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2006年3月29日 (水)

107条と108条

 「いまさら何だ」と言われてしまうかもしれませんが、会社法の施行日を
     5月1日
とする政令が公布されました。
 私達は、昨年から、ずっと「5月1日に会社法が来るぞー」と言い続けていたものの、あまりにも政令が出るのが遅いので、最近では、解説会で「5月1日」という度、会場の人が疑惑の目で見ているような被害妄想に悩まされ、また、
「もし施行日が12月になったりしたら、総会の準備は全てパー、今年の各種試験も「やっぱり会社法ではなく、旧商法になりました」なんて発表されて、俺たちの命はないな」
と不安にもなりました(笑)。
 しかし、オオカミ少年の日々も、今日で終わり。
 会社法が一息ついたので、あとは、省令の改正と、質問対応と、千問・逐条・コンメンタール等の執筆活動と、講演3本と、株券電子化の政省令と、ハーグ間接保有証券準拠法条約と、ユニドロワと、規制改革と、電子債権の法制審・中間試案・条文案作成が残されるのみ・・・って、ぜんぜん「のみ」じゃないぞ > 俺。

気を失いかけたので、この話題はこれで終わり、本日のネタ「107条と108条の関係」についてお話しします。小ネタですが、株式関係の登記をしたりする場合や種類株式がらみの規定を理解するためには、頭に入れておかなければならない部分です。

さて、107条1項と108条1項は、「いわゆる普通株式」ではない株式を発行するために、どのような定めをを置くことができるかを規定したものです。

この2つの条文の役割分担を端点に言えば
 107条1項 1種類しか株式を出さない会社の規定
 108条1項 2種類以上の株式を出すことができる会社(種類株式発行会社)の規定
ということができます(ちなみに、「1種類」というのは説明のために使った言葉であり、会社法では、1種類のときは「種類はない」と考えています)。
 登記も、107条1項各号の定めと、108条1項各号の定めでは、書く欄が違います。

では、ここで問題です。
(1)基本
普通株式しかない会社が、定款を変更して、発行済株式に譲渡制限条項をつけました。
この譲渡制限条項は、何条の定めでしょうか。

答は、「107条1項1号に掲げる事項についての定め」ですね。

これは、正解して当たり前なので、威張らなくても結構です。

(2)種類株式の追加
この会社が、従来の譲渡制限株式(A種株式と呼びます)に加え、譲渡制限条項と取得請求権条項を有するB種株式を発行するため、定款を変更したとしましょう。

B種株式について変更された譲渡制限条項と取得請求権条項は、「108条1項4号」及び「5号」に掲げる事項についての定めに該当しますね。

では、このときのA種株式の「譲渡制限条項」は、107条1項1号でしょうか、108条1項4号でしょうか。

答は、「108条1項4号に掲げる事項の定め」です。

最初に、A種株式に、譲渡制限条項を置いたときは、「107条1項1号に掲げる事項についての定め」だったのに、B種株式を追加する定款の変更をすることにより、A種株式の譲渡制限条項が「108条1項4号に掲げる事項の定め」に変わってしまうのです。

ですから、B種株式を追加する変更登記をするときは、B種株式を追加するだけではなく、A種株式についての記載も変更しなければいけません。

(3)種類株式の廃止
さらに話を進め、A種株式を消却した上で、A種株式に関する定めを廃止したとしましょう。この場合、B種株式の譲渡制限条項及び取得請求権条項は、何条の定めになるのでしょうか。

答は、「107条1項1号及び2号に掲げる事項についての定め」ですね。

A種株式を廃止することにより、この会社には、B種株式しか存在しなくなるので、その定めの根拠規定が108条1項から107条1項に変化してしまうのです。
当然、A種株式を廃止して、変更登記をするときは、B種株式についての記載も変更しなければいけません。

このように譲渡制限条項は、「107条1項1号」になったり、「108条1項4号」になったりするので、会社法の条文は、譲渡制限条項について

a. 116条1項1号のように「その発行する全部の株式の内容として第百七条第一項第一号に掲げる事項についての定め」と規定されている場合は、「1種類の株式しかない会社の株式に譲渡制限条項がついている場合のその定め」という意味

b. 100条1項や116条1項2号のように「ある種類の株式の内容として第百八条第一項第四号・・に掲げる事項についての定め」と規定とされている場合は、種類株式発行会社のある種類の株式に譲渡制限条項がついている場合のその定め」という意味

c. 309条3項1号や336条4項4号のように「その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定め」と規定されている場合には、「1種類の株式しかない会社の株式に譲渡制限条項がついている場合のその定め(aの定め)、又は、種類株式発行会社の発行する全部の種類株式の内容として108条1項4号に掲げる事項についての定めがある場合におけるそれらの定め」という意味
ということで書き分けています(もっとも、309条3項1号は、種類株式発行会社の株主総会には適用されないので、同号は、cの定め方をしつつ、結果的には、aの定めを規定しているのと同じことになっていますが)。

これらのうち、cは、正直言って、読みにくいと思いますが、日本語の限界と大人の事情が絡み合って、こういう表現になっているのです。

336条4項4号の「その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更」は、一言で言えば、「非公開会社が公開会社となったとき」のことを規定しています。

 この規定が適用される公開会社化のうち、「107条1項1号に掲げる事項についての定めを廃止」したときは、比較的簡単に書けるのですが、A種、B種、C種の全てに譲渡制限条項が付されているときに、C種についてでけ、譲渡制限条項を廃止した場合を書くのは、なかなか難しい。

 単に「108条1項4号に掲げる事項についての定めを廃止したとき」と書いてしまうと、A種とB種は譲渡制限条項付、C種は譲渡制限なしという公開会社で、B種の譲渡制限条項を廃止したときまで含まれてしまい、必要以上に範囲が広くなります。

 それで、「種類株式発行会社の発行する全部の種類の株式の内容として108条1項4号に掲げる事項についての定めがある場合における、その定め」という意味も含まれるものとして、「その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定め」という表現が使われているのです。

 他にもいくつかの案があったのですが、一人で決めるわけにいかないのがこの世の常。
 結局、選ばれたのが、この表現だったということであり、「わかりにくい」「そうは読めない」というご批判に対しては素直に頭を下げますが、できちゃった以上、非公開会社になった場合をすべて含むと考えていただければ幸いです。

2006年3月28日 (火)

違法な現物配当

ここ2日ほど、現物配当の基本的なところをお話してきました。
今日は、応用編「違法な現物配当」についてお話しします。

現物配当も,、剰余金の配当の一種ですから、461条1項が適用され、配当財産の帳簿価額の総額は、効力発生日における分配可能額を超えることができません。

そして、分配可能額を超える現物配当が行われれば、462条により、株主と業務執行者が、会社に対し、連帯して、配当財産である現物の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負います。

現物の場合、取得した時期が異なれば、取得価額が異なるため、株主が、462条の責任を負う額が、受け取った現物の帳簿価額によって異なってしまうのではないかと疑問に思われる人がいるかもしれません。
 例えば、会社が、米を1月1日に1kg3000円で、2月1日に1kg2000円で取得すると、取得時の帳簿価額が異なりますから、1月1日に購入した米を配当として受け取った株主は3000円、2月1日に購入した米を配当として受け取った株主は2000円を支払う義務を負うように見えますが、実はそうではありません。

 現物配当を行う場合には、配当財産について効力発生日において現物を時価で評価替えをした上で、時価と簿価の差額はその日の属する事業年度において損益として計上し、評価替え後の簿価(すなわち、時価)により剰余金を減少させます。

したがって

1 評価替え前の帳簿価額をベースにすれば分配可能額を超えなくても、配当財産の時価ベースで分配可能額を超える場合には、461条違反となる。

2 違法配当の場合、株主及び業務執行者は、配当時の「時価相当額」の金銭を支払う義務を負う(すべての配当財産が時価評価されるので、株主ごとに「帳簿価額」が異なるということはない)。

ということになります。

さて、突然ですが、違法配当の効果は「有効」です(笑)。

そろそろ話すのも飽きてきたのですが、違法な現物配当の場合にも、有効説の方が合理的な説明が可能だということを言いたいのです。

すなわち、仮に、違法配当が無効だとすると、本来、会社は、株主に対して、
  配当した「現物」について不当利得返還請求ができるはず
ですが、462条1項が株主に配当財産の帳簿価額相当額の
  「金銭」の支払い義務を負わせている
のですから、会社は「現物」の返還請求をすることはできません。

この点について無効説に立てば、462条を不当利得返還請求権の特則であると考えることになるでしょうが、金銭返還請求権の範囲についての特則であるというのならともかく、株主が、現物を保有している場合であっても、金銭の支払いを強制する特則というのは、他にあまり見たことがありません。

百歩譲って、462条が不当利得返還請求権の特則であるとしても、違法配当が無効であるとすれば、現物の所有権は会社に帰属しているはずですから、会社は、
  現物について所有権に基づく返還請求権を行使することができるはず
ですが、この結論は、462条1項と整合的ではありません。

したがって、結局は、配当財産である現物の所有権は、一旦配当された以上、株主に帰属すると考えざるを得ず、そのような所有権の移転の効果を認めつつ、「違法配当は無効である」というのは困難ではないでしょうか。

もちろん、民法の世界では、公序良俗違反で無効な契約でも、不法原因給付で返還義務を負わない場合には、給付を受けた者に所有権が移転するということもあるので、法律行為が無効だから所有権は絶対に移転しないとは言いませんが、公序良俗違反の場合には、未履行債務の履行を強制しないという意味があるのに対し、違法配当の場合には、無効とすることによって導かれる法的効果がないので、わざわざ無効と解する意味がないように思います。

 以上に対し、有効説に立てば、株主に配当財産の所有権が移転するのは当然であり、株主が462条で「金銭」の支払い義務しか負わないということとも整合的です。
 そして、この場合、462条は、不当利得返還請求権の特則ではなく、債権者保護のために、会社法が認めた特別の法定責任であるということになるでしょう。
 
 違法配当が、有効か、無効かというのは、説明の仕方の問題なので、無効説を採ることも可能であるとは思いますが、462条の責任との整合性や463条の文理などを考えると、「やっぱり、有効だよなあ」と思う次第です。

2006年3月27日 (月)

現物配当(2)

今日は、現物配当の2回目です。

百姓一揆さんから、次のような質問を受けました。
「会社法においては、会社がお米やお米券を株主に配るには、必ず現物配当の規定によるべきということになるでしょうか。
現在は株主優待でお米券を配っている会社も多くありますが、会社法施行後はできなくなるでしょうか。」

ナイスです。この質問を誘発するために、1回目の最初に株主優待の話をしたと言っても過言ではありません。

現物配当というのは、会社の有する金銭以外の財産を配当するものであり、株主優待制度と似ているところがありますが、完全に同じというわけでもありません。

例えば、昨日、紹介した
http://money.www.infoseek.co.jp/MnStock/yranking_yh.html
にアクセスしていただくと、一番多い株主優待は、「割引券」ですね。
 この割引券は、将来の会社が受け取るべき対価の値引きを要求する権利を株主に与えるものであり、会社の資産を株主に交付するものではありません。
 したがって、このタイプの株主優待は、現物配当にはあたりません。

 問題なのは、設問にある「お米」です。これは、会社の資産を株主に配るものですから、現物配当に非常に近い。
 「現物配当として配ったのではなく、株主優待として交付したのだ」という理屈が考えられますが、特定の株主に無償で財産をあげると、利益供与の推定が働いてしまいます(120条2項)から、「1000株に米1kg、一株主5kgまで」などという株式数に応じない割合で米を配ってしまうのはリスクが高すぎます(かといって、株式数に応じて米を配るのならば、やっていることは、現物配当と同じになります)。

 正直ベースで言えば、現物を交付するタイプの株主優待は、現行商法でも会社法でも、その位置づけはかなり微妙であり、特に分配可能額がないような場面で、このような株主優待を行えば、違法配当責任を問われても仕方がないような気がします。

 もっとも、お米を配るのを、金銭分配請求権を与えない現物配当であると構成し直すと、現行法と異なり
 1 株主総会の特別決議が必要となる
 2 株式数に応じて交付しなければならない。
という規律が適用されることになりますから、「敷居が高い」と感じる会社もあるでしょう。

 また、2については、例えば、「5株ごとに、米5kg」というような定めをすることも考えられますが、この場合には、「基準株式数」(454条4項2号)として5株を定め、5株未満の株式については、米の代わりに金銭を支払わなければいけません(456条)から、この点も現在の株主優待とは大きく異なります。

 以上のように現物を配るタイプの株主優待は、現行法でも、会社法でも、いくつかの難点がありますので、このタイプの株主優待をしている会社は、今も、会社法施行後も、一工夫する必要があるでしょう。

<株主ごとに異なる現物配当>
さて、昨日の説例に戻りましょう。

例えば、葉玉君・松本君は「米」200万円分、東洋田さんは「麦」200万円分という現物配当をすることはできるでしょうか。

このように株主ごとに財産の種類が異なる配当をすることは、株主の有する株式の数に応じて配当財産を割り当てなければならないという454条3項に違反するので、原則として、できません。

もし、同様のことをやりたければ、株主に金銭分配請求権を与え、東洋田さんにその権利を行使させた上、東洋田さんとの間で200万円の麦の売買契約を締結するのが素直でしょう。

もっとも、株式会社農天気が非公開会社で、定款で株主ごとに異なる取扱いをする定めを設ければ(109条2項)、東洋田さんだけ、異なる取扱いをすることができます(109条3項・453条2項)

<特定物の現物配当>
それでは、土地1300万円を現物配当することができるでしょうか。

特定物は、株主の有する株式の数に応じて配当財産を割り当てることが極めて困難なので、現物配当には向いていません。

もっとも、株主が1人の場合や、基準株式数の設定値が高くて、現物配当を受けることができる株主が一人の場合には、特定物でも現物配当は可能です。

では、株主が複数いる場合に、特定物を現物配当できる方法はないのでしょうか。

どうしても、私にその方法を考えろと言われれば、特定物の「共有持分」の配当ということは可能ではないかと思います。

共有持分ならば、株主の有する株式の数に応じて配当をすることができますし、共有になった後は、株主で協議して、共有物の分割等を行えばいいわけです。

この方法の応用として、3つの特定物A、B、Cがある場合に、一旦、A、B、Cの各共有持分を現物配当した上で、株主の協議により、持分を交換し、葉玉はA、松本君はB、東洋田さんはCというように分けることも考えられるでしょう。

現物配当(1)

 3月末に近づくと、株式市場では配当利回りの高い株が人気を集めることがあります。

 昔は、売買手数料が高かったし、配当利回りは低いし、配当狙いというのはうまみがなかったのですが、最近は、売買手数料が下がり、株価の値下がりによって配当利回りが高くなったことから、配当狙いの動きが多いような気がします。

 基準日の株主が、1年分(中間配当のある会社は半年分)の配当をもらえるのですから、3月に株式を買うと1か月足らずで1年分又は半年分の配当がもらえて、一見、おいしそうなんですが、基準日の3日前になると名義書換が間に合わなくなって、配当落ちと呼ばれる株価の下落があったりするから、なかなか難しい(それで、現物を買うとともに、先物を売るという一見合理性のなさそうな売買に合理性が生まれたりするわけです。)

 おまけに、最近は、株主優待が充実している会社も多いため、株主優待の内容も投資行動に影響を与えたりしています。
http://money.www.infoseek.co.jp/MnStock/yranking_yh.html
 上のサイトを見てもわかるとおり、株主優待を加えると、とんでもない実質配当利回りになる会社もあるので、個人投資家は優待ねらいの人も多いですし、一見、優待券貰っても仕方なさそうな法人株主も、金券ショップに売って裏金にするという用途に・・・・いや、きっと利益として計上しているはずです、きっと。

 このように3月下旬は配当の香り漂う季節なので、本日は、現物配当についてお話ししたいと思います。

 現行商法は、株主に対して、金銭しか配当できませんが、会社法は、金銭以外の財産(その会社の株式以外の財産)を配当することができるようになりました。
 454条1項1号を見ると、剰余金の配当をしようというときには「配当財産の種類」を決めろということになっていて、ここで、「金銭以外の財産」、たとえば、他の会社の株式・社債とか、米とかを配当することに決めれば、それが「現物配当」になります。

 例えば、農業を営む葉玉君と松本君と、法律事務所勤務の東洋田さんが、各1000万円出資して、農業関係の商品の売買を行う「株式会社農天気」(資本金3000万円・代表取締役は松本君、取締役は葉玉君&東洋田さん)を設立したとしましょう。

 そして、農天気は順調に実績を伸ばし、期末には、資産4900万円、負債1000万円、分配可能額が900万円生じたとします。

 普通は、この資産の中には、現金や銀行預金がありそうなものですが、松本君は、脳天気な人だったので、現金があるとすぐに農産物等を買ってしまい、取締役会を開いて配当議案を決めようとしたときの資産の中身は、「米1200万円、麦1200万円、新品のビニールハウス3棟1200万円、土地1300万円」で、現金が全くありませんでした。

 さて、このとき、取締役会で、分配可能額900万円のうち、金銭配当として600万円を拠出するということを決め、株主総会で承認されると、農天気は、米や麦などを売って現金を作るか、銀行や農協からお金を借りてきて、金銭配当をしなければいけません。

 でも、米や麦を一気に換金しようとすると買いたたかれるかもしれませんし、銀行等からお金を借りれば利息を取られます。

 それで、松本君、葉玉君、東洋田さんは、米を、1人200万円分ずつ配ることにしました。これが、現物配当であり、株主みんなが納得すれば、米を配って一件落着です。

<金銭分配請求権>
 ところが、東洋田さんは、ダイエットのためにご飯をいつもの半分しか食べないようにしている最中だったので、「米を200万円分も貰っても困るなあ」と思いました。
 
 そのような場合において、「現金が欲しい株主が現金を貰えるようにする」のが、「金銭分配請求権」です(454条3項1号)。

 すなわち、株式会社農天気は、剰余金の配当の決定をするときに、株主に対し金銭分配請求権を与えることを定めれば、株主である東洋田さんが金銭分配請求権を行使することにより、米ではなく、現金200万円を農天気から配当として受け取るができます。

 このように金銭分配請求権を株主に与えるときは、株主にとっては、金銭配当と同じ利益を確保できるので、金銭配当のときと同じように、剰余金の配当の決定を株主総会の「普通決議」ですることができますし(309条1項)、取締役会の決議により剰余金の配当をすることができる会社(459条1項)ならば、取締役会で現物配当を決定することもできます。

 では、金銭分配請求権を与えない場合には、どんな問題が起こるのでしょうか。

 この場合、東洋田さんは、農天気から、米200万円分を無理矢理配られてしまうことになりますから、米の置き場にも困るでしょうし、他に売ろうとしても売れないかもしれません。かといって、それを食べてしまうとダイエットが失敗してしまうという最悪の結果にもなりかねません。

 そこで、会社法は、株主に金銭分配請求権を与えない場合には、株主総会の特別決議でなければ、現物配当を決めることができないこととし、株主の保護を図っているのです(309条2項10号。取締役会の決議による現物配当もできません(459条1項4号))。

 もっとも、説例の場合、松本君と葉玉君で、3分の2の議決権を抑えているので、特別決議で、金銭分配請求権を与えない現物配当を決定することもできますが、二人とも、東洋田さんのダイエットを邪魔するような恐ろしいことをする勇気はありませんので、おそらく金銭分配請求権を与えることになるでしょう・・・(明日に続く)。

2006年3月26日 (日)

今日も質問コーナーです。

 この2,3日、自宅のADSLの調子が悪くて、おまけに、PHSの電波も弱く、インターネット接続環境が著しく不安定になってます。私の記事は長いから、こんなときに困るんですよねえ。
 今の世の中、電話線をいろんな用途に使っています。うちでは、電話、ADSLのほか、スカパー!とデジタルTVも電話につながっていますし、セキュリティーも電話線を使っているため、トラブルが生じたときに、誰が悪いのか、因果関係を立証することが著しく困難です。
 どこのサービスセンターに電話しても、親切に対応してくれるのですが、他人のせいかもしれないということで、なかなか埒があきません。
 本当は、今日は、現物配当を説明したかったのですが、それは明日に回し、とりあえず質問だけ答えておきます。

Q1
小会社の監査役が会計監査権限のみとすると、その会社に仮に社外取締役・社外監査役がいるとした場合、責任限定契約締結の為の定款規定は可能でしょうか。ご指導願います。
Posted by 総会は at 2006年03月25日 03:40
A1
責任限定契約は、会計監査限定監査役の会社でも締結することはできます。株主総会による一部免除も同様です。
会計監査限定監査役の会社でできないのは、取締役会の決議による一部免除です。

Q2
「その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更」をすれば,取締役・監査役の任期が満了する条文(会332Ⅳ③,同336Ⅳ④)について,A種・B種のいずれの株式にも株式譲渡制限の定めをしていた会社が,A種について株式譲渡制限の定めを廃止した場合には,上記の規定は適用されるのでしょうか。発行する株式の内容の登記と発行する各種類の株式の内容の登記を区別する商登規則69条との関係で,上記の条文の表現が気になります。
Posted by 猫太郎 at 2006年03月25日 13:54
A2
 332条4項3号・336条4項4号は、A種・B種の二種類の譲渡制限株式を発行している会社が、A種だけ譲渡制限を廃止する場合も含みます。
 107条1項1号の定めを廃止する場合だけでしたら、118条1項1号のように「その発行する全部の株式の内容として第百七条第一項第一号に掲げる事項についての定めを」廃止すると規定すべきでしょうが、「その発行する全部の株式の内容として108条1項4号に掲げる事項についての定めがある場合において、その定めを廃止する場合」も含む趣旨で、「その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更」と規定してます。
 同様の表現は、73条2項・309条3項1号にあります(もっとも、これらの場合は、種類株式発行会社を除いていますが)。

Q3
旧法では,資本に欠損がある場合,欠損額に相当する準備金の組入はできないとの商事法務の実例があり,その理由付けは主に資本の充実を害するというものと記憶しています。会社法では,資本原則の考え方が大幅に変化しているため,上記旧法の取扱いが維持されるのでしょうか。単に純資産の部の計数変更に過ぎないため,維持されないようにも思えるのですが,如何でしょうか。
Posted by 猫太郎 at 2006年03月25日 13:56
A3
純資産額が資本金の額を下回る場合に、準備金の資本金への組入れを禁止する規定はありませんので、可能だと思います。ただ、もしかしたら調整マターかもしれないので、月曜日に確認してみます。

Q4
株主総会(又は取締役会)の承認のない利益相反取引の効力について、
会社法100問の146頁では、相対的無効説の記載があります。
会社は、自己のために直接取引をした取締役に対しては常に無効を主張できますが、本問(問27)のような、第三者のために直接取引をした場合の取引の相手方(P社)との関係では、「常に無効を主張できるわけではなく、会社が相手方の悪意又は重過失を立証した場合に限り無効を主張できる」と考えるのが一般的なのでしょうか?
Posted by bouzu at 2006年03月25日 16:52
A4
「一般的」の判断基準が問題となりますが(笑)、以前、このブログの利益相反取引あたりのコメントで、かなり説明したと思いますので、そこを見てください。
直接の取引の相手方が取締役なのだから、わざわざ相対的無効などと言わなくても、無効と言えばよいというのが一つの考え方でしょうが、私は、「第三者」が介在している以上、第三者の善悪を問題にした上で、第三者が悪意だからこそ保護されないという論理を採る方が好みです(例えば、取締役がP社の代理人として取引をしたが、P社の代表取締役は善意の場合等)。

Q5
会社法440条では、有価証券報告書提出会社は決算公告義務が免じられていますが、現在電磁的方法による決算公示を採用している会社は、取締役会決議を経ていることと思います。この決算公告を会社法規定に従いやめる場合(この場合特に取締役会決議が必要との規定にはなっていないと思いますが)、商法下で取締役会決議によって採用している以上、厳密には会社法下でも取締役会決議による廃止手続きが必要になるのでしょうか?
また、その場合商業登記に登記している決算公示用アドレスも決算公示廃止と同時に変更登記が必要となのでしょうか?(そのままにしておいてもいいような気がするのですが・・・)
Posted by 空海 at 2006年03月25日 17:10
A5
 論理的には、その取締役会決議は、電磁的公示を行うことにより、公告を行わないようにするためのものですから、公告自体が法律上の義務ではなくなった以上、わざわざ取締役会決議で、以前の決議を取り消す必要はないように思います。
 ただ、電磁的公示が廃止された以上、変更登記を行う義務が生ずると考えるべきではないでしょうか。
 その際の添付資料として、役会議事録が必要かどうかは、ちょっと調整してみないと分かりません。

Q6
1 「株式会社の募集設立」で銀行等が発行した株式払込金保管証明が必要である以外は、設立や増資・出資とも残高証明で足りるとのことで簡便になると思います。
が、設立されていない会社では口座開設できず、誰の口座の残高証明であればよいのでしょうか?
2 有限会社は設立・増資とも登記が要件で、銀行等が発行した出資払込金保管証明が登記時の必要書類となっていました。
会社法施行後の特例有限会社が株式会社化せずに増資する場合、引き続き出資払込金保管証明が必要でしょうか?それとも残高証明で足りるのでしょうか?
Posted by くらら at 2006年03月25日 17:40
A6
1 通常は、発起人代表の名義です。
2 登記関係は、調整マターなので、月曜日に聞いてきましょう。

2006年3月25日 (土)

経過措置が分からない人へ

 会社法の施行日が近づくにつれて、経過措置の質問が沢山寄せられています。
 そこで、経過措置で問題になりそうな点をまとめた本が必要であろうということで、郡谷さん達が、経過措置の解釈の本を出すことになりました。

  「会社法施行前後の法律問題」(商事法務)
   郡谷大輔 編著
   松本 真・豊田祐子・石井裕介 著
   4月15日ころ発売
   定価2310円(本体2200円)

 問い合わせの多い論点については、ほとんど触れていますし、経過措置の本は、多分、これ以外には出ないと思いますので、総会の準備をされている方や施行前後の関係について質問を受ける法律家の方には、必携の本です。
 かなり細かい話まで、詳しく載っているので、これ一冊でかなりの疑問は解消すると思うのですが、もし、その本にも書いてない経過措置の疑問があったら、このブログに質問してください。

 千問の方も、日々、検討しながら、改善しているところです。
 このブログで聞かれた質問についても、かなり取り込んでいますので、会社で「どこにそんな解釈が書いてあるんだ!」と聞かれたときに、「葉玉ブログです」という肩身の狭い思いをしなくてもすむようになるはずです(笑)。
 このブログの答えは、私のその場の思いつきで答えていることが多く、また、時期的にまだ省令が未定のころや、現在パブコメ中の省令改正案の前の答えだったりすることから、施行時の回答としては誤りとなっているものもありますが、千問は、省令改正を踏まえつつ、みんなで相互チェックしながら答えを考えているので、回答の信頼性は相当あがると思います。
 今後も、ブログと本の、それぞれの長所短所を踏まえながら、会社法についての情報を発信していきたいと思います。


<質問コーナー>
Q1
取締役が破産手続開始決定を受けると委任の終了によって退任しますが、員数が足りていないと権利義務取締役となるのでしょうか。
Posted by パラリーギャル at 2006年03月23日 09:18
A1
なりません。どうも、すいません。講演のときに思わず、口が滑って言ってしまい、校正のときもうっかり見過ごしてしまいました。会社法でまなぼの第二回で訂正させていただいています。

Q2
株主提案権(303・305)についても、会社法では、旧商法232ノ2「書面ヲ以テ」という文言が見当たりません。ということは、提案権行使の方法にも制限がなくなったという理解で宜しいでしょうか。大会社かつ公開会社の今6月総会を想定した場合、新法が適用されるとすれば、口答その他の提案権の行使に対して、どのように対処すべきなのでしょうか。
Posted by sudo at 2006年03月23日 11:02
A2
提案権行使の方法も法律上の制限はかかっていません。
6月総会を想定すると・・・提案権行使の期限までに施行されないような・・。

Q3
資本減少につき、447条2項は「『資本減少額』は『減少効力発生日の資本金の額』を超えてはならない」旨規定しています。ここでどうしてもクリアできない疑問が生じます。
会社法の下では100%減資も可能とのことですが、減資減少効力発生日の午前0時には、既に資本金の額は減少後の額になっているはずで、これを前提に上記定めを考えると、MAXで50%までしか減資できないような気がして仕方ありません。
この疑問は準備金減少(448条2項)、剰余金の減少(450条2項・451条2項)においても同様に感じています。
この疑問はどうクリアすればよろしいのでしょうか。助けてください。
Posted by 悩める実務担当 at 2006年03月23日 13:43
A3
 MAX50%の根拠が今ひとつ分かりませんが、2項の効力発生日における資本金の額について誤解があると思います。効力発生日における資本金の額は、効力発生日の午前0時における資本金の額であり、2項は、資本金の額がマイナスになってはならないという規律を定めているものです。

Q4
1 仮に、補欠の監査役の選任の効力を4年とし、336条3項の定款規定もあるとします。
そして、選任の効力が3年残っているところで就任の段となり、前任の監査役の残任期間は2年でした・・・という場合、就任した監査役の任期は何年と判断すればすれば良いのでしょうか?
2 さらに、その判断した任期と反対の任期にすることは何らかの手当てをすれば可能になるのでしょうか?
3 その前提条件で、定時株主総会で任期途中で辞任する監査役がいる場合、この後任の監査役に329条2項の補欠の監査役を就任させることはできるのでしょうか?
4 さらに、チョッと疑心暗鬼になったのですが、329条2項の出だしの表現(手元に条文がなく申し訳ありません)だと、補欠の役員選任決議ははその株主総会で(正規の)役員選任議案がないとできないと読んでしまうのは、誤りですよね。
Posted by dunk at 2006年03月23日 22:49
A4
1 最初の事例では、2年です。短くするのは可能です。
2 2番目の質問は、「反対の任期」という意味が分からないのですが、ようするに残り3年にしたいということでしょうか?336条3項の定款があるので、定款を廃止するしかないのではないでしょうか。
3 もちろん、できます。
4 もちろん、補欠として選任されれば、再度の役員選任決議は不要です。

Q5
 会社法246条3項には、
 「払込期日までに払込金額の全額の払込みをしないときは、予約権を行使することができない。」と規定されています。
 文理に素直に「解釈」するならば、払込期日に遅れた場合、その後お金を支払っても、予約権を行使することはできない、と読むべきでしょう。
葉玉さんの解釈では、「払込期日までに」との文言が無意味なものになります。
 そして、行使することができない以上、その時点で新株予約権は消滅します(会287)。
 そもそも、246条3項が適用される結果新株予約権が消滅するのですから、(条文のレトリックの巧拙の問題は残るものの)、その限りにおいて適用場面はあります。
また、行使期間の始期よりも払込期日が後の場合には、払込前には行使することができないという点で246条3項の適用を受けます。
 したがって、少なくとも出来上がった条文の解釈問題としては、別段の定めをしない限り、①払込期日の徒過をもって行使不能となり予約権消滅、②他方、払込義務は存続、とすべきではないかと、思います。
Posted by ty at 2006年03月24日 17:42
A5
確かに、それが条文に素直な解釈かもしれませんね。
社債の取扱いとの平仄をどうするか等いくつかの問題が複合するところなので、議論しているうちに、頭が混乱した部分があったかもしれません。
月曜日にでも再度議論をして、もう一回整理してみましょう。
ご指摘どうもありがとうございました。

2006年3月23日 (木)

募集新株予約権の払込期日の途過

募集新株予約権の募集手続において、新株予約権者が払込みをしなかった場合の処理について、書き込みをしたら、思いのほか、盛り上がってしまいました。
今日は、この件について、とりあえず内部で議論してきたので、その結果をお話しします。

この問題を整理するためには、3つポイントがあります。
1 募集手続きにおいて、申込者は、いつ新株予約権者になるのか。
2 払込期日は、どのような意味を持つのか。
3 払込期日が行使期間の開始以後であることがあるか。

1 募集手続きにおいて、申込者は、いつ新株予約権者になるのか。
 これは、245条により明文で規定されていて、新株予約権の申込者は、会社が新株予約権を割り当てた日、新株予約権者になります。
 つまり、払込みをしなくても、新株予約権者となる。これは、株式については、払込をしない限り、株主になれないのと大きな違いです。
 新株予約権が発行されている以上、その後は、新株予約権が行使できなくなるか、自己新株予約権の消却が行われない限り、その新株予約権は消滅しません。


2 払込期日は、どのような意味を持つのか。
 払込期日(238条1項5号)は、新株予約権者が払込みをしなければならない日のことですが、払込みをしないまま、その日を過ぎてしまったら、新株予約権者の払込義務はどうなってしまうのでしょうか?
 新株発行の場合には、出資の権利により株主となる権利を失う(208条5項)ので、払込義務もなくなると考えられます。

 しかし、新株予約権の発行の場合には、208条5項のような規定がありません。

 そこで、解釈ということになるのですが、民法の一般原則によれば、契約で期日を定めて債務未履行のまま期日を経過しても、契約が当然に消滅することはなく、履行遅滞に陥るだけです。また、会社法の「払込期日」が「その日しか払込みができない日であり、その日を経過すれば、払込みができなくなる」という意味だとすると、前述の208条5項の規定を置いた意味がなくなります。
 そこで、新株予約権者の払込義務は、払込期日を経過したとしても、消滅しないものと解すべきです。

 では、その場合に、新株予約権者の新株予約権はどうなるのでしょうか。

 246条3項は、払込期日までに払込金額の全額の払い込みをしない場合には、新株予約権を行使することができないと規定しています。
 とすると、払込義務が存続しているとしても、新株予約権が行使できなくなった以上、新株予約権は消滅するものと解さざるを得ません(287条)。

 オプションを行使する機会が全く与えられないまま、払込義務が存続するというのは、新株予約権者にとっては、きついのですが、約束の日までに払込みをしなかった新株予約権者が悪いので仕方がないということでしょう。

 もっとも、その結論が新株予約権者にとって酷であるということであれば、引受契約の中で、払込期日を経過した場合には、払込義務が消滅すると定めることも可能でしょう。

3 払込期日が行使期間の開始日よりも後であることがあるか。
 払込期日について定めがなければ、新株予約権者は、行使期間の初日の前日までに、払込みをしなければいけませんが、払込期日を定めている場合には、その日までに払込をしなければならないということとされています(246条1項)。
 通常は、払込期日が、行使期間の初日の前日よりも前に定められることが多いでしょう。
 しかし、払込期日が、行使期間の初日以後であることが禁止されているわけではありません。
 その場合でも、新株予約権者が、全額払込みをするまでは、新株予約権を行使することができない(246条3項)ので、新株予約権者は、行使期間内に、払込価額の払込をし、かつ、行使価額の払い込みをして、新株予約権の行使を行うことになります。

ただし、払込期日が経過すれば、行使期間が終了していない場合でも、新株予約権を行使することができなくなるため、新株予約権は、消滅することになります(287条)。

そして、払込期日が経過しても、払込義務は消滅しないのが原則である点は、先ほど述べたとおりです。

では、この場合、引受契約で「払込期日を経過すると、払込義務が消滅する」という定めをするのは合理的でしょうか。

 その定めを前提にすると、新株予約権者は、株式が欲しいときには、払込金額と行使金額の合計額を払い込んで新株予約権を行使することができますし、逆に株式が欲しくないときは、払込金額すら払い込まず、放置すると、払込期日の経過により、払込義務がなくなってしまいます。
 つまり、新株予約権者は、オプション料(払込価額)を払い込まずに、オプションを持つのと同じ結果になってしまいます。
 したがって、そのような定めは、明文で禁止こそされていませんが、あまり合理性が認められず、置くのは適当ではないように思います。

この問題については、私は、当初、「払込義務が存続するのに、行使の機会もないまま新株予約権者が新株予約権を消滅するのは酷である」という視点から、新株予約権は消滅しないという回答をしていました。ただ、tyさんのご指摘を受けて、再考し、上記のような結論を採る方がよいと思い、書き直してみました。

現在は、それなりに座りのよい回答のように思っていますが、千問の発売までにもう少し考えたいと思います。

2006年3月21日 (火)

会社法とCOSO

「もやもや」さんから、次のような質問をいただきました

「会社法施行規則100条の「損失の危険の管理に関する規程その他の体制」とは、たとえばCOSOの三つの目的との関連では、どのような位置づけになるのでしょうか?
企業会計審議会による追加目的「資産の保全」の他に、「リスク管理」も目的として位置づけておられるのでしょうか?」

 COSOというのは、トレッドウェイ委員会組織委員会(The Committee of Sponsoring Organizations of Treadway Commission)というアメリカの委員会の略称です。
 アメリカで、1970年代から80年代にかけて粉飾決算やら経営破綻が相次いで、社会問題化したことから、米国公認会計士協会が中心となって、1985年にトレッドウェイさんという人を委員長とする委員会を立ち上げ、1987年にトレッドウェイ委員会報告書なるものを公表して、上場企業、外部監査人、米国証券取引委員会およびそのほかの行政・立法機関、教育機関に向けてさまざまな勧告を行いました。
 その後、トレッドウェイ委員会自体は活動を終えたのですが、企業の内部統制については宿題が残されたので、そのトレッドウェイ委員会が組織した委員会(COSO)がその宿題を解決することになり、1992年に内部統制のフレームワークを公表したのです。
 このCOSOフレームワークでは、それまで、「財務報告の適正性」を目的としていた内部統制概念を、(1)業務の有効性・効率性、(2)財務諸表の信頼性、(3) 関連法規の遵守という目的を達成するためのものとして再構成し、「統制環境」「リスクの評価」「統制活動」「情報と伝達」「監視活動」という5つの要素で、内部統制を評価しましょうと提案したわけです。

 このCOSOフレームワークは、読むのに骨が折れるしろものなので、不謹慎な私は
「経営者が、これを読んで理解している暇があったら、実際に現場を回って問題点を探した方がいいのではないか?」
と思ってしまいがちになります(笑)。

 ただ、米国公認会計士協会が、COSOフレームワークに基づく監査基準を公表したり、2002年に制定されたサーベンス・オクスリー法(SOX法)が求める内部統制に関して、具体的な実施に際してはCOSOフレームワークに基づいて行うようSECが定めたため、コーポレートガバナンス・ブームにのって、世界的にも、これを模倣するような動きが沢山でました。

 日本でも、
(1)経済産業省のリスク管理・内部統制に関する研究会が「リスクマネジメントと一体となって機能する内部統制の指針」を発表し、「日本版COSO」だと言われたり、

(2)金融庁の企業会計審議会内部統制部会が、2005年12月に「財務報告に係わる内部統制の評価及び監査の基準のあり方について」を公表し、これまた「これこそが日本版COSOだ。日本版SOX法だ」と言われたり(今のところ法律じゃありませんから、日本版SOX法という呼び方はどうかと思いますが)

しています。

 法務省も、当然、それらの動きをフォローしていますし、それらの報告書や指針は、それぞれが、それぞれで言いたいことを言いつつ、良いこともたくさん言っているので、興味のある方は参照していただきたいと思います。
 ただし、いざ
「それらと、会社法施行規則の関係はどうなっているか」
と問われれば
 「すいません。何の関係もありません」
と断言せざるをえません。

 例えて言えば、「委員会設置会社は、アメリカ型の会社だっていうけど、デラウェア州法と会社法は、どのような関係に立つんだい?」と言われているようなものです。

 会社法施行規則100条が一定限度COSOの影響を受けていることを否定するものではありませんが、それぞれの対象や目的が違いますから、似ているからといって、安易にそれを比較して、何らかの関係づけをしようとするのは、かえって概念を混乱させることになるような気がします。どうしても話せと言われれば、講演会で1日かけていろいろ説明してもいいですけど、どれだけ身のある話になるのか・・・。

 また、企業会計審議会がやろうとしている内部統制は、公認会計士に会社法における「会計監査人」の仕事ではないことをさせるという話ですから、会社法における内部統制システムとの関係を述べよと言われても困るのです。しかも、そちらの方の最終目的は、「財務報告に係る」内部統制であって、会社法の内部統制よりも、範囲は狭いですし。
 千問には、会計監査人が内部統制に関与したにもかかわらず、経営が破綻した場合の責任はどうなるのか等これに関連する問題も織り込む予定ですが、何せ会社法の枠外の話なので、いろいろ法的には難しいこともあります。

 ということで、結論としては、
「会社は、会社法やCOSOについて、それぞれの関係を考えるよりも、それぞれが要求しているものが別だと思って、それぞれの趣旨を理解して、対応しましょう。
 ただし、みんな似たようなことを要求しているので、内部統制システムをそれぞれに併せて作ってみたら、結果的に同じだったということはあるでしょう」
という感じでしょうか。

 COSOフレームワークは、なんとなく科学的な手法のように見えますが、私は、昔から言い古されてきたことをまとめた、いわば「アメリカのおばあちゃんの知恵袋」みたいなものだと思っています。日本の会社の中には、すでに沢山の内部統制システムが存在するはずですし、日本のおばあちゃんには、日本の風土にあった知恵があるのですから、細部を意識し過ぎると、かえって本質を見失います。

 また、内部統制の効果は、数式で計算できるようなものではないので、それぞれの要求するところの微妙な差異を制度に反映させようと思っても、ほぼ実現は不可能です。
 内部統制システムの構築は、センター試験や択一試験ではなく、論文式の試験問題みたいなものなので、多かれ少なかれ「我が道は、我が道で決める。」という部分はあります。

 だから、解答例を丸写しするのではなく、それぞれの企業の身の丈と実情にあった内部統制システムを作ることが重要であり、COSOフレームワークは、会社法の内部統制システムを作るときの参考資料程度のものだと思っていただいた方がいいと思います。

<その他の質問>
Q1
ある会社の完全子会社間で承継会社の株式を分割会社に割り当てない吸収分割も認められ、分割後も分割会社に請求可能な債権者は詐害行為取消権を行使することができるとのことですが、会社法における人的分割(物的分割+剰余金の配当)の場合には、債務者が分割会社から承継会社に代わってしまう分割会社の債権者のみならず,分割後も分割会社に請求可能な債権者も異議を述べることができるとあります(789条1項2号)。質問の吸収分割の場合も、剰余金の配当がないものの、分割会社に分割した事業の対価がない(残らない)という点では人的分割と同じであることから、分割後も分割会社に請求可能な債権者は、詐害行為取消権を行使することができるだけではなく,債権者保護手続に基づき異議を述べることもできるのでしょうか。
Posted by S.M. at 2006年03月20日 00:15
A1
分割会社の債権者で、分割後も分割会社に請求できるものは、人的分割の場合を除き、債権者保護手続に基づく異議を申し述べることはできません。これは、789条1項2号に規定されているとおりです。これは、現行商法と同じ規律です。物的分割の場合には、承継会社に承継された財産に相当する財産が入ってくるのが通常だからです(物的分割が無対価であったとしても、それは、承継された財産に財産的価値が認められなかった(場合によっては、債務超過の事業だった)からであるのというのが通常です)。
 このような類型においては、債権者保護手続きではなく、詐害行為取消しで債権者保護を行うべきだと思います。

Q2
A株式会社は、平成17年3月期に負債が200億円未満となり、商法特例法の大会社でなくなりましたが、同法20条1項により、平成18年3月期に関する定時総会の終結時までは大会社特例規定がなお適用されることになっておりました。会社法の下でも、A社は、同法2条6号ロおよび2条24号により、大会社でないことになりますが、同法の下では、商法特例法20条1項のような経過措置規定が存在しません。そうしますと、A社は、会社法の施行および商法特例法の廃止により、平成18年3月期に関する定時総会の終結を待たずに、直ちに、大会社に関する規定(例えば、会社法362条5項の内部統制システム構築義務等)が適用されなくなると解してよろしいのでしょうか。
Posted by ガバナンス at 2006年03月20日 16:35
A2
経過措置政令8条1項により、監査役会及び会計監査人を置く旨の定めがあるものとみなされ、最初の定時株主総会の終結時に、その定めが効力を失います(8条2項)。つまり、商法特例法20条1項と同じと思っていただいて結構です。

Q3
当社は現在、全部株式を譲渡制限とする普通株式のみを発行しており、会社法施行後も現在のままです。現行の定款には、譲渡制限の規定は当然ありますが、株式の種類については、定款および定款から授権されている株式取扱規則にも一切規定がありません。会社法施行後も108条1項各号の種類株式を発行しないため、現行規定のままでよいものと考えておりましたが、こちらの記事とトラックバックを拝読したよれば、107条1項に基づき全部株式に譲渡制限を付しているので、株式の種類に関する何らかの規定を定款に置く必要があるのではないかと感じておりますが、どのようにお考えでしょうか?その場合の規定について何か案はありますでしょうか?よろしくお願いします。
Posted by 会社法でまだ遊べない者 at 2006年03月20日 15:30
A3
多分、記事を読み間違われているのではないでしょうか?
107条1項1号の定めがあるとみなされるだけで、種類株式を発行するつもりがないのならば、108条1項各号の定めは要らないように思いますが?

Q4
役員の社外性についてご回答いただきましたが、(3)それ以外の取締役であって実際に職務の執行をしたものにあたらないならば、社外性が認められます。
とありますがどの程度のものでしょうか?
特に子会社での担当部門はなく、取締役会に出席する程度で、各役員の議題の発表に対してプレゼンする程度ですが。
A4
 事実認定の問題なので、お答えするのが難しいですが、取締役会に出席するだけでは、業務執行にはなりません。

Q5
執行役の任期について、ご教示ください。
会社法402条7項では、「執行役の任期は、選任後一年以内・・・(略)」と規定されています。
例えば、4/1から翌年3/31を事業年度とする会社で、2月の取締役会で4/1付けで就任する執行役の選任を決議した場合、任期は最長でも数ヶ月(同年6月下旬の総会終了後に開催する取締役会終結時まで)となってしまうのでしょうか?
また、定款を「執行役の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度の末日までとする。」旨規定すれば、上記の例では、就任前に任期が到来するという事態になるのでしょうか?
商法特例法21条の13第3項では、「・・・就任後一年以内・・・」となっていたので、このような悩みはなかったのですが、4/1以降に執行役の選任を決議する以外、解決策はないのでしょうか?
Posted by 会社法であそびたい at 2006年03月19日 15:21
A5
2月に執行役を選任すれば、その年の6月の総会後の役会までです。法制度としては、取締役会の執行役に対する監督機能を維持するため、取締役会の構成員が総会で変わり、その後の役会で執行役を選任するのが望ましいと考えていますからね。執行役の任期を事業年度の始期と終期に併せるというのも理解できますが、どうしても、そうしたいということならば、4月から6月の間に執行役を選任し直おすしかないのではないでしょうか。
 定款を「執行役の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度の末日までとする。」旨規定するのならば、翌期の4月1日を就任日とすることは無理です。

Q6
新株予約権者が募集新株予約権の払込金額の全額の払込をしない場合、当該募集新株予約権を行使することができないとありますが(会社法246条3項)、
この場合、払込未了部分の払込義務は残るとの理解でよろしいでしょうか。
Posted by RANSHIN at 2006年03月20日 09:07
A6
新株予約権も、社債も、割当てにより発生し、払込期日は、単に払込義務の履行遅滞の起算点に過ぎません。
したがって、払込未了部分の払込義務は残ります。

Q7
例えば施行規則124条7号の報酬等開示についてですが、6月総会で退任したとしても、直前の4〜6月分の報酬等は、(次年度の事業報告で開示すべき事業年度中ですので)次年度の株主総会における事業報告に記載する必要はあるのでしょうか?
現行の実務では3ヵ月分は翌年の事業報告にに記載していると思いますが、施行規則119条2号かっこ書きが設けられたので、もう記載する必要はなくなったのでしょうか?
Posted by ビール好き法務担当者 at 2006年03月20日 09:40
A7
前年の6月総会で退任している場合には、119条2号かっこ書により、124条7号の開示は必要ありません。

2006年3月18日 (土)

時差ぼけしつつも答えます

イタリアから帰って、疲れと時差ぼけのまま、ブログを更新していたので、一昨日のブログの回答にはいくつか間違いがありました。一応、修正しましたので、一昨日にダウンロードされた方は、もう一度、見ておいてください。

まだ、時差ぼけが直っていませんし、昨日は送別会でたらふく酒を飲んだので、頭がボーッとしてますが、質問をあまりためこむのもよくないので、がんばって答えます。本日の信頼度は、40%程度です(笑)。

Q1
会社法施行規則第129条1項5号の括弧書き、「監査の範囲に属さないものを除く」の意味を教えてください。譲渡制限会社の監査範囲の制限の関係でしょうか。
A1
「取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制」については、職務執行の妥当性に関するものなので、それを排除するためのものです。
 非公開会社については、事業報告を監査する権限がないことを明らかにした監査報告を作成し(施行規則129条2項)、1項は適用ありません。

Q2
会社計算規則第152条の特定取締役、特定監査役の定めるには、取締役会、監査役会の決議が必要なのでしょうか。もう少し緩やかな定め方も可能なのでしょうか。
by 他に頼れない監査役スタッフさん
A2
特定取締役・特定監査役の定め方については、特に制限がないので、必ずしも取締役会・監査役会で定める必要はありません。

Q3 
当社非上場会社には上場会社の親会社から役員がいますが、その方は当社の非上場子会社の役員も過去に就任しておりました。実態は上場会社の社長であるため、当社と当社の子会社では社外役員的な立場で取締役会に出席するぐらいでした。(ただし、現在、過去では両社において社外役員として、登記も事業報告書上での開示もしておりません)このような場合、今回の会社法上では、この方は当社の社外取締役と認識できるのでしょうか。
Posted by 今年の総会は心配 at 2006年03月17日 00:47
A3
親会社の業務執行取締役かどうかは関係ありません。
子会社の業務執行取締役、つまり、(1)代表取締役、(2)代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの、(3)それ以外の取締役であって実際に職務の執行をしたものにあたらないならば、社外性が認められます。
社外取締役の登記は、関係ありません。

Q4
会社法438条にある、提出と提供の違いを教えていただきたいのですが。
Posted by かのっぺ at 2006年03月17日 07:58
A4
「提出」は、書面・書類を提出する場合の概念、「提供」は電磁的方法でその情報を提供する場合の概念です。

Q5
計算規則91条によって決算期を変更した場合、事業年度が1年半まで延長できることとなりました。
一方、会社法459に基づき剰余金の分配等を取締役会に委任する条件の1つに、「取締役の任期の末日が選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日」前(1年以内)というものがあります。
会社法459条の適用を受けるため定款で上記定めを置いた会社が決算期を変更した場合、取締役選任後「1年以内に終了する事業年度」が存在しない場合もありえます。
このような場合、取締役の任期はどうなるのでしょうか????
ご多忙中恐縮ですが、助けてください。当社は現に取締役任期が1年であり、決算期変更の可能性も大なのです...
Posted by どうすればいいの at 2006年03月17日 11:31
A5
「選任後1年以内」とは、選任から1年が到来をした日以前という意味であり、必ずしも「選任後」とは限らず、選任前の事業年度の末日の場合もありえます(選任後1年でワンパックです)。
 したがって、設問の場合は、選任をした定時株主総会の終結時点が任期の終了となってしまうので、おかしな結果になります。
 そのため、任期の方を長くして、459条が適用されないということにするか、決算期変更後、最初の事業年度を1年よりも伸張することなく、1年以内で事業年度を終了させるということになるのではないかと思います。

Q6
施行規則119条2号のカッコ書の読み方が分からないでいます。「直前の定時株主総会の終結の日の翌日以降に在任していたものを含む」ということは、逆にいうと、「直前の定時株主総会の終結の日」以前に退任した役員については、事業報告による開示の対象とならない(つまり、平成18年度の初めに在任していたとしても、平成18年6月の定時総会終結時までに退任すれば、平成19年6月の定時総会に提出する事業報告における開示の対象とならない)ということになるのでしょうか。
A6
 時差ぼけでボーッとしていて、回答がころころ変わってすいません。平成19年の事業報告における、直接の定時株主総会は、平成18年6月の定時株主総会ですから、それまでに退職していれば、開示の対象となりません。

Q7
補欠の役員(監査役)に関する件ですが、3月5日頃のQ&Aで、329条の補欠監査役が実際に就任したときは、336条3項の定款規定は使えないというようなやりとりがあったと思いますが、336条3項の「補欠」と329条2項の「補欠」は違うものと理解して良いのでしょうか?前者は総会で監査役を退任した場合の補欠で、後者は総会以外で退任した場合という考え方はちょっと無理がありますか?
Posted by dunk at 2006年03月18日 00:46
確か現行商法上でも「補欠監査役」には二つの意味があって商法273条3項の「補欠」と現在する監査役以外の監査役を予選する意味での「補欠」とがあったように思います。
前者の「補欠」は監査役が複数いる場合でその内一人が任期前に退任した場合に後任の監査役の任期が前任者の任期の残存期間となる(長くてすんません)補欠だったと思います。
で、後者の意味の監査役については登記実務上認められたにすぎず、明文にはなかったので、会社法では329条で認めたんではないか?と。なお、商法上のこの予選の方の「補欠」については法務省によれば監査役のみならず取締役にも妥当するとかで、会社法では役員全員について認めているんだと思われます。
 したがいまして、前者の「補欠」は役員が複数いる場合に退任役員の代わりに新たに選任された役員の意味で(現行の273条3項)、後者の「補欠」は現在する役員とは別にあらかじめ追加的に選任しておく役員の意味(現在明文なし)ということじゃないかと。
なんだかわかりにくくなりましたが、これであってますよね?
A7
 329条の補欠は予選の意味ですが、336条3項の定款規定が全く使えないというわけではなく、任期を短縮することができるという点では使えると思います。
 したがって、336条3項は、329条の補欠と、監査役が任期途中で辞任した場合に株主総会を開催して監査役を新たに選任した場合の両方を含むものと考えます。

Q8 338頁②イの項末尾に、「議事録に代えて、当該場合(総株主の同意により株主総会の決議があったものとみなされる場合)に該当することを証する書面を添付しなければならない。」とあります。確かに、商業登記法第46条第1項はそのような内容の規定ですが、会社法施行規則第72条第4項により、総株主の同意のケースでも株主総会議事録の作成が必要とされているので、「議事録に代えて」というのは不可解です。会社法第319条第1項の範疇外の「総株主の同意」が想定され得るのでしょうか。
Posted by 内藤卓 at 2006年03月16日 17:05
A8
 当該記述は、商業登記法の文言をそのままひいてきたものです。
 登記の取扱いは、現時点では、確たることはいえません。個人的には、総会決議の省略時に作成する「議事録」も、「該当することを証する書面」に含まれてよいのではないかと思いますが、そのうち取扱いが決まるでしょう。「議事録に代えて」という文言は、株主総会の決議が行われた場合の議事録に代えてという意味と解すればよいと思います。

2006年3月17日 (金)

千問の延期と質問を少々

本日、神田先生とご一緒にミラノ経由で戻ってきました。 夕方5時ころに成田に到着し、とりあえず法務省に行き、メールやらいろいろ片付けて帰ってきたので、くたびれ気味ですが、どうせ、今日は時差ぼけで、深夜まで眠れないでしょうから、ブログを書き始めてみました。 帰国後、決まった話を一つ。 皆様にアナウンスしてきた商事法務から出す予定の通称「千問」の出版予定を4月下旬にすることとしました。 皆様の総会準備のために、3月中に出したいという気持ちが強かったのですが、現在パブコメ中の施行規則と計算規則を織り込みたい、また、登記の基本通達との矛盾もないようにしたいなどなど、いろいろ考えて、4月下旬に遅らせることにいたしました。3月の出版を期待していた方は申し訳ありません。 それから、3月15日を過ぎても、私に転勤を命ずる命令が来ていないことを考えると、4月以降も、もうしばらく民事局の局付検事として働くことになったようです。  2ちゃんねるに「会社法100問なんて書く奴は法務省から追い出されるに違いない」ということが書いてあったので、私も「そうかあ。これを書いて検察庁に戻れるなら、これから民事局に来た検事は、我も我もと、何とか法100問を書くだろうなあ」と思っていたのですが、幸か不幸か、2ちゃんねるの予想は外れてしまいました(笑)。  4月で民事局6年目に突入するという異例の取り計らいをしていただいた方に感謝しております。  今日は、質問がたまっているので、質問をやっつけます。 Q1 弊社取締役が子会社(上場会社)社外監査役を兼務しています。 この社外監査役は平成18年6月定時総会で退任することを予定していました。 頭の整理をしたいのですが、この子会社で平成19年に作成する事業報告書には、会社法施行規則第124条第7号に従い平成18年度中に(親会社としての)当社から受領した取締役の報酬額を開示することになるのでしょうか。 Posted by 法務部員A at 2006年03月16日 11:11 A1 平成18年3月から6月までの間の報酬については、事業報告で開示する必要はありません。 (最初に「平成18年の事業報告書」と勘違いしたときの回答) 子会社に新法を適用する場合ですね。 会社法施行規則附則6条3号で、施行後最初に開催する株主総会では、124条は適用がありませんので、何も開示する必要はありません。 Q2 3月末を決算期とする資本金1000万の株式会社があり、今年の4月中に資本金5億以上に増資予定となっております。今年5月に会社法が施行された場合、どの時点で大会社適用がなされるのでしょうか? Posted by ばば at 2006年03月15日 16:42 A2  前にも紹介したかもしれせんが、商事法務の松本解説によれば、特例法21条1項の適用を受けている会社は、施行時に大会社であったとしても、整備法52条の適用はないと考えています。  (初出から訂正)設問の例は、決算期後に5億円に増資した場合ですから、現行特例法ではすでに大会社になりますが、会社法の施行により大会社ではなくなり、平成19年の定時株主総会まで大会社にはなりません。  したがって、そのような場合には、今年(平成18年)の定時株主総会では、特に何もする必要もなく、定款の定めがあるものとみなされることもなく、来年(平成19年)の定時株主総会において、監査役会及び会計監査人を置く旨の定めを置く定款の変更と、それらの選任を行う義務が生ずると解します。 Q3 金銭交付での株式交換が新法で認められましたが、この対価が著しく不当であった場合、どのように争えばいいのでしょう? 交換無効の訴え、決議取消の訴え、買取請求などあると思いますが、実際に私が少数株主であったとしたら、費用負担の小さい買取請求権の行使を選ぶのだと思います。 ただ、そうすると、買取請求権で、裁判所の決定を仰いだ結果、総会決議に基づく対価の金額より高い価格が認められることがありうると思います。 そうすると、総会決議による交換価額も、買取請求額も共に金銭であるために、結果として総会決議と対立する価格決定がなされてしまうことになると思います。 このような結果を招くとしても、総会決議に対して何も訴えることなく、買取請求権を行使していいのでしょうか? また、実際に買取請求が認められ、価格が上方修正されるとすると、買取請求をしなかった株主(決議に従い金銭と交換された株主)からしたら、不公正な対価で交換されたとして、損害賠償請求なども起こせるような気さえしてしまうのですが、いかがでしょうか? 実際に私が株式を所有する会社において、金銭を対価とする株式交換が行われようとしていまして(新会社法ではなく、産業活力再生特別措置法によるものですが)、対応を考えているところです。 Posted by めんちかつ at 2006年03月15日 21:18 A3  対価が著しく不均等である合併については、合併無効事由にならないという判例がありますから、株式交換でも、同様に無効事由にはならないと思います。  特別利害関係人である株主が株式移転の承認決議で賛成している場合には、決議取消の訴えの余地はあるかもしれませんね。  普通は、株式買取請求権の行使で対応しますが、会社は、株式交換の移転の対価と同じ価格にするでしょうから、裁判所に価格決定の申立(非訟事件)をすることになりますね。  裁判所の決定した価格が、総会で承認された対価よりも高くなることはあるでしょうが、株式買取請求権というのは、そういう制度なので、特に問題はないと思います。  株式買取請求権を行使しなかった株主は、株式移転の対価で満足しているわけですから、買取請求をした人よりも少額でも仕方がないということになっています。ですから、損害賠償請求は無理でしょう。価格が不満なら、株式買取請求及び価格決定の申立というのが一番ノーマルな対応です。 Q4 現在公開会社である小会社の監査役が会社法の施行と同時に退任しないようにするために、株式の譲渡制限に関する規定を設定しようと思います。この場合、会社法施行までに定款変更の決議をしておけば、株券提供公告の期間満了日が会社法施行後であっても、監査役は退任しないのでしょうか? それとも、会社法施行までに株券提供公告期間が満了し、登記を行う必要があるのでしょうか? Posted by がすこいん at 2006年03月15日 23:22 A4 現行商法450条2項で、株券提供公告期間の満了時に効力が生ずるとされているので、施行時までにその期間が満了しておく必要があります。登記は、関係ありません。 Q5 葉玉先生。取締役の報酬等に関する開示に関して,1件ご質問があります。 取締役が取締役の報酬等に関する議案を提出する場合には,株主総会参考書類に,会社法361条1項各号に掲げる事項の「算定の基準」を記載しなければならないとされています(会社法施行規則82条1項1号)。 ①「具体的な金額」=「算定の基準」と考えられるため,確 定金額を定める場合には,具体的な金額を記載すればよい でしょうか。 ②具体的な金額でよいとすると,報酬を支給総額(枠)で定 める場合には,株主総会参考書類には取締役の員数と支給 総額(枠)を記載すればよいでしょうか。 ③②において,取締役の員数に変動が生じた場合には,決議 を取り直す必要があるでしょうか。 Posted by FK at 2006年03月15日 00:51 A5 千問にも書く予定なのですが、「算定の基準」とは、報酬案に記載された具体的な金額を決定する上で用いた基準のことをいい、具体的な金額そのものではありません。  報酬等の算定が適正かどうかを判断するのに必要な情報を記載するものであり、その基準は、基本となる額、役職、勤続年数等を要素として数式化した基準でも、数式化されない主観的な基準でもいいのですが、どのような判断過程をたどって議案に記載された報酬が算定されたかを理解できるものでなければなりません。  報酬の総額で決議した場合に、期中に取締役の員数に変動が生じたときにどうするかは、株主総会の決議の趣旨次第です。通常は、その総額を上限にする趣旨で、員数が減少すれば、報酬も減少すると考えるのでしょう。 Q6  新株を発行した時の資本への組み入れについて質問させてください。 会社法では445条2項が商法284条2項に対応する条文かと思います。 しかし例えば商法下においては、 1株の発行価額5円の株式を10株発行したとすると、 発行価額の2分の1を超えざる額、つまり、1株につき2円を資本に組み入れなくてもよくなり、3円を組み入れなければならないので、3円×10株=30円を資本に組み入れなければならないことになります。 もっとも、会社法445条2項および会社計算規則37条等をみるかぎりでは、この場合においても、1株の発行価額を基準に2分の1を決定するのではなく、払込み又は給付に係る「全体」の額、つまり、前例でいえば、5円×10株=50円の2分の1を超えない額、25円を資本金として計上しなくてよくなり、残り25円を資本に組み入れなければならないように思えます。 Posted by shibata at 2006年03月15日 15:04 A6  新株発行費用は別として、私も、50円の2分の1の25円だと思います。明日、同僚に確認して、違ってたら訂正します。

2006年3月15日 (水)

ブログ炎上について

 本日、UNIDROITの会議が無事終了しました。神田先生の八面六臂のご活躍のおかげで、日本のプレスティージが大いに高まりました(私は黒子役として来たのですが、十分にお役に立てたかどうか・・・)。
 明日の夕方、ローマを出発し、16日に到着する予定ですので、次のブログは、16日の夜(気合いが残っている場合)又は17日の夜に書き込みます。

 2〜3質問をいただいているものの、現在、英語生活からの開放感に浸っていて、会社法のことを考える意思も能力もないので、申し訳ありませんが、今日は、会社法とは関係のない話をさせていただきます。
 このブログをプリントアウトして、ボスに届けなければならない事務の方も「今日は会社法のことはこれっぽっちも書いてありませんでした」と報告すれば十分です。

 実は、先日、友人から「経済産業省の部長のブログが炎上し、閉鎖に追い込まれるという記事を見たが、お前のところは大丈夫か」という趣旨のメールをもらいました。
http://www.asahi.com/national/update/0308/TKY200603080273.html

 私は、パソコン通信から数えれば約20年間「電子的匿名情報社会」の住人をやっているので、その記事を読んでも、「珍しいことじゃないけどね」という感想しかもたないのですが、せっかく、お役所仕事を脱却して、国民と直接会話しようと意欲に燃えていた部長さんが、ネット特有の攻撃を受けて、ブログを閉じたのは少しだけ寂しい気がします。

 私が、このブログを立ち上げたのも、「会社法の施行に伴い、どう対応していいか分からない人が沢山いるだろうから、新鮮な情報を提供したり、質問に答えたりして、会社法への移行をスムーズにしたい」という個人的な思いによるものです。

 私達は、役所の中に眠っている有用な情報を、一部の人だけにではなく、沢山の人に知らせるために、雑誌に書くとか、講演するとかしているわけですが、今回の会社法のように根本が変わってしまうと、量的にもスピード的にも、従来の方法では限界があります。
 例えば、このブログを、そのまま出版すれば、江頭先生の教科書より厚くなってしまうでしょうし(無駄話を省けば、神田先生の教科書より薄くなりますが(笑))、講演でブログと同じことを喋れと言われると、「新会社法連続300時間講演・決死の解説会」ということになるでしょう。

 いずれにせよ、専門的な情報の発信については、国家の予算はつかず、担当者が職務時間外に、自主的に行わなければならないというのが、基本的なルールになっているため、自分の手で、雑誌社や出版社を説得して、情報を提供をしなければならないというのは、なかなか面倒でつらいところです。
 会社法100問を国家予算で作って、法務局で無料配布するということであれば、私達も仕事でやれるので楽なんですけど、財務省も法務省もそんなに甘くありません。

 もちろん、予算でやるのも善し悪しで、法務省のホームページで「会社法であそぼ」を開設しようとすると、決裁の途中で、すっかり牙を抜かれて、古びてしまい、単なる「民事局からのお知らせ」になってしまうかもしれません。

 こうした矛盾をはらみながらも、役人が、任意に、ブログという形で、不完全・非公式ながらホットな情報を流すのは、いろんな意味で有意義だと思いますし、私以外にそういう「物好き」な方がいるというのは、率直に言って、嬉しいのです。

 こうした物好きが頑張っているのに、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いということで、ブログを炎上させるのは「もったいないなあ」と感じます。もっと穏当に会話すれば、PSE法の改善にもっていけたかもしれないのに、反対者は、自らその機会を潰してしまう結果になってしまいました。国家を批判すれば国家が態度を変えるかもしれませんが、善意の物好きを批判すれば、善意が吹っ飛ぶだけです。

 役所も役所で、世間体を気にして部長さんを注意したりするもんだから、「本当にお役所的だなあ。暖かく見守ってあげるだけの度量が欲しいよ」とも思います。

 このブログも過激なことを書いているので、ミケランジェロのファンや資本教の信者等から、いつ攻撃されても不思議はありませんが(笑)、幸い約5か月間にわたって皆さんに暖かく迎えていただいているようです。

 もしかしたら、私が検事なので、「このブログを炎上させたら、名誉毀損・業務妨害で逮捕されるかもしれない」という恐怖感が私を守ってくれているのかも知れませんが、そんなことはないので、攻撃しようと考えている人は、ご安心下さい。

 ただ、私は、LEC時代・検察官時代を通じて、今にいたるまで、普通の人が絶対に経験できないほど様々な誹謗中傷を受けつつも、ヘラヘラとして生きてきたので、「セイセイセイ。かかってきなさい、フォー」という感じでしょうか(少々、古びた表現になってしまいました)。

 また、私は、勤務時間中に書き込みをしないようにしていますが、仮に、経産省の部長さんのように、官房からそれを注意されたとしても、「すいませんねえ。ご迷惑かけて。」と棒読みして、振り向いた瞬間にベロを出すことでしょう。

 なぜ、そのように強気でいられるかと言えば、「このブログを必要としている人がいる」という自信があるからです。

 私は、物書きが仕事ではないので、「他人が書けるようなものなら、その人にお任せする方がよい」と思っています。
 しかし、ある時、ある場所で、ある内容については、自分しか伝えられないことがあるのです。
 時が経てば陳腐化し、場所(聞く人)が変われば不必要で、内容(伝え方)によっては誰の興味も引かないけれど、今、この場所で、この内容の話をすれば、その話を聞いた人の役に立つというものがある。
 検事でも、弁護士でも、裁判官でも、法律家というのは、どんなに世間の非難を浴びようとも、たった一人でも救うべき人がいれば、その人を守るのが仕事です。
 私は、物を書く上でも、その気持ちが強く、今ここで自分の言葉を必要とする人が、一人でもいるのならば、それを伝えるのが自分の役目だろうと信じているのです。

 このブログは「初心者から、プロまで、みんなが楽しめて、役に立つもの」という無謀かつ野心的なコンセプトでやっています。
 基本的なことから説き起こしながら、その中に、プロでも知らない情報をコッソリ隠し味で入れるという手法が、成功しているかどうかは別として、他のどこにもない情報を、他のどこにもない表現で書くように心がけています。
 ですから、本屋で100冊以上並んでいる会社法の本を見ても、商事法務の解説を見ても書いていないことが、ここには沢山書かれているはずです。

 これは、物理的な制約がなく、誰の許可もいらず、自己責任で、読者と会話しながら、何でも書けるというブログでしか実現できないことであり、今のところ、1日に1万のコメント攻撃が来ようとも、偉い人から「辞めないとクビにするぞ」と言われても、このブログを中断するつもりはありません。

 誹謗中傷コメントに快感を感じるM的素質に恵まれ、かつ、クビにされる方が、仕事が楽になり、給料が上がるという特殊な環境にいる私にしかできない対応かも知れませんが、私は、そのような外的要因によって、他人が必要としているこのブログを中断することはありません。

 私が、このブログを閉じるのは
(1)世間がこのブログを必要としなくなったとき
(2)このブログが誰かを傷つけることになるとき
でしょうね。

 それから、あと一つ、妻が「ブログなんか書いている暇があったら、もっと家事を手伝いなさい」と言ったときは、即中断です(笑)。
 検事は簡単に辞めることができますが、夫を辞めるのは極めて困難ですので、残りの人生の平穏を得るために、その時は、あえなく読者の皆様を裏切ることになることをご容赦ください。外的要因の唯一の例外です。

 ある日、突然、このブログが中断されたら、「葉玉は、今頃、家で皿洗いをしているんだな。」と思っていただいて結構です。
 
 以上、私の友人のように、ご心配をいただいている方がいるかもしれないと思い、長々とつまらない話をしましたが、次回からは、また会社法の話に戻りますので、今後ともご愛顧のほどをよろしくお願いいたします。

2006年3月14日 (火)

持分会社の持分の払戻し

今日は、「持分の払戻し」について、お話しします。

2回に渡って、利益配当と出資の払戻しについて説明しましたが、持分会社には、それらと似て非なるものとして、「退社に伴う持分の払戻し」(611条)というものがあります。

持分会社の純資産(資産−負債)は、資本金・資本剰余金・利益剰余金で構成されていて、基本的には
 (1)資本金・資本剰余金は、出資をしたら増えて、出資の払戻しで減る
 (2)利益剰余金は、会社の損益によって増減し、利益配当で減る
という仕組みになっています。

 とすると、一見、出資の払戻しと利益配当という2つの制度があれば十分のような気がします。
 しかし、社員が退社するときに、会社とその社員との関係を清算するという目的を達成するためには
 「出資の払戻しや利益配当は、『簿価ベース』で社員に対する金銭等の支払いの限界を設定している」
という点に不便があるのです。

 例えば、葉玉が金銭100万円を出資し、貧乏なイタリア人画家のラファエロさんが店舗のインテリアとして絵画100万円相当を現物出資して、
「合同会社 誰でも美人」
という似顔絵屋さんを始めたとしましょう。

 最初は、葉玉の100万円で事務用品や絵筆を買い、細々と商売を始めたのですが、ラファエロは、
どんな女性であっても「すごく似ているのに10倍美しく描く」
いう天才的な画力を持っていたため、シロガネーゼとかアシヤレーヌとかマダム達の間で大ブームが起こり、「合同会社 誰でも美人」は、1年間で3800万円の利益を稼ぎました。

 ところが、葉玉は強欲で、この1年間ラファエロに支払うことを約束していた給与の1000万円を全く払っておらず、しかも、ラファエロに無断で、ダビンチ君という画家を雇い、ラファエロ目当てで来た注文をダビンチ君に描かせたりしたので、ラファエロは激怒し、「俺は、この会社を退社する。」と言って、未払給与と、退社に伴う持分の払戻しを請求しました。

 仮に、1年目の決算における資産・負債・純資産の状況は、次のようなものだったとすると、ラファエロが未払給与1000万円をもらえるのは当然ですが、その他に、持分の払戻しとして、いくら請求することができるでしょうか。
 資産 合計5000万円
  現金 4900万円
  絵画 100万円
 負債 合計1000万円
  未払給与 1000万円
 純資産 合計4000万円
  資本金 200万円 (葉玉100万円、ラファエロ100万円)
  資本剰余金 0円
  利益剰余金 3800万円(葉玉1900万円、ラファエロ1900万円)

この場合、ラファエロの資本金と利益剰余金は合計2000万円ですが、資産にあがっている簿価100万円の「絵画」の価値が、ラファエロの名声により、時価「1100万円」に値上がりしているとすれば、どうでしょう。

簿価ベースでは、資産合計5000万円、純資産合計4000万円ですが、時価ベースでは、資産合計6000万円、純資産合計5000万円になります。

したがって、ラファエロとしては、「この会社の実質的な純資産の半分は、俺のものだ。だから、最低2500万円は貰いたい」と言うでしょう。

また、「合同会社 誰でも美人」は、ラファエロのおかげで名声が高まり、しかも、ダビンチ君が、
どんなに無愛想なマダムでも、魅力的な微笑をたたえた姿に描く天才画家
であったため、ラファエロの退社後の発展も期待することができるとなると、ラファエロとしては「俺のおかげで注文が殺到し、会社が軌道に乗ったのだから、退社後に得られる利益についても、適正に評価して、自分の持分の評価に上乗せしてもらいたい」と思うでしょう。

このようにラファエロが本来取得できる簿価ベースの純資産(資本金・資本剰余金・利益剰余金)と、ラファエロの出資した持分の客観的価値が食い違うため、ラファエロが退社する場合に行う持分の払戻しの価額の計算については、退社の時における持分会社の財産状況にしたがって計算され(611条2項)、計算が完了していない事項については、その完了後に計算することができる(611条4項)こととされているのです。

 要するに、当該持分会社の企業価値(資産・負債等を継続を前提に時価評価し、将来収益その他の状況を適宜勘案して算定される)を前提に、持分の払戻額が計算されるわけです。

 先ほどの例で、将来収益分を1000万円だとすると、持分全体の客観的価値、時価評価5000万円+将来収益分1000万円=6000万円となり、このうち、ラファエロの持分をどのような割合で計算するかについては、定款で定めをおいていれば、その定めに従いますし、それがなければ、出資の価額に応じる(すなわち、この例では50%)ことになります。

<債権者保護>
以上は、ラファエロさんの立場に立って持分の払戻しについて、説明してきましたが、会社債権者の立場に立つと、多額の財産が払い戻されるということは、会社財産が減るということですから、なんらかの配慮をしてもらわないと困ります。

 合同会社や合名会社では、退社した社員の責任については、退社の登記前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負うということでバランスを図っています(612条1項)。つまり、無限責任社員は無限責任を、直接有限責任社員は、出資未履行分がある場合に直接有限責任を、退社の登記前の会社債務については負担するということです。

 もっとも、登記前に債権を取得した会社債権者が、登記後2年以内に請求又は請求の予告をしない場合には、その債権者に対する責任は消滅するので(612条2項)、退社した社員は、登記後2年経てば、自分がどの程度の債務を負うのかを確定することができます。

では、合同会社の社員は、どうでしょうか。

合同会社は、社員の出資未履行分はなく、社員は責任を負わないことが前提となっているので、退社の登記の制度がありませんし、612条の適用もありません。

そのため、退社時に持分の払戻しとして、多額の財産が退社する社員に流出すると、債権者を害するおそれがあります。

そこで、合同会社では、退社に伴う持分の払戻しについて、会社財産の状況との関係を踏まえて、次のような規制を行っています。

(1) 持分の払戻しにより社員に対して交付する持分払戻額(635条1項))が剰余金額(利益剰余金+資本剰余金。計算規則192条3号ニ)を超えない場合

 この場合は、会社債権者からみれば、利益の配当や、資本剰余金だけで出資の払戻しをする場合と同じですから、債権者保護手続をすることなく、持分の払戻しをすることができます。
 ラファエロさんの持分の払戻しが、3800万円(利益剰余金3800万円+資本剰余金0円)以下の場合であれば、債権者保護手続は不要です。なお、ラファエロさん自身の利益剰余金とその出資についての資本剰余金の合計額は1900万円ですが、債権者保護手続をとるかどうかは、全社員の利益剰余金・資本剰余金を合計した3800万円を超えないかどうかで判断します。

(2) 持分払戻額が剰余金額を超えるが、会社の簿価純資産額を超えない場合

 この場合は、資本金の額を〇円までの範囲内で減少した上で、出資の払戻しを行うことと実質的に同じですから、資本金の減少を伴う出資の払戻しの場合と同様の債権者保護手続(635条、627条参照)を経ることにより、持分の払い戻しをすることができます。
 ラファエロさんの持分の払戻しが、簿価純資産額3800万円超4000万円以下の場合には、資本金の減少と同様の債権者保護手続きをします。

(3) 持分払戻額が会社の簿価純資産額を超える場合(簿価債務超過の会社において持分を払い戻す場合を含む。)

 この場合は、利益の配当や出資の払戻し以上に、債権者を害するおそれがあります。
 他の場面で、これと似たようなことが起こるのは、簿価債務超過の会社を清算するときだけです。
 そこで、ここでも、清算に準じた債権者保護手続を経ることにより、持分の払戻しをするとができることとしています(635条2項かっこ書、3項ただし書)。
 なお、清算に準じた債権者異議手続を通常の債権者保護手続と比較すると、次の点において違いがあります。
 イ 異議を述べることができる期間は1か月ではなく、2か月である(635条2項)。
 ロ 公告方法のいかんを問わず、知れている債権者への個別催告を省略することはできない(635条3項ただし書)。
 ハ 異議を述べた債権者に対しては、「債権者を害するおそれがない」という抗弁は許されず、必ず弁済、相当の担保の供与等をしなければならない(635条5項ただし書)。

 具体例で言えば、ラファエロさんの持分の払戻しが、簿価純資産額4000万円超の場合には、清算に準じた債権者保護手続きをすることになります。

 このように(2)(3)では、債権者保護の必要性から、債権者保護手続を要求しているので、その手続きを採らずに、退社に伴う持分の払戻しをした場合には、退社自体は有効ですが、払戻しは無効となります。よって、払戻しを受けた退社員は、会社に対して不当利得返還義務(民法703条・民法704条)を負います。

 また、必要な手続をとらずに持分の払戻しをした業務執行社員は、過失があれば、払戻しを受けた退社員と連帯して責任を負います(636条1項)。

 利益配当、出資の払戻し、持分の払戻しについては、市販の本にほとんど書かれていないところなので、普段に増して、くわしく説明しましたが、持分会社に興味のない方には、「今週はつまんねえなあ。」という感想を持たれたことでしょう(笑)。
 なお、より詳しい説明については、千問に書いてありますので、必要な人はそちらを参考にしてください(宣伝モード)。

2006年3月13日 (月)

持分会社の利益配当等(2)

 先日、視覚障害者の司法試験受験を手助けしたいという話をしましたが、忙しくなる前に情報収集をしようと思い、インターネットでいろいろ検索をしていたところ、「慶応ロースクールで勉強中の視覚障害者の大胡田誠さんが、日本で初めて全盲で司法試験に合格された竹下義樹弁護士にインタビューする」というNHKラジオの番組があったことが分かりました。
 それで、NHKのサイトにアクセスしたところ、なんと、インターネットで放送内容が聞けるようになっていました。
http://www.nhk.or.jp/fukushi/shikaku/510.html
http://www.nhk.or.jp/fukushi/shikaku/511.html
 話の中身は、視覚障害者の司法試験受験という枠を超えて、受験と弁護士業務にとって大切なことが熱く語られていて、私も共感する部分が多分にありました。
 受験生は、この時期、上向いたり、下向いたり、気持ちが揺れ動くわけですが、勉強に疲れたときに、この番組を聞いてみると、きっと得るものがあると思います。
 受験生以外の方でもポジティブになりたい方にはお勧めの番組です。

 さて、昨日の続きで、「持分会社の利益配当、出資の払戻し」についてお話しましょう。

 まず、昨日のおさらいを簡単にすると、持分会社では

 1 社員ごとに、資本金、資本剰余金、利益剰余金が区別されて管理されている(もっとも、単に資本金、資本剰余金、利益剰余金というときには、社員全員分の総額をいいます)。

 2 社員が利益配当を請求すると、会社の会計帳簿では、その社員の利益の額が減少し、他の社員の利益の額には影響を与えない。

 3 社員が出資の払戻しを受けると、会社の会計帳簿では、その社員の出資についての資本金、資本剰余金が減少し、他の社員の出資についての資本金、資本剰余金の額には影響を与えない

ということでした。

 では、持分会社において、違法配当や違法な出資の払戻しが行われた場合には、どのような処理をするのでしょうか。

<違法配当>
 利益剰余金がないにもかかわらず、利益配当をした場合の処理については、無限責任社員、合資会社の有限責任社員、合同会社の有限責任社員で処理が違います。

(1)無限責任社員
 合名会社、合資会社の無限責任社員については、特に何の規制もありません。利益剰余金を超えて、利益配当をしても、債権者との関係で、無限責任を負うからです。利益剰余金の額を超えて利益配当をすれば、利益剰余金がマイナスになるだけです。

(2)合資会社の有限責任社員
 合資会社の有限責任社員に対し、利益剰余金がないにもかかわらず、利益配当をすること自体は禁止されていませんから、配当をした業務執行社員は、何ら責任を負いません。
 しかし、有限責任社員には、「配当額」に相当する金銭を会社に返還する義務が生じ(623条1項)、債権者との関係では、「超過額」について直接責任を負うこととされています(623条2項)。会社に払うべき金額と、債権者に直接責任を負う金額が異なるところがポイントです。

(3)合同会社の有限責任社員
  合同会社は、利益額を超える額の配当をすることはできません(628条)。この場合の利益額とは、

A 会社債権者との関係で、配当をする時点において、配当可能な利益額、すなわち、その時点における利益剰余金の額(社員全員分の総額です)(計算規則191条1号)

B 他の社員との関係で、配当をする時点において、当該配当を受ける社員に分配されている利益の額(既に分配された利益の額から、既に分配された損失の額及び配当を受けた額を減じて得た額)

のいずれか小さい額のことをいいます。

 ようするに、自分の利益剰余金を超えてもいけないし、他の社員の利益剰余金がマイナスになっているときは、債権者保護の観点から、自分の利益剰余金についても配当を受けられない場合があるということです。
 この規制を守らずに、配当をした業務執行社員及び配当を受けた社員は、合同会社に対して、配当額の全部を支払う義務を負います(629条1項)。

  また、合同会社の社員は、合資会社の有限責任社員のように、債権者に対する直接責任を負うことはありませんが(630条3項)、違法配当の場合、会社債権者は、629条1項の規定により、持分会社が有する社員に対して有する債権の代位行使に関する特則の適用を受けることができます(630条2項)。

<違法な出資の払戻し>
 資本金・資本剰余金がないにもかかわらず、出資の払戻しをした場合の処理についても、無限責任社員、合資会社の有限責任社員、合同会社の有限責任社員で処理が違います。

(1)無限責任社員
 合名会社、合資会社の無限責任社員の出資の払戻しについて、特に規制はされていません。債権者との関係では、無限責任を負うからです。
 ただし、資本金・資本剰余金を超えて、出資の払戻しをした場合、超過部分については、法的には「出資の払戻し」ではなく、持分会社が社員に対して贈与・寄付したことになります。

(2)合資会社の有限責任社員
 合資会社の有限責任社員の出資の払戻しについても、特に規制はありません。
 しかし、有限責任社員が、出資の払戻しを受ければ、定款で定めた出資の価額について、払い戻した分だけ、出資未履行分が増加するので、直接責任を負う額が増加します(580条2項)。資本金・資本剰余金を超えて出資の払戻しをした場合には、出資の価額について全額未履行になりますので、定款で定めた出資の価額全額について債権者に直接責任を負うことになりますね。

 また、資本金・資本剰余金を超過した部分については、法的には「出資の払戻し」ではなく、持分会社が社員に対して贈与をしたのと同様の取扱いになります。
 この場合、有限責任社員に会社財産が流出していることから、超過部分について、詐害行為取消しが行われる可能性があります。

(3)合同会社の有限責任社員
  合同会社においては、出資の払戻しに関して、
 a. 定款を変更して、定款を変更して、その社員の「出資の価額」を減少する場合にのみ可能であること(632条1項)
 b. 出資の払戻し時点において存する利益剰余金の額及び資本剰余金の額の合計額の範囲内で行うこと(632条2項・計算規則192条3号ロ)
 c. 当該社員の出資につき資本剰余金に計上されている額の範囲内で行うこと(632条2項・計算規則192条3号ロ)
という制限が課せられています。

 a.は、合同会社の社員の間接有限責任(実質的には無責任)を維持するための制限です。定款に定めた出資の価額について未履行部分があると、社員は、会社債権者に対して直接責任を負うこととせざるをえないので((2)参照)、出資の払戻しをするときは、その社員の「出資の価額」も減少させて、未履行部分が出ないように配慮したものです。

 b.は、債権者の保護のため、株式会社と同様の財源規制をしたもの。

 c.は、各社員が出資した金額のうち「資本剰余金」についてしか払戻しが受けられず、「資本金」については払戻しが受けられないというルールであり、合同会社に特徴的なものです。
 これは、合同会社の資本金の額は登記されているため(914条5号)、債権者の信頼を確保するという観点から、資本金については、払戻しを認めないこととしているものであり、社員が、資本金に相当する金銭も払戻しをしたければ、債権者保護手続(627条)を経て資本金を減少し(626条1項)、資本剰余金とした上で、出資の払戻を行わなければいけません(632条2項)。

 a.b.cのいずれかのルールに違反して、出資の払戻しが行われた場合には、払戻しを受けた社員及び当該払戻しに係る業務を執行した社員は、払い戻した額に相当する額を会社に支払う義務を負うことになります(633条)。

 また、会社債権者は、持分会社が配当を受けた社員に対して有する債権の代位行使をすることができます(634条2項)。

 以上のように、持分会社の違法配当や違法な出資の払戻しの処理は、株式会社と比べて複雑ですし、現行商法では、ぽっかり穴が開いているような部分なので、あらかじめ条文をよく読んで理解しておく必要があると思います。
 ただ、一度、コツを飲み込めば、それほど難しい話をしているわけではないので、頭の体操と思って、がんばってください(司法試験受験生は、択一の後でいいですけどね)。

2006年3月12日 (日)

持分会社の利益配当等

 本日は、土曜日で本会議はお休み。つまり、私はローマの休日です。

 これまでの海外出張は、2泊4日か、3泊5日で、休みを挟まないものがほとんどだったので、休日があると涙が出るほどうれしいです。
 民間もそうかもしれませんが、公務員の出張は、会議が終わった後、「会議の翌日に有給休暇をとって、その次の日に帰国したい」と言っても、絶対駄目なんです。「せっかく○○に来たのに観光もできないなんて」と思うこともしばしば。
 仕事だから仕方ないとあきらめてはいるのですが、会議が1日とか2日とかの時は、時差ぼけと移動疲れで本当に地獄です。

 そういうわけで、今回のような休日が挟まると嬉しくてたまらず、今日は、ローマを1日中歩き回っていました。
 そして、私は、ミーハーと言われようとも、どうしても見たかった
 ミケランジェロの「最後の審判」
を見てきました。

 観覧者は、システィナ礼拝堂に足を踏み入れると、神の世界に放り込まれます。そして、しばらく眺めているだけで、心が丸裸にされてしまいます。日常生活で心に被せている衣服を無理やり剥ぎ取られ、剥き身の自分をさらされるような感覚。
 それが、「最後の審判」の持つ力です。

 私の記憶に間違いがなければ、ミケランジェロというのは、今風にいえば、「筋肉フェチのハードゲイ」でした(ファンから怒られそうな予感)。
 しかも、カトリック信者であるため、その内なる情念をカミングアウトできず、罪の意識も相当強かったようです(最後の審判のど真ん中あたりに、聖人バルトロメオが人間の「皮」を握っているのですが、その顔はミケランジェロの自画像だと言われています。自分の中身は天国にいけないという自虐的な気持ちなのか、皮だけは天国にいけるという希望なのか・・)。

 こうした情念が、天才の手にかかれば普遍の美に昇華するのだから不思議なものです。いや、むしろ、その情念があるからこそ天才になりえたのかしれません。
 いずれにせよ、500年経っても世界中の人を惹きつけるだけの強い想い、男性の裸体の中に潜む美への賛美が、その絵に凝縮されているように思います。
 ミケランジェロの作品は、裸体男性の躍動感・存在感に本質があり、彼の作品の中の女性は、美少年の延長か、たくましい男性まがいの存在のようにしか見えないのは、私だけではないでしょう。

 ちなみに、今日のガイドさんの話によると、システィナ礼拝堂の天井画は、彫刻家のミケランジェロの才能をねたんだ者が、「あいつは画が描けないから、失敗させて、恥をかかせてやろう」と考えて、ローマの教皇に働きかけ、教皇の度重なる頼みを断りきれず、ミケランジェロが30歳くらいのときに嫌々描き始めたんだそうです。そして、4年間、ミケランジェロが一人で礼拝堂にこもりっきりで描いたら、凄まじい作品ができあがっちゃったわけです。
 いわば、「3次元フィギュア師に、無理やり漫画を描かせたら、手塚治を超えちゃった」(むちゃくちゃ怒られそうな例えですね)というような絶対にありえないことが起こったのですから、妬み・嫉みも天才にとっては糧としかならないという良い実例ですね。

 感動のあまり、にわか美術評論家になってしまいましたが、演劇評論ならともかく、絵画の評論は私の専門分野外でございますので、酔っ払いのたわごとだと軽く受け流してください。

 今日は、「持分会社の配当・払戻し」について説明します。

 株式会社の配当は、現行商法では「利益配当」と呼んでいますが、会社法では「剰余金の配当」と呼び名が変わりました。
 これは、株式会社で、株主に配当できるものは、利益だけはなく、資本性のものも含まれているため、より正確な呼び名にしたものです。

 いきなり、難しい話になってしまいましたが、ここで、まず、会計の世界で重視される「資本と利益の峻別」についてお話しましょう。

 今を遡ること400年以上前、ヨーロッパの商人達は、航海貿易を営み、大きな利益を得ていました。
 当初は、1航海ごとに「今回の航海で、俺は、出発前に、いくらいくらお金を出して、船が無事帰ってきて、商品がいくらいくらで売れたから、トータルこれだけの利益だよ」という清算をしていたのです。このような清算方式ですと、1航海ごとに出資金も戻ってくるので、とくに資本と利益を峻別する必要はありませんでした。

 ところが、航海が、何回も重なると、「前回の未清算分を今回の航海に当てておくね」などということが頻繁に起き、そのうち計算が、うまく合わなくなり、安心してお金を出すことができないような状況が起こってきたのです。

 そんな中、オランダの東インド会社が、永久資本性という考え方を打ち出して、「出資金は永久に返さないが、その出資金を使って儲けた利益は、定期的に配当する」こととしたのです。これは、航海を頻繁に行うようになった段階では、1航海ごとに清算するよりも、効率的で、しかも、出資者が安定的に利益を得ることができる画期的な方法であり、オランダが当時のライバル国イギリスに優位する原動力になりました。

 そして、この永久資本性が、現在の株式会社における、資本金に相当する金銭の払戻しの禁止と、事業年度ごとの配当という考え方のもとになっているのです。
 また、この永久資本性のもとでは、出資者にとって「出資金は戻ってこない、利益だけが戻ってくる」わけですから、資本と利益の峻別は、会計上の至上命題となって、その線引きについて精緻な理論構成が形作られていったのです。
 
 歴史の話はこれくらいにして、現代日本を振り返ってみると、現行商法は、株式会社の永久資本性は採用していません。
 ただし、資本金の減少には債権者保護手続きが必要であるということとする一方で、配当可能利益がない場合であっても、資本金を減少して、その分を配当するということはできることにしていて、そこに、利益の配当と資本の払戻しとの区別があったように思います。

 これに対し、会社法は、債権者保護のために、資本金を減少しても、分配可能額が発生しないような場合には、配当をすることはできないというルールを採用しました。
 大雑把に言えば、これまでに稼いだ利益・損失の蓄積額である「その他利益剰余金」と、資本金の減少等によって生じた「その他資本剰余金」を合算してプラスになるときに配当できることとして、利益性のものと資本性のものを同じ規律で配当することから、「剰余金の配当」という用語を使うことにしているのです。

 このように、現行商法にしても、会社法にしても、永久資本性のころほど「資本と利益の峻別」の必要性は高くないと言わざるを得ないものの、株式会社である以上、「利益は配当できるが、資本は債権者保護手続等を経て初めて配当できる」という基本的な考え方は維持されているので、やはり「資本と利益の峻別」は会社法上も存在しているのです。

 そして、持分会社においても、この資本と利益の峻別は行われています。
 ただし、株式会社と大きく異なるのは
  「利益の配当と出資の払戻しを、別の制度としている」
ということです。

 しかも、持分会社では、株式会社と異なり
  「社員ごとに資本金・資本剰余金を区別する」
  「社員ごとに利益を区別する」
というルールが取られています。
 例えば、A沢さんが100万円、葉玉が50万円、郡谷が30万円を出資して合同会社を作ると、
 A沢さんの出資についての資本金80万円、資本剰余金20万円
 葉玉の出資についての資本金30万円、資本剰余金20万円
 郡谷の出資についての資本金20万円、資本剰余金10万円
というように、社員ごとに資本金・資本剰余金を計上します(ちなみに、持分会社は、払込金額のうち、いくらを資本金とするかどうかを自由に決めることができます)。

 また、定款で社員の頭数で損益を分配するという定めがされていると仮定すると、その合同会社が1事業年度で120万円の純利益をあげた場合に、
 A沢さんの利益剰余金 40万円
 葉玉の利益剰余金 40万円
 郡谷の利益剰余金 40万円
という具合に計上されます。
 これが、「損益の分配」です(622条)。損益の分配は、帳簿上、どのように利益や損失を、各社員の利益剰余金に反映させるかということを意味します。
 
 さらに、葉玉が「私はローマで買い物したいから、30万円の配当をしてくれ」と請求して、合同会社から配当をもらうと
 A沢の利益剰余金 40万円
 葉玉の利益剰余金 10万円
 郡谷の利益剰余金 40万円
となるわけです。これが「利益の配当」(621条1項)です。

 他方、葉玉が、自分の出資したお金の一部として30万円を返して貰いたいときには、資本剰余金・資本金を減らします。
 つまり、出資の払戻前は
 葉玉の出資についての資本金30万円、資本剰余金20万円
だったものが
 葉玉の出資についての資本金20万円 資本剰余金0円
となり、A沢さんや郡谷さんの資本金・資本剰余金には影響を与えません。
 これが、出資の払戻しです。


 このように社員ごとに資本金、資本剰余金、利益剰余金が区別されているのは、持分会社では、株式会社における株主平等の原則のようなものはなく、各社員の持分の内容は全て異なるということを前提に、会計上も処理する必要があるからです。

 さて、持分会社の利益配当等については、まだお話しすることはあるのですが、今日は、歩き回って疲れたので、残りは明日に回します。

2006年3月11日 (土)

持分会社の設立

 現在、参加している国際会議で一人気になる参加者がいます。
 それは、私の隣に座っているラトビア(LATVIA)の美女ではなく、視覚障害者のドイツ代表です。
 数名いるドイツ代表の中で一番若いと思われる、その青年は、補助者に手を引かれて入場し、熱心に会議の内容に耳を澄まし、時折鋭い意見を述べています。
 よほどの専門家でないと理解できない議題を取り扱っている今回の会議の中、しかも、毎日、配られる沢山のWORKING PAPER だとか、INFORMATION だとか、PROPOSALだとか紙ベースの資料を理解したうえで、視覚障害者が健常者に一歩も引かずに活躍している姿を見ると胸が熱くなります。

 というのも、私には、「障害を持つ人が2年で司法試験に合格できるようなプログラムを作りたい」という夢があるからです。
 LEC時代に教えていた障害者が、司法試験に合格し、新しい人生を切り開いたのを見て感激して以来、「司法試験の合格は、障害者が社会で羽ばたくための翼になれるかもしれない」と思い、そのような夢を持つようになったのです。障害者といっても、様々なタイプの障害がありますので、まずは視覚障害者を手始めとしたいと思っています。

 私は目が見えるので、受験中は意識したこともなかったのですが、法律の世界は、紙ベースの資料ばかりで、視覚障害者にとって勉強しやすい環境にあるとはいえません。
 10年ほど前に、ある視覚障害者の受験生からメールを頂いたのをきっかけに、私の持っていたレジュメ等のファイルをお送りしたところ、「読み上げソフトで読ませることができる」と言って大変喜んでいただいたことがありました。
 そういう些細なことを積み重ねて、視覚障害者が能率的に法律の知識を身につけることができるようなプログラムができるのではないかと、プランをずっと暖めているのですが、検事の仕事に追われて、第一歩を踏みだすことすらできていません。
 今回、ドイツ代表は、この夢を再び思い出させてくれましたので、どなたか、視覚障害者で司法試験を目指しているという方がいらっしゃったら、ご一報ください。できる限りの協力をさせていただきたいと思います。

さて、今日は、「持分会社の設立」についてお話しします。

法人の設立手続きは、その法人の種類によって異なりますが、概ね4つの段階がある点は共通しています。
(1)定款の作成
(2)会社財産の形成
(3)機関の選定
(4)登記
の4段階です。

私は、法人一般の設立手続について説明するときは、法人を「法人くん」と擬人化し、法人くんが生まれてくるために必要なこととして、次のようなものがあると説明します。

(1)「定款」は、会社の基本的ルール、いわば、「骨」です。
 人の骨格なのか、ゴリラの骨格なのか、犬の骨格なのか、骨格が違えば、生まれた時の形も違いますよね。法人を作りたい人達が、どんな形の法人を作りたいのかを話し合って、その骨格を決めるのが定款。

(2)「会社財産」は、「肉」「筋肉」です。
 法人くんは、骨だけでは動きません。法人くんが活動するためには、お母さん(出資者等)から栄養(財産)をもらって、筋肉(会社財産)を作る必要があります。
 ちなみに、法人くんが生まれた後、働いて稼いだお金で、お母さん(出資者)を養うのが営利法人、お母さんを見捨てて、世のため人のために働くのが公益法人です。公益法人は、中間法人とあわせて、今、改正作業中ですが。

(3)「機関」は、「心」もしくは「脳」です。
 骨と肉だけでは、単なる人形。心が吹き込まれて、はじめて法人くんは動き出します。どんな契約をするのか、どんな活動をするのか、それを決めるのは機関です。

(4)「登記」は、「出産」です。
 どんなに立派な骨、筋肉、心があっても、お母さんのお腹の中にいたのでは、「人」にはなれません。オギャーと生まれて(登記)、一人前。
 出産だからこそ、設立の登記をするのに大変な労力が必要なのでしょう(笑)。
 お腹の中にいるうちは、基本的には、お母さんが胎児のために活動して、栄養を与えますが(組合)、しっかり育った胎児が、自分の意思でお腹の中から「お母さん、僕が生まれたら、今の借家では狭いから、家を買うからね」などと言って、お母さんの意思とは無関係に、自分の意思で契約を結ぶことがあります。ちょっと怖いけど、これが、法人格なき社団です。

さて、株式会社の場合について、上の4段階を見ていきますと
(1)発起人が定款を作成し、公証人に定款の認証をしてもらう。
(2)発起人が株式を引受け、払込取扱機関に対する払込み又は現物出資をする。発起人の出資だけでは足りないと思ったら、株式の引受人を募集して、出資させる。
(3)発起人(又は創立総会)が設立時取締役等の機関を選ぶ。
(4)設立時代表取締役が、設立の登記の申請をする
という手順を取ることになります。

 他方、持分会社は、所有と経営が一致していて、かつ、昨日の記事で書いたように「定款」に強い力を持たせることにしていますから、株式会社よりもずっとシンプルです。

(1)まず、社員全員で定款を作ります。
  定款(576条)には、社員の氏名が書かれていますから、これで(2)出資者が決まりますし、(3)定款で、「この社員は業務執行はしない」と書いていない限り、全社員が業務執行権を持ちますから(590条1項)、わざわざ機関を選任する必要がありません。
 つまり、定款をつくるだけで、(1)から(3)の段階をすべてクリアすることになり、最後に(4)代表権を持つ社員が、登記をすれば、持分会社くんの誕生です。

しかも、持分会社が、組合的規律のもとで運営されること等を考慮して、株式会社と比べると、設立手続きが、かなり簡素化されています。

(1)定款について
 定款については、株主会社のような公証人の認証はいらないことにしています。
 公証人の認証は、設立後に定款の存在や内容について紛争を生じないようにするための制度ですが、持分会社は、社員全員が定款を作成し、それを変更するにも社員全員の同意が必要なので、そのような紛争が起こりにくいからです。

(2)出資について
a 合名会社・合資会社の場合には、設立前に、社員(無限責任社員・有限責任社員)が、出資を履行する必要がないこととなっています。小規模会社が多い合名会社・合資会社については、設立を簡易にしようという趣旨です。
 その代わり、合名会社や合資会社の社員は、無限責任社員も、有限責任社員も、会社債権者に対し、直接責任を負うこととなっています。会社債権者は、会社に対してだけではなく、社員の個人財産も引き当てにすることができるということです(有限責任社員は、出資を履行していない分だけですが)。
 ちなみに、出資未履行時に生ずる、会社の社員に対する「出資履行請求権」については、法律上は、合名会社・合資会社の財産ですが、会計上、資産に計上するかどうかは任意とされています。資産に計上する場合には、資本金又は資本剰余金が増加します(計算規則53条1項2号、54条1項2号)。

b. 他方、合同会社については、出資を全額履行しない限り、設立をすることができません(578条)。これは、合同会社の社員については、できる限り、直接責任を負わせたくないという政策的配慮です。
 合名会社・合資会社の社員が出資未履行のまま、持分を譲渡すると、譲り受けた人がその未履行債務を引き継ぐことになります。
 合同会社は、株式会社ほど頻繁な持分の譲渡を予定しているわけではありませんが、有限責任社員しかいない会社として設計されているため、社員の持分を譲り受ける人は、「自分が債務を負うことはない」という気持ちで譲り受けるでしょう。ところが、出資未履行のままの設立を認めると、そのような信頼を損なうことになるので、合同会社の社員の責任ついては、株式会社と同様の間接有限責任化(実際には、無責任化)することとし、そのために出資の全額履行を要求しているのです。

c. ただし、合同会社の設立を簡易化するという点から、払込取扱銀行の制度は設けられておらず、社員は、設立時に、銀行との間で、払込取扱事務委託契約を結ぶ必要はありません。もっとも、社員の個人財産と、会社財産となる払込金を区別する必要はあるので、独自に口座を開設するのが普通でしょう(登記時に預金通帳の写し等の添付が要求されることになると思います)。

d. 持分会社では、現物出資をする場合に、検査役の調査はいりません。
 株式会社の現物出資で、検査役の調査が必要なのは、株主間の実質的不平等を防止するためですが、持分会社には、株主平等の原則のようなものはありません。出資額に応じない取扱いをすることができる点に持分会社の本質がありますから、現物出資財産の客観的な価値がいくらであっても、その社員にどのような権利義務を与えるかということは、定款で決めればよいのです。
 また、無限責任社員の場合には、労務出資(会社のために働くこと自体を出資として評価すること。いわば、「私の出資は、私の身体で払うわ!」という感じ。ちょっと違う?)でもいいので、現物出資についてだけ検査役の調査をしてもあまり意味がありません。
 労務出資を検査役の調査にかけるという制度を作るという方向性も論理的にはありえるのかもしれませんが、検査役が、社員の身体検査とかして、「この身体じゃ大して使い物にならねえな。せいぜい100万円くらいだ。」なんて言ったら、人身売買みたいになっちゃいますからね。

 なお、検査役の調査の趣旨について、債権者保護だという見解に立つと、合同会社の現物出資について検査役の調査がないことを説明できません。こうしたことも、会社法が、検査役の調査を債権者保護のための制度とは考えていないということの論拠になるでしょうね。

 以上のように持分会社の設立は、非常に簡単であり、コストも印紙税込みで10万円くらいでできます(司法書士さんを使わない場合)。
 株式会社も、現行法に比べると、設立手続がかなり合理化されていますが、持分会社には負けます。
 私も、会社法が施行されたら、試しに合同会社を作ってみたい気持ちに駆られますが、特に事業をする予定もないのに趣味で作るわけにもいかないでしょうね。
 趣味でやるのは、検事の仕事くらいにしておきましょう。
追伸
以前申し上げた会社法施行規則・会社計算規則の間違い直しのほか、実質改正を含む改正につきまして、パブコメをかけました。近々ブログでもとりあげますが、ご意見の募集しております。なお、このブログに書き込みをしても、パブコメに対する意見にはなりません(笑)。
http://www.moj.go.jp/PUBLIC/MINJI67/pub_minji67.html

2006年3月10日 (金)

持分会社の特徴

 ローマには、昔ながらの小さな専門店が沢山残っています。
 魚屋さん、八百屋さん、駄菓子屋さん、タバコ屋さん、お花屋さん、靴屋さん、洋服屋さん、電気屋さん、などなど。
 日本では、「スーパー」とか、「コンビニ」とか、一店舗で食料品から雑貨・洋服まで何でも揃う便利な店が沢山ありますが、ローマではあまり見かけません。
 スーパーがあっても食料品限定ですし、コンビニなんか見たこともありません。
 私の知る限り、ローマに限らず、イギリスやフランスでも似たようなもので、古い町並みを残すために大型の店舗を開発するのが難しいためか、はたまた、強力な中小企業の保護法制があるのか、理由はよく分からないものの、昔ながらの専門店に活気があります。

 日本も昭和50年代くらいまでは、小さな専門店が軒を並べる「商店街」に活気があったように思いますが、昭和60年代以降、大型スーパー・ショッピングセンターの乱立とコンビニの隆盛の間に挟まれて、そうした専門店が力を失っていきました。小さな店の手作り品や地方の町工場の商品よりも、テレビコマーシャルが流れている、安くて安心感のあるナショナルブランドが消費者に好まれれるようになったのも原因のひとつでしょう。
 そして、豊かな日本で甘やかされて育った私たちが、小さな店を切り盛りするより、大企業のサラリーマンになることを好んだせいで、後継者に恵まれず、人材不足で未来を失っていった専門店も多いように思います。

 日本とヨーロッパのどちらがよいかという話をするつもりはありません。この地の経済も問題を多数抱えています。また、一度、背骨を抜かれた日本の小さな店が昔と全く同じような状態に戻ることは難しいでしょう。

 しかし、大企業のリストラ・就職難が、就職に対する不信感を増加させる一方で、IT長者の活躍が、若い世代に夢を与え、リスクを取って起業する人が増えているという事実もあります。
 そうした起業家は、いろいろな苦しみを経験し、大成功する人はほんの一握り。その多くは、「これだけ働いているのに、儲けは少ないなあ」と感じているかもしれませんが、リスクあるところに発展があります。
 起業して失敗しても命まで取られることはないのですから、人と違ったこと、自分しかできないことを苦しみながら切り開くことも、人生の選択肢にあってもいいと思うのです。
 日本に限らず、成功者は羨まれ、ねたまれることを避けることはできませんが、リスクを背負い努力した人が報われる社会を作らなければ、日本の未来は暗澹たるものになるでしょう。

 そのような起業家をサポートするために、会社法で設けられた法制度のひとつに、「合同会社」があります。今日から何回かに分けて、合同会社を含む持分会社についてお話しようと思います。

持分会社とは、合名会社、合資会社、合同会社の総称です。

現行商法のように「社員の責任のあり方」で会社の分類をするのになれていると、合同会社が持分会社のひとつに分類されるのを奇異に感じるようです。

しかし、会社法は
(1)社員一人の持分会社を認め
(2)法人が、合名会社・合資会社の無限責任社員となることができることとした
ので、無限責任社員の有無は、債権者の保護という観点からすれば、それほど大きな違いはありません。
 例えば、銭湯を営む「合名会社カラカラ風呂」の唯一の社員が「株式会社カラッポ」という債務超過会社である場合には、債権者は、「無限責任社員がいるから、責任をもって経営してくれるよね」などと思わないでしょう。
 債権者が、合名会社・合資会社の無限責任社員の資産をあてにすることができるという点は、会社法でも変わりませんが、自然人が義務を負わない場合があるということは、その信頼は、すでに「人的」信頼関係と表現するのは適切ではないのかもしれません(「法人」的信頼を含むとすればいいのでしょうけど)。

それでは、会社法は、なぜ株式会社のほかに、持分会社という類型を用意しているのでしょうか。

私が、一言で、持分会社の特徴を言えと問われれば
 持分会社は、出資者(社員)が、自己の権利を確実に守ることができる会社類型です。
と答えます。

 株式会社は、株主総会における多数決原理により、少数派株主が我慢を強いられる会社類型です。
 多数派でないかぎり、取締役として経営に参加することもできませんし、場合によっては、株式併合や組織再編等により、「お金をあげるから、この会社から出て行ってね」と言われることもあります。
 極端な言い方をすれば、
「株式会社は、たくさんお金を出した人が勝つ。あまりお金を出していない人は、いつ追い出されてもしかたがない」
という会社類型です。

これに対し、持分会社は、
1 所有と経営の一致を法律上要求する(業務執行は、社員が行わなければならない)
2 社員全員で定款を作成し、定款変更には、原則として、社員全員の同意が必要
3 社員全員の同意が無い限り、持分の譲渡も、新社員の加入もできない
というルールを採用することにより、
「設立時に定款で定めた社員の権利(利益の分配や経営権等)を、多数決によって変更したり、無くしたりすることができない」
ようにしているのです。

具体例で説明しましょう。
葉玉は、温泉好きが高じて、自己の全資産を投げ打って、自分の家の庭をボーリングして温泉を掘り当てたとしましょう。見事、立派な温泉を掘り当てました。
 葉玉は、1億円の価値のある温泉権をもっているのですが、旅館を立てるようなお金がありません。そこで、特例有限会社郡谷産業に相談したところ、郡谷産業は、「共同で会社を作って、温泉旅館とスーパー銭湯をやろう。うちが資金を10億円を出すから、葉玉さんは、温泉権を現物出資してくれ。」と持ちかけられました。
 ここで、葉玉が、特例有限会社郡谷産業と一緒に、「株式会社カラカラ風呂」を作ったとします。
 この場合、設立のときに、特例有限会社郡谷産業が「葉玉さんの熱意が温泉を生んだのだから、代表取締役も葉玉さんでいいよ。」と言われて、葉玉は、自分の温泉に対するノウハウぬをつぎ込み、死ぬほど働き、1年ですばらしい温泉旅館と銭湯を作り、オープンしたところ、連日の満員御礼。2年目には、年間で1億1000万円の利益が出ました。
 そこで、郡屋産業はいうでしょう。
 「りっぱな会社になりましたね。今年の配当は、出資額に応じて、うちが1億円、あなたが1000万円です。それから、今度、株式会社カラカラ風呂を特例有限会社改め株式会社郡屋産業に吸収合併しようと思います。対価は、現金です。長らくのお勤めご苦労様でした。」
 長年苦労して、これから稼ぎ時というところで、葉玉は、わずかの配当と、株式の対価1億円を渡され、経営権も株式も失うことになりました。
 これでは、たまりません。

 どこかで運命の分かれ道があったのです。そう、最初に「合同会社カラカラ風呂」を作っておけばよかったのです。
 会社設立のときに、葉玉が特例有限会社郡谷産業と交渉し「合同会社を作ります。出資額にかかわらず、利益の分配は、50対50.私だけを業務執行社員にしてください。そうでなければ、他をあたります。金を出してくれるところはいくらでもありますから。」と強きに交渉して、その旨の定款を作成しておけば、2年目で利益が出たときに、葉玉は、5500万円の配当をもらえましたし、合併の話を持ちかけられても「ふざけるな。反対」と言えば、合併することができません。郡屋産業が「お前なんかに、業務執行をさせないぞ」と言っても、葉玉は
「業務執行社員として定款に記載されているのだから、定款変更には私の同意がいるんですよ」
と言えばよいだけです。
 郡谷産業が「せめて、うちから一人、業務執行担当者を出させてください」と言っても、葉玉は「定款で郡谷産業は、業務執行権のない社員になっていますよね。私はそれを変えるつもりはありません」と言えば、拒めます。
 さらに、「せめて配当を出資額に応じて、10対1にしてください」と言っても、葉玉は「いまさら、何を言ってんだ。だめだめ。」と言えばいいのです。
 このように合同会社は、定款で定めることにより、小額出資者の権利が守られるという大きな特徴があるのです。
 こうした特長は、説例のようなジョイントベンチャーでも役に立ちますし、資産流動化のビークルとして合同会社を用いれば、1円だけ出資する業務執行社員にその運営を行わせることにより、その他の社員の倒産等により、持分が移転し、ビークルの運営が阻害されるようなことがありません(ちなみに、合同会社は、会社更生法の適用がない点も、流動化向きであると言われています)。

 本日は、持分会社の特質をお話しましたが、こうした運営形態のことを「組合的規律」と呼んでます。

(質問コーナー)
Q1 自己株の取得についてお教えいただければ幸いです。
■省令第27条2号に、持分を有する会社の清算で、分配される残余財産が自己株のときは取得していいとありますが、例えば、売掛先の会社が債務不履行を起し、差し押える財産が自己株しかなかった場合は取得していいのでしょうか。株の持ち合いなどを行なっている場合などです。
■また、省令第23条13項の子会社の親会社取得の例で、担保権の実行による取得が挙げられていますが、それを準用するかたちで、例えば、X社が保有するB社株に担保権を設定し、A社と取引をしたが、債務不履行となり、A社から担保権を実行しようとしたが、債務不履行の時点でA社はB社と合併しており、自己株となってしまっている場合も取得可能でしょうか。
by パンダMGさん
A1
 差し押さえは、27条2号とは、関係のない話ですね。強制執行法の差押は、そもそも自己株式の取得ではありません。
 自己株の担保権の設定及び実行については、今度の千問に詳しく書いているのですが、基本的にはできます。ただ、自己株式の取得手続きをすることが必要な場合があります。

Q2
 このブログを読み、債務超過会社の吸収合併を行えるのではないかと考え、登記所に確認しました。しかし、登記官の回答は、昭和33年の「できない」という先例がある以上、どのような解説があろうと他の登記所で認めた例があろうと自分は認めないというものでした。そして、「できる」との民事局通達や先例(民事局回答)が出ない以上、会社法施行後も債務超過会社の吸収合併は認めないとの回答でした。
by 彦坂さん
A2
 私がブログで書いたのは「実質債務超過会社」の話でこれは解釈論ですが、会社法で「簿価債務超過」の吸収合併ができることは法令上明らかです。会社法になって、そのような対応をすれば、国家賠償ものでしょうね。
 その登記官には「本省に問い合わせた方がいいですよ。」と言ってください。

Q3
34問「名義書換の効力」において「譲受人には株式をすでに譲渡したことを理由に権利行使を拒み、譲渡人には名義書換未了を理由に権利行使を拒むことが可能となること」という点の解説をお願いします。
by 夏草の賦さん
A3
基準日時点の失念株主の取り扱いについて、会社が、失念株主に権利行使を認めることができるという考え方について、考えられる批判を書いたものです。
対抗要件というのは、会社が主張しても、主張しなくてもよいというものです。
形式論理からいえば、名義株主が会社に権利行使を求めたときには、「あなたはもう株式を売ってますね」といって権利行使を拒み、失念株主が会社に権利行使を求めたときには、「あなたは、まだ対抗要件を充たしていませんね」といって権利行使を拒むことができそうだということです。
 しかし、会社が、そのように両方に対し、拒むことはできないと解すべきであるというのが、34問の結論になっています。それは、会社は、議決権や利益配当を保有株式数に応じて付与しなければならないのですが、両方の権利行使を拒むと、母数が変わってしまうからです。

先日は、お答え頂きありがとうございました。
くだらない質問ですが、よろしければ、また教えて下さい。

Q4
設立しようとする株式会社が、定款を変更して全部取得条項付株式の定めを設けるときは、種類創立総会の特殊決議が必要という理解でよろしいでしょうか(会社法100・85-3)。
他の場合の全部取得条項付株式の定めを設ける決議は、特別決議(法111-2・324-2)のようなので、なぜなのか気になりました。
by パラリーギャルさん
A4
特殊決議で間違いありません。
なぜ違うかというと、設立時の株主の権利内容の変更については慎重にやるようにしているということです。

Q5
 会社法施行規則では、公開会社について事業報告記載事項が非常に多くなっていますが、これは事業年度末時点での公開会社に適用があると解してよいでしょうか。
A5
 そのとおりです。

2006年3月 9日 (木)

相続と名義書換の関係

 ローマ発第二弾です。ローマは、風が強く、寒さが肌を刺します。
 でも、日がさせば風は温み、会議場近くのローマの古代遺跡の周りには桜のような花が満開です。
 滅びたものと、生きるもののコントラストが、美しさを超える感動を与えています。
 タイトなスケジュールの合間に、このような景色を見ることができるのがローマ出張の良さですね。

 昨日は、10時間くらい寝てしまい、起きたときには、会議の1時間前。
 ブログの更新をする時間が無くて、1日お休みさせていただきました。
 急いでシャワーを浴びて、着替えて会議上に向かおうとしたのですが、着替えを入れているタンスは、すごく、すごーく建て付けが悪く、なかなか開かないし、開けたら閉まらない。
 見た目は、美しいホテルではあるものの、浴槽はありませんし、部屋の床はコンクリートにペイントがほどこされているだけ。
 1泊1万円くらいだと思いますが、レベルとしてはその程度のところに泊まっています。これでも、3星ですから、今まで泊まったところと比べると上々です。

さて、今日は、「相続と名義書換」についてお話します。

 以前、このブログで
現行商法206条1項2項が「株式ノ移転」と規定しているのに対して、会社法130条は「株式の譲渡」と規定していることから、株主が死亡した場合に、相続人は、名義書換をすることなく、相続による取得を会社に対抗することができるのですか?
という質問を受けました。

答えはYES。

「移転」は、権利者の変更一般をあらわす言葉で、相続等の一般承継も、「移転」に含まれます。これに対し、「譲渡」は、権利者の処分による移転を指す言葉ですから、会社法130条は、相続等の一般承継の場合には適用されません。言い換えれば、会社法では、一般承継については、株主名簿の名義書換をすることなく、会社及び第三者に対抗することができると解すべきです。

このことが、どのような現行商法の取り扱いとどう違うかを、くわしく説明したいと思います。

<第三者対抗要件>
 現行商法は、株券発行会社については、現行商法205条1項で「株式ヲ譲渡スニハ株券ヲ交付スルコトヲ要ス」と規定しており、他方、株券廃止会社については、現行商法206条ノ2で「株券ヲ発行セザル旨ノ定款ノ定アル場合ニ於テハ株式ノ移転ハ前条第一項ノ名義書換ヲ為スニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ」とされています。

 その結果、株券発行会社の株式を相続した場合には、当然に第三者に対抗することができるのに対し、株券廃止会社の株式を相続した場合には、名義書換をしない限り、第三者に対抗することができないということになります。もちろん、現行商法でも、株券廃止会の株式を相続した相続人は単独で名義書換を請求することができるので第三者対抗要件を備えることができますし、第三者は、名義株主の相続人との共同請求をしない限り、自己に名義書換をすることができないことから、相続人が知らない間に二重譲渡されて、第三者に負けるということはありません。

 しかし、会社法は、相続された株式の法的地位について、株券発行会社と株券廃止会社で異なる取り扱いをする必要はないという観点から、株券廃止会社について、名義書換を「株式の譲渡」(130条1項)の対抗要件とすることにより、相続の場合には、名義書換をすることなく、相続による株式の移転を第三者に対抗することができるようにしています。
 これにより、相続人等の一般承継について登記等と同じような取り扱いになったわけです。

<対会社対抗要件>
 次に、会社との関係を見てみましょう。

 現行商法は、株主の相続人であっても、名義書換をしない限り、会社に相続を対抗することができないとされています。この結論は、相続人を失念株主(株式を取得したにもかかわらず、名義書換を怠った株主)として取り扱うため、一見、会社にとって有利な取り扱いに見えます。

 しかし、会社が、「基準日」における名義株主に、議決権や具体的な配当請求権を付与することを考えると、話は決して単純でないということがわかります。

 すなわち、株式の「譲受人」が名義書換をしていない場合には、会社は、名義株主である譲渡人に議決権や配当請求権を与えればよいので、特に問題はありませんが、「相続人」について同じ扱いをするとなると、会社は
 「基準日において、死人になっている名義株主に、議決権や配当請求権を与える」
ということになります。

この結論は、
(1)会社は、被相続人の死霊・ゾンビ・キョンシーに、議決権・配当請求権を与える(又は、被相続人の墓地に、議決権行使書面・配当金を埋める)。
(2)会社は、誰にも、議決権・配当請求権を与えない。
(3)会社は、相続人に対して、議決権・配当請求権を与える。
のどれを意味するのでしょうか。

(1)は、個人的には好みですが、法的にはありえません。
(2)は、失念相続人がいる場合には、総議決権数・総株主数が減少することになり、会社にとっては最悪の結論です。決議要件に影響を与えますし、少数株主権等の分母も変わってしまいますし、証取法等の開示にも影響を与えます。相続人が被相続人の議決権行使書面を使って議決権行使をしたら、決議に瑕疵が生じます。
 しかも、(2)は、通常の失念株主については、会社は、譲渡人・譲受人のどちらかに議決権等を与えなければならないのに、相続の場合には、誰にも権利行使をさせなくてもよいということを認めることを意味し、その点でも不均衡が生じます。
 したがって、現行法の解釈でも、実際には、(3)しか、選択肢はないのだと思います。
 しかし、(3)の結論は、「相続人は、名義書換をしなければ、会社に対抗できない」という現行商法206条1項の文言と矛盾します。

 負けず嫌いの人は、そのような事態が生ずることについて
「会社が、相続人に対して、「任意に」、対抗要件の不備を主張していないだけだ」
というかもしれませんが、基準日に名義書換をしていない相続人に対して議決権・配当請求権を与える以外に、会社に選択の余地が無いので、決して任意に相続人に権利行使を認めているわけではないのです。

 こうした現行商法206条1項の問題点を考慮して、会社法は、130条を「株式の譲渡」と規定し、相続人については、名義書換をすることなく、会社に対しても相続を対抗することができるという立場を取ったものと解すべきだと思います。

 このような考え方に対し、いくつかの疑問・批判・反論が考えられます。

a 「会社には、相続が生じたのかどうか、相続人が誰かもわからない場合があるのに、会社が、相続人に対して、議決権・配当請求権を与えるのは不可能だ。会社は、相続が生じたかどうかを調査しなければならないのか。」

 この批判は、対会社対抗要件と、免責の問題を混同しています。
 例えば、会社が、株主名簿にしたがって、被相続人宛てに、名簿に記載されている住所に、総会招集通知や配当金を送付したという事例を考えます。
 この場合、その招集通知や配当金が真の相続人に送付され、真の相続人が議決権を行使し、配当を受け取ったのならば、会社は、免責の話を持ち出すまでもなく、その義務を果たしたことになります。
 他方、会社が、招集通知や配当金を株主名簿に従って送ったところ、真の相続人でない人や、相続人のうちの一部が勝手に配当金を自分のものにしたり、議決権を行使したとしましょう。
 この場合には、株主名簿の免責力の問題であり、会社が善意無重過失である限り、免責されます。
 以上のように対会社対抗要件の問題と、免責の問題は次元が違うので、aの批判は当たりません。

b 「株主名簿に載っている人(被相続人)と、実際に株主と名乗ってきた人(相続人)が違うのだから、会社は、議決権の行使や配当金の受領をさせていいかどうかを判断するために、対会社対抗要件として名義書換を要求することができるはずだ」

 一見、もっともな意見なのでですが、この考え方は、「基準日」のことを忘れています。
 この考え方は、要するに
「基準日後に名義書換をしたら、配当を支払ってあげてもいいが、名義書換をするまでは、配当を支払うことはできない」
ということを言いたいのだと思います。
 しかし、会社は、基準日の時点で、対抗要件を備えていた株主に、議決権や配当請求権を付与するのですから、「基準日後に、相続人が名義書換をしたときに限って、議決権や配当請求権の行使を認めるべきだ」という主張は、「対会社対抗要件」とは次元の異なる話(会社が不安なく義務を履行するためにはどうしたらよいかという話)をしているだけなのです。

 また、私見のように「相続人は、名義書換をしなくても、相続を会社に主張することができる」とすることは、会社に、相続の有無を調査しなければならない義務を課すということにはなりません。
 相続人が、議決権や配当請求権を行使するときに、会社に対して、「自分が相続人であること」を証明しなければならないのは、証明責任の原則に照らしても、当然であり、その証明をしない相続人による請求を拒んだとしても、会社には責任がないものと解すべきです。
 したがって、名義書換を対会社対抗要件としなくても、「相続人は、相続を証する書面を提出する等して自己が相続人であることを証明してはじめて権利を行使することができる」と考えれば、必要十分だと思います。

c. 「対会社対抗要件でないと解すると、相続人が名義書換を行わなくなる。」

 今だって、いろいろと他人にいえない理由で名義書換をしていない相続人は沢山いると思いますが(笑)、私のように考えても、遺産分割をした場合や、相続人が他人に譲渡する場合に備えて、名義書換をすることは十分期待できます。また、会社は、相続人が相続を証明して権利行使をしてきたときに、今後の権利行使の便宜のために、名義書換請求をすることを促すことになるでしょう。

以上のように、会社法が、相続について、名義書換を対会社対抗要件としないという選択肢を取ったとしても、特に困ることはないと思いますし、むしろ、現在行われている取り扱いを理論的に整理したというのが私の考えです。

2006年3月 7日 (火)

創立総会における変態設立事項の追加

 本日は、ローマ発の第一弾です。といっても、とくにローマの香りがするような気品と伝統を感じさせる文章は書けません(笑)。

 あえて、ローマ的な話題を前振りとして書けば、今は、ローマ時間、午前2時半。
「ああ、今日も、葉玉は、夜遅くまでがんばっているな」と関心されるような話ではなく、午後10時ころにベッドの上で意識を失い、今、さわやかな気持ちで目が覚めたところです(笑)。ヨーロッパでの会議は、最初の2,3日は、朝寝坊しないので、大助かりです。

 一昨日の午後6時半ころに、空港に着きましたが、インド・中国からの飛行機と時間が重なり、イミグレーションは大混雑。
 NON EUのうち、日本人の入国審査(ビザ不要)と、インド人・中国人の入国審査は、時間のかけ方が10倍くらい違いますので、推定50メートルくらいの長蛇の列に並んでも、なかなか前に進みません(体感速度、分速50センチ)。
 しかも、48メートルくらい進んで、「もうすぐだ」と思っていたところ、いきなりオフィサーがゲートを閉め、「お前ら、向こうの列に並べ!」というようなことを言って、去って行ったのです。
 その列に並んでいた人は、呆然自失。しかも、指さされた列の人達は、「お前らは、後ろに並べ」と殺気だって叫ぶので、やむなくフリダシに戻り、通過するまで2時間以上かかりました(涙)。その夜は、疲れ果ててホテルで爆睡。

 昨日は、会議の後、スイス大使の公邸で接宴があり(議長がスイス人だからです)、神田先生と二人ででかけました。私は、配られたワインをやけ酒にしながら、ハーグ国際私法会議の時に知り合った方や中国・韓国から来た方と一緒に、「今回のissueは、中身が本当に難しいよねえ。」などと愚痴を言い合ったり、天井高8mの部屋に飾られたルネッサンスの名画や巨大なフレスコ画を見ながら、
「こういう絵が一枚欲しいけど、官舎のドアからは入らないなあ。壁も高さが足りないから、畳の代わりに敷くしかないな。」
などと馬鹿なことを考えていました。
 他方、神田先生は、有力な各国代表の方と、今後の会議の進め方やドラフティングの仕方について熱心に話し合われていて、私は、「いつか、私に、ああいうことができるようになる日が来るであろうか。いや、ない。」と反語的な感想を持ちつつ、一層、神田先生に対する尊敬の念を深めた一日でした。
 その後、神田先生とレストランに行き、会社法、学会、実務、立法、法学教育等のあり方等をつまみに、二人でかなり盛り上がり、ホテルに戻ってきたのが午後9時半。
 東京に向かって会議の報告メールを送ったところで、私の意識がなくなりました。
 ということで、午前2時半からのブログ書きが始まったというわけです。

 このブログは、「ローマであそぼ」ではないので、会社法の話もしましょう。本日のお題は、「創立総会における変態設立事項の追加」です。

ロンリープラネットさんから次のような質問が来ました。
「会社法96条『第30条第2項の規定にかかわらず、創立総会においては、その決議によって、定款の変更をすることができる。』と書かれているのですが、これは新たに変態設立事項を加えたり拡張的変更も為しうると考えてよろしいのでしょうか?最判昭41・12・23は死んだと解して宜しいでしょうか?」

指摘された最判は、創立総会では、変態設立事項を削る方向にしか変更することができないというもので、この最判が「死んだ」かどうかは解釈論で説が分かれるところでしょうが、私は、「死んだ」と思っています。

最判が創立総会における変態設立事項の追加について否定した最大にしてほとんど唯一のの拠り所は、旧商法185条1項が,「創立総会ニ於テ第百六十八条第一項ニ掲グル事項ヲ不当ト認メタルトキハ之ヲ変更スルコトヲ得」と定めていたことにあります。

この拠り所が会社法96条で、全く異なる書きぶりになったわけですから、その最判は、少なくとも、根拠がなくなったものであることは間違いありません。

また、文言上は、単に「定款の変更をすることができる」と書いてあるのですから、変態設立事項を追加する定款の変更も禁止されないと考えるのが素直な解釈です。

では、実質論として、創立総会で変態設立事項を追加させてよいのでしょうか。

ポイントは
(1) 設立時株主の権利を害することはないか。
(2) 変更後に、公証人の認証を受けさせなくてよいのか。
という2点にあります。

(1)について
 創立総会において変態設立事項を追加した場合に、設立時株主が害されることがあるのかと問われれば、答えはNOです。

 まず、変態設立事項の追加について反対した設立時株主は、引受にかかる意思表示を取り消すことができます(97条)。嫌ならば出て行けばいいだけです。むしろ、変態設立事項の追加を認めないという見解にたった場合、現物出資等をした設立時株主だけではなく、すべての反対設立時株主に引受けの取消しが認められることを合理的に説明することは困難であるように思います。

 次に、創立総会で変態設立事項を追加したとしても、検査役の調査の規定(33条)が適用されるので、不当に廉価な現物出資が行われて、設立時株主間の公平が害されるという事態も生じません。
 33条は、30条1項のように「第二十六条第一項の定款」という文言を用いず、「定款に第二十八条各号に掲げる事項についての記載又は記録があるときは」と規定しているので、創立総会による変更により、定款に28条各号に掲げる事項の記載が生じたときも、適用されるのです

 このように、97条と33条の適用があることを前提とすれば、創立総会によって変態設立事項を追加したとした場合に設立時株主の権利が害されることはないはずです。

(2)について
 会社法32条1項は、発起人が作成した定款(26条1項)についてのみ公証人の認証を得ることを義務づけており、また、96条は、創立総会で変更がされた定款については認証を得ることを義務づけていませんから、創立総会で、変態設立事項を変更しても、変更後の定款については、公証人の認証は得る必要はありません。

 そもそも、発起人の作成した定款については、なぜ公証人の認証が必要なのでしょうか。

 これは、発起人が定款を作成したのか否か、その内容がどのようなものかということについて後日争いになったときに、原始定款の内容が確定できなければ、その会社が何を定款とすればよいのか、分からなくなってしまうという不都合が生じることから、その内容を後日確実に証明できるような方策として認証を義務づけているのです。

 これに対し、創立総会による定款の変更は、株主総会の定款の変更と同じく、議事録の作成が義務づけられ、定款変更されたかどうかは後日立証できますし、仮に、定款の変更を立証できなかったとすれば、発起人が作成した原始定款が定款となるだけで、原始定款の内容自体が分からないときのような不都合は生じません。

 そこで、会社法は、創立総会における変更後の定款変更については、公証人の認証は不要としているのですが、先述の32条1項の立法趣旨を見る限り、創立総会における変態設立事項の追加についてだけ、例外的に公証人の認証を義務づけなければならない理由は何もありません。

 以上のように、株主の保護という観点からも、公証人の認証が不要であるという点からも、特に創立総会における変態設立事項の追加を、96条の明文の規定に反して、制限する必要はないですから、前記の最判は死んだというのが、正しいのではないかと思います。

<その他の質問>
Q1 
私が意識している問題は、会社法は会社の資金をきちんと保持して運用して欲しいと思っている株主に多大な影響を与えるため、原則、資本減少に株主総会の特別決議を要求しているのに、この条文によって、新しく投資をした株主の資金だけが彼らの意見も聞かず簡単に流出させてしまえるように思える点です。配当が自分にも戻ってくるから大丈夫ということであれば、そもそも、すべての資本減少で、債権者手続きさえとっていれば、総会決議は必要ではなくなるのではないでしょうか?
Posted by 小見秀樹 at 2006年03月05日 14:03
A1
 資本金の減少は、会社の一部解散であると考え、株主総会の決議を要すると説明した時代もありましたが、資本金と株式の関係が完全に切り離された会社法で、資本金の減少に株主総会の決議が必要不可欠であるという理論的な理由は乏しく、結局は、どういう立法政策を採るかということだと思います。会社法は、少なくとも、小見さんのおっしゃるような「すべての資本減少で総会決議を不要とする」という政策は、採っていません。
 他方、新株の株主の「会社の資金を保持してきちんと運用してほしい」という意思について、どれだけの保護が必要かという点については、それらの株主がいくら反対しても、株主総会の特別決議をすれば、同じことが起こるわけで、反対株主に株式買取請求権が認められるわけでもありませんから、新株の株主のそのような意思は、絶対的なものではないのは、現行法でも同じです(それが嫌なら、新株を引き受けるなという点も、現行法と同じです)。
 逆に、新株の株主が、資金注入して欠損を埋めようと考えているとき等において447条3項が必要であるという意見もあるわけで、そういうことを含めたトータルの政策判断なのだと思います。

Q2
法務省令96条2項6号の手続きについて、あらかじめ定款に定めをおくことで、株主総会での決定を省略することは可能でしょうか。
法務省令96条2項は、法務省令96条3項と違って「定款に別段の定めがある場合」を想定していないように読めるため、気になります。
Posted by 係員 at 2006年03月06日 17:08
A2
96条3項の「別段の定め」は、趣旨が違いますので、2項の解釈で考慮にいれる必要はないと思います。
調整マターなので、確答はしかねますが、少なくとも、定款の任意的記載事項として法的効力を有すると思います。問題は、その効力が株主総会を縛るだけなのか、株主総会が6号を決議しなくてもよくなるかという点ですが、しばらくお待ちください。

Q3 新株予約権原簿の経過措置について、1点教えてください。
 経過措置政令13条4項は、整備法施行時点において自社管理している既発行の新株予約権については、政令は株主名簿管理人にその事務を委託することを義務付けるものではない、とのことですが、会社が法施行後に新たな新株予約権を発行し、新発行の新株予約権の事務を株主名簿管理人に委託した場合、法施行時に既発行であった新株予約権についても、株主名簿管理人に事務を委託しなければならないのでしょうか?それとも、既発行部分の新株予約権については引き続き自社で管理することは可能でしょうか?
Posted by 平課員 at 2006年03月06日 20:24
A3
 設問の場合、施行時に既発行であった新株予約権について事務委託をする必要はありません。

Q4
会社法施工後、特例有限会社の役員の任期は、どうなるのでしょうか?整備法第18条で会社法第332条・336条を適用しないとしていますので、今までどおり人気は無いと解釈してよろしいでしょうか?
A4
任期はありません。そのような役員の方が人気はあると思いますが(笑)。

Q5
特例有限会社の株の譲渡について、整備法第9条で「会社法第136条・137条の承認をしたものとみなす。」と言う事は、常に譲渡が出来るということでしょうか?
A5
株主が取得者のときは、承認したものとみなされます。現行の有限会社法の規律同じです。
株主以外の者が取得者のときには、承認したものとはみなされません。
このルールは特例有限会社である限り、変えられません(整備法9条2項)。
変更したければ、株式会社に商号変更してください。

Q6
移行後の株式会社において、相続による株の移転について、会社の承認が必要との制限をつけることは出来るでしょうか?
Posted by セント at 2006年03月07日 09:53
A6
相続は、常に、譲渡承認の対象となりません。したがって、そのような定めを設けることは不可能です。相続人に対する買取請求で解決すべき問題です。

2006年3月 5日 (日)

特例有限会社のことが分からない人

今日は、ブログを更新するつもりはなかったのですが、ローマ発の飛行機を待っているラウンジで、ブロードバンドが使えたので、思わず嬉しくなって、書き込みをしたくなりました。宿題と同じで、質問が貯まりすぎると、気持ちがドヨーンとなってしまうので、気持ちよく日本を出発するために、片付けられるものを片付けましょう。今12時10分、1時の搭乗時間までに果たして、間に合うのか?

その前に、宣伝モード。

 3月13日に、私の同僚である郡谷大輔さんの編著によります
「中小会社・有限会社の新・会社法」
が商事法務から出版されます(定価3,570円(税込み))。
 受験生には関係ないかもしれませんが、全国150万社の有限会社には大いに関係のある有限会社の廃止。
 有限会社の廃止に伴い、特例有限会社がどのような規律で運営されるのか、また、経過措置などで注意すべき点があるのか等を完全網羅したのが、この本です。
 会社法成立に伴う有限会社の本はいくつかありますが、法律的な問題点や経過措置を含めて、完全解説したのは、この本以外ありませんし、これから先、きっとこんな本はでないでしょう。
 六法から削除され、会社法を読み替えながら、適用しなければならない特例有限会社については、勘違いをしやすいもの。有限会社に関係されている法律家・実務家にとっては必携の一冊です。

宣伝モードは、終了。以下、質問バスターとなります。
Q1
会社法134条が適用されるのは、どのようなケースなのでしょうか?
私は、139条但書によって、定款に「株主間の譲渡については承認不要」などと規定した場合くらいかなと思っています。
Posted by パラリーギャル at 2006年03月04日 02:11
A1
134条は、現行商法において、名義書換手続きと、譲渡制限の承認手続きの関係が不明確であることから規定されたものであり、簡単に言えば、譲渡承認を得るか、指定買取人である場合か、包括承継のように譲渡承認の対象とならないか、そのいずれかの場合でない限り、名義書換ができないという規定です。
 ですから、譲渡制限株式の名義書換については、常に適用があります。
 質問の意図に則した答えでしょうか?

Q2
 論点<440>では、代表取締役が取締役会の決議を経ずに多額の借財をした場合について、民法93条を類推適用するとしています。
 一方、代表取締役が取締役会の決議を経ずに社債の発行をした場合(P253)には、取引の安全から常に有効としています。
 両者は、どちらも心理留保類似の構造にあると思うのですが、後者について93条を類推しないのは、取引の安全への配慮が強いということだけが理由なのでしょうか?
Posted by 会社法ゼミ副代表 at 2006年03月05日 01:07
A2
 多額の借財は通常指名債権であるのに対し、社債は、社債券や振替社債など高度の流通性を付与するために発行されるものです。
 民法93条類推の欠点は、会社から割当てを受けた者が悪意である場合に、債権を譲り受けた者(転得者)を保護するのに、もう一工夫が必要であるということです。
 このような転得者保護を考えると、転得者が生じる可能性の高い社債については、取締役会の決議なく発行しても、有効と解すべきであるというのが百問の考え方です。

Q3
特例有限会社が株式会社へ移行する際、商号を全然違うもの(例えば有限会社タイガースから株式会社ジャイアンツ)へ変更してもよいでしょうか?
また、移行と同時に目的や本店などを変更した場合、登記手続きや登録免許税はどうなりますか?手続き上現行商法の組織変更の登記の形式であるようなので、目的変更はOK(登録免許税も別途不要)、本店移転はOUTのような気がするのですが。
よろしくお願い致します。
Posted by がすこいん at 2006年03月05日 11:32
A3
商号の変更は、全然違うものでも自由です。
登記手続・登録免許税は、申し訳ありませんが、私から答えることはできません。

Q4
新会社法での、資本減少の手続きについて、理解ができずに大変困っております。よろしくお願いいたします。
新会社法447条3項において、取締役会の決議で減資ができる場合のことがあるのですが、新たに資金調達した金額は、取締役会が株主の意見も聞かずに即座に分配可能額に入れ配当ができる状態にできるということも考えられます。仮に大株主が取締役等をやっているような会社の場合には、新株発行時に出資金額を取締役会決議で配当可能にし、すぐに株主総会の普通決議で配当することができるようになってしまいます。仮に大株主が取締役をやっているような会社の場合には、新株投資は危ういということになってしまうのではないかと思います。
A4
ちょっと問題意識がよく分かりませんが、配当は株式数に応じてしか行われないので、新株を取得した者にも配当されますよね?大株主にのみ有利な処理はできないと思うのです。新株発行の払込価額が、現在の会社の資産状況からして割高であるという場合は、申込みをしなければいいだけですし。


Q5
非公開会社で小会社の監査役は新会社法で会計監査のみの権限となっていますが、5月1日から6月下旬の株主総会まで若干の日付があります。5月1日から6月下旬まで監査役に業務監査権限と会計監査権限を持たせるためには定款変更をしないといけないのでしょうか。教えてください。
A5
会計監査限定の定めを廃止する旨の定款の変更が必要です。

Q6
非公開で株式譲渡制限会社は新株発行については従来通りみなし規定で5月1日以降も取締役会で決議できるのはわかっていますが、やはり明確性の観点から定款変更しないとダメなのでしょうか。いろいろな本をみましたが定款に入れているケースが多いようです。
by 困ってますさん
A6
それは、実質的な内容の変更を伴う定款変更ではなく、すでに定款が変更された場合における記載の変更の問題ですね。
定款の内容が変更されているので、後は、その定款と称する書面の記載を変更すれば足りsればよいのではないでしょうか。

Q7
葉玉先生、会社法百題166頁の「株式取得者は、名義株主にどのような請求ができるか」という項目の説明について、質問をさせてください。
この項目では、「Aが甲会社から受け取った配当等について、BがAに引渡しを求めることができるか」ということが問題となっていますが、それに対する解答は、「民法575条1項を類推適用し、取得者が・・対会社対抗要件を備えたときに、譲受人であるBに配当等が帰属するものと解する」と記載されています。これは、株式取得者が名義書換をするまでは、配当等は名義人が取得し、名義書換後は株式取得者が配当等を取得するという、いわば当然のことを述べたものと理解してよいのでしょうか?このように理解すると、名義書換前であれば、名義人は実質的無権利であるにもかかわらず配当を確定的に取得することができることになりそうですが、そのような結論でよいのでしょうか?
by 一受験生さん
A7
 それは、民法の問題ですね。
 結論から言えば、名義人は無権利であっても、配当を確定的に取得することができるということでよいと思います。
 株式だけではなく、普通の動産でも、売買契約をすれば、当事者間では所有権は移転し、売主は無権利者になります。それでも、民法は575条で、果実収取権を与えています。これは、物の引渡までは管理費用がかかるので、果実収取権でバランスを取ろうという趣旨ですね。
 それが嫌ならば、売買契約で特約を結べばよいという世界ですので、株式でも、買主が配当が欲しければ、特約をするか、名義書換をするかすればよいだけです。

質問バスター終了。
今度は、ローマからアクセスすることになるでしょう。
まともにインターネットがつながらない場合には、10日間ほど記事が更新できないおそれがありますが、その場合にはあしからずご了承下さい。

2006年3月 4日 (土)

補欠取締役の選任決議の取消し

 昨日は,インドシナの皆さんとのお別れ会で盛り上がりすぎ,ブログを書いている途中でエネルギーが切れました。
 来週から本業に戻るかと思いきや,実は,UNIDROIT(ユニドロワ)という国際機関の間接保有証券関係の会議が,来週月曜から10日間にわたって,ローマで開催されるため,またまた長期出張です。

 日本からは,東京大学の神田先生と私の二人が代表として参加します。神田先生とは,何かとご縁が深く,ハーグ国際私法条約のときも約1ヶ月間,寝食をともにさせていただきましたし,企業価値研究会をはじめ,神田先生が座長を務められている各種会合にも参加させていただいております。

 国際会議に出て,しみじみと分かったのですが,神田先生は,各国の代表からも非常に信頼が厚く,発言の重みは各国参加者の中でも飛び抜けています。正直,国際会議では,いろいろな国が好き勝手に言い合うので,「何を言っているのかよく分からん」という国もないではないのですが,神田先生のご発言は,いつも的確で説得的であり,世界各国の人が傾聴し,見事なほどに,会議の流れを作ります。

 私の最も尊敬する先生の一人である神田先生が会議に参加するのに,私などが行ってやることがあるのかという疑問もないではないのですが,職務上,会議で発言せざるをえないこともあり,報告も作成しなければならないことから,僭越ながら神田先生のお供をすることになりました(一般の方は,国際会議というと外交官が活躍している華やかな場のように思うかも知れませんが,専門家会合等は,担当者が参加して交渉することが圧倒的に多いんです)。

 日本語でしゃべっても難しい間接保有証券法制について,実質法も思惑も全く違う国々が英語で話し合うわけですから,先行きを考えると気が遠くなりそうなものの,そういうときこそ,笑って前に進むしかないですね。サッカーや野球と違ってブルーのユニホームはもらえませんが,日本代表であることにかわりはないですから(笑)。

 というわけで,明日あさっては,会議の準備及び飛行機での移動ということもあり,ブログの更新はお休みさせていただきます。
 なお,ローマのホテルは,何らかの形でインターネットが使えると思いますので,暇を見つけつつ,なるべく記事を更新したいと思います。

 さて,補欠役員の話しの続きをしましょう。

 補欠役員で,もう一つ重要なのは,補欠役員の選任の取消しの定めです(施行規則96条2項6号)。

 補欠役員は,就任前は役員ではないので,役員の解任の規定である339条は適用されません。そもそも,役員に「就任」していないのですから「解任」という概念が適用あるかどうかも疑問です。

 とはいえ,補欠役員を選んだときは「すばらしい人だ。この人しかいない」と思っていたものの,しばらくつきあってみると「げっ,こんな人とは知らなかった」と気づくことは,ままあります。いわば,婚約後にマリッジブルーになるようなものですね。

 そこで,婚約解消ならぬ,補欠役員の選任決議の取消が必要な場面があるのですが,何の規定もなければ,株主総会の選任決議を取り消すのならば,株主総会で決議を得なければならないと考えるのが普通でしょう。

 しかし,これでは解任決議と同じ要件となり,ちょっと厳しすぎます。離婚よりも婚約解消の方がずっと易しくできるように,役員の解任より補欠役員の選任の取消しの方が易しくできるようにしてあげるのが妥当です。
 
 そこで,施行規則96条2項6号は,補欠役員の選任の取消しを行いたいならば,取消手続を選任時に決定しなければならないこととしています。

 取消手続については,例えば,補欠社外取締役が社外性を失った場合には,代表取締役は,補欠社外取締役の選任の決議を取り消すことができる等いろいろな定めが考えられるでしょう。

 なお,取消手続を当初定めていない場合には,原則どおり,株主総会の決議により,補欠役員の選任決議の取消しを行うことになります。

 それから,補欠役員については,いくつか質問が入ってますので,まとめてお答えしましょう。

Q1
補欠の監査役を選任する場合に、(1)ではなく(4)のように、「社外監査役が欠員になったときは監査役となるが、他の社内監査役が欠員になっても監査役とならない」を実現させるには、施行規則96条2項3号に基づく選任が必要、という解釈になるのでしょうか?・・
 例えば、4名中2名が社”外”監査役という構成の会社(定款上は「5名以内」と規定)で、社外要件を満たす者を普通に「監査役の補欠」として選任していたところ、社”内”監査役が1名欠けた場合、施行規則96条2項3号をとくに適用していなくとも、法329条2項から
①「役員が欠けた場合」=監査役全員が欠けた場合、
または
②「法律若しくは定款で定めた員数を欠くこととなるとき」=社外監査役が半数以下となるとき、
に補欠は就任することになり、上記例では①②には該当しない=就任しないと理解していたのですが、これは間違っているということなのでしょうか?
Posted by tomo at 2006年03月03日 14:09
A1
 いくつかの質問が複合しています。
 まず,施行規則96条2項3号は,社外監査役が欠員となった場合に,社外監査役となる者を選任しておく場合の規定です。
 この補欠の社外監査役は,社外監査役以外の監査役が欠員になっても,監査役に就任することはできません。
 それから,設例は,監査役の定員は,定款で5名以内と規定しているだけですから,監査役が3名になっても,欠員にはならず,おっしゃるように補欠監査役が就任するような場面ではありません。
 定款で社外監査役の員数を定めている場合や,監査役会設置会社の場合に,施行規則96条2項3号の適用があります。

Q2
 監査役の任期は、「選任後4年内の最終の定時総会終結時までとする。ただし、定款により、補欠監査役の任期を前任者の任期の満了する時までとすることを妨げない。」(法336条1項、3項)とありますが、これは短縮だけでなく伸長されることもあるのでしょうか。たとえば、(予選の有効期間が4年だとして)補欠監査役Aが選任後3年経って監査役に就任した際、その前任者の任期の残存期間があと3年あった場合、Aの任期はあと3年(=前任者の残存期間)になるのでしょうか、それとも1年になるのでしょうか。
Posted by しん at 2006年03月03日 17:41
A2
 336条3項が伸長を含むとすると,万年補欠監査役が可能となってしまい,非公開会社に限って10年までの任期延長を認めた336条2項の趣旨を没却するので,336条3項は,伸長を含まないと解すべきだと思います。

Q3
 補欠の予選の有効期間は、「定款に別段の定めがある場合を除き、最初の定時総会開始時までとする。ただし、株主総会の決議によってその期間を短縮することを妨げない。」(施行規則96条3項)とありますが、定款で予選の有効期間を4年と定めた場合においても、特定の補欠監査役の予選の有効期間を、総会で短縮することは可能でしょうか。
Posted by しん at 2006年03月03日 17:41
A3
 4年と定めた定款の趣旨によると思います。
 株主総会の決議による短縮を認めないという趣旨の定めの場合は,これを短縮する株主総会の決議は,法令には違反しなくても,内容の定款違反となり,取消事由が生じます。

Q4
 補欠役員の「繋ぎ止め料」を支払わねばならないのではないかと思っています。まだ「取締役」ではないので「報酬」ではありませんが、それに準じたものとして決議上・計算上何か特別な手当てなり配慮なりはしなくて良いでしょうか。
Posted by mm at 2006年03月03日 07:59
A4
 おっしゃるように役員報酬ではないので,会社法上の手続き制限はありません。名目に苦慮しそうです。委任契約の予約権に対する対価ということになるでしょうか。


<補欠以外の質問>
ついでに,補欠役員以外の質問もやっつけます。
Q5
219条ただし書で「当該株式の全部について株券を発行していない場合は,この限りでない。」とありますが,どの時点で株券の発行がないことを要するのでしょう。
たとえば,株券を発行していない(けれど定款には発行するとある)会社が株式交換の総会決議を取って,その直後に1株だけ発行して譲渡,名義書換後に不所持申出して無効にしたら,これはただし書該当ということでよろしいのでしょうか。私としては,219条3項との関係で効力発生日までに株券が一つもでていないなら通知公告不要でよいように思うのですが。(現行法でも同じ問題があります。)
変な質問といわれそうなので,補足しますと,決算の都合などで2週間くらい株式交換の効力発生日を総会より先にしたとします。そうすると,総会と効力発生日の間が株券を事実上出していない会社でも開いてくることがあります。そのとき,間で株券を出したり消したりすると,公告がいるぞ,ということになるのか,ならないのか,という疑問です。
Posted by ik at 2006年03月03日 19:31
A5
 なんで途中でわざわざ株券を出すのかが,やっぱり分かり難いのですが,理論的には次のようになるでしょう。
(1) まず効力発生日の1ヶ月前の時点で,株券を発行していなければ,その時点では,通知公告義務はありません。
(2) 1か月を切った時点で,株券を発行すれば,そこで通知公告義務が生じます。
(3) その後,通知公告をしないうちに,株主が,不所持申出のために,会社に株券を提供した場合,その時点で通知・公告義務は消滅します。ただし,(2)の通知・公告義務の懈怠については,過料の制裁を受ける可能性はあります。

Q6
 34条1項但書の文言をみてみると、現物出資に限定した文言が見当たらないので、現物出資以外の設立無効の瑕疵を治癒すると考えてはいけないのでしょうか?会社法34条1項但書は、旧商法172条を承継した条文と思われますが、旧商法172条には「現物出資者」という文言があるのに、会社法34条1項但書には「現物出資」という文言がございません。また、会社法34条1項本文は特に現物出資に限定した内容ではないので、その但書も現物出資に限定する必要はないのではないでしょうか?もし、現物出資の設立の瑕疵だけを治癒する規定だとするなら、「現物出資」という文言が削られた経緯についても教えてください。
Posted by se at 2006年03月03日 20:13
A6
 34条1項ただし書は,1項本文のただし書ですから,1項本文が適用される現物出資のときにしか適用されません。現物出資者という言葉があるかどうかは,単に用例に従っただけだと思います。
 ただ,質問の意味が今ひとつよく分からないので,ピントはずれのこたえをしているかもしれません。
 

2006年3月 3日 (金)

補欠取締役の選任

 取締役の員数不足への対応策の一つとして、「補欠取締役」の話をしました。

 大学入試とか、ロースクールの入試で「補欠」の通知を貰った経験のある人にとっては、

「ホケツ、ホケツ言うなあ!」

と叱られそうですが、会社法329条2項は、思いっきり
「補欠の役員を選任することができる」
と規定しているので、心の痛みを抑えながら補欠役員の話を聞いてください。

 補欠役員の選任は、法律上は、「役員の欠員を停止条件とする選任決議」ということになります。
 したがって、補欠役員は、欠員が生じるまでは、役員ではなく、その時点では、登記も必要ありません。また、補欠役員に選任されても事業報告で開示されるようなこともありません。

 株主総会において補欠の役員を選任する際の,定め方については,決議事項の内容として施行規則96条で定められていて、例えば,次のような定め方ができます。

(1)候補者Aを,取締役の補欠とすること(取締役の誰が欠けてもAが取締役となる。)

(2)候補者Aを,特定の取締役Bの補欠として選任すること(取締役Bが欠けた場合はAが取締役となるが,取締役Cが欠けた場合はAは取締役とならない。)

(3)候補者A及びBを補欠取締役として選任し,Aを第1順位,Bを第2順位とすること(補欠者相互間の優先順位。なお、競合する複数の補欠取締役を選任した場合に
は、優先順位を定める必要がある。)

(4)候補者Aを社外取締役の補欠として選任すること(社外取締役が欠員になったときは取締役となるが、他の取締役が欠員になっても取締役とならない)

(5)候補者Aを,「社外取締役又は社外監査役」の補欠として選任すること(社外取締役が欠けた場合でも,社外監査役が欠けた場合でも,Aは就任することができる)

 この補欠役員について、一番質問が多いのが、選任決議が効力を有する期間です。

 これについては、施行規則96条3項を見れば
原則 決議後最初に開催する定時株主総会(取締役監査役選任権付株式が発行されている場合には種類株主総会)の開始の時まで
例外 短縮:株主総会の決議
   伸張:定款の定め
ということが分かります。

 ここで、問題です。定款の定めで伸張することができる期間に制限はないのでしょうか。

例えば、補欠取締役の選任決議の効力は、1万年後の総会までとするという定めを置いたとします。

このように、お前は、『万年補欠』だ。がはは。というようなことはできるのでしょうか。

 まあ、定めを置くのは自由ですが、補欠取締役が、取締役になったとき、会社法では、その任期を、就任ではなく「選任」の時から起算します。

 そして、補欠取締役が選任されたのは、補欠として選任された株主総会の決議の時ですから、いくら万年補欠取締役に選任したとしても、公開会社の場合、選任後2年後の定時株主総会の時までしか、その定めは意味がありません。

 非公開会社で任期10年とする定めがあれば、「十年補欠」までは可能ですが。

 その他、補欠については、いくつか言いたいことがあるものの、今日は果てそうに眠いのでここまでにしておきます。

またまた質問責め(2)

うっ、今日も質問が山のように来ています。
補欠役員の話をしたいのですが、まずは質問をやっつけましょう。

Q1 会社法414条で委員会に報告を要しないとされたとき,会社法施行規則111条4項で議事録を作ることになっています。これは,報告省略に関する議事録を別途作るのか,次の委員会議事録の中で,いついつ付で当該事項につき報告省略,作成担当だれそれ,とやってしまえばよいのか,どちらでしょうか。
Posted by ik at 2006年03月02日 01:27
A1
報告の省略については、それだけで一つの議事録を作成します。

Q2
譲渡制限の大会社で、株主には株主総会参考書類(招集通知+事業報告書+参考書類のセット)を委任状と一緒に送っており・・・、委任状と1名の株主の出席で総会決議をしております。その場合、WEB開示はできますか。
Posted by 会社法初級 at 2006年03月02日 02:12
A2
その株主総会参考書類は、会社法上の株主総会参考書類ではありません。
つまり、なくてもよいものです。煮るなり焼くなりしてください。

Q3
委員会設置会社で、会計監査人との契約を締結するのは執行役だと思いますが、なぜ、同意取得義務は「取締役」の義務とされているのですか(会社法399条)?執行役の義務と記述するのが相当と感じましたもので、ご教示くださいませ。
Posted by デストロベース at 2006年03月02日 08:34
A3
 会計監査人との契約を締結するのは、代表執行役ですが、その内容を決定する権限を誰が有するかは別問題です。
 会社法は、従来、ごっちゃにされていた業務と職務を峻別しており、機関の選任関係に関する事項(例えば、監査役の選任議案の提出等)など、会社の事業の執行とは異なるものについては、取締役が行うことにしています。

Q4 
 株主割当の場合,種類株主総会決議を要する(322Ⅰ④)ということですが,私は,「株主割当のされない種類株式の種類株主」の持株比率が低下することから,株主割当のされない種類株式の種類株主総会を必要とするものと解釈していました。しかし,商事法務(1741)P21に掲載されている表及びP24の「ロ 有利発行との関係」を見ると,「募集株式の種類の種類株主」の種類株主総会が必要になると読めます。どの種類株主総会が必要になるのでしょう?
Posted by スナップオン at 2006年03月02日 09:08
A4
 権利を害されるおそれがある種類株主であれば、株主割当てをうける種類株式についても種類株主総会は開催されます。たとえば、株式数が増えると配当が減少する種類株式とかだと、株主割当てでも種類株主総会が必要でしょう。

Q5 破産した取締役が民法の規定により退任した場合,欠員により権利義務取締役になるか否かの問題であり、権限拡張による監査役の退任の問題ではありません。破産による退任の場合、辞任でも任期満了による退任でもなく、会346条1項の要件には該当しません。権利義務に該当するとの結論は、委任終了後の善処義務を介して得られる結論なのかどうか、再質問、よろしくお願いします。
Posted by 猫太郎 at 2006年03月02日 11:53
A5
 失礼しました。ボーッとして、別の質問と勘違いしていました。
 おっしゃるように破産した取締役は、委任終了後の善処義務は生じますが、346条1項の要件には該当しません。手元に会社法でまなぼの記事がないのでどんなことを言ったか確認できません。講演録で誤解を与えるようなことを言ったとしたらごめんなさい。

Q6
469条の反対株主の株式買取請求ですが,467条1項2号の重要でない一部の事業譲渡で株主総会決議不要の場合は,譲渡会社の株主は株式買取請求はできないとの理解でよろしいのでしょうか。そしてその条文上の根拠は468条1項にいう「事業譲渡等」には467条1項2号のかっこ書を含まないからということでよろしいのでしょうか。
Posted by SUZUKAZU at 2006年03月02日 12:17
A6
重要でない一部の事業譲渡については、株式買取請求権は不要です。

Q7
法務省令の修正はいつ行われるのですか?
また、具体的にどこがどう修正されるのですか?
Posted by とーりすがり at 2006年03月02日 14:57
A7
現在、検討中です。施行前には修正する予定です。

Q8
 会社法107条1項3号及び同法108条1項6号に規定されている「取得条項付株式」についてなのですが,これに関して,株式会社が当該株式を取得することができる「一定の事由」として,例えば『株主総会の決議があったこと』『取締役会の決議があったこと』というような内容のことを一定の事由とすることは可能なのでしょうか?
A8
 設問の内容は、107条1項3号ロが該当しそうですね。

Q9
当事者は、すべて未上場会社であって、株主は、全社について、法人株主のみ、という前提であり、経済的には同価値であっても、財産の種類が異なる場合です。
ここで、金銭のみの配当を与える株主、現物(株式)のみを与える株主が存在しても、全株主が同意すれば、よい(株主平等は排除可能?)のではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 また、会社法の課税問題をテーマに扱っている専門書籍には、「ある株主には金銭で配当を行い、他の株主には現物で配当を行った場合に、、、」という記述が見られ、完全に同一種類のもので剰余金配当を行う、という前提では書かれていないように思われるのです。
「株主には、均等でなければならないので、Dだけ特別扱いはダメです。」ということであれば、この書籍の前提条件を否定してしまうことになるように思うのです。
Posted by emissary at 2006年03月02日 16:53
A9
基準株式数(456条)を定めたり、金銭分配請求権(455条)の行使があれば、一部の株主が金銭で、残りは現物ということはあります。
 全株主同意ならばよいとするかどうかは、解釈問題ですねえ。
 株主間の利益の移転が起こる場合もありうるので、その場合を「配当」と呼べるかということですね。即答は難しいなあ。

Q10
現在、閉鎖会社の定款の変更の作業をすすめているのですが、新株引受権の条項をどうしたらいいのか悩んでいます。
もとの定款には「当会社が新株を発行する場合は株主はその持株数に応じて新株引受権を有する」とされているのですが、これはこのまま残してもいいのでしょうか。それとも、会社法202条1項3項に合わせたような取締役会の議決によって新株の割当てを受ける権利を与えることができる旨の文言にするべきなのでしょうか。株主に株式の割当てを受ける権利を当然に与えるよう定款で規定することが、強行法規性をもった法律において定款自治の範囲内と言えるのかどうか、いろんな本を見たのですが載っていないので、判断しかねています。
Posted by shibata at 2006年03月02日 21:20
A10
 会社法には、新株引受権は、存在しませんので、その定めは無効ですね。
 非公開会社の新株発行は、特別決議が必要なので、定款で新株の割当てを受ける権利を与えると入れても、新株発行直前に定款変更でそれを廃止して、発行決議をすることができるので、規範としての意味があまりありません。ただ、そのような定款の定めを置くことは可能でしょう。その決議で総会決議や委任を受けた役会決議を縛るという意味を持たせることになるでしょう。

Q11
国などが特別法により発行株式の100%を保有する義務を定められているような株式会社の定款に関する質問です。当該会社の定款では、当該会社がある意味で究極の閉鎖会社であることを考慮すると、株式譲渡が出来ることを前提とした「譲渡制限」条項を定款に記載することは、妥当ではないと思うのですが、この場合において、もし、定款に「譲渡制限」条項がないことをもって、当該会社は、会社法における「公開会社」扱いをされてしまうのでしょうか?
Posted by 公務員 at 2006年03月02日 21:33
A11
会社法を適用する限り、公開会社ですね。特別法で、それをどう修正するかという問題だと思います。

2006年3月 2日 (木)

またまた質問責め

 今週は、インドシナの友人達を夕方から、東京見物に連れて回っています。
 他の国際会議でも感じることですが、アジアから来る各国の政府関係者は、女性の比率が非常に高く、今回の研修も女性の方が七三くらいで多いんですよね(なぜなんでしょう?)。ですから、なるべく女性にも喜ばれるようなところと思い、丸ビルとか、お台場のビーナスフォートとかちょっと綺麗なショッピングモールを回っています。
 ところで、彼女達が買い物をするときには、必ず中国製かどうかを確認するんです。そして、中国製だと絶対に買わないんです。
 私などは、ユニクロをはじめ中国製品に囲まれて生活しているので、中国製でも全然かまわないのですが、彼女達の国では、安物の中国製品があふれていて粗悪品も多いらしく、「なんで日本では中国製がこんなに高く売られているのか」と聞かれてちょっと困っています。
 他方、日本製の商品に対する信頼は高く、彼女たちは、日本製だけを選んで買っていくんですね。日本のブランドでも中国製はダメで、マイナーなブランドでも日本製ならOKなんです。企業の海外進出は今や常識ではあるものの、「made in Japan」も大きなブランドであることを思い知らされる今日このごろです。

さて、余談はこれくらいにして、会社法の話をしましょう。最近は、会社法の施行が近いせいか、質問が増えてきて四苦八苦しています。
 発売予定の本に書いてある質問が多いのですが、出版されていない本を見てくださいというわけにもいかないので、今日もまとめて質問に答えることとします。

Q1 会社法二条の定義のところの親会社及び子会社の定義(三号・四号)を解釈すると、会社法上子会社となりうるのは株式会社に限定されるのではないかと私は考えています。
Posted by ロンリープラネット at 2006年03月01日 02:03
A1
いいところに気がつきました。会社法だけですと、親会社から見ると子会社だけど、子会社から見ると親会社ではないということがありえます。そこで、会社法施行規則3条4項で、不都合が生じる135条1項の関係では、子会社を株式会社とみなしています。それ以外の規定では、子会社が株式会社ではなくても、特に不都合は生じません。

Q2
「剰余金の配当をする場合には」株式会社は、基準資本金額の4分の1に達するまで、当該剰余金の配当により減少する金額の10分1の資本準備金又は利益準備金を計上しなければならないと思います。では、このほかの剰余金の社外流出となる項目に関しても10分1の準備金の積立ては必要なのでしょうか。現行では役員賞与等が該当していたと思いますが、会社法のなかではその点に関してはどのように読みとれば宜しいのでしょうか。例えば剰余金による寄付行為等を想定しております。この場合、会社法上当該行為が認められるのかどうか?認められる場合10分の1の準備金積立てが必要となるのかどうか?
Posted by ガイス at 2006年03月01日 02:46
A2
役員賞与は、報酬等であり、剰余金の処分ではありませんし、準備金が増えることはありません。
剰余金を原資として寄付行為ができるかどうかは、会計基準によりますが、多分、できないのではないかと思います。いずれにせよ、寄付で、準備金は増えません。
 準備金の額は、会社計算規則49条、51条で決まりますので、該当条文を見てください。
Q3
私の質問の主旨は,株主総会議事録についてです。
取締役会議事録について,電話会議で行えば,電話先も開催場所として議事録に記載させるのが登記実務の取扱いです。
会則101Ⅲ①で取締役会が開催された日時及び場所とされ,括弧書で当該場所,つまり開催場所に存しない取締役…が出席した場合における当該出席の方法とされていますから,この遠隔地にいる方は「開催場所」にはいない,が出席した,という整理になるはずです。会則72Ⅲ①の総会議事録の文言も同様ですから,遠隔地を回線でつないだ場合,開催場所はあくまで第1会場だが遠隔地から出席している方もいる,という理解になると思います(会則72Ⅲ①は株主には当然ふれていませんが)。そうだとしますと,この遠隔地は,「開催場所」ではないがここから出席も可能と読めます。これを進めていきますと,たとえば,定款の招集地に第1会場を設けさえすれば,後は株主の便宜のために,各地に別会場を設けて出席させることもできるのではないか,さらにいえば,ネット総会すら想定しているのではないか,という質問でした。どこぞの会社のように10万人単位の株主をかかえて問題を起こしたりしますと,今年招集地の定めを削る前に新法の総会でどうやってやるんだという問題もあるんだろうと思います。リアルにはそういったことがありそうです。
Posted by ik at 2006年03月01日 05:48
A3
まず、前回の答えの補足ですが、取締役会議事録について、私は、「出席方法」には、遠隔地にいる取締役の所在場所の記載は必ずしも含まれないと思っているのですが、これは別の部署との調整マターですので、調整します。昔のようにテレビ電話といえば、どこか固定した場所でなければならないという時代ではなくなり、プッシュトークみたいに移動中でも、取締役会に出席可能であることを前提にすると、取締役がどこにいるかは、あまり意味がないのではないかと思うのです。たとえば、日本からアメリカに向かう飛行機の中で、衛生電話回線をつかってテレビ会議をしたら、「場所」をどのように書くのでしょうか?よく分かりません。いずれにせよ、登記にからむことは軽々にお答えできませんので、もうしばらくお待ちください。
 どうように株主総会の議事録についても、私は、第二会場もOK、株主のインターネットを使ったリアルタイム投票もOK(ただし、一カ所は招集場所は必要です)と考えていますが、議事録で株主の所在場所を書かなければならないと言うことになると、事実上、それが困難になります。そこらへんを含めて検討します。

Q4
会社法施行規則で,「社外取締役候補者」の要件の一つとして,「法425条の社外取締役とする予定があること」とあります。一方,今回のご回答では,社外として法425条の一部免責を受けた「後」に,開示対象の「社外取締役」になるということですね。すると,選任段階では,社外として選んでいなくても(つまり,参考書類に社外の開示をしないで選んでも),選任後一部免責で「社外」扱いできて,事業報告に社外として開示すれば足りるのでしょうか?それとも,やっぱり社外として選んだ人しか社外扱いできず,社外扱いした後で,事業報告に開示なのでしょうか?
Posted by CorpvsIvrisCivilis at 2006年03月01日 09:26
A4
 社外取締役候補者として選任された者でなくても、客観的に社外取締役であるならば、社外扱いすることはできます。

Q5
1つめは41pに特例有限会社について組織変更手続により直接合同会社への組織変更が可能と書かれていますが,これは,商号変更の登記完了により通常の株式会社へ移行し,その後,組織変更により債権者保護手続を経て合同会社へ移行する意味を省略的に表現したものなのか、それとも文字どおりストレートに手続きが可能なのかという点です。また,2つめは51pに破産した取締役が民法の規定により退任した場合,欠員により権利義務取締役になると書かれていますが,会346条1項の要件には該当しないため、これは委任終了後の善処義務を介して得られる結論なのかという点です。
Posted by 猫太郎 at 2006年03月01日 11:25
A5
1つめ 特例有限会社は、直接、合同会社への組織変更が可能です。
2つ目 公開小会社の監査役は、会計監査に限定する旨の定款の定めがあるものとみなされるものの、公開会社であるため、その定めの効力がなくなることから、336条4項3号によって「任期が満了」します。したがって、346条1項の要件を充たすことになり、なお監査役としての権利義務を有することになります。

Q6
取得条項付株式や、全部取得条項付種類株式の対価として株式や新株予約権、社債などの有価証券を用いた場合、証券取引法上の募集又は売出しに該当しうるでしょうか。
Posted by 法務丁稚 at 2006年03月01日 12:30
A6
すいません。証券取引法については、私が答えるわけにはいかないんです。縦割り行政なので(笑)。

Q7
①会社法施行後、取締役会議事録に議事作成に係る職務を行った取締役の氏名を記載する必要がありますか?
商事法務№1754の新春座談会で必要な旨が記載されておりましたが、施行規則では見当たりませんでした。
②施行規則124条社外役員を設けた株式会社の特則は、非公開会社にも適用されるのでしょうか?
③ウェブ開示をすることによって、株主総会参考書類への記載事項を省略したい場合、議決権の書面投票、及び電子投票を採用する会社でなくては、採用できませんでしょうか?また、他にウエブ開示を導入するにあたり条件はありますか?
④当社は非上場の大会社で、総会決議は殆んどが委任状にて行っていますが、委任状に関して新会社法で変更された件はありますか?
Posted by 会社法初級 at 2006年03月01日 16:45
A7
①決議の省略・報告の省略時の取締役会議事録には、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名が必要ですが(施工規則101条4項)、取締役会を開催した場合の議事録には、出席した取締役の署名だけです(369条3項)。
②含まれません。124条は、「会社役員に関する事項」(119条2号)です。
③書面投票・電子投票を採用していないのに、株主総会参考書類を送るというのは、どういう場合でしょうか?
④会社法施行規則63条5号あたりでしょうか。詳しくは、商事法務の解説や新刊本を読んでください(宣伝モード)。

Q8
株主は、変更後の効力発生日の前日まで株式買取請求権を行使することができるとのことですが、そうすると効力発生日が変更された場合に変更前の効力発生日の20日前から変更前の効力発生日の前日までに行使された株式買取請求権はどうなってしまうのでしょうか。
個人的には、反対株主の株式買取請求については、終期を効力発生日の前日とさえしておけば、始期については20日より前であれば会社で自由に設定できた方がいいのではないかななどと考えています。
また、会社法790条第2項で保護の対象と考えられている会社関係者として、株式買取請求権を行使した反対株主は、想定されていないということになりますでしょうか。
Posted by 花粉症 at 2006年03月01日 20:38
A8
ちょっと問題意識がよくわかりません。設問の株式買取請求権も有効に効力を生じます。
おっしゃるように、効力発生日の20日前以前のときであれば、会社は自由に通知することができます。20日間に期間を限定しているわけではありません。
790条2項についてのご質問は、意味がよくわかりません。

Q9
当社は、小さい商社なのですが、事業部門を大きく3つに分けています。
 例)繊維製品輸出入部門、出版・広告部門、不動産部門
現在の事業目的は、種々雑多な営業をカバーするために、煩雑となっているだけでなく、全ての事業をカバーできていない状態です。
そこで、会社法施行に合わせて、目的を整理しようという案が浮上しています。次のような目的は、新会社法の下で登記も許されるのでしょうか。
新定款目的案:
当会社は、主に次の事業を営む事を目的とする。
(1) 輸出入事業
(2) 出版事業
(3) 不動産事業
これに関連して、目的の明確性が維持されるのかどうか、法務省の方針決定がいつになるのか注目していますが、いつ頃、正式に発表されるのでしょうか。
早く、登記でも調査しないことが正式決定されることを願っています。
A9
これは、具体的な質問なので法務局に問い合わせてください。パブコメの案ならば、何ら問題はなさそうですが。法務省の方針決定がいつになるか、部署が違うので、よく分かりません。すいません。

Q10
W社が、剰余金配当を行うにあたり、A株主〜C株主には、金銭のみ、D株主には、現物のみ(もしくは+金銭)という区分けをすることは可能でしょうか?
 また、この現物が、P社株式の場合、W社の帳簿価格にて、財源規制を判断することと
考えていますが、間違いはないでしょうか?
 公開会社でなければ、定款に規定することによって、株主ごとに別異取扱いができるということです。どのような定款規定を想定しているのでしょうか?
 A、B、Cの三人(社)が株主とした場合「A、B、Cへの剰余金配当は、それぞれ異なった扱いをする」程度でもかまわないのでしょうか?
その他、現物配当に関して、見落としやすい点がありましたら、お教えいただけませんでしょうか
A10
株主には、均等でなければならないので、Dだけ特別扱いはダメです。
財源規制の関係は、W社の帳簿価格であることは間違いないのですが、会計基準で、その帳簿価格は、時価に評価替えしますので、注意が必用です。
 「別段の定め」は、具体的に規範として意味が分かるものならば、なんでもいいです。
ただし、「異なる扱いをする」という規定振りは、下手な書き方ですね。そのままではダメでしょう。同じようなことをやろうと思えばできるでしょうが。

Q11
新株予約権の行使があった場合の資本金に計上すべき額の規律(計算規則40)も、会計基準が定められないと適用がないということでしょうか。
 会計基準が定められないと適用されない規定をまとめて教えて下さい。
A11
 会計基準と矛盾する独自の処理を会社法・計算規則で作るということはないので、すべての規定ということになるでしょう。

Q12
組織再編行為の条文なんですが、反対株主の株式買取請求の806条です。3項の「消滅株式会社等は〜株主総会の決議の日から2週間以内に、その株主に対し、〜を通知しなければならない。」となっていますが、その株主の指示語である『その』の意味が、
買取請求権を行使できるという意味にもとれるし、株主全員という意味にもとれます。どっちが正しい読み方なのか教えてください。
Posted by The answer at 2006年02月28日 11:57
A12
 すべての株主のことをいいます。新設合併でも、株主総会の決議の日よりも前に、株主への通知は可能です。通常は、招集通知と兼ねることになるでしょう。

2006年3月 1日 (水)

質問いろいろ(3)

私の研修生活もはや3週間。東京に帰ってきてはいるものの、授業の都合で研修所住まい。
PHSの遅さに苦しみ続け、ブロードバンド環境が懐かしい今日このごろです。
普段は気にしていないのに、失って始めて大切さが分かるのが、愛とブロードバンド(笑)。
昨日、研修の合間に、ちょっとだけ法務省に立ち寄ってメールをチェックしたところ、山のような質問メールがたまっていて、しばし呆然とした後、黙ってパソコンを閉じました。
私は、パソコンを見なかったことになっていますので、私に質問のある方はこのブログでお願いします。

それから、今日は、ついに法制審議会「電子債権」部会が始まりました。
電子債権は、従来の指名債権・手形債権体系とは全く異なる新しい債権体系を、世界のどこにもない発想で構築し、金融実務に有用なツールを提供しようという画期的な試みであり、今からワクワクしています。立法スケジュールを考えると急ピッチで検討を進めざるをえませんが、折りをみて、このブログでも取り上げたいと思います。

今日は、またまた質問がたまっているので、お返事コーナーということにします。
ブロードバンド環境に復帰した暁には、各コメントに返事をするようにしたいと思いますが、あと半月ほどご勘弁をお願いします。
それから、質問の中で他の者と調整が必要なものは抜いてますので、そのうちお答えしたいと思います。(たまに忘れていますので、1週間経っても答えがない場合にはリマインダーで、もう1回書いてください。できれば、最新の記事にコメントしていただくのが、一番ありがたいです。)

Q1
営業譲渡や吸収合併の場合における反対株主の株式買取請求権の行使期間が新会社法では、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までとなっています(会社法469条5項など)。そうすると営業譲渡等の契約書で効力発生日を確定日で規定することになり、事前の株主への通知(会社法469条3項など)にも効力発生日を記載することになるのだと思うのですが(そうしないと株主がいつ株式買取請求権を行使すればよいのか分からないから。)、手続的な不備等により事後的に効力発生日を変更することになってしまった場合はどうなるのでしょうか。
反対株主は、変更後の効力発生日の前日まで株式買取請求権をできるのでしょうか。
by 花粉症さん
A1
株主は、変更後の効力発生日の前日まで株式買取請求権を行使することができます。
ちなみに、事前の株主への通知は、必ずしも効力発生日を記載する必要はありません(記載されていないても必ず20日間は行使できます)。親切心で効力発生日を書いた場合でも、効力発生日の変更を株主に通知する義務はありません。

Q2
会社法施行規則の社外取締役の要件の一つとして,「法425条1項1号ハの社外取締役であること」とありますが,法425条の社外取締役は,どうやら登記事項(法911条)ではありません。すると,法425条の「社外取締役」とは,会社がそのように扱うと決めた時点で,外部に表示しなくても「社外取締役」となり,事業報告で開示するのでしょうか?
それとも,例えば,免責のための株主総会の特別決議をもらうに際して,社外取締役扱いをしたときに,「社外取締役」となり,その特別決議の次の年の総会の事業報告に社外取締役として開示することなったりするのでしょうか?
Posted by CorpvsIvrisCivilis at 2006年02月28日 11:01
A2
 425条1項1号ハの社外取締役は、株主総会で責任の一部免除を社外取締役として受けた者です。
 したがって、免除を受けた後は、その社外取締役は「社外役員」としての開示の対象となります。

Q3
新株予約権の発行は総会決議が施行日以前にあるから旧法の枠を使えるとしても、取締役等に付与するなら、新法ではストックオプションは役員報酬になり、会社法361条1号3号決議がない限り付与できない、ということになりますか(その場合3月総会で会社法361条の前倒し決議をするか、会社法施行後に臨時総会を開催することになると考えますがいかがでしょうか。)?それともオプションの公正評価額が旧法の報酬決議の枠内であれば361条1号3号決議がなくとも付与可能なのでしょうか?
また、新法による条件付決議が許されるとした場合、同時に会社法361条の報酬決議も前倒しで決議しておくということでしょうか。併せてご検討いただけると幸いです。
Posted by ぱらりーがーる at 2006年02月26日 17:57
A3
 3月総会なら、旧法でストックオプションを付与する必要があります。その代わり、361条1号3号の報酬決議は不要です。
 新法による条件付決議については、少々お待ちください。

Q4
質問中経過措置政令は13条4項とすべきところ14条4項と誤っていました。
新株予約権の株主名簿管理人の経過措置について確認のため再度の質問をお許しください。
今度の会社法251条で新株予約権についても株主名簿管理人に事務を委託するものとしているため、仮に定款に特段の規定をしなくとも、かつ、既発行の新株予約権であっても株主名簿管理人に事務を委託しなければならないということでしょうか。経過措置政令13条4項はそのために会社法施行日から(株主名簿管理人に)事務を委託するまでを経過措置として定めているということでしょうか。
Posted by 白梅 at 2006年02月27日 21:40
A4
 経過措置政令13条4項は、既発行の新株予約権について、株主名簿管理人に事務の委託をしなければならいという義務を課したものではありません。そのまま、ずっと会社で管理することも可能です。

Q5
商事法務No.1756(2/5号)の17ページに、法務省民事局付検事の松本真様が、「公開小会社の監査役は会社法の施行により任期が終了する」とのお話をされています。
この件につきまして、5月に会社法が施行され、退任する監査役が6月総会の監査報告書を作成することには問題がないと考えているのですが、この退任した監査役の方の肩書きは何になるのでしょうか?権利義務を有するとしても、一応「退任」した以上、監査報告書に「監査役」と記すことに問題はないのでしょうか?
Posted by はまっこ at 2006年02月28日 10:22
A5
 肩書は、なんでもいいですが、監査役でいいのではないでしょうか。

Q6
法§369③の取締役会議事録への出席監査役の署名義務ですが、法§370のみなし決議に掛かる議事録の場合は、何をした監査役を「出席した」ものと判断すればよいのでしょうか。
取締役については「議案に全員が同意すること」がみなし決議の要件となっていますので、「同意した以上は出席だ」と扱ってよいものと解釈しているのですが・・
Posted by mm at 2006年02月17日 11:21
A6
 みなし決議には、出席者はいません。ですから、出席した取締役・監査役については、何も書く必要はありません。

Q7
会社法施行規則の議事録の書きぶりからすると,遠隔地にいる方もそこにいながらにして,一つの開催場所に出席しているという整理に読めます。
そうだとすると,たとえば定款に招集地を東京都港区とする,とある会社が大阪ドームに第2会場を設けて出席させる取扱いは可能でしょうか。
また,取締役会議事録の従来の書きぶりから変更になり,出席できない役員がその居場所を記載しなくてもよいという整理になるのでしょうか。
Posted by ik at 2006年02月22日 08:49
A7
取締役会議事録の話ですよね?
第2会場は可能でしょう。ただし、2つの場所がリアルタイムで会話できるような場合に限りますが。
「出席できない役員」というのは、欠席した役員のことでしょうか?欠席した役員は、居場所の記載は不要です。
招集場所に存しない役員で、テレビ会議等で参加した人は、出席の方法を書く必要がありますが、その人の所在場所は必ずしも書く必要はありません。

Q8
会社法施行規則附則第6条の読み方について質問させてください。
同条柱書は、「次に掲げる規定は、この省令の施行後最初に到来する事業年度の末日に係る事業報告であって、この省令の施行後最初に開催する株主総会において報告すべきものについては、適用しない。」と規定しております。

3月決算・6月総会の会社の場合(規則の施行は平成18年5月として)、
「省令の施行後最初に到来する事業年度の末日に係る事業報告」=平成19年3月期の事業報告、「この省令の施行後最初に開催する株主総会において報告すべきもの」=上記事業報告を報告する株主総会=平成19年6月総会、となり、したがって、附則6条列挙事由が適用されるのは平成20年総会からである。という理解は間違いでしょうか?
Posted by 名無し at 2006年02月27日 23:37
A8
その附則は5月 or それ以降に決算を迎える会社にとって意味のある附則です。
(mmさんの答えが正解です)。
3月決算の会社の事業報告は、整備法99条で旧法となっています。
なお、株主総会参考書類については、総会の招集決定を5月に開始した会社が困らないように、会社法施行規則附則5条で経過措置を設けています。

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