情」とは、“時間的、政治的、言語的制約”と考えて宜しいんでしょうか?
Posted by おとなのふりかけ at 2006年04月04日 08:00
A1
それは、小学生から「赤ちゃんは、どうしたら生まれてくるの?」と聞かれた場合と同様、答えようと思えば答えられるものの、なかなか答えにくい質問ですので、「まあ、大人になったら分かるよ」と答えておきましょう。

Q2
会社法370条に「・・当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が・・」とあります。この条文中の『もの』はひらがなで正しいのですね? 仮にこれで正しいとすると、施行規則123条2号イ「・・当該株式会社の使用人(当該株式会社の会社役員を兼ねている者を除く。)」、同号ロ「・・使用人(当該株式会社の会社役員又はイに掲げる者を兼ねている者を除く。)」の『者』との違いが分かりません。法370条の規定を定款に定める場合、「もの」「者」どちらにするか問題です。Posted by 国語が苦手 at 2006年04月04日 09:23
A2
370条の文脈ならば、「者」でも「もの」でもよいと思います。他の法令上も用例があります。たぶん、370条は、80条等と平仄をあわせたんでしょうね。記憶が定かではありませんが。
一般には、「・・の者であって、・・・であるもの」という用法で、「もの」を使いますが、ある性質の「者」を、かっこで限定する場合も「もの」を使うことはできます。

Q3
自己株式の取得について、財源規制(461条)が及びますが、準備金積立ルール(445条4項)も及ぶのでしょうか?
Posted by ラハール石井 at 2006年04月04日 10:33
A3
自己株式を取得しても、準備金は計上されません。

Q4
会社法によると、取締役の報酬につき総会決議が必要な項目に「その他の職務執行の対価として当会社から受ける財産上の利益」とありますが、これにつき、例えば「会社までの行き帰りを主な用途とする車」や、「会社の製品」等は含まれるのでしょうか。後者については「製品のモニタ」という題目で譲渡すれば、361条の適用は受けないのでしょうか(こう考えると脱法のような気もします)。
Posted by 横浜高校 at 2006年04月04日 20:28
A4
361条が適用されるかどうかは、職務執行の対価かどうかによります。
「会社までの行き帰りを主な用途とする車」であろうと、「レジャー用の車」であろうと、職務執行の対価として取締役にあげるのならば、報酬等でしょう。
なお、会社が取締役に贈与することも、モニターとして商品の所有権を移転することも禁止されてはいませんが、利益相反取引になりますので、通常、取締役会決議が必要であり、かつ、取締役が損害賠償責任を負うことがありますから、報酬に含めた方が安全であるように思います。

Q5
取締役の選任決議の定足数は、一般的に定款に定足数を3分の1まで引き下げる定めを置いています。しかし、発表される定款モデルでは、取締役の解任決議について、定足数の引き下げる定めを置いていないようです。この場合、定足数は過半数になると思います。
一方、監査役の解任については、特別決議全般について、定足数を3分の1まで引き下げる定めが置かれることで、引き下げられています。
なんとなくバランスが悪いような気がしているのですが、私の定款モデルの解読の仕方が悪いのでしょうか。
Posted by shun at 2006年04月02日 13:15
A5
定款モデルを解説する立場にありませんが、取締役の解任決議は普通決議(2分の1×2分の1=4分の1)、監査役の解任は特別決議(3分の1×3分の2=9分の2)なので、まあまあ、バランスは取れているんでしょうね。

Q6
株主買取請求権の20日間の期間の短縮自体が可能か否かについてご教示ください。たとえば、総会決議に先立っての通知発送も可能となってはいるものの、株主全員(1人株主)が総会で賛成し、かつ、当該株主が会社の代取であった場合においては、20日の期間は必要ないように思えるのですが・・・よろしくお願いします。
Posted by ねこ at 2006年04月03日 02:03
A6
期間の短縮はできないでしょう。
おっしゃるように、手続に関する規定は、具体的な場面を考えると役に立たない場合もあるのですが、法律で、手続を省略できる場合を細かく規定することはメリットだけではなく、デメリットもあります。そのため、ある程度、割り切りで、法律上の例外を置くかどうかが決められているわけです。株式買取請求権の通知・公告については、特にその例外が設けられていないので、20日間を短縮することは困難だと思います。

Q7
発起設立や増資の際、株式払込金保管証明書が不要となり代わりに預金通帳の写しで足りることになります。
それにもかかわらず、登記の際には、募集株式の引受の申込が確認できる書類として、事実上は銀行等の発行する「株式申込取扱証明書」が必要であるように読めます。(改正後の、商業登記法第47条第2項第2号)
ということは、やはり増資の際には従来と同様に、銀行等への払込事務委託及び高い手数料の支払が必要ということなのでしょうか?
Posted by くらら at 2006年04月03日 23:08
A7
 商業登記法47条2項2号というところがよく分かりませんが、何か勘違いをされているのではないでしょうか。
 払込金保管証明書は、募集設立の場合だけであり、増資の登記をする場合には不要です。
発起設立や募集株式の引受人の募集の場合には、銀行との間で、払込保管事務取扱契約を締結することさえ、不要です。
 ちなみに、合同会社は、銀行への払込みすら不要です。

Q8
今年の6月総会に向けて、定款変更案を作成している最中ですが、当社は転換予約権付優先株式を発行しておりまして、現行定款は「転換できる期間、転換条件は発行の際の取締役会の決議で定める」と規定されていますので、当然ながら「取得請求できる期間、条件は発行の際の取締役会で定める」と考えていたところ、会社法108条3項で、「この場合はその内容の要綱を定款で定めなければならない」という規定があり、これだけでは108条3項の規定を満たしていないのではないかというアドバイスがありました。
ところが、この「要綱」の意味が釈然としません。
実際に取締役会の発行決議は済んでおり、そのまま転記する方法もありますが、非常に詳細な規定となるので定款の条文にそぐわない気もします。「要綱」とはどのようなイメージでしょうか?
Posted by MMC at 2006年04月04日 09:53
A8
「要綱」は、定款変更後において行われる細目の決定において、株主総会又は取締役会が、どの程度の範囲で裁量を有するかを判断できるようにするための参考となる事項について定めれば足ります。
ただ、質問の内容から推察すると、取締役会が施行前に発行決議をしているので、発行手続は旧商法によるので、会社法108条3項の「要綱」は関係ないようにも思えるのですが・・。何か勘違いがあったら、ご指摘ください。

2006年4月 4日 (火)

連結配当規制

現行法では、配当可能利益は「純資産−(資本金+準備金)です」などと簡単に説明できていたのに、会社法になったとたん、分配可能額の計算に、資本金や準備金を使わなくなってしまい、皆さんは面食らっているのではないでしょうか。

 おまけに、分配可能額を計算するのに、会社法と計算規則の両方を見比べて、ある要素が相殺されるかどうかを、いちいち考えないといけないので、本当に面倒くさい。

 分配可能額の計算方式について、GENDOさんから、いろいろなご提案をいただいたのですが、私達も、この規定が分かりやすいなどとは思っておらず、変えられるものなら変えたいところです。が、もっと易しい書き方をすることが、大人の事情でできなかったところなので、皆さんに、頑張って条文を読み解いていただくしかありません。

 さて、分配可能額がらみで、新規に採用された制度の一つに「連結配当規制」がありますので、今日は、それについてお話ししたいと思います。

 連結配当規制は、企業結合法制の一つであり、ざくっとした説明をすれば
「親会社が黒字でも、子会社と連結したら赤字になるようになる場合には、親会社は配当することができない。」
というものです。

 最近は、企業の価値を連結ベースで判断することが一般的になってきましたから、分配可能額についても連結ベースでその限界を考えようというのが連結配当規制の基本的な発想であり、親会社が、子会社を犠牲にして、自社に利益を付け替えさせ、株主に配当できるようにするという不正は、連結配当規制の適用によって回避することができます。

 なお、この逆、つまり「親会社は赤字だが、子会社と連結したら黒字になる場合には、親会社は配当できる」というルールは存在しませんので注意してください。
 そのような、親会社の株主に都合のいいルールを作ってしまうと、配当によって、親会社の債権者が害されまくってしまいます。ですから、連結配当規制適用会社になったからといって、分配可能額が増えることはありません。

<連結配当規制の計算作法>
 以上のように、連結配当規制は、親会社の分配可能額の計算において、マイナス要素を増やすという制度です。何をマイナスするかというと、単体の分配可能額(aの額)よりも連結ベースで分配可能額と同様の計算をしたときの額(bの額)の方が小さい場合に、その差額を剰余金等の額から控除することになっているのです(計算規則186条4号)。
 要するに、単体ベースの分配可能額と連結ベースの分配可能額の少ない方が、分配可能額になるということですね。

a 最終事業年度の末日における貸借対照表上の株主資本の額から、次に掲げる額を減じて得た額
 イ 有価証券及び土地の評価差額金がマイナスである場合の当該マイナス額
 ロ のれんの2分の1及び繰延資産の額の合計額(資本金・資本剰余金の合計額を限度とする)
b 最終事業年度の末日における連結貸借対照表上の株主資本の額から、次に掲げる額を減じて得た額
 イ 有価証券及び土地の評価差額金がマイナスである場合の当該絶対額
 ロ のれんの2分の1及び繰延資産の額の合計額(資本金・資本剰余金の合計額を限度とする)

<連結配当規制適用会社になる方法>
 以上のように連結配当規制は、重要な企業結合法制の一つなので、パブコメ版のときは、強制してはどうかと言って意見を募ったのですが、強制には反対する意見が多かったので、計算規則では、任意の選択制になりました。

 具体的に、どうやって連結配当規制適用会社になるかというと、業務執行者が、計算書類を作成する時に、注記表に、当該事業年度の末日が最終事業年度の末日となる時後に、連結配当規制適用会社となる旨を記載すれば(計算規則143条)、連結配当規制適用会社になります。簡単ですね。

 もっとも、連結配当規制適用会社になって、分配可能額が少なくなるのは、会社や株主にはあまり嬉しくないので、こんな制度を選択制にしたら、誰も連結配当規制適用会社にならないのではないかと不安に思われるかもしれません。

 しかし、連結配当規制適用会社には、会社法及び施行規則上、次のような制度が用意されているので、子会社の管理政策上、連結配当規制適用会社になるメリットはあるのではないかと思います。

(1)連結配当規制適用会社の子会社間における親会社株式の取得が自由になる(施行規則23条12号。子会社同士で親会社株式をキャッチボールしていればいいので、親会社株式の処分先に困らない。)

(2)連結配当規制適用会社が、簿価債務超過の子会社を消滅会社等とする組織再編をする場合においても、説明義務の規定(795条2項1号)の適用がなく、簡易組織再編をすることも可能となる(796条3項、施行規則195条3項から5項。子会社の整理統合を迅速かつ簡易にすることができる)。

2006年4月 1日 (土)

分配可能額の計算方法(基本編)

 昨日・今日と送別会続きで、頭がもうろうとしております。

 全盛期12人いた会社法グループも、ついに4人になってしまい、寂しさを隠しきれません。
 ただ、オシャレなお店で送別会をしたわりには、いつものように下ネタで大いに盛り上がってしまい、「今夜決めてやるぞ」と気合いをいれてやってきたデートをしているカップルに大変悪いことをしたのではないかと反省しています(どういうネタで盛り上がったかは、放送コード、もとい、法曹コードに引っかかりそうなので書き込めません)。

 会社法グループは、個性的で自由を尊ぶメンバー揃いで、外から見れば危険極りないように見えたと思いますが、それぞれが自分の役割と責任をわきまえていて、互いに信頼し合って仕事をすることができる最高のチームでした。
 狭い世界ですから、また一緒に仕事をすることがあるかもしれませんし、場合によっては、敵味方に分かれることもあるかもしれませんが、会社法の作成プロセスでボロボロになりながら築かれた信頼ですから、一生大切にしていきたいと思います。

さて、本題に入りましょう。 
 GENDOさんから、分配可能額について、次の質問をもらいました。
「会社法461条2項4号で「最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額」を減ずる旨が定められています。なぜこれを減ずる必要があるのですか?
 たとえば、最終事業年度末(決算期)の貸借対照表が次のとおりとします。
 資産10 自己株式 10(控除項目)
      資本金  10
      剰余金  10
 末日後に自己株式を10で処分したとします。その時点の貸借対照表は次のようになります。
 資産20 資本金 10
      剰余金 10
 配当可能額を算定します。
 剰余金の額−決算日以降に処分した自己株式の対価の額
 =10ー10=0
となります。
 貸借対照表からみれば、剰余金は10あるにもかかわらず、配当可能額は0になってしまいました。どこかで間違えているのだと思いますが、どこがおかしいのでしょうか?」

GENDOさんのおっしゃるとおり、どこがおかしいのですが、すぐに答えを言うのも、楽しくないので、今日は、基本的な分配可能額の計算方法を説明して、この問いに答えましょう。

会社法における分配可能額は、会社計算規則に委任されている部分が多いため、どんな風に計算するかを自分で考えていると頭がスパゲティーになります。
 このように複雑なのは、剰余金の配当を、期中に何度でも行うことができるようにしたこと等に対応するためであり、ある時点の分配可能額を計算するためには
 (1)これまでの商法のように最終事業年度の末日時点における貸借対照表をベースにした計算をした上で
 (2)その後、期中に剰余金の配当などをした場合における剰余金の変動要素の一部を足したり、引いたりする
という方法で計算します。今回は、話を単純化するために、連結配当規制を適用しない会社で、期中に組織再編等が行われていないことを前提に、(1)と(2)を説明します。

(1) 最終事業年度の末日時点における計算
 「剰余金」というと、お金みたいな言葉の響きがありますが、お金ではなく、資本金と同じように、計算上の数額に過ぎません。
 剰余金には、
 1. 株主の出資財産のうち資本金に組み入れられていない額(資本剰余金)
 2. 設立以来の利益や損失の累計額(利益剰余金)
の2種類があり、この剰余金のうちから、配当制限がかかる法定準備金を差し引いたもの、つまり
 a. その他資本剰余金 = 資本剰余金−資本準備金
   ・・資本金の減少をした場合等に増加
 b. その他利益剰余金 = 利益剰余金−利益準備金
   ・・利益が出た場合等に増加
が、分配可能なものとして、分配可能額のプラス要素になります。

 ただし、この剰余金の額は、資産価値がない資産等を前提に計算されていますから、決算期における分配可能額は、剰余金の額から、そのような空っぽの資産の金額等4つのマイナス要素を差し引いて計算しなければいけません。

 決算期における分配可能額
  = その他利益剰余金の額+その他資本剰余金の額 −(4つのマイナス要素)

 4つのマイナス要素というのは、次のaからdまでのものです。

a. 自己株式の帳簿価額(461条2項2号)
 ・・・自己株式は、資産価値がないので差し引きます。

b. 「.のれん」の2分の1+「繰延資産」から資本金・資本準備金の額を減じて得た額(ただし、その他資本剰余金の額を限度とする)
 ・・・「のれん」は、資産として計上されていますが、将来の損失の繰延べという面がありますから、割り引いて価値を評価しなければいけません。他方、「のれん」は、将来収益を得るための事実上の力であるというプラス面もありますから、「のれん」の額の2分の1だけは、差し引くことにしています。
 ・・・「繰延資産」は、資産として計上されていますが、将来の損失の繰延べに過ぎませんから、差し引きます。

c. その他有価証券・土地の評価損がある場合における当該差損額(計算規則186条2号・3号)
 ・・・資産に評価損があるから、差し引きます。

d. 純資産額中剰余金以外の額が300万円に満たない場合には、その不足額
 ・・・300万円未満で配当することができないようにするためにマイナスします。

(2)期中の変動
 (1)の分配可能額を前提にして、期中に剰余金の額の変動が起こったとき等に、分配可能額がマイナスになったり、プラスになったりすることがあります。

<マイナスになる場合>
 a..剰余金の配当をした場合における配当額(446条6号)
 ・・・剰余金の配当をすれば、その分だけ、剰余金が減りますから(446条6号)、分配可能額(461条2項1号)も減ります。

b.自己株式を取得した場合における対価額(461条2項3号)
 ・・・自己株式を取得した場合には、その対価が自己株式の簿価となり、自己株式が増えます。461条2項3号は、分配可能額の計算で、決算期ではなく、現時点における自己株式の簿価をマイナスするという規定なので、自己株式が増えた分だけ、分配可能額は減少します。

c. 剰余金を資本金・準備金に計上した場合の計上額(計算規則178条1号)
 ・・・剰余金を減らして、資本金・準備金という拘束額を増やす決定をしたのですから、その分だけ、分配可能額は減ります。

<プラス要素>
 資本金・準備金を減少して剰余金とした場合には、増加した剰余金の額(446条3号・4号)。
・・・ 資本金・準備金という拘束額を減らす決定をしたのですから、その分だけ、分配可能額は増えます。

<変動しない場合>
1 原則として、決算期から剰余金の配当時までの間の期中に、損失や利得があっても、分配可能額は変動しません。
 ただし、「臨時決算」をすれば、期中に損失が出ていれば分配可能額は減り、期中に利益が出ていれば、分配可能額は増えることになります。

2 自己株式の処分
 自己株式の処分をした場合の差益は、剰余金の額を変動させますが(446条2号)、分配可能額を計算するとき、461条2項3号と4号で、その差益を相殺しています(461条2項3号4号)。

 すなわち、期末後に自己株式の処分をした場合、461条2項1号の剰余金の額は、446条2号により計算され、期末の額から
 +自己株式の対価の額−自己株式の帳簿価額・・・(1)
変動します(446条2号)。

 また、期末後の自己株式の処分により、分配可能額のマイナス要素である461条2項3号と4号も変化していて、3号の自己株式の帳簿価額は、処分した分だけマイナスになりますから、マイナス要素は
 −(−処分した自己株式の帳簿価額)−(自己株式の対価の額)
=+自己株式の帳簿価額−自己株式の対価の額・・・(2)
の分だけ変動します。

そして、(1)の増加分と、(2)の減少分が同じ額なので、結局、自己株式の処分では、分配可能額は変動しないのです。

<説例の答え>
では、GENDOさんの説例を考えてみましょう。
 その例では、決算期の分配可能額は
 剰余金10−自己株式10=0
です。
 これに対し、自己株式の処分後の分配可能額は
 期末の分配可能額0+自己株式の処分差益0−(処分した自己株式の帳簿価額10−自己株式の対価の額10)=0
になります。
 GENDOさんは、「剰余金は10あるにもかかわらず、配当可能額は0になってしまいました。」と不思議がっていますが、期中で自己株式を処分しても、期末の分配可能額から変化はないので不思議ではありません。

 自己株式の処分により得た対価を期中に、分配可能額に反映させたければ、臨時決算をします。
 すると、461条2項2号ロにより自己株式の処分の対価をプラスするので
 期末の分配可能額0+自己株式の処分差益0+自己株式の処分の対価10−(処分した自己株式の帳簿価額10−自己株式の対価の額10)=10
となって、分配可能額が10になるのです。

 以上、基本的な分配可能額の計算方法をご紹介しましたが、ややこしくて、皆さん、読んでいて嫌になったかもしれませんね。
 でも、しょせん、足し算と引き算です。試しに、3年生の子供に
 「0+0+10−(10−10)は、なーんだ?」と聞いたら、すぐに「10!」と答えましたので、本当はそんなに難しくないんですよ。多分(笑)。

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