無料ブログはココログ

« 2006年1月 | トップページ | 2006年3月 »

2006年2月28日 (火)

代表取締役が辞任した場合の対処法

先日、ライブドアの代表取締役が逮捕されて辞任し、同社が裁判所に仮取締役の選任の申立をしたというニュースが流れました。仮取締役の選任申立てが大きく採り上げられるのは珍しいので、これを機会に

「代表取締役が取締役・代表取締役を辞任した場合に、会社は、どんなことができるのか」

について、簡単にまとめておきましょう。 なお、ここでは、定款で取締役や代表取締役の員数についての定めがないことを前提にお話しします。

委員会設置会社ではない取締役会設置会社においては、(1)取締役が3名以上いなければならない、(2)代表取締役を最低1名選定しなければならないというルールがあります。

代表取締役が辞任しても、(1)取締役が3名以上いたり、(2)他に代表取締役がいるならば、法的な問題はないのですが、(1)(2)のどちらか、又は両方の要件が欠ける場合に、どうするかが問題です。

第1の選択肢は、「何もしない」ということです。

何もしないのが、なんで選択肢になるんだという叱責の声があがりそうですが、会社法は、欠員が生じても困らないように、手当の規定を置いているのです。

 会社が何もしないと、辞任した代表取締役は、なお「取締役」及び「代表取締役」としての権利義務を有することになります(346条1項、351条1項)。
 つまり、辞めても、あいかわらず、取締役や代表取締役として活動する権限と義務があるということです。

 なお、代表取締役が勾留中という特殊な場合、取締役会に出席できない等の問題はありますが、次のようにやろうと思えばなんとかなります。

(1)取締役会の招集通知は、どのような形式で行ってもいいので、拘置所で接見して、代表取締役にも招集通知を行えば、その者が欠席しても、適法に取締役会が開催できます。

(2)仮に、辞任が相次ぎ、取締役の員数が1名になり、しかも、2名の辞任取締役が取締役会に参加できないとしても、取締役全員が書面で同意し、監査役が異議を述べなければ、取締役会の決議があったものとみなすことができます(370条)。ですから、代表取締役の選定等もをやろうと思えばできるわけです。

(3)それから、代表取締役が勾留されていると、一見活動ができないように思いますが、勾留中であっても、契約書にサインくらいはできますし、それが嫌なら、取締役会で支配人を選任すれば(362条4項3号)、当面、代表取締役の代わりになるでしょう。

第2の選択肢は、仮取締役、仮代表取締役の選任を申し立てることです。

第1の方法は、会社法的にはなんとかなっても、普通の会社は、「勾留中の人が経営にタッチしないほうが、世間体がいい」と考えることが多いと思います。

代表取締役の選定だけならば、第1の方法で取締役会を開催すればいいので、裁判所の力を借りる必要はありません。

しかし、取締役の選任は、株主総会を開かなければならないので、とりあえずは、利害関係人(例えば、残された取締役や辞任した代表取締役)が裁判所に「一時取締役の職務を行うべき者」(俗に、仮取締役と呼ばれています)の選任の申立てを行います(346条2項)。
 この仮取締役は、よく「職務代行者(352条)」と混同されるのですが、職務代行者は、通常、代表取締役の職務執行停止の仮処分と同時に仮の地位を定める仮処分として選任されるものですから、仮取締役とは全然違う制度です。
 おおざっぱに言うと、職務代行者は、株主や他の取締役が知らないうちに、ある取締役が勝手に自分を代表取締役として登記していたような場合のものです。
 これに対し、仮取締役・仮代表取締役は、辞任や死亡等により、員数が欠けた場合の制度ですから、職務代行者と混同しないようにしてくださいね。

 さて、話を仮取締役・仮代表取締役に戻しますと、この制度の最大の問題点は、裁判所が選ぶというところにあり、裁判所が誰を選ぶのかは決定がでるまでわかりません。
 申立ての際に、選んで欲しい人を申立書に記載したら、もしかしたら、その人を選んでくれるかもしれませんが、裁判所が裁量で選ぶので、全然、縁もゆかりもない人を選ぶかもしれません。

 したがって、そういう不安定な状態になることが嫌な会社は、第三の方法、つまり、株主総会で、予め「補欠取締役」を選任しておくということが考えられます(329条2項)。

この方法は、辞任する前に株主総会で選任しておかなければいけないので、今回のライブドアのように、辞任した後になんとかしようというときには使えませんが、危機管理を万全にしようという会社は、補欠役員を選定しておくのが一般的であろうと思います。

 なお、補欠取締役は、取締役が「逮捕されて辞任した場合」の制度ではなく、死亡したり、別の理由で辞任したりするときにも適用されますので、株主総会で補欠取締役の選任議案が出たとしても「この会社は近々、取締役の中から逮捕者が出るのではないか」等と考えないでくださいね。

 ちなみに、代表取締役については、会社法に「補欠」に関する規定がありません。

 しかし、これは、補欠代表取締役を禁止するという趣旨ではなく、その選定方法や選定決議の効力について法律による制限をしないという趣旨であり、取締役会の裁量で補欠代表取締役を選定しておくことは、禁止されていないと解すべきだと思います。

最後の方法は、一番ノーマルな方法ですが、株主総会を開催して、取締役を選任することです。

代表取締役が勾留中の場合、株主総会の招集通知を発することができるかというシビアな論点はあるものの(実務上は出せるでしょうが)、会社法は、「代表取締役」ではなく、「取締役」が招集通知を発する(299条)こととしていますので、定款で代表取締役が招集通知を発するという規定を置いていない限り、残っている取締役が招集通知を発すれば、適法に株主総会を招集することができます。

生々しい話題ではありますが、会社法の制度を身近に捉えられる機会と思い、いろいろな方法を紹介させていただきました。なお、以上は、すべて会社法を前提にしているので、現行商法ではできないこともありますので、注意してください。

2006年2月24日 (金)

質問いろいろ(2)

来週の月曜までにゲラの校正をしなければならないので、本日は、質問の答えだけにさせていただき、土曜日曜とお休みさせていただきます。 

Q1
238条3項1号に相当する規定が存在しないことのみをもって、新株予約権と募集株式における有利発行概念が異なるものと説明することは困難ではないでしょうか。
238条3項1号の発想の原点は、転換社債型新株予約権付社債の場合であると推測されます。もちろんこれをストックオプションにまで一般化して解釈することが、論理的には理解できないではありません。しかし、仮にそのように広く解釈するのだとすれば、募集株式の発行における有利発行概念も統一的に解釈するか、逆に有利発行概念に差異を設ける趣旨であれば、たとえば【払込金額が、当該者から株式会社に提供される役務その他の事由に照らし特に有利な金額であるとき】といった異なる文言を用いるべきではないでしょうか。
出来上がった条文の素直に読めば238条3項1号に該当するのは、オプションバリューが僅少であるため、無償としても【特に】有利な条件とはいえない場合を指すものと解釈するのが自然だと思います。
Posted by ty at 2006年02月24日 06:09
A1
典型的な縦並び横並びの問題ですね。
tyさんのおっしゃているのは、横並び方式、つまり、株式と新株予約権は文言が同じだから同じに解釈すべきだという考え方です。
私が言っているのは、縦並び方式、新株予約権の規律の中で統一的に解釈すべきだということです。論点<577>にあげた3つのストックオプションの付与方法について、tyさんのように株式との横並びで解釈をすれば、実質は同じことをやっているのに、②だけが有利発行になります。そうすると、総会決議なしにストックオプションを付与した場合、新株予約権の払込金額が公正価格と一致しているかどうかが争点となってしまうので、そういう争いが起こらないように、②も、「特に有利な条件」ではないということにしようということですね。
 解釈ですから、別にどちらでもいいと思うのですが、tyさんが横並びを重視するのならば、実務上は①か③の方式でストック・オプションを発行するということで徹底することになるでしょう。私は、株式と新株予約権は、権利の性質も立法趣旨も違うので、同じ文言を同じように解釈する必要はないと思うので、縦並びの方が好きです

Q2
新株予約権の株主名簿管理人の経過措置について質問いたします。
ストックオプションとして新株予約権を既に発行しておりますが、従来新株予約権の名義書換代理人は設置しておらず、新株予約権原簿を自社に備え置いておりました。今度の会社法251条では新株予約権原簿についても株主名簿管理人に事務を委託するものとし、経過措置政令14条4項では事務が株主名簿管理人に委託されるまでは管理人は事務を行うことは要しないとなっています。すると、当社が会社法施行前の既発行の新株予約権について定款で株主名簿管理人が新株予約権原簿の事務を行うと規定しても、行使期間を終了するまで、従前の名義書換代理人に事務を委託する決議をしなければ、その新株予約権が消滅するまでそのまま当社が新株予約権原簿の事務の取扱い、備え置きができるという理解でよいのでしょうか。
Posted by 白梅 at 2006年02月24日 12:12
A2
御社が定款で株主名簿管理人が新株予約権原簿の事務を行うと規定すれば、政令13条4項の「新株式会社が当該新株予約権についての新株予約権原簿に関する事務を委託するまでの間は」という要件を充たさなくなりますから、当該株主名簿管理人が、新株予約権原簿の事務を行うことになると思います(私が、何か事例設定を勘違いしてますでしょうか?)

Q3
Q12について、ご教示ありがとうございます。統一解釈を待ちますが、逆に既に総会で商法に基づいた枠の新株予約権を確保済みの場合に、5月以降その枠を利用した旧法の新株予約権を発行できるのでしょうか。
Posted by ぱらりーがーる at 2006年02月24日 12:53
A3
今日、ちらっと担当者と話をしたところ、条件付定款変更は、これまでも例があるので良いけれども、定款以外の決議については、条件付が広がるのは良くないのではないかという感触でした。登記実務にも関係してくる事項については、どこで線引きするかということについて、さらに議論を進めますのでしばらくお待ちください。
 ちなみに、既に総会で、商法に基づいた枠が確保済みの場合には、5月以降にその枠を利用して旧法で新株予約権を発行することは可能です。

質問いろいろ

 今日は、金沢を出発して、豊田市でトヨタの工場を見学しました。

 工場見学は、小学校のときに八幡製鉄所を見に行ったとき以来、30年ぶり。
 実は、つい2週間前、家族の遊び用にアルファードを注文したばかりだったので、
「うちの車を作ってたら面白いなあ。もしラインで「葉玉様用」なんて書いてあったら、こっそり落書きしたりできないかなあ」
なんて、のんきな気持ちで見学にいったところ、ロボットが500台ならんで、音楽に合わせて、溶接したり、クリーニングしたり。
 とても、落書きどころの話ではなく、インドシナの友人達と一緒に、目を白黒させるばかりでした。
 そういえば、私達のために、わざわざ東京から法務部の方がいっらっしゃって案内して下さったのですが、その方から
「葉玉先生のブログをいつも見てます。法務担当者で、これを見ていない人はモグリです。」
等と言われて、ちょっと照れました(汗)。
 最近は、平日で、1日4500人くらいアクセスがあるようなので、読者層を絞り込まず、いろいろ話をしているのですが、受験生が択一の時期にかかってきたようなので、経過措置を含め、総会準備用の話題を増やそうと思っています。
 トヨタさん、リクエストがあれば、何でも言ってください。すばらしい工場見学のお礼といっても、私ができるのは、会社法の話くらいですので、肉体労働でお返しさせていただきます(笑)。

さて、今日は、質問が貯まっているので、それにまとめて答えていこうと思います。
実は、旅先でPHS通信のため、1ページ開くのに1分くらいかかり、質問への返事がしづらいのです。来週くらいまでは、こういう形で、まとめてお返事させていただきます。

Q1 見せ金と業務上横領
新会社法100問の14問では、見せ金による払込みの効力は無効とされていると思うのですが、そうだとすると、見せ金によって払込まれた預金は会社財産ではないので、それを引き出しても業務上横領罪(刑法252条)や利益相反取引(356条1項2号)にはならないのではないでしょうか(会社法判例百選第6版21頁参照)。何か私に簡単な誤解があるのかもしれませんが、宜しくお願い致します。
by kijiさん
A1
業務上横領罪は、「自己の占有する他人の物」を横領する犯罪ですが、この「他人の」とは、民法上の所有権を意味するのではなく、民法とは別の概念として、他人が事実上経済上の利益を有するものと考えるのが通説だと思います。
 払込が無効であるとしても、その預金は、会社の口座に振り替えられ、場合によっては、他の会社の資金と混在していますので、民法上の所有権がある、又は、少なくとも事実上経済上は所有物と見ることができると考え、代表取締役がそれを自分の借金返済にあてたら、業務上横領罪が成立するものと思います。なお、預金を「物」と見ることができるかどうかは、昔、河上和雄古希記念論文集で論文を書いたことがありますが、今日は、割愛させていただきます。

Q2 債務超過会社の合併
商法でも、債務超過会社(B説 消滅会社が、その債務の全部の支払いをすることができないこと)を消滅会社とする吸収合併を禁ずる規定はないことを確認しておきたいです。
by bianchiさん
A2
現行法でも、無対価なら債務超過会社の吸収合併は可能であると言われています。でも、会社法では、対価を出してもよいということは、すでに記事で述べました。

Q3 新株予約権付社債の無償割当て
新株予約権付社債の無償割当てについて,そういう整理なんですか。条文を読んだときにそうなってしまうと思い,ある方を通じてA沢さんに問い合わせたら,社債の払込は別途要する趣旨とのご回答をいただいたようなんですが。条文の説明としては葉玉さんのご説明の方がすっきりしますが,どーなんでしょう?実質論としては,ただで負債をおって純資産を食いつぶすことを善管注意義務だけで規制すればよいとしてよいのか,は議論のあり得るところです
by ik
A3
 ある方が誰かは何となく想像がつきます(笑)。
 新株予約権付社債の無償割当ては、払込みのための手続が全く用意されていませんので、払込みなく、交付できると思います。
 もし社債部分について払込みが必要だとすると、通常の新株予約権付社債の発行と何ら変わらなくなってしまうので、わざわざ条文を設けた意味がありません(新株予約権に値段をつけて、社債を割引発行するのと同じですから)。
 負債を負って、純資産を食いつぶすことをどう規制するかは、難しい問題であり、現行法でも似たようなことを契約ベースでやれます。
 「形式は別だけど、実質的には配当だ」ということであれば、現行法だろうと、会社法だろうと、類推適用で妥当な結論をさぐるしかありません。
 仮に新株予約権付社債の無償割当てを禁止しても、社債を対価とする取得条項付新株予約権を無償交付すれば、同じことが実現できます。
 結局、資産が流出しないタイプのものも明確に規制しようとするならば、資本金制度を根底から考え直す必要があるでしょう。

Q4 中間配当と経過措置
定款(中間配当規定)と経過措置についての質問です。
定款に「当社は取締役会決議により・・・商法第293条ノ5に定める金銭の分配をすることができる。」と規定されている場合、会社法施行後はこの定款規定に基づく中間配当はできないということでしょうか?
それとも整備法の第66条第2項又は第91条のみなし規定を根拠に可と解釈してよいのでしょうか?
A4
すいません、手元に整備法がないので条文が確認できないのですが、当該規定は、会社法454条5項の定款の定めをしたものとみなされますので、定款の変更をしなくても、中間配当をすることができます。ただし、商法の条文をベースに文面が作られているので、実質の内容を変えないように表現を変えるのが通常です(これは定款の変更ではありません)。


Q5 相続と譲渡制限株式
 会社法130条(株式の譲渡の対抗要件)についてお尋ねします。改正前の商法では、「株式の移転」という文言だったのですが、なぜ、「株式の譲渡」に変更されたのでしょうか。会社法では、相続による株式の移転は、名義書換をしなくても会社に対抗できる・・・ということではないと思うのですが。
helpさん
Q5
相続による株式の移転は、名義書換をしなくても会社に対抗することができます。
包括承継とは、そういうものです。100問<281>を参照してください。

A6 発起設立と募集設立の割合
発起設立と募集設立の実務の割合はどのくらいなのでしょうか?
発起設立は金持ちが。募集設立はベンチャー系が行うものでしょうか?
by ライトさん
Q6
割合は統計がないので分かりません。多くは発起設立だと思いますが。
1円でも発起設立ができるので、発起設立が金持ちのものというわけではありません。
法制審でも、募集設立は要らないのではないかという案が出ましたが、使うときもあるかもしれないということで、残ることになりました。

Q7「連結配当規制適用会社」
・・・例えば、持株移転を行った場合、配当原資がないとして、配当しないという言い訳を会社にさせないためでしょうか?入ったことにより、連結配当が可能になるという理解で宜しいでしょうか?もし可能になったとしても、今年の3月末の配当には適用されないという理解で宜しいでしょうか?
sakiさん
A7
 連結配当規制適用会社は、簡単に言うと、単体で分配可能額があっても、連結ベースだと欠損が生じるような場合には、配当をすることができないという制度であり、単体で分配可能額がなければ、連結ベースの結果がどんなものであろうとも、配当することはできません。
 また、連結配当規制適用会社となるかどうかは、任意なので、嫌なら選択しないこともできます。
 いずれにせよ、3月決算会社ならば、今年は旧法ですから、適用はありません。


Q8 ライブドアが上場廃止になったら。
ライブドアが上場廃止になった際に株券の印刷で500億円もかかることは実際にはないと思います。実際に発券する場合には、複数の券種を活用するでしょう。
by 加賀鳶天狗舞さん
A8
 おっしゃるとおり、適当に試算しただけですから、そこまではかからないでしょうが、株券は、通常、流通単位で出しますので、複数の券種ですと、発行後に「1株に割ってくれ」と言われる可能性があるので、予備券を大量に刷っておく必要があり、それをどの程度見込むかということですね。私は印紙税を入れてないし、株券発行コストは、決して安くはないと思いますよ。


Q9 株券不発行が現実的か。
この問題を知ったとき、瞬間的に経済的合理性からは株券不発行制度の採用がベストであると考えました。
 しかし、現実論として株主数22万人といわれる会社が果たして採用可能なのか、ですね。上場企業は株券不発行制度に一斉移行して株式振替制度が利用されることになりますが、株式振替制度が利用されない非上場企業において株券不発行制度を採用すると、株式譲渡が非常に不安定になります。二重譲渡等のリスクもあり、株式譲受人は、不動産取引と同様に、株主名簿記載事項証明書の請求・受領、代金決済及び株主名簿の名義書換(共同請求)が同時に行われなければ、安心して株式を取得することができません。株式譲渡制限規定を設ければ、リスクは軽減されますが、株主数22万人ではそれは無理でしょうね。名義書換代理人たる信託銀行あたりがなんらかの妙案を講じてくれるのかもしれませんが
by  内藤卓
A9
 株券不発行時の株式譲渡は、基本的には不動産登記のようなものですから、「不安定」ではないでしょう(笑)。
 ご指摘にもありますが、名義書換の一件書類と代金とを同時履行にすれば、二重譲渡リスクは、必ずしも高くないと思います。
 結局は、市場で取引されないものについて、どこまで面倒を見てあげるかということにつきますね。
 会社にとって、株券不発行よりも株券発行が有利ならば、それを選択すればよいだけで、会社の事情によって判断は変わるでしょう。このブログは、「あそぶ」ためのヒントを与えるだけです(笑)


Q10  社外取締役
自社取締役を上場子会社に社外取締役として派遣していた場合、こんなに開示項目が増えて面倒になるのなら、社外取締役ではなく単なる取締役として派遣しようとすることは可能でしょうか。
by 悩める法務部員さん
A10
事業報告における開示は、社外取締役すべてではなく、「社外役員」(施行規則2条3項5号)に限られます。
ですから、社外取締役を前提とする法的効果を受けるつもりも、表示するつもりもなければ、ご質問のような対応も可能です。

Q11 発行登録
新株予約権発行の際に、有価証券届出書を提出することが必要であるため(証取法4条)、会社法240条4項に基づき、株主通知または公告を省略しようとした場合において、証取法8条3項に従い、15日に満たない期間で届出書が発効するときに、会社法240条4項の「2週間前まで」の期間が、それに応じて短縮されるような措置はないのでしょうか?
たとえば、届出書自体は即日効力を生じる場合であっても、会社法240条4項により株主通知または公告を省略するのであれば、届出書提出から割当日までは2週間あけなくてはならないのでしょうか?
by soraさん
A11
 差し止めをする機会を2週間与える必要がありますからねえ・・。
 いずれにせよ今のところはないです。

Q12 条件付き決議
たとえば、3月に開催される株主総会において、会社法施行を条件にして、新株予約権発行の授権(枠)決議を会社法に基いた内容で決議することはできますか?
by ぱらりーがるさん
A12
この問題は、実はデリケートなところがあって、条件付ならなんでもできると解釈されるのも困るのですが、個人的には、新株予約権発行の授権枠決議は大丈夫ではないかと思います。ただし、経過措置は、統一的に解釈しなければならないので、調整させてください。

Q13 概要
今回の会社法施行規則に「概要」と言う文言が多数見られますが、これは、どの程度のレベルまで記載することを想定しているのでしょうか?
例えば、規則63条7項柱書「議案の概要」です。
定款変更や役員選任する場合、どの程度の事項まで記載すれば要求を満たしたといえるのでしょうか?
by ホームパイさん

A13 概要
「概要」とは、「あらまし」「概略」のことですね。
定款の変更については、「大体、どのような内容の変更なのか」、役員選任だったら、「どんな役職に誰を選任しようとしているか」のあらましが分かればいいです。これじゃ、答えになってませんが、それ以上は表現のしようがないので、すいません。
リスクを採りたくないのなら、全部を書けば何の問題もありませんし、「全部を書くのは面倒くさいし、スペースが足りない。いくつか項目を省いてみよう。」ということであれば、それがまさに「概要」です。
 定款変更や役員変更は、まるごと載せてもスペースをあまりとらないかも。

Q14 保管証明責任 
 僕としては、保管証明責任を負う場合に限って払込を有効と解釈すれば良い、と考えましたが、どうなんでしょう? ・・葉玉先生がおっしゃる通り、銀行が制限を何らかの構成で対抗できないのであれば、有効にすべきですが、会社法が保管証明責任を募集設立に限っていることから、発起設立の場合、制限を封じる構成は採りえないと思ってました。そうすると、なぜ発起設立の保管証明責任を削ったんでしょうか?
by ふにくよさん
A14
保管証明責任は、客観的な証拠に基づき、会社の主観的要素も問題にせずに、絶対的な責任を生じさせるところに存在意義があります。
 発起設立で保管証明責任を削ったのは、そういう絶対的責任が生ずることを嫌う銀行等がいるため、なかなか払込取扱機関になってくれない、コストが高いという現実があるからです。
 逆に、民法94条2項類推のような一般法理に基づき、一定の要件のもとで、払込取扱銀行が責任を負うことを、会社法は除外していませんから、会社が銀行に払込金を返還することができる場合はあると思います。

Q15 ストックオプションと株式
葉玉さんの仰るように、職務執行の対価として新株予約権を無償発行するのが有利発行でないとすると、同様の理屈は、募集株式の発行にも当てはまるはずです。
すなわち、たとえば時価10万円の株式を取締役に対し1円で発行し、差額の99999円は職務執行の対価であるという場合、有利発行に該当しないことになります。
本当に、ここまで有利発行概念を緩めてよいのでしょうか。
またこの場合、資本金に計上される額は、会社法上、1円です(計算規則37条)。
かかる考え方は、ストックオプション会計における自社株交付の処理(SO会計基準65項)と齟齬が生じませんか。
新株予約権についてSO会計に対応した資本金組入れ額の定めが手当てされています(計算規則40条)。募集株式の発行についてかかる手当てがなされていないのは何故でしょうか。
by ty
A15
 100問<581>に書いているとおり、株式と新株予約権では、有利発行の解釈が異なります。
 株式の場合は、払込金額が株式の公正な価額よりも著しく低額であれば、特に有利な金gかうということになりますので、御懸念のような事態は生じません。
 だからこそ、募集株式の発行については手当がないのです。

2006年2月22日 (水)

上場廃止と株券発行コスト

まだまだ資本金の話をしたいのですが、書いていて飽きてきたので、少し時事ネタを。

ライブドアが上場廃止になる可能性があり、ちまたでは「上場廃止になったら、株式はどうなるの?」という疑問が飛び交っています。

 法律的に見れば、上場廃止は、別に死刑判決ではないので、解散になるわけでもありませんし、単に証券取引所で売買できなくなるだけで、株式の売買をするのはあいかわらず自由です(事実上流通性は乏しくなります)。西武鉄道を見ても、上場廃止になったからといって、西武新宿線や西武池袋線がなくなってしまったわけではないですよね。

 ライブドアが、きちんと稼げる企業であれば、株式の価値が紙切れになるわけではないですし、そこらへんは上場しているかどうかと関係ありません。

ただ、ちょっと心配なのは、株券の発行コストの問題です。

ライブドアは、上場しているので、株券保管振替制度の対象になっていて、株主の性質から考えても、その多くは、株券保管振替制度を通じて、株式を保有しているのではないでしょうか。

株券保管振替制度は、上場株券しか取り扱わないので、上場廃止になると保振の取り扱いも廃止されます。

ここで何が起こるかというと、株券の再発行問題です。

株券保管振替機関は、「保管」している株式の多くについて株券不所持制度を用いていて、実際には株券の発行を受けていません。

そのため、保振での取扱いが廃止されると、ライブドアは、株主に株券を返還するため、大量の株券を発行しなければならなくなります。

孫先輩のYAHOOを使って、ちらっとデータを落としてきたところ、ライブドアの単体の株主資本は、118,180百万円、一株あたり株主資本は136.55円、発行済株式総数1,049百万株となっています。
 ここで、仮に発行済株式総数の全てについて株券を発行することになると、1株約50円の印刷費用がかかるとして、約50,250百万円、つまり500億円も印刷代がかかってしまうのです。

 1200億円の純資産(資産である株式の価格が下落しているため、実際には、もっと減少している可能性はあります。これは最近勉強しているところですよね)で、500億円も株券をかけて印刷するのは、ちょっとどうかなあという感じです。
 1株に引き直すと、
 130円の株式のために50円かけて株券を印刷する
のですから、このままでは、ライブドアは、インターネット企業ではなく、株券発行を目的とする企業になってしまいます。

 では、どんな解決方法があるでしょうか。頭の体操で考えて見ましょう。

1つ目は、株式を併合すること。

1万倍の株式分割で株価をあげたライブドアが、今度は、1万分の1の併合をするというのは、若干皮肉な話ではありますが、株式数を減らせば、株券を発行する量が減るので、株券発行費用は安くなります。しかも、株式の併合の割合には限界はないので、10万分の1でも100万分の1でも減らせます。

 しかし、ライブドアの現状では、1株に満たない端数が大量に発生してしまうリスクがあります。つまり、ライブドアは、併合により端数となった株主に、現金を支払わなければならなくなるのです。競売で大量のライブドア株を買ってくれる人がいるかどうかも分かりませんので、これが現実的なのかどうか?

2つ目は、単元株制度を採用すること。

この場合、端数がでないので、一見、株式の併合よりもよさそうですが、1000株1単元が限界であるということに加え、単元未満株式の買取請求権がありますので、現状では、みんな買取請求権を行使して、結局は現金が流出する可能性が強いかもしれません(買い増し請求権を行使してくれる奇特な株主がいれば、資金は流出しませんが、まさかそんな株主はいませんよね)。

以上のように、端数の償還義務にせよ、単元未満株式の買取請求権にせよ、ライブドアから現金が流れ出すという点で問題があり、1株又は1単元をもっている株主は、割をくうかもしれません。
 また、それらの場合には、配当可能利益がなくても株主に現金を支払うことができるので、もっと割を食うのは、ライブドアの債権者かもしれません。

そこで、考えられる3つ目の手段は、株券保管振替制度の取扱廃止を停止条件として、株券を発行しない旨の定款の変更をすることです。

 できたてほやほやの株券不発行制度でありますが、こうした問題を一気に解決するには、この方法がベストのような気がします。

 この場合、ライブドアは、株券を発行しなくてもよくなるので、コストは0になりますし、株券廃止後は、株主名簿の名義書換で株式を流通させることになりますが、どうせ上場廃止になったら頻繁には売買にしないでしょうから、当面はそれほど困らないのでは?
 名義書換代理人は、すごくいやがるかもしれませんが。

 もっとも、この方法を採るならば、取扱廃止前に定款変更のための株主総会を開催しなければいけませんので、大急ぎで招集準備を始めないといけないですね。取扱廃止の日の実質株主を確定して、それを株主名簿に載せる工夫も必要かもしれません。

 以上のように、閑話休題的な時事ネタで、上場廃止の可能性のある株式のソフトランディング策を考えて見ましたが、これらは、公表された資料をもとに、思いつきで書いているだけであり、しかも、加賀のおいしい日本酒が多分に含まれた脳みそで考えたことなので、優秀な弁護士さん達がもっといい方法を考えてくれるのではないかと思います。

資本維持の原則の限界

 金沢に来ました。明日は、北国新聞社主催の国際会社法セミナーで講演します。
 金沢は、寒いかなと思っていたら、雪はなく、夜になっても5度くらい。わりと暖かい。
 雪が沢山あると思っていたインドシナの友人達は若干がっかりしてましたが、私が、天狗舞(有名な日本酒です)の山廃吟醸をぐいぐい飲ませてみたところ、元気回復。
 ところで、今日覚えたラオス語は、「乾杯」=「ニョ」。
 みんなで楽しく飲みながら、ニョー、ニョー叫んでいたものの、ビール飲みながら「ニョー」というのは日本人にとっては、変な液体を連想して若干微妙でした(笑)。

 さて、先週から資本金について、基本的なところを説明しています。今日は、資本維持についてお話しします。

 資本金は、バッファであり数字です。資産はお金や動産や不動産など実際の財産です。このことは、何度もお話ししてきました。

Step1 私が、設立時に100万円の現金を出資して、株式会社マルハ食品を設立し、資本金を100万円にしたとしましょう。その時点の貸借対照表は、次のようになりますね。
  資産=現金 100万円
  負債=0円
  純資産=資本金100万円
Step2 設立後、マルハ食品が、現金で80万円のカップラーメンを買いました。
  資産=現金20万円、商品80万円
  負債=0円
  純資産=資本金100万円
となります。
Step3 その後、マルハ食品がカップラーメンを100万円で売り、決算期を迎えました。
  資産=現金120万円
  負債=0円
  純資産=資本金100万円、利益剰余金(利益準備金+その他利益剰余金)20万円
 
 この極めてデフォルメ化された事例で何を説明したいかというと

(1)出資された財産は、原則として、何に使ってもいいのだから、資本金に見合う「現金」が、会社に残っているわけではない(Step2では、現金は20万円しか残っていない)。

(2)資本金は、過去に出資した事実を表すものであるから、商売をしても変動しない。増えるのは、新株発行や組織再編等をしたときだけ、減るのは、資本金の減少手続をしたときだけ。

ということです。
<剰余金の配当>
 次に、剰余金の配当について、考えてみます。

 Step3において、現金が120万円あるからといって、株主にその全額を配当することはできません。
 「来年は、損するかもしれないのだから、配当をする場合には、バッファである資本金100万円相当の純資産を残してください」
というのが、資本維持の原則と呼ばれているもので、461条が、この資本維持の原則を実現しています。

 461条・計算規則177条の分配可能額の計算は、かなり複雑で、後日、詳しく解説しますが、思い切り、簡略化して言えば
分配可能額
 =「その他資本剰余金+その他利益剰余金」
 ―「資産としての実質がないもの、又は、なくなったものの額」(自己株式、のれん(2分の1のみ)、繰延資産、有価証券土地の評価損)
 −「決算期後に配当した額等」
 +「決算期後に資本金・準備金の減少により剰余金を増加した額」
となります。

 よちよち歩きの赤ちゃんが、いきなり4回転ジャンプしたような感じでしょうが、とにかく、先ほどの例ですと、「利益剰余金20万円−利益準備金=その他利益剰余金」を限度として、配当をすることができます。

 なお、マルハ食品は、現金を配当するのであって、その他利益剰余金を配当するのではありません。その他利益剰余金は、分配可能額という枠の要素であり、資産ではないのです。
 ただし、貸借対照表は、資産=負債+純資産となるようにバランスさせなければいけないので、例えば、10万円の配当を行い、左の資産の部から現金10万円が無くなったときには、右からも何か減らす必要があり、設問の例では、「その他利益剰余金」を10万円減らすことになります。

その結果(利益準備金の額を1万円だとすると)、次のようになります。
 資産=現金110万円
 負債=0円
 純資産=資本金100万円、利益準備金1万円 その他利益剰余金9万円

<自己株式の取得>
 その後、マルハ食品は、自己株式を取得することにしました。
 
 マルハ食品は、現金を110万円持っているのですから、もし普通の商品を買うのだったら、110万円を丸ごと使うことができます。

 しかし、自己株式を買う場合には、分配可能額による制限がかかるので、使える資産は、分配可能額、すなわち「その他資本剰余金+その他利益準備金」をベースにした金額に限定されます。
 説例だと、その他利益剰余金の9万円をベースにした金額しか代金として払えないということですね。

 このように資産があったとしても、配当や自己株式の代金としては使ってはいけないというのが、資本充実の原則であり、要するに
 資本充実の原則=「資産の使い方」の限定
ということができます

 なお、分配可能額がなくても、自己株式の代金を払うことができる例外的な場合があり、
1.単元未満株式の買取請求(192条1項)に応じて自己株式を買い取る場合
2.組織再編行為時の反対株主買取請求(785条など)、組織再編行為以外の場合の反対株主買取請求(116条1項)に応じて自己株式を買い取る場合
がこれにあたります。
 また、
3.吸収合併、吸収分割または事業全部の譲受けにより自己株式を取得する場合
4.他の会社等が行う組織再編等の対価として自己株式が交付される場合など、株式会社が不可避的に自己株式を取得する場合
も、461条の適用はありません。

 このような場面に限って言えば、債権者の保護よりも、株主の保護が優先されていて、「株主に資産を流出させる」という資産の使い方ができるのです。

<資産が流出しないタイプの行為>
さて、以上のように、会社法は、分配可能額がない場合において、旧商法では制限されていなかった「自己株式の代金」として資産を使用する方法を禁止することとしたのですが、それでも、資本維持がうまく機能しない場合があります。

 それが、資産が流出しないタイプの行為です。

 例えば、株主に対して、
1.社債を割引発行(社債の金額よりも安く発行すること、差額が利息に相当する)したり、
2. 新株予約権付社債の無償割当てをしたり
することは、資産の流出を伴わないので、461条の適用がありません。

 したがって、分配可能額がない場合でも、新株予約権付社債を無償割当てしただけでは、461条は働かず、462条の責任も生じませんし、、その後、償還金として金銭を支払うときは、社債権者にお金を支払っているに過ぎませんから、やはり461条は働きません。

 このように、これらの行為は、場合によっては、461条の潜脱に使われてしまうおそれがあるわけですが、資本維持の原則は、あくまでも資産の流出を防止するという枠組みで語られてきたので、この原則に拘る限り、どうしようもありません。

 これからの課題として、資本維持の原則を発展的に解消し、あらたな原則を構築するということは視野にいれてもよいのかもしれませんが、現在のところは、潜脱的な行為については、462条を類推適用するという方策でも採ることになるでしょう。

2006年2月21日 (火)

現物出資不足額填補責任

 みなさん、本の名前募集に沢山のご応募をいただきありがとうございました。
 応募者の中に受験生が多数混じっていて
    「お前ら、こんなことしてる暇あったら択一を解け〜」
とか、法務担当者が昼間に書き込みをしているのをみると
    「あなた、仕事した方がいいんじゃあ・・」
とか、つっこみを入れたくなる書き込みもありましたが(笑)、実は、相当喜んでいます。

 あまりの反響の大きさに戸惑いを隠せませんが、普段書き込みをされない方も自由に書き込める企画だったようで、たまには、こういうのも面白いかも。

 タイトルはかなり絞り込みましたが、出版社と打ち合わせをしなければならないので、正式に決まったら、当選者を発表します。

今日は、龍田節先生をはじめとする関西の大御所の先生方と国際会社法シンポジウムに参加しました。シンポジウムのまとめの席で、龍田先生が「葉玉さんに、あとで、外国会社との直接合併が会社法で禁止された理由を聞きたい」という鋭い指摘があったので、飲み会の席でこっそり裏話をして勘弁してもらいましたが、そのうちブログでも書きましょう。

今日は、資本充実の続きをやります。

まず、fujiさんから
「資本金はバッファだという考えにはどうも違和感があります。債権者はその会社の資本金を勘案して取引はしないでしょう。資本金はある目的によって出資者から出資されたもので、その目的と違うことには使えない、その目的がなくなった時すなわち解散の時には出資者に戻される、そういう考えの方がすっきりすると思うのですが。」というご指摘を受けました。
 確かに債権者は資本金のみを勘案して取引はしないですが、それなりに資本金を信じる人がいるのも事実です。
 しかも、資本金の減少に債権者保護手続が必要とされていたり、違法配当の責任について分配可能額の範囲内でしか会社は免除できないこととされていたりするので、資本金制度が債権者保護を目的としたものであるということは否定できないと思います。

債権者保護というのは、資本金に相当する財産が拠出されたという信頼(資本充実)と、資本金については株主に返還しないという信頼を守る(資本維持)ということです。

さて、資本充実がらみでは
「現物出資の不足額填補責任(52条)は資本充実責任じゃない」
と100問で言い切った<論点77>のを、意外に感じる人が多いようです。

でも、これまで私の説明を聞いてきた皆さんですと、これが資本充実責任じゃないことを分かっていただけますよねえ。
 えっ、分かっていただけてない?
 ・・・では、具体例で説明します。

 葉玉が、A沢さんとともに、発起人になって、靴屋を設立することにしました。
 A沢さんは、現金100万円を出資したのですが、私は、1年間掃き続けた靴(時価100円相当)について、その価額(28条1号)を「100万円」と定款に記載して現物出資し、「株式会社 臭〜ズ」を発起設立しました。

この場合、現行商法でも、会社法でも
発起人の葉玉とA沢さんが、現物出資の価額填補責任として、会社に対し「100万円−100円=99万9900円」を支払う義務を負う点は共通です(ただし、会社法では過失責任)。

ただし、資本金の額として計上すべき額が、現行商法と会社法では異なります。

 現行商法は、発行価額がベースになりますから、100円の財産であっても、「100万円」のものとして株式が発行されたら、資本金の組み込みのベースは100万円になります。「臭〜ズ」の例だと、現金100万+現物100万=発行価額200万円が資本金の原則的金額になります。
 この資本金だとすれば、確かに99万9900円は、資本金の額に実質的に不足する分を補うための責任と位置づけられますよね。

これに対し、会社法は、現物出資については時価を資本金のベースにします。
「臭〜ず」の例ですと、現金100万円+靴100円=100万100円が資本金の原則的金額になります。

 とすると、資本金に見合うだけの財産100万100円は、すでに拠出され充実しているのですから、発起人の不足額填補責任である99万9900円は、資本の充実とは無関係なお金になりますよね(履行されれば、会社の利益として計上されます)。

 ところで、資本充実責任じゃないのに、なんで不足額填補責任があるのでしょう。

 それは、株式の引受人間の不平等を是正するためです。

 A沢さんは1株1万円で引き受けているのに、葉玉は、1株を名目1万円(実質1円)で引き受けていて不公平でしょ。
 だから、発起人に一旦不足額を填補させて、後は、発起人間の求償で調整することにするのです。説例では、葉玉が負担部分100%になるでしょう。
 
 このように資本金のベースとなる額を「時価」とする以上、不足額填補責任は、資本充実責任にはなりえません。
 また、株主間の不公平の是正をするための責任だからこそ、総株主の同意によって、その責任を免除することもできるのです(55条)。

 以上のように、会社法の中では、不足額填補責任は、資本充実責任ではないということで論理一環していますから、これを資本充実責任と解釈するのは、相当無理があるように思います。

 この関連で、次の質問については、どう思われますか。
Q1 現物出資の不足金額填補責任は株主の平等確保のための規定のため、株主全員の同意で免除できますが、この場合、登記に記載されている額より実際の拠出財産の額が過少のため、資本充実がおこなわれず、債権者の保護ができないと思われますが、この場合は、債権者は発起人等を虚偽登記に関する任務懈怠により、発起人等を責任追及するのでしょうか?
A1 
 上で述べたとおり、「登記に記載されている額より実際の拠出財産の額が過少のため、資本充実がおこなわれず」というところが違いますね。

Q2 繰延資産ですが、国際会計基準ではないようなので、日本の会計基準と国際会計基準の統合の過程で、日本も繰延資産がなくなっるかもしれないですね。
A2
 そのとおりで、繰延資産はなくなるかもしれないので、私達は「従来の考えに囚われずに、冷静に創立費について考えようね」という計算規則を作っているわけです。
 ただ、まだ創立費が繰延資産として生き残る可能性もありますので、もうしばらく様子見です。

以下、資本関係について、コメントに対する答えをいくつか。
Q2 
ふと疑問を抱いたのですが、
1.「設立に要する費用」(計規74条1項2号)
2.定款に記載すべき「株式会社の負担する設立に関する費用(いわゆる「設立費用」)」(会社28条4号)
設立に「要する費用」とは、「会社の負担する設立費用」が前提となっていると思うのですが、1と2は、異なる概念なのでしょうか?
つまり、2は(一部例外(施規5)を除き)定款に記載しないと効力が生じないが、1は、発起人が(会計基準を待って)1の額として別に定めればよいのでしょうか???
A2 
 1と2は、概念が違います。
 1の計算規則74条1項2号の「設立に要する費用」は、計算規則3条により、会計基準でその内実が定まります。
 2の「設立に関する費用」は、定款に記載しなければ、発起人が会社に求償することができないものであり、印紙税等(施行規則5条)は除外されます。これは、会社法・施行規則で概念がきまります。
 したがって、1かつ2,非1かつ2、1かつ非2、非1かつ非2の4通りのパターンがありえます。

Q3 新会社法では資本金0円でも実質的債務返済能力が100億ある会社(留保利益100億円)もあれば、資本金100億円でも実質的に債務超過に陥っている会社も想定されうるわけで・・・。実質的に債権者保護にはほとんど役に立たない制度を債権者保護として捉える実益はないような気がします。それよりはむしろ、「拠出資本」「獲得利益」「他人資本(債務)」を区別するために資本制度が存在すると考えるほうが自然ではないでしょうか・・・。
by ロンリープラネットさん
A3
 現行法でも、資本金300万円で返済能力100億円の有限会社はありえますから、ご指摘は現行法にもあてはまります。
 資本金が、実質的に債権者の役に立つかどうかは、見方次第ですが、資本金だけ見ていてもあまり役にたたないというのは、すでに述べたとおりです。
ただし、貸借対照表を見た上で、資本金を「バッファ」と考えれば、それなりの役には立ちます。

Q4 発起設立の場合の預合の扱いです。払込取扱機関は返還に関する制限を対抗できる結果、預合がなされると、会社が自由に使えないお金が資本金として計上されることになる、と思われます。ところが、預合の払込も有効なのですから、虚偽登記とはいえないし、資本充実にも反し、他の発起人と不公平な気もします。預合部分を損害とする任務懈怠責任(53条)が生じるという処理になるのでしょうか? そうすると、発起人が無資力の場合、資本金と実際に出資された額の乖離は生じうるということですか
by ふにくよさん
A4 
 まず、発起設立の場合、預合いを払込みとして無効とすれば、会社は、払込取扱機関に対して、一切、払込金返還請求権を行使することができません(それは発起人の個人資産ですから)。
 これに対し、預合いを払込みとして有効とすれば、会社は、払込取扱機関に対して、払込金返還請求権を有します(会社財産になります)。だから、その返還に関して発起人との間で「制限」がついているだけで、資本は充実しています。
例えば、発起人が払込取扱機関に借入金を返済したら、その制限が取れるでしょ。預合いを無効とする説は、その場合は、どう解釈するのでしょう?
 しかも、払込取扱機関が、その「制限」を会社に対抗することができるかというのは、解釈問題であり、民法94条2項を類推適用したり、発起人には返還制限を約束する権限はないと言ったり、その制限は公序良俗に反し無効であるとしたり、いろいろな法律構成で、払込取扱機関が、その制限を会社に対抗することができないという結論を採ることができます(もともと払込金保管証明制度が採用されるまえは、そういう解釈をしていました。)。
 ですから、ふにくよさんが、「払込取扱機関は返還に関する制限を対抗できる結果」と指摘している部分は、ちょっと早合点であると思います。発起人の任務懈怠も問題になりますが、まずは「銀行にある預金を引き出す」ということが重要です。
 無効説のように、払込を無効として、資本金もその分少なく計上するのも、一つの解釈だと思いますが、せっかく払込取扱機関から返還してもらえそうな払込金を、みすみす見逃すのはもったいないですし、募集設立の際に払込保管証明に基づく責任が、単なる利益になり、株主に配当してよいということになるのは、正直まずいと思います。

 <最後に、資本とは関係のない質問>
Q5 葉玉先生は以前、今後のブログの存続可能性が必ずしもはっきりしない旨、指摘されていましたが、春以降のブログ存続可能性、および、仮に更新停止になる場合、おおよその時期としていつ頃詳細は判明しますでしょうか。
葉玉先生の良質なサイトが見られなくなる(かもしれない)ことは、ファンとして本当に残念でなりません。
by 女性ファン
A5
 えーっ。私が知りたいところです。私は一体どうなるのでしょうか(笑)。
 たぶん3月の始めころには、去就が決まると思いますが・・。
Q6
「法制局読み」のことで教えて下さい。
A6
 法制局読みといっても、読み合わせのときに、わりと適当に言っていることも多いです。
 以上は、私ならこう読むというもので、本物とは違うかもしれません。
・「明らか」であると「認め」られる
   カギめいらかカギトジであるとカギにんめカギトジられる
・含む がんむ
・限る げんる
・取扱い/取り扱い しゅきゅうい、しゅりきゅうい
・設ける せっける
・代えて だいえて
・求めた きゅうめた
・先立ち せんりつち
・行った ぎょうった
・規程 きほど
・異なる いなる
・従い じゅうい
・著しく ちょしく
・繰り返して そうりへんして
・申し込み しんしこみ

2006年2月18日 (土)

設立費用と資本充実

 月曜日に,資本金は債権者が貸借対照表を見たときに参考にするためのバッファだという話をしました。

 水曜日には,資本充実が,「発行価額」という背伸びをした額から,「払込給付価額」という正味の財産をベースにすることになったという話をしました。

 今日は,そうした資本がらみの小問を検討して,資本金への理解を深めましょう。

Q1 資本金制度は,債権者保護の制度か?

答は,YESです。ただ,問題は,どんな風に債権者を保護しているかということです。

 資本金制度は,雑に言えば
①株主が,資本金に見合うだけの財産を会社に出資する(資本充実)
  →株主が,財産をきちんと会社に入れないと,会社が損をしたときのバッファ・余裕にならない。

②会社が出資財産を商売に使うのは構わないが,株主に返すのはダメ(資本維持)
→株主は,一旦,債権者のためのバッファとして差し出したのだから,それを株主に返したら困る。

という2つの原則を本質にしています。

 例えば,私が,所持金の1000万円を,マルハ食品の口座に振り込んで,「これを運転資金に使わせよう」と考えたとします。

 私が
① このお金を出資金として振り込めば,純資産と資本金が1000万円増えるので,会社の債権者はバッファが増えて喜びます。

② このお金を貸付金として振り込めば純資産も資本金も増えず,会社の債権者は,あまり喜びません。

 会社にとっては,1000万円の現金が使えるという点では同じでも,出資することにより債権者に安心感を与えることができるというのが,資本金制度のメリットです。

 ロンリープラネットさんが,ブログ(http://blog.goo.ne.jp/lonelyplanet_8082)に「一旦拠出されてからはその運用形態に関して法は干渉しない」と書いてらっしゃるのですが,それは微妙に誤解があります。
 先の例で,マルハ食品は,1000万円で商品を買ったり,従業員に賃金を払ったりすることはできますが,分配可能額(法律上は資本金をベースに算定される)がなければ,株主への返金だけは制限されてしまいます。この②株主への返金制限が資本金制度の非常に重要な性質なのです。
 
「株主が,債権者を安心させるために,会社に対し,会社が返還義務を負わないお金を会社に出し,その金額を資本金と呼んで,債権者に開示する」という法制を,資本充実・維持の原則と名付けているのですから,資本充実・維持は,債権者保護のための制度であるのは間違いないでしょう。

すごーく基本的な話をしていますが,個別の論点を考える上で確認しておいた方がいいので,①②を具体的にイメージしてくださいね。

 なお,①についても,②についても,例外はあります

 例えば,②については,単元未満株主の株式買取請求権や組織再編時の株式買取請求権などは,分配可能額がなくても,株主への返金を認めているので,資本維持の原則は絶対的なものではありません。
 これは,「債権者のためのバッファは用意しているけど,特定の株主があまりにもかわいそうなときは,株主の方が優先するときもあるよ」という例外ですね。

 では,①については,どうか。その点を理解するために,Q2にいきましょう。

Q2 設立時の資本金の算定において設立費用を引くのは,債権者を害するか?

今回の会社法では,設立時の資本金の算出で,払込みがされた額から「設立に要した費用のうち発起人が定めた額」を控除することができるようにしています(計算規則74)。

実は,この「設立に要した費用」を控除するかどうかは,会計基準で決めることであり,計算規則は,会計基準で控除すると決めたときに引けるように準備しているにすぎません。ですから,会計基準がない現状では,資本控除できる費用はないのです。

ただ,現行商法の取扱いと違うため,今回の処理を「資本充実を害する処理で,債権者を害する」と批判されたりするので,現行法と会社法で,どちらが,どちらが債権者を害するかを考えてみます。

例えば,発起人の私が,現金100万円を出資して会社を設立しました。そのときに,公証人の認証費用等で40万円の設立費用がかかりました。設立時に残っている現金は60万円ですよね。

 このとき,現行商法は,資本金を100万円とし,それに見合う資産として,現金60万円と創立費40万円があると考えます。
 
 会計を勉強してない人は「創立費って,費用でしょう?お金を払ったんでしょう?なんで,それが資産なの?」と不思議に思います。

 そのとおり40万円は,現在,会社にはありません。
 でも,それをとりあえず資産とするのです。これを繰延資産といいます。
 なぜ,繰延資産というのが認められているかというと,会計の世界では,「1年でどれだけ利益が出たかを正確に把握する」というのを一つの目標にしているため,テクニカルな観点から,費用を資産に計上することを認めているのです。

 例えば,司法試験受験生が,年間120万円のアルバイト料を稼ぎ,その中から生活費で80万円を使い,残った40万円と親から借りたお金を足して法科大学院の授業料100万円を払ったとしましょう。
 その授業料を,その年の経費で落とすと,受験生の損益計算書は,収益120万円−費用(80万円+100万円)=60万円の赤字になります。

 しかし,仮に,それから1年で合格し,1年の修習を終え,その後,大手事務所で8年稼ぐとすれば,その授業料は,大手事務所で稼ぐための先行投資だったといえるわけです。

 その場合,弁護士としての収益のための費用である授業料を,受験生時代に全額負担するのは,「1年ごとにどれだけ利益が出たか」を正確に把握するという点ではよくありません。
 そこで,授業料100万円を10年間に分けて,費用計上しようという考えが生まれます。
 その考えに立つと,その受験生の今年の損益計算書は
収益120万円−費用(80万円+10万円)=30万円の黒字
となるではありませんか。
 お金はすっからかんで,親から借金を60万円もしているけれど,黒字・・・。

 いえ,この受験生には,資産があるのです。授業料を支払うことによってえた能力のアップ分。将来の自分への投資。それが資産となるのです。
 こういう考え方をもとに,このとき授業料の100万円を資産として計上し,その後,10年間にわたって毎年10万円分ずつ,その資産を取り崩して,費用とするのが繰延資産の考え方です。

 つまり,本当は,財産ではないのに,1年ごとの利益を正確に把握するという観点から,知恵の結晶として生まれた勘定が繰延資産なのです。

では,この創立費を繰延資産にする処理と,創立費を資本金から控除する処理は,どちらが債権者の保護につながるでしょうか?

 設立時に現金が60万円しかないというのは,どちらも同じです。

 しかし,現行法ですと,資本金100万円ということになりますから,債権者は,現実に100万円が拠出されたと思うでしょう。債権者の信頼は,裏切られますか,守られますか。

 それに対し,新会社法・計算規則の考え方で,40万円を全額資本控除すると,資本金は60万円になります。
 債権者は,現実に60万円が拠出されたと思うでしょう。債権者の信頼は,裏切られますか,守られますか。

新会社法・計算規則の考え方が,資本充実の原則に反する,債権者を害するという批判が,非常に的はずれであると言うことがわかっていただけると思います。

 他にも資本充実がらみの小問を用意していたのですが,繰延資産で紙数を取りすぎました。
 続きは,来週の月曜日に。土曜日曜はお休みです。

2006年2月17日 (金)

本の名前をつけてください

新刊予定の本のゲラがあがってきました。
本文だけで700ページあり,これから修正をいれるので気が遠くなりそうです。

今回の本は,ぴったり1000問のQ&Aを通じて

1 会社法・施行規則・計算規則で,分かり難そうなところをできるだけ具体的に説明する(内部統制とか,防衛策の開示とか)
2 弁護士,公認会計士,司法書士,法務部・総務部の方の実務的なご質問(開示書面,計算,登記,金融商品開発等)に徹底的に答える。
3 会社法を利用する上で,知っておいた方がいい裏技をできるだけオープンにする。

ということをコンセプトに,著者一同,苦しみながら(泣きながら)作っています。

 基本的には,実務家が分からないことが出てきたときに,すぐに調べられるような辞典的なものを作りたいのですが,会社法の各分野を俯瞰できるような図表をなるべく入れて,会社法への理解の手助けができるよう知恵をしぼっているところです。

 ところで,実は,まだこの本の名前が決まっていません。

今日も,商事法務の担当のOさんが,わざわざ大阪まで打ち合わせに来てくれたのですが,会社法の本が乱立しているため,今までにないタイトルがなかなか見つからないのです。類似商号規制を廃止した怨念なのでしょうか。類似タイトルばかりで,頭が痛い(笑)。

 そこで,急に今,思いついたのですが,

   「皆さん,この本のタイトルをつけてみませんか?」

 この記事のコメント欄に書き込んでいただき,良いのがあったら,採用します。

 当選者には,特に賞金はありませんが,
①あなたの会社に葉玉が行って,会社法や省令の説明をする
②あなたの苦手な司法試験科目(刑事訴訟法を除く。)を葉玉が家庭教師する券
などで良ければ,賞品として交付いたします(笑)。

 しめきりは,来週の月曜日です。
 思いつきの企画であるため,たった2日応募期間がありませんが,ふるってご参加ください。
 なお,この件についての問い合わせを商事法務にするのはやめてください。
 誰も何も答えられませんから(笑)。

経過措置や省令等についての質問集(2)

実務家向けには、コメントへの回答を載せましょう。
今は、大阪でPHSでのアクセスなので、まとめて回答させていただきます。

Q1 株主名簿記載事項の証明書
122条1項に「書面の交付又は・・・記録の提供を請求することができる」とありますが、書面にするか、記録にするかは、会社が選べるのでしょうか。それとも株主が選べるのでしょうか。
by 新米弁
A1
会社が、書面か、電磁的記録かを選択することができます。

Q2 責任免除・取締役会の決議報告の省略
当社では小会社で監査役は当然ながら会計監査権限のみしかありません。
新会社法施行後もそのままで行こうと思っておりますが、
①現状定款には取締役、監査役の取締役会による責任免除規定を置いていますが、施行後は採用できなくなり、定款より削除する必要があるのでしょうか。
②また、会計監査権限のみですと取締役会の書面決議も採用できない。
③取締役会の報告の省略も採用できないのでしょうか。
それぞれご指導願います。
Posted by 会社法中級 at 2006年02月15日 03:50
A2
①会計監査権限のみの監査役しかいない場合には、取締役会による責任免除はできません。
ただし、施行前の行為については、経過措置により免除できますから、定款は、施行前の行為との関係では有効です。その規定を削除するとは、施行前の行為についても取締役会による免除をしないという趣旨と取られる可能性があります。
ですから、削除しない方がいいのではないでしょうか。
②取締役会決議の省略(370条)は、監査役がいなくても、することができます。
③報告の省略も(372条)、可能です。

Q3 公開会社の判断時期
規則§119において、事業報告の内容に関する公開会社の特則が定められていますが、ある事業年度(例:4月から翌年3月末)の途中(例:6月末の定時総会後)において公開会社が非公開会社となった場合、当該事業年度にかかる事業報告は、非公開会社として作成すれば足りるのでしょうか。
それとも、4月から約4ヶ月間(非公開会社化の事務手続を含む)は公開会社であったのだから、公開会社として事業報告を作成すべきなのでしょうか。
Posted by 会社法見習 at 2006年02月15日 09:44

A3
時点を正確に特定したいので、ちょっと回答を留保しておきます。


Q4 会社法施行規則66条1項2号には「第六十三条第三号ニに掲げる事項についての定めがあるときは、第一号の欄に記載がない議決権行使書面が発起人に提出された場合における各議案についての賛成、反対又は棄権のいずれかの意思の表示があったものとする取扱いの内容」とありますが、この「発起人」はこれでいいのですか?

Posted by とーりすがり at 2006年02月15日 16:09
A4
 間違いです。施行前に改正する予定です。


Q5 監査役の任期
会社法施行前後の監査役の任期についてご教示いただきたく存じます。
現在、いわゆる公開小会社である場合、会社法施行前に定款変更もしくは会社法施行時に就任する監査役の選任のための臨時株主総会を開催しなくてはならないという解釈でよろしいのでしょうか。
また、この臨時株主総会を開催しなかった場合は、会社には会社法976条22号により過料が科せられるのでしょうか。
最後に、会社法施行後、定款によって監査範囲の限定をして会社が、増資等によって大会社となった場合は、監査役の任期はどのように考えるべきでしょうか。
Posted by ビギナーズ at 2006年02月16日 15:31
A5
臨時株主総会を開催してもよいですが、開催しなくても、当該監査役は、なお監査役としての権利義務を有します。
臨時株主総会を開催しなかった場合に、過料に処せられるかどうかは、遅滞の程度問題ですが、6月の定時株主総会で選任すれば、合理的な時期に選任したことになるのではないでしょうか。
会社法では、増資をして資本金が5億円になったからといってすぐに大会社にはなりません。次の定時株主総会ではじめて大会社になります。その時点で会計監査人の設置義務が生じますから、小監査役も任期が切れます。

Q6 解任決議
この6月総会で取締役の解任議案が仮に出た場合、整備法の適用で旧法の場合は特別決議で、会社法で行えば普通決議になるのでしょうか。
Posted by dunk at 2006年02月16日 22:59
A6
そのとおりです。

Q7 不足額填補責任
現物出資の場合に生じる不足額填補責任は55条において株主総会で免除できると規定されていますが、これは、違法配当責任を免除できる場合と同じように、株主の配当原資が、不足額分無くなってしまうことによる規定なのでしょうか。
またその趣旨の場合、債権者は任務懈怠責任により発起人に責任追及することになるのでしょうか。
(記事には虚偽登記による民事刑事責任について、お書きになられていますが、会社法しか勉強していないため、任務懈怠責任しか発想できないことをお許しください)
ご指導のほどよろしくお願いします。
Posted by 公認会計士受験生 at 2006年02月16日 01:54
A7
「配当原資が不足額分無くなってしまう」という意味がちょっと分かりません。
不足額填補責任は、安い現物で、沢山の株式の交付を受けた現物出資者と、その他の株主との不公平を調整するものですから、株主全員の同意で免除できます。

Q8 払込担保責任
会社が倒産したときのことを考えてみると、管財人が発起人に払込担保責任を追及すれば、債権者に分配する財産は増えますが、虚偽の登記をしたという任務懈怠責任だけだと、債権者がおのおの、虚偽の登記と自己が被った損害との間の因果関係を証明しなければなりません。この因果関係の証明はほとんど不可能ではないでしょうか。
Posted by mousikos at 2006年02月16日 22:56
A8
その債権者が、資本金の充実を信じて取引をしたのならば、認められるのではないでしょうか。
本来、払込担保責任で救ってあげる必要がある場合と任務懈怠責任の範囲は、ほとんど重なると思います。
逆に、資本充実への信頼もなく、因果関係すら認められないものを、なぜ資本充実責任という払込担保責任で救ってあげるかが問われるのかもしれません。
もっとも、現行法で、現実に払込担保責任で、どれだけの債権者が救われているかということ自体、よく分かりませんが。

Q9 取締役会議事録の署名
取締役会議事録についての質問です。
 会計監査限定監査役は、取締役会への出席義務はありません(法第389条第7項)が、法第369条第3項は監査役設置会社という限定がありませんよね?
 すると、取締役会に出席した監査役の署名(又は記名押印)義務は、従来の小会社が適用除外(商法特例法第25条だった)のと異なり、すべての株式会社において適用されることになりそうです。適用除外規定が見当たりませんから。
 本来出席義務のない会計監査限定監査役は、たとえ出席しても、「出席した監査役」に該当しない、従って署名義務はない、ということでしょうか?
追記
 会社法施行規則第101条第3項第7号から「監査役」が外されたことから、会計監査限定監査役も署名義務を負うと解さざるを得ません。
 会計監査限定監査役は署名義務を負わないのであれば、第7号に「監査役(監査役設置会社を除く。)」を残しておくべきでした。
 いずれの趣旨でしょうか?
Posted by 内藤卓 at 2006年02月14日 22:47
A9 
会計監査限定監査役も、任意に取締役会に出席した以上、署名する義務を負います。
その取締役会で、報告聴取を行う等の権限行使をしていることが考えられるからです。

2006年2月16日 (木)

択一戦略(笑)

 2月も半ばを過ぎました。司法試験受験生だと、5月の択一試験が、いよいよリアルな感じで目の前に現れていることでしょう。

 私は、大学入試の時からマークシートは得意であり、司法試験では、ほとんど何の勉強もしなかった1回目の択一試験こそ30点くらいだったものの、翌年は、択一の模試を10回受けて平均56点くらいで、本試験も同じくらいだったと記憶しています。

 それでも、知り合いに、試験時間1時間半くらいで全部解いて毎回60点をとり続けるモンスターのような女性がいて、その女性が猛烈な勢いで択一を解いていくのを愕然としながら見ていました。

 択一が得意な人間は、実務に出て、沢山の仕事を能率良くやれるというのが私の持論です。山のように多い仕事をうまく捌くのと、わずかの仕事をじっくり完璧にやるのと、実務では、どちらも大切な能力ですし、どちらか一方だけでも際だった能力があるのなら、優れた実務家といえるでしょう。しかし、択一試験を合格しないと話になりませんから、「じっくり派」の人も、そこそこ、うまく択一試験をこなす必要はあります。

 それで、今日は、受験生用の閑話休題ということで
「元LEC専任講師 葉玉匡美の択一戦略」
をやりましょう。実務家の方は、今日は読み飛ばしてください(笑)。

 さて、択一で、60点を取る戦術と、46点を取る戦術は全然違います。

 いや、60点を取るのは戦術ではなくて趣味の領域。時間は有限なのですから、そんな努力をするくらいなら、論文試験に力を回せばいいわけで、仮に、合格点を45点とするならば、バッファを見込んで、1点上の46点くらいを確実に採るのが、目標設定としては正しいと思います。
 「択一の神様」と呼ばれなくてもいい。「普通の択一合格者」で満足しましょう。

では、どうやったら、46点が取れるか。
私なら、次のように考えます。
試験問題60問中
① 30問は、9割取る=27点
② 20問は、7割取る=14点
③ 10問は、5割取る=5点
これで、合計46点です。

まず、①は、「5択のうち、4つの選択肢を間違いであると言える問題」。
 これが30問以上は欲しいところです。
 択一というと、「答えを一つ選択する」と思っている人がいますが、大きな間違いです。
 「4つの間違いを選ぶ」のが択一です。だから、「択四試験」と言ってもいいかもしれません。

 私の経験上、基本的な問題(正答率7割5分以上の問題)が、必ず半分くらいはあるはずです。この基本的な問題については、基本書や予備校の教科書を繰り返し読んで、択一の問題を1000問くらい解けば、9割は解けるようになるはずです。

 ここで、あなたの今の状態をチェック。
CHECK(1)択一の問題を解いていて、4つの間違いを探せない問題(選択肢を一つに絞りきれない問題)が5割以下か?
CHECK(2)選択肢を一つに絞った問題についての正答率が9割以上あるか。
CHECK(3)予備校の模試などで、正答率が7割5分以上の問題について、自分の正答率が9割以上あるか。

(1)(2)(3)ともYESの人は、択一が得意のはずです。

(1)がNOの人。知識が足りないか、択一の訓練が足りないかのどちらかです。全体の半分の問題については4つの間違い探しができるようにしましょう。
(2)がNOの人。あなたは、正解の肢を探しています。間違いの肢を探しましょう。
(3)がNOの人。あなたは、基本ができていません。色々手を広げる前に基本的な問題を解きましょう。

次に、②は、「5択のうち3つの間違いを探せるが、残り2つのうち、どちらが間違いか分からないという問題」です。

 これが、20問以内なら合格圏内。
 なお、このように選択肢が2つになった問題を、鉛筆サイコロや、柿の種で、選ぶのは止めましょう。

 2つに絞り込んだ後は、「屁理屈を付けて選ぶ」、いわゆる「屁理選」です。
(「いわゆる」と書きましたが、すいません、今作った造語です)。

 本物の理屈を付けることができるなら、、選択肢を1つに絞り込めているはずですからこの場合に言えるのは、しょせん屁理屈みたいないものでしょう。
 それが分かっていても、屁理屈を付ける。その努力が「分からない時でも、知恵を絞り続ける」という能力を育てます。
 そして、この「屁理選」を続ければ、丁半ばくちの正答率50%の世界から、正答率70%の世界に自然と移っていけるはずです。

 ここで、チェック。
CHECK(1)模試の問題で、残り2つで迷った問題が、20問以下ですか?
CHECK(2)その残り2つで迷った問題の全体の正答率は、7割以下ですか?

(1)(2)ともYESの人。あまり悩まなくてよいです。選択肢が一つに絞りきれない問題が10問20問あるのは、当たり前です。模試等で間違った問題を復習し、間違った理由を理解しておきましょう。

(1)がNOの人。二股のかけ過ぎです。実生活では大丈夫ですか(笑)。ぼやっと勉強してきた人に多いパターンで、確実な知識が足りません。法律の勉強というのは、「いろいろな考え方がある」という面もありますが、明確に甲乙がつけられる面も山ほどあります。ここはアウト、ここはセーフという確実なラインを身につけましょう。条文の知識問題とか、判例の記憶問題とか、そういうものを沢山解くといいかもしれません。

(2)がNOの人。あなたは、「他人が正答率が高い問題について、迷っている」という状態です。つまり、他人よりも基本的な知識が不足しているということです。基本的な知識を補充しましょう。

最後に③は、「選択肢が2つにも絞りきれない問題」。
つまり、あなたが、その問題の内容を十分に理解できていない問題です。
これを10問以下に抑えたいところです。

模試でこういう問題が出たときの復習法は、ありません。
その問題は、今のあなたには、敷居が高いです。復習するのを止めましょう。
まあ、知識を補充する意味で、5分間復習するのはいいですが、それ以上は時間の無駄です。

ここでチェック。
CHECK(1)模試の問題で、残り3つ以上で迷った問題が、10問以下ですか?
CHECK(2)その残り3つで迷った問題の全体の正答率は、7割以下ですか?

(1)又は(2)がNOの人。まずいです。基本ができていません。とにかく、最低でも選択肢を2つまで絞り込めるようにしてください。

ところで、試験中に、全く分からない問題に出会ったとき、あなたなら、どうしますか?

(1) 捨てて、次の問題をやる・・・ダメ。どんな問題でも捨ててはダメです。
 とにかく一つでも選択肢を減らしましょう。まず2つだけ減らしてましょうよ。
 残り3つになったら、屁理選してください。

(2) じっくり考える・・・ダメ。こんな問題に時間を取ったらダメです。解き初めて5分で、選択肢の間違いが見つからない場合、あと2分で見切りをつけてください。その2分で、2つだけ間違いの肢を見つけて、残り3つで、屁理選してください。

以前、「締め切りが傑作を作る」とお話ししましたが、択一試験は、試験時間内で、
「正答を見つける」のではなく、「正答率」をあげるのだ
と考えるのが大事です。

ついつい時間を忘れて、正解を見つけようとしてませんか?答えを見るまでは、正解は分かりませんし、どんなに一つの選択肢に絞っても、試験時間中に「間違いかも・・」という不安が消えることはありません。

自分の不完全さをコントロールしながら、合格点に届くような時間配分と問題の解き方を身につけることが、択一試験を突破するためには大事だと思います。

というわけで、本日は、一見実務には、全く関係のない択一試験の解き方の話でしたが、実は、仕事のこなし方も、全く同じ方法論でいけますね。

発行価額と払込価額

 私が、商法を勉強し始めたとき、商法の先生から、「資本充実の原則というのは、資本金に見合うだけの財産が現実に拠出されなければならないという原則のことだ」と言われました。

 それで、私は、長い間、株式会社には、資本金に見合うだけの財産が、必ず「現実に拠出されている」のだと思いこんでいました。

 ところが、勉強が進んでくると、それが一種のフィクションだということもとわかりました。このことを、現行商法の設立手続を見ながら、説明しましょう。

 現行商法では、設立時における株式の発行は、大雑把に言えば、次のような手順で行われます。
①定款で、設立時に発行する株式の数を定める。
  ex.設立時に200株発行すると決める。

②発起人が、株式の発行価額を決める。
  ex.1株5万円と決める。

③発起人が自分でどのくらいその株式を引き受けるか決める。
  ex.発起人が自分で50株を引き受けると決める。

④ ①で決めた数の株式の全部が引き受けられていない場合には、残りの株式を引き受ける人を募集する。
  ex.募集して、3人の引受人が、全部で90株引き受ける。

⑤ ④で募集しても全部が引き受けれないときは、残りについては発起人が引受担保責任を負う。
  ex. 50株+90株=140株は引受人が決まったので、残り60株を、発起人が引受担保責任で、引き受ける(=払込み義務も負う)。

⑥ 以上で、200株の引受け先が決まったので、発起人は、自分で払込みをし、引受人に払込みをさせる。払い込まない引受人がいたら、発起人が払込担保責任を負い、代わりに支払う。

 以上のように、①設立時に発行する株式200株について、すべて引受人が決まり、②発起人の定めた発行価額5万円の全額が払い込まれるから、①×②で算出される資本金1000万円が、現実に拠出されるんだと説明されています。

 でも、この説明って、少し誤魔化しが混じっていて、この説明における資本充実は、発起人が引受担保責任や払込担保責任を負い、最後の尻拭いをするからこそ、初めて実現されるわけです。

 例えば、発起人が、無資力だったら、どうでしょう。

先ほどの例で、発起人は、合計50株+60株=110株を5万円で引き受けていますから、550万円の払い込みをしなければいけません。
 しかし、発起人が、無資力なら、無い袖は振れないから、払えません。
 そのため、資本金1000万円に見合うだけの財産は現実に拠出されないということになります。
 
 それで、現行法は、資本充実の原則を実現するために、設立時に発行する株式について全額の払込みをした証明書を添付しないと、設立の登記ができないという商業登記法の手続規定で、なんとか資本充実を実現しようとしているのです。

 もっとも、資本充実を商業登記法で実現するというのは、言い換えれば、手続さえパスできたら、資本充実を実現しないまま、設立することがができるということを意味します。

 例えば、次の3つの場合は、「現実の拠出がされない」場合です。

①現行法では、発起人が「預合い」や「見せ金」をしたら、払込みは無効だが、その場合でも、払込金保管証明書は手に入るから、登記はできる。この場合も、資本金は、発行価額ベースで算定されて1000万円となる。払込みが無効な株式については、発起人等が払込担保責任を負うが、発起人等が無資力ならば、資本金に見合うだけの財産は拠出されない。

②発起人が、払込みをしていないのに、払込金保管証明書を偽造して、登記をした場合も、①と同じで、発起人等が無資力ならば、資本金に見合うだけの財産は拠出されない。

③発起人が時価よりも著しく高い価額で現物出資をした場合、「発行価額」は、定款で定めた現物出資財産の価額をベースに算定されるので、資本金も、時価より著しく高い価額をベースに算定され、その額で登記される。この場合、発起人等は、不足額の填補責任を負うが、発起人等が無資力ならば、資本金に見合うだけの財産は拠出されない。

 ①②③のように、現行商法における資本充実の原則は、正確に言えば、「定款で定めた設立時発行株式×発行価額をベースに算定された資本金に見合うだけの財産をなるべく拠出させるように、発起人等に頑張らせる原則」です。
 皮肉を込めていえば、現行商法の株式会社は、発起人等が担保責任を果たせるだけの資力を持っているかどうかが重要である「人的会社」なのです(笑)。

まあ、定款と発起人の決定により「資本金」が決まってしまうので、資本金と現実の拠出に乖離が生じるのは仕方が無いのですが、そうした事実に目をつぶって、資本充実の原則を説明するのは、あまり親切ではないような気がします。

 これに対し、新しい会社法においては、資本金の額を「発行価額」ではなく、金銭出資の場合には、「払込価額」(現実に払込みが行われた額)をベースに、現物出資の場合は、定款で定めた価額ではなく、「時価」(給付価額)をベースに算定します。

その結果、上記の①から③までについては、次のような処理になります。
①発起人が無効な払込みをした場合、無効な分については、資本金に算入されず、客観的には、有効に払込まれた額だけが資本金となる。したがって、資本金に見合うだけの財産が現実に拠出されている。なお、無効な分を算入した資本金を登記した場合には、虚偽登記で、公正証書原本等不実記載罪が成立する。また、それで、債権者を害すれば、発起人等は損害賠償責任を負う。

②発起人が、払込みをしていないのに、払込金保管証明書を偽造して、登記をした。この場合でも、客観的には、払込みをしていない部分は資本金に算入されず、現実に払い込まれた分だけが、資本金となる。払込みをしていない部分について資本金に加えて登記したら、虚偽登記で、①と同じ処理になる。

③発起人が時価よりも著しく高い価額で現物出資をした。この場合でも、客観的には、時価をベースに資本金を算定する。時価を超える部分を資本金に算入して登記すれば、虚偽登記で、①と同じ処理になる。

会社法の考え方ですと、①②③とも、資本金は、現実に拠出された財産(払込金額や現物出資財産の時価)で満たされています。現実に拠出された財産だけを資本金に算入するから、当然です。

 現行商法のように、背伸びして、現実に拠出「すべき」資本金の額を定めると、それが充たされない場合が出てきますが、会社法のように、ありのままの姿、つまり、拠出されたものだけを資本金にすると、そこに差は出てきません。

 そして、ありのままの姿を公示すべきであるというルールをとれば、水増しして資本金を公示した場合は、みんな虚偽登記で発起人等に民事刑事の責任を追求することになります。

会社法が採る「払込・給付価額」ルールにより、ある意味、完全に資本充実の原則が実現したということもできますし、逆に、現行商法のように背伸びをしなくなったので、資本充実の原則は無くなったということもできるかもしれません。

 もちろん、現行商法と会社法と、どちらが債権者保護のために優れているかというのは、一長一短だと思います。

 会社法でも設立の登記のときに払込を証する書面を提出させ、定款で定めた最低出資額の払込があるかどうかをチェックしますので、その点は、現行法とあまり変わりはありません。

 ただ、払込のない分を資本金として公示することを認めた上で払込担保責任を負わせる現行商法よりも、払い込まれた分だけ資本金として公示するべきであるという会社法の方が、より「資本が充実」しているのは事実ですし、株式の発行と無関係に虚偽の増資の登記をした場合との整合性は会社法の方が優れています(これは、現行法でも虚偽登記とせざるをえません)。

 また、会社法には、引受・払込担保責任はありませんので、その点、現行商法の方が債権者の保護に厚いようにも思いますが、会社法でも、資本金の水増し登記には、任務懈怠責任が生じるのですから、実質がそれほど変わるとは思いません(仮に会社法で、払込担保責任を残したとしても、少なくとも過失責任化されたと思いますし。)。公正証書原本等不実記載罪が成立しやすいという点では、会社法の方が、現実に拠出されていない財産を資本金に算入することを抑止する力は強いかもしれません。

 いずれにせよ、会社法が「払込・給付価額」ルールを採用し、かつ、引受・払込担保責任を廃止するというルールを採用した以上、そのルールを前提に設立をめぐる論点を整理する必要はあると思います。

 そのあらわれの一つが、既にお話した「預合いが、払込みとして有効か」という論点です。資本金の算定についての新ルールに対する理解が深まったところで冷静に考えると、「預合いによる払込金について、払込みを無効として発起人に返還するより、払込みを有効として会社財産とし、かつ、資本金による拘束をかける方が合理的だ」と思いませんか?

2006年2月14日 (火)

経過措置や省令についての質問集

読売ホールの講演会を終わって、新幹線で大阪まで戻ってきました。
明日から、またインドシナの友人達と英語漬けの毎日です。ドヨーン。
来週の水曜日は、研修員全員で金沢に行って、北国新聞社主催のセミナーにでます。
で、私は、研修員であるにもかかわらず、なぜかそこで敵対的買収の防衛策について講演することになっています。
「一体、俺はどういう立場なんやねん?」と関西弁と九州弁の混じった疑問がわいてきますが、やれと言われれば、すぐにやってしまう私の性格上快く引き受けさせていただきました。金沢の皆さん、もし会場で私を見たら、お声でもかけてください。

さて、今日は、昨日の続きで資本充実の原則をやろうと思ったのですが、経過措置等のご質問がむちゃくちゃ貯まっていたので、質問をやっつけます(資本充実は、明日にご期待)。

Q1 相互保有の判定時期
法務省・松本検事の解説(商事法務NO.1756の13ページ下段(イ))では、相互保有の判定は、整備法90条による(株主総会の招集手続開始(取締役会決議)が会社法施行前か後かによる)と読めます。
一方、葉玉先生のブログ解説では、基準日が会社法施行前か後かによると読めます。
可哀想な法務担当者をお救いください。
基準日を設定したら、基準日が会社法施行前か後かにより、基準日を設定していない場合は整備法90条によるということでしょうか?
Posted by 可哀想な法務担当者 at 2006年02月11日 16:30

A1 結論から言えば、可哀想な法務担当者さんがおっしゃるように、基準日を設定した場合には、基準日が施行前か後かにより、基準日を設定しなければ(普通はないと思いますが)、招集決定の開始が施行日前か後かによります。
 相互保有株式の判断基準について、基準日説を採る場合、相互保有株式については議決権の行使が禁止されるのではなく、議決権の付与自体されないと捉えるのが妥当でしょう。
 したがって、基準日を定めた場合には、基準日が施行前か後かで相互保有株式の判断をするということになると思います。

Q2 改正商業登記規則61条第7項
改正商業登記規則第61条第7項
 資本準備金の額の減少によつてする資本金の額の増加による変更の登記(会社法第448条第3項に規定する場合に限る。)の申請書には、当該場合に該当することを証する書面を添付しなければならない。
 「資本準備金の額の減少によつてする資本金の額の増加」とは、いわゆる準備金の資本組入(会社計算規則第48条第1項第1号)であると思われますが、これと産業再生法の減資等の特例を取り込んだ会社法第448条第3項とは通常の場合リンクしないように思われるのですが。なにか想定事例があるのでしょうか?
Posted by 内藤卓 at 2006年02月11日 18:55
A2
株式の発行と同時に、資本準備金の資本組入れを行う場合というのは、実益がなさそうな感じもしますが、会社法上、論理的には可能です。だから、規定を置いているのだと思います(所管が違うので、推測です)。

Q3 個別注記表は、総会の承認の対象か。
計算省令案では、公開会社でない株式会社においては個別注記表を省略可能(同第82条)とされていましたが、会社計算規則では、簡略化が認められた(同129条第2項)形となっています。「大会社でない&公開会社でない」株式会社である中小企業の場合、この個別注記表も計算書類の一として定時株主総会の承認(会社法第438条第2項)の対象となるのですよね?
Posted by 内藤卓 at 2006年02月11日 19:51
A3
 個別注記表も定時株主総会の承認の対象となります。
 定時株主総会の承認の対象となる計算書類は、435条2項で①貸借対照表、②損益計算書+省令で定めるものとされていて、計算規則91条1項で、③株主資本等変動計算書及び④個別注記表が規定されています。
 なお、個別注記表は、非公開会社で会計監査人を設置していないものについては、重要な会計方針に係る事項に関する注記、株主資本等変動計算書に関する注記、その他の注記のみを記載すれば足りることとされています(計算規則129条2項1号)。

Q4  大会社特例規定の適用のない大会社・常勤監査役
2点ほど、どうにもわからないことが出てきました。
①商法特例法21条2項により、平成18年の6月総会まで、大会社に関する監査役の規制を免れていた新たに大会社になった会社について、経過措置はないのでしょうか?
②会社法のもとでは、常勤監査役は監査役会で選定されますが、商法のもとでは互選とされています。
これについても経過措置はないようですが、商法下で選ばれた常勤監査役については会社法施行後に、改めて監査役会で選定しなおさなければいけないのでしょうか?
あれば、ご教授いただけたら幸いです。よろしくお願いいたします。
Posted by 一法務担当 at 2006年02月11日 23:02
A4
以前、ご指摘を受けて、検討した結果、①について、施行時に、大会社特例規定が適用されていない大会社については、整備法52条の適用はなく、監査役会及び会計監査人を置く旨の定めがあるものとみなされない、という解釈を採ることになりました。
 整備法52条は、大会社特例規定の適用がある大会社が、わざわざ定款変更をする必要がないということを目的にした規定であり、施行時点において、監査役会や会計監査人を置いていない会社に、適用することを予定していないのは当然であるという理由によるものです。
 設問の会社は、会社法の規定により、定時株主総会において大会社になりますから、その定時株主総会で、監査役会や会計監査人を置く旨の定めを置く必要があります。
 詳しくは、商事法務に、松本さんの解説が出てますので、読んでください。今、新幹線なので、何号か分かりませんが、つい最近のやつです。

②について、監査役による常勤監査役を互選した行為は、整備法50条により、会社法の相当規定に規定する行為(設問では監査役会の決議による選定行為)とみなされます。
 よって、施行後に新たに常勤監査役を選定する必要はありません。

Q5 小監査役と責任限定契約
 取締役等の責任免除で、取締役会の決議によって免除するには、監査役設置会社(会計監査権限+業務監査権限共に有り)でなければないという理解をしておりますが、社外役員等に責任限定契約を締結したい小会社の場合、監査役は会計監査権限のみでは駄目なのでしょうか。会社法427条からはよくわかりませんでした。
Posted by 会社法初級 at 2006年02月11日 23:58
A5
会計監査権限しかない監査役の会社であっても責任限定契約を締結することができます。
定款に責任限定契約の定めを置く旨の議案を総会に出すときに、監査役の同意も不要です。

Q6 WEB開示
定款で「WEB開示することができる」のような規定を置いて、その都度、書面交付かWEB開示かを会社側が選択できるようにすることは可能ですか。
次に、参考書類で具体的にWEB開示が可能な事項は何になるのでしょうか。「議案」というのは、まさにそのもので、例えば役員選任議案の候補者の経歴はWEB可能という意味ですか。
Posted by dunk at 2006年02月12日 18:10
A6 WEB開示かどうかは、会社がその都度選択します。WEBで開示しない場合には、事業報告等への記載義務が免除されないというだけです。
議案は、議案そのものです。経歴などは、WEBで可能です。

Q7 社外役員などの知っているとき要件は、郡谷さんは、今日知りうる限りとのたまっておられましたが、調査義務はあって調査したんだけどわからなかったということを常識的には要するんですよね。そうすると、社外取締役にいちいち3親等以内の親族に取引先の人はいませんね、と一応聞かないといけないわけですか。それとも聞かなくても、特別知らなければよいのですか。
文言は後者ですが、常識論と郡谷解説からちょっと不安になりました。
Posted by ik at 2006年02月13日 23:39
A7 株主総会参考書類への記載義務が生ずるのは、「知っているとき」ですから、知らなければ義務は生じません。そこから先、調査義務があるかどうかは、善管注意義務の問題なんで、解釈次第でしょう。個人的には、会社が聞かなかったから、善管注意義務違反というのは行き過ぎのような気がしますし、損害が生ずる恐れもほとんどないと思いますが、不安ならば聞いておいた方が安心ですよね。聞くのは、タダだし。

Q8 業務執行者
会社法施行規則74条4項6号イ・76条4項6号イと、同124条1号の関係について、質問させていただきます。74条4項6号イ・76条4項6号イでは、特定関係事業者の「業務執行者」(=2条3項6号)である場合に、開示することになっていますが、124条では、「業務執行取締役、執行役、業務を執行する社員若しくは法598条1項の職務を行うべき者(他の会社が外国会社である場合にあっては、これらに相当する者。第3号において同じ。)又は使用人」である場合に開示することとされています。124条1号において、「業務執行者」という用語を使っていないのはなぜなのでしょうか。業務執行者では、( )内が適切に表現できないということでしょうか。
Posted by YA at 2006年02月14日 00:13
A8 範囲が違うので、表現ぶりを変えたということでしょう。

Q9 登録質
登録質の場合の物上代位権の行使方法について、会社法では株式と金銭の場合について規定がありますが、その他の財産の場合には、略式質と同じと解してよろしいのでしょうか。ご指導の程よろしくお願いします。
by公認会計士受験生さん
A9
おっしゃるとおり、特別の効力がない以上、原則通り、略式質と同様になります。


Q10 取締役会による免除
当社は、定款で、取締役会の決議をもって取締役・監査役の責任を法令の限度において免除することができる旨を定めていますが、会社法の施行を機に、定款を変更して、これらの根拠規定を商法の条文から会社法の条文に変更する予定です。
ところで、整備法78条は、旧株式会社の取締役・監査役の施行日前の行為に基づく損害賠償責任について、なお従前の例によると規定しています。
根拠条文を商法から会社法に変更した場合であっても、会社法施行前の取締役・監査役の行為に基づく責任について、会社法施行後に、取締役会決議によって一部免除することはできるのでしょうか。それとも、商法を根拠条文とする定款規定を附則として残さなければならないのでしょうか
by FKさん
A10 
根拠条文を商法から会社法に変更した場合の趣旨によります。
取締役会による免除は、免除の時点で定款が有効である必要があります。
設問の定款変更が、会社法施行前の取締役・監査役の行為に基づく責任について、会社法施行後に、取締役会決議によって一部免除することはできるという規定を廃止する意思はない場合、経過措置により免除することができます。
 逆に、商法による免除を認めない趣旨で変更したのならば、免除できません。
 定款の定めは、必ずしも商法や会社法の規定を引用する必要はないので、規定ぶりを工夫することもできると思いますが、念のため、付則として残すほうが安心かもしれません。

Q11 内部統制
内部統制の基本事項に関する決定義務ですが、取締役会設置会社には法§362/規則§100が適用され、その取締役に重畳的に法§348/規則§98の義務が課される訳ではない、という理解で正しいでしょうか。
A 11
348条3項は、2項の場合の規定ですが、2項は取締役会設置会社以外の株式会社にのみ適用されます(1項で、この条において同じとされています。)。したがって、取締役会設置会社について、重畳的に348条の義務が課されることはありません。

資本金・資産・純資産(2)

<資本金は、バッファに過ぎない>
(1)で述べたように、資本金、資産、純資産は、似たような言葉でありながら、全然意味が違います。会社が、実際に、債権者に対する債務を履行できるかどうかは、資本金の額とは全く関係がなく、債務に見合うだけの「資産」があるかどうか、言い換えれば、「純資産」が0円よりも大きいかどうかということが重要なのです。

 では、資本金というのは、何のための制度なのでしょうか。

 資本金は、株主が過去に出資した額をラインとして、配当したら、純資産がそのラインよりも下回るような場合には、その配当を禁止するための制度です。
 例えば、株主が1000万円出資したのならば、原則1000万円というラインを引きます(=資本金)。そして、純資産が1000万円を超えるまでは、株主に配当することができないし、純資産が1100万円に増えたら、100万円だけは配当できるようにする。そういう制度が資本金の制度です。資本金という言葉よりも、配当制限ラインという言葉の方がふさわしいかもしれません。

 ところで、純資産が1000万円ある場合、債務者に全額弁済しても、なお1000万円余っているのだから、株主に配当してもよさそうなものです。株主に配当することで純資産額がマイナスになるときに、その配当を詐害行為取り消し権を行使して、取り戻せば十分なのではないでしょうか?

しかし、会社の資産状況を表すBSには、いくつかの限界があるので、事はそう簡単ではないのです。

1 資産には、現金ばかりではなく、商品や建物等いろいろなものがあります。例えば、商品である食料品が賞味期限間近になったり、保有している建物の構造計算書が偽造だったりすると、BSに載っている価格と客観的価値の間に差が出来てしまいます。
 債権者としては、この減損リスクを、ある程度見込んで置かないと、債務を完済してもらえない可能性があります。

2 BSでは、決算期(3月末が多い)時点での会社の純資産しか分かりません。
 債権者が取引をするのは、その決算期の後ですから、決算期に、純資産が1000万円あったとしても、その後に取引で2000万円の損をしてしまうと、取引や債務の履行時には、純資産がマイナス(債務超過)になってしまいます。
 このように債権者としては、決算期後に会社が損をするるリスクも、ある程度、みこんでおく必要があります。

1や2のように、BSを見ただけでは分からない純資産減少のリスクを回避するためには、株主への配当禁止のラインを、「資産=負債」のラインに設定するよりも、少し余裕をもって、「資産−α=負債」のラインに設定する方が安全です。

 このαが資本金であり、言い換えれば、資本金は、債権者のためのバッファ、余裕、余力のようなものなのです。
 株式会社では、株主が出資した額をバッファとし、かつ、株主がこのバッファの中の財産を個人財産に戻してはいけないこととされているのです。

このような理解をしていただければ、資本金0円の会社を、資産がない会社であるとか、債務超過の会社であるとか、勘違いすることはなくなります。

資本金0円の会社というのは、決算期のBS上の純資産額が、現在の実際の純資産額よりも低いかもしれないというリスクについてバッファがなく、債権者が、そのリスクを全面的に負っている会社なのです。

他方、資本金1000万円の会社は、1000万円の範囲内で、債権者は、そのリスクを免れることができます。

例えば、資本金1000万円の会社で、BS上の純資産額が3000万円あった場合、2000万円は、株主に配当されてなくなるかもしれませんが、BS上1000万円の純資産は確保されているので、資産が陳腐化していたり、いろいろな要因で資産が目減りしたとしても、その額が1000万円の範囲内であれば、債権者は全額の弁済を受けることができます。

他方、その会社のBS上の純資産額が300万円しかなければ(700万円分の資本の欠損)、債権者にとっては、資本金の額にあまり意味はなく、
「期末のBS上の純資産―現在の客観的な純資産>300万円」
の場合には、全額を弁済してもらえません。
「期末のBS上の純資産―現在の客観的な純資産=<300万円」
ならば、債権者は、債権を全額を弁済してもらうことができます。

 分かりやすくするために、ちょっと乱暴な説明をしたところもありますが、資本金の役割について、理解していただけましたでしょうか。

 以上は、基本編で、現行商法でも、会社法でも、大した違いなないところです。
 次回は、資本金について、現行商法から、会社法で考え方が変わったところをお話しします。

資本金・資産・純資産(1)

日曜日の「会社法の基本原則」という講演会には、300人以上の方に来て頂きまして、ありがとうございました。会場に入りきれず、同時ビデオ会場まで設営されていたと聞いて驚くばかりです。

 若干、マイナーかなと思いつつも、受験生に誤解されがちな資本原則を中心に説明したところ、思いの外好評でしたので、何回かに分けて、ブログでも紹介したいと思います。
 
会社法の改正に絡むところも多々ありますが、まずは基本的な誤解を解くところから始めます(今日は、プロの方は特に目を通さなくてもよいかも)。

 会社法の勉強を始めると、最初に、「資本に見合うだけの財産が現実に拠出されなければならないという資本充実の原則は、債権者保護のために必要不可欠である」と教わります。
 そのため、初学者は、株式会社には、資本金に相当するお金がいつもキープされているものと勘違いしてしまうようです。

 そして、こういう人に限って、最低資本金制度が撤廃されたというと、「資本金もないような会社は、お金がないんだから商売することができない」とか、「資本金のない会社は、債権者に金も払えない」とか、若干的外れな批判をしがちです。

 これらの誤解は、「資産」と「資本金」を混同しているということに基づきます。

誤解1 資本金0円の会社は、商売をやろうと思ってもやれない。

 例えば、資本金0円、資産0円の株式会社葉玉塾という会社があるとします。こんな会社であっても、私が、葉玉塾に、当面の運転資金として、1000万円を貸し付ければ、「資産1000万円 負債1000万円 資本金0円」の会社になります。
 この資産の1000万円を使って、東京国際フォーラムを借りて、A沢さんという会社法の権威を講師として呼び、「絶対安全確実な敵対的買収防衛策を教えます。民事局の保証付」という題で、1人10万円の代金で講演させれば、1000人は聞きに来るでしょう。
 この場合、葉玉塾の資産は1000万円から1億円になり、債務は1000万円のままですから、葉玉塾には9000万円の利益が出ます。
 このように資本金0円であったとしても、資金を借り入れしたり、商品を掛けで仕入れたりすれば(商品を先に渡してもらって、代金の支払いは、翌月の月末とすること)、商売は、いくらでもやれるのです。
 というか、資本金なんかに頼らずに、お金を借りたり、買掛金で商品を仕入れたりして商売するのが、ごくごく一般的なのです。
 
誤解2 純資産が0円の会社は、債権者にお金を払うことができない。

 大間違いです。先ほどの葉玉塾を見てみましょう。私が最初に1000万円貸し付けたときの葉玉塾の財産状態は
「資産=現金1000万円 負債=借入金1000万円 資本金=0円」であり、純資産は、「資産1000万円 ― 負債1000万円=0円」です。
 この状態で、葉玉塾は、私に1000万円の債務を履行できますか?
 完全に返済することができますよね。だって、現金1000万円の資産がありますから。
 つまり、純資産0円の会社でも、債権者に対する債務を完全に履行することができるのです。誤解を恐れずに言えば、純資産0円の会社というのは、形式的には、債務を完全に履行することができる、債務者にとっては安心な会社なのです(ちょっと誇張があります)。

誤解3 資本金100億円の会社は、10円の債務を支払うことができる。

 資本金が100億円だろうと、100兆円だろうと、10円の債務すら支払うことができない場合があります。
 資本金は、その株式会社に過去に100億円の出資があったことを示しているだけで、現在、資産がいくらあるかを示すものではありません。
 例えば、私が、100億円を出資して、
「資産100億円 負債0円 資本金100億円」の葉玉塾を設立し、葉玉塾は、その旗揚げ企画として、「会社法世界ツアー by A沢」を企画し、代表取締役の私が、息子から10円借りて、公衆電話でA沢さんに出演依頼をしたところ、A沢さんが快諾してくれたとしましょう。
 そして、葉玉塾が、100億円をかけ、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、南極大陸で、会社法講演会を実行したところ、うっかり通訳をつけ忘れたため、観客が暴動を起こし、チケット代の返還や損害賠償などで100億円の損失が出たとします。
 この場合、葉玉塾は、初年度でいきなり「資産0円 負債10円 資本金100億円」の会社になってしまうのです。

このとき、息子がやってきて「パパ、この前貸した10円早く返してよ。商事法定利息でお願いね!」と言ってきたとしても、資本金100億円の葉玉塾は、資産が0円であるために、息子に10円の返済すらできません。

 資本金については、「資本金の額に見合うだけの財産を会社に確保するための制度」と説明されるため、100億円の資本金のある会社は100億円の資産があると誤解されやすいのですが、本当は、資本金は、過去に出資されたという事実しか示していないので、登記を見て「この会社は、資本金が大きいから、安全だ」と考えるのは、大きな間違いなのです。
 会社が、現在、どのくらいの資産を持っているのかを知りたいならば、資本金なんかを見るよりも、毎年作られる貸借対照表(バランスシート・BS)を見て、純資産がプラスか、マイナスかを調べた方がよっぽどマシです。

省令の解説会

今日は、読売ホールで、商事法務主催の会社法施行規則の解説会をやりました。
 場所が、有楽町のビックカメラの上で、エレベーターもビックカメラの中にあり、しかも、エレベーターの数が少ないので、弁護士さん、司法書士さん、企業の法務部・総務部の方などネクタイ組1000人が、ビックカメラ内にひしめき合ってエレベーター待ちをしている姿は、かなり異様な風景でした(笑)。
 私も、その風景にとけ込んでいましたが。

 それにしても、膨大な省令の量に対し、3時間の解説は短い。

 省令の解説は、新刊予定の本や、商事法務等の解説で、できるだけスピーディーにやっていこうと思っていますが、先陣を切って、郡谷さんが連載を始めたのが「T&Aマスター」という雑誌です。
 この連載は、イラストや図表を用いて、会社法施行規則や会社計算規則を分かりやすく解説するという、従来の法務省担当官による解説では考えられないような企画であり、記事に目を通した限り、見た目から凄く柔らかい。

 郡谷さんは、省令作成の中心人物で、内容の信頼性は日本一高いですし、雑誌側の担当者も、私が信頼を置いているタケちゃんマンという人なので、間違いなく面白くてためになる連載になるでしょう。今日、発売された2月13日号から4月24日号まで全11回の連載の予定だそうです。

 ただ難点が一つ。の雑誌は、年間48号で2万5200円という年間定期購読誌だということです。1部にすると、525円なのですが、ばら売り無しだということで、ちょっと敷居が高い。私なら、「ちょっと個人で買うのは・・。もうすぐNITENDO DS LITEが出るし。」と思うでしょう。

 という話をしたら、タケちゃんマンが、省令解説の載った2月13日号のサンプル誌を無料送付してくれるというので、興味のある方は
http://www.lotus21.co.jp/information/mihonsi.html
で申し込まれたらいかがでしょうか。
フリーダイヤル 0120-6021-86 でも受付可能だそうです。
以上で宣伝モード終了。なお、私は、T&Aマスターから一切広告料をいただいておりません。どうしても受け取ってくれというのならば、貰いたい気持ちもありますが、クビになりそうなのでやめておきましょう(笑)。

2006年2月11日 (土)

施行規則・計算規則(計算・総会手続関係)

 本日は、同僚の郡谷さんと一緒に、大阪会館で省令の説明会をしてきました。会場にぎっしり、600人くらいのお客さんがいて、ちょっとびっくり。
 月曜と火曜は、読売ホールでやるんですが、そこも1000人ずつがあっという間に予約で満杯だったそうです。商事法務さんから「大きな会場が取れなかったので、同じ会場で二日連続、同じ内容を話してください」と言われました。

 こういうシチュエーションで、一日目の最後に、『では、続きは、明日やります。』なんて言ったら、どうなるんでしょうか(笑)。
 私には、任務懈怠責任が成立しそうですが、講演会は入場無料なので、損害が生じないのではないかと思います、きっと。

 ところで、私達が、こうした講演で相当稼いでいると誤解している人がいるようですが、実は、これらの講演は、全部、「タダ」なんです。法務省にも、私達にも、お金は入ってきません。一種の行政サービスとしてやっているものです。

 大昔は、こういう講演をやるとウン十万円も貰っていたという時代もあったという風の噂が聞こえてきます。でも、今の世の中、そう甘くはないんです。

もし、このブログを見て、「民事局付検事になれば、かなりお金が稼げるらしい」と勘違いして、検事を目指す受験生がいるといけないので、「検事はお金のために仕事をやるのでない。」と強調しておきます。ちなみに、私は、正義のためではなく、趣味で検事をやっています。

 ここ2日間ほど、受験には、ほとんど関係なさそうな、会社法施行規則一言コメント特集をやっています。
 受験生は、今頃は択一で苦しんでいるころでしょうから、今週は憲民刑に専念していただき、会社法施行規則の読み直しを迫れている可哀想な法務担当者向けに、今日も、省令一言コメントをやりましょう。
 今日は、計算書類の監査等のところです。
 なお、今日の解説する部分は、パブコメ版からあまりにも変わっていて、一つ一つ違いを説明する気力がありませんので、ざっとした説明をします。

1 計算書類の種類(規則91)
BS,PLのほか、株主資本等変動計算書、個別注記表を作ろうというものです。

2 表示の原則(規則89)
 2項は、外国語による計算関係書類の許容。親会社が外国法人だったりすると、この方が便利です。
 3項は、「BS,PS,株主資本等変動計算書、個別注記表は、全部で一体的なものであり、別々に作らなくてもいい」ということです。だから、個別注記表に記載すべき事項をBSの注記に書いたりしても、OKです。

3 株主資本等変動計算書(規則127)
 会社法は、期中に、何回でも剰余金の配当をしてもいいということになりましたので、期中に、株主資本がどんな風に動いたか分かりやすく表示しましょう、というのが、株主資本等変動計算書の発想です。ASBJに、ひな形がでているので、それを見た方がイメージがわきます。
 
4 注記表(規則128〜144)
 リースの注記について、定量的なものを計算書類の作成段階で書くのは、時期的に難しいという声に応え、定性的なもので足りることになりました。

5  監査スケジュール(計算153−158)
 通知期限が大事です。通知期限までに会計監査報告、監査報告を通知しないと、監査したものとみなされちゃいます。

 それから、特定取締役、特定監査役というのが目新しい。要するに、会計監査報告や監査報告の通知のやりとりを担当する取締役、監査役のことです。定義は、条文に書いてありますが、監査役会と監査委員会は、独任性の違いによって、定まり方が違うので注意が必要です。
 
8 会計監査人の内部統制(計算159,155)
パブコメ版からいろんな事項が減りました。監査法人だけではなく、個人の公認会計士もいるということに配慮して、法人を前提とした規定を抜きました。

10 招集の決定(規則63)
 集中日が「特に理由があるとき」だけの開示になりました。
 招集通知にに、合併等の組織再編の議案の概要を載せることになりました。

11 書面投票・電子投票(規則66)
 電子投票に承諾した株主には、特に書面をほしがらないならば、書面を送らなくていいということが書いてあります。
 また、ある株主が書面投票・電子投票を二重に行使した場合の対応を決められるようにされています。

12 株主総会参考書類(規則73)
 3項4項で、他の書面と重複記載になる場合に、省けるようになりました。

13 社外役員についての株主参考書類(規則74)
 会社の不祥事のうち重要でないものは、開示不要になりました。
 他社の不祥事は、会社が知っている重要なものだけが開示の対象となります。

14 WEB開示(規則94・規則133,計算161,162、同附則5)
 今回の目玉のWEB開示。
 要するに、本来、株主に書面で送らなければならないようなことを、会社のインターネットホームページで開示することにより、書面で書かなくてよいことにするものです。
印刷代が節約でき、かつ、スペースに制約がないので、いろんなことが書けます。
 大事なところなので、Q&A方式で説明します。

【問】
 インターネットで開示することにより,株主に提供する株主総会参考書類・事業報告・計算書類・連結計算書類への記載を省略することができる事項は,どのような事項か。
【答】
1 施行規則では,株主に提供しなければならない株主総会参考書類,事業報告,計算書類のうちの個別注記表,連結計算書類に記載又は表示しなければならない事項の全部又は一部について,一定の要件を満たしたインターネットによる開示(WEB開示)の措置をとることにより,株主への提供に代えることを可能としている(施行規則94条,133条,計算規則161条,162条)。
2 当該措置を採るためには,定款に当該措置を可能とする旨の定めを設けなければならない。
 また,株主総会参考書類に記載すべき事項については株主総会参考書類にWEBのアドレスを記載し(施行規則94条2項),それ以外の事項については,アドレスを株主に通知しなければならない(施行規則133条4項,計算規則161条5項,162条5項)。
3 WEB開示の措置をとることにより株主の提供に代えることが可能となる事項は,①計算書類のうち個別注記表,連結計算書類に記載又は表示しなければならない事項の全部及び②株主総会参考書類及び事業報告記載又は表示しなければならない事項であるが,次の事項については,株主総会参考書類や事業報告への記載を省略することができない。
(1)株主総会参考書類
① 議案
② 施行規則133条3項1号に規定する事項((2)の①から④までの事項)を株主総会参考書類に記載することとしている場合の当該事項
③ 株主総会参考書類に記載しなければならない事項のうち,WEB開示の措置をとることについて監査役又は監査委員が異議を述べた部分
(2)事業報告
① 株式会社の現況に関する事項(施行規則120条1項1号から8号まで)
② 株式会社の会社役員に関する事項(役員報酬等)(施行規則121条1号から5号まで及び8号)
③ 株式会社の株式に関する事項(大株主の氏名等)(施行規則122条1号)
④ 株式会社の新株予約権等に関する事項(施行規則123条1号及び2号)
⑤ 事業報告に表示しなければならない事項のうち,WEB開示の措置をとることについて監査役又は監査委員が異議を述べた部分
4 なお,WEB開示は,株主に対して書類を提供しなければならない株主総会の招集通知を発出する時から,当該株主総会の日から3ヶ月が経過するまでの間,継続して行う必要がある。

なお、WEB開示は、定款変更が必要なので、今年の総会では使えません。
そこで、経過措置で、新法による総会手続をする場合でも、社外役員とか今回充実させた部分は、書かなくていいことにしてます。
新法でやる方が楽かもしれないので、法務部の人は旧新のどちらでいくか、判断が必要です。

とりあえず、以上。本の執筆のしあげの関係上、明日あさってブログ休みます。
来週からは、また普通の記事に戻しましょう。
日曜日は、法学館の渋谷で、明日の法律家講座というのをやります。
会社法の基本原則について話す予定です。

ではでは。

2006年2月10日 (金)

施行規則(機関関係)

今日は、会社法施行規則の機関関係についての一行コメントです。

1 補欠役員の選任(規則96)
 ①補欠社外取締役、補欠社外監査役を選任できるようにしたこと、②特定の会社役員の補欠として選任することができることを明確化したこと、取締役監査役選任権付株式が発行されている場合には、種類株主総会の決議により、決議の有効期間を短縮することができることとしたことが、パブコメ版からの変更点です。

2 業務の適正を確保するための体制(規則98,100,112)
 内部統制省令案が統合されて、施行規則にやってきました。
 そのため、パブコメ案から、目的や取締役の責務に関する規定が削除されてしまいました。
 決めるべきことは、パブコメ案と変わってません。現行の委員会等設置会社の内部統制に加えて、企業集団の内部での統制を加えたもの。

3 監査役の調査対象(規則106,108)
監査省令からの引っ越しです。
パブコメ版から変わってません。108条は、小監査役が監査をするもので、計算関係書類(施行規則2条3項11号)と資本金等計算に関する議案です。

4 会計参与報告の内容(規則102)
会計参与が計算書類等を作成したときに作る会計参与報告の内容です。
これは株主総会の招集通知には添付されず、会計参与のもとで開示されるものです。
内容は、実質的にはパブコメ版と変わっていません。

5 計算書類等の備置場所(規則103)
 会計参与が税理士の事務所で計算書類等を開示することを規定したものです。
 パブコメ版からの実質の変更はありません。

6 閲覧(規則104)
 会計参与は自分の業務時間外は閲覧に応じなくてよいとしたものです。
 パブコメ版からの実質の変更はありません。

7 監査にあたっての意思疎通(規則105,107,110)
監査省令からの引っ越し組。そのため、監査省令案あった留意事項(監査省令案7条)がなくなりました。
施行規則107は、パブコメ版からすると、2項2号において持分会社の法人社員の職務を行うべき者が加えられたこと、3項に監査省令案5条の要素を取り入れたこと、4項で、親子会社の監査担当者の意思疎通及び情報交換の規定が入ったという違いがあります。

8 議事録(規則101,109,111,143)
取締役会議事録は、101条3項が変わりました。それから、出席した取締役は署名するため、3項7号の記載事項からは外れました。
監査役会議事録は、監査役会も、テレビ会議とかが可能であることを明確にしました(3項1号)
委員会議事録は、111条3項4号をパブコメ版より明確にしました。

9 提訴請求(規則217)
パブコメ版では、訴状の記載事項の最高裁規則を引いてきたのですが、最高裁規則は、任意規定なので、任意規定を引いてくるのはどうかということになり、請求の趣旨及び請求を特定するのに必要な事実を提訴請求書に記載することを求めることになりました。

10 不提訴理由(規則218)
パブコメ版から比べると、通知すべきものを請求対象者の責任の有無についての判断の基礎とした資料に限定した点が変わりました。

【事業報告】
11 会社区分との関係(規則119)
非公開会社は、118条のみ。公開会社は、118条に加え、119条から123条までです。
118条は、パブコメ版における内部統制の開示が統合されました。

12 一般的な記載事項(規則120〜123)
120条1項は、パブコメ版から、6号で、3事業年度が終了していない場合の処理を加えたくらいかな。
同条2項については、企業集団の現況に関する事項が連結計算書類の内容となっている場合には、1項各号の事項については事業報告書の記載を省略できるという規定を加えました。
3項は、いわゆる過年度事項です。事業報告で、修正後の過年度事項を反映した事項とすることができるという規定。
121条は、コマゴマしたところが変わってますが、5号で報酬の方針が加わったところが大きいところ。
122条は、発行済株式基準で10分の1以上の株主を開示することになりました。議決権基準だと計算が大変なので。
123条は、パブコメ版と実質はほぼ同じ。役員ごとに分類して、新株予約権の保有又は付与状況を開示します。個々の役員の氏名は不要です。

13 社外役員に関する記載事項(規則124)
パブコメ版からいくつか修正しました。まず、あちこちに「重要でないものを除く」と入れました。それから、3号に「知っているとき」という要件を加えたので、例えば、社外役員が、特定関係事業者等の使用人の3親等内の親族だとしても、会社が知らなければ書かなくてよいことになりました。
7号は、社外役員である期間に、親会社又は兄弟会社から受けた財産上の利益の総額を書くことになりました。

14 会計監査人設置会社における記載事項(規則126)
新聞でも報道されていましたが、会計監査人が選任されてからの年数を書かなくてよくなりました。
それから、会計監査人が業務停止処分を受けたことについては、過去2年間の処分歴で、しかも、会社が事業報告の内容とすることが適切であると判断した場合にのみ、開示することになりました。
会計監査人に優しいなあ。

15 株式会社の支配に関する基本方針(規則127)
防衛策の開示です。内容はパブコメどおり。
基本方針、具体的取り組み、具体的取り組みが基本方針に合致していると判断した理由を開示します。

16   監査報告の内容(規則129〜131)
監査役が内部統制が相当でないと判断した場合の意見が、129条5号に引っ越してきました。
131条で、監査委員が、監査報告の内容と意見が異なる場合には、その意見を付記することができるようになりました。現行法と同じ仕切りです。

2006年2月 9日 (木)

施行規則(株式、社債関係)

 昨日、ようやく会社法施行規則等が公布されました。
 私は、大阪にいるため、日経新聞の一面トップで「買収防衛策に開示義務」と載っているのを見て、「ああ、予定どおり、公布されたんだ」と知った次第です。
 本当は、昨日書き込みをしたかったのですが、一日中、英語の雨に打たれため、宿舎に帰ったら、そのまま朝まで眠りこけてしまいました。

 さて、会社法の実務に携わっている方は、一生懸命、会社法施行規則等の読み込みをしているところでしょうから、本日から、しばらくは、重要そうな条文をピックアップして、一行解説をしていきましょう。
 一行じゃ分からないという人は、10日に大阪会館、13日、14日に東京の読売ホールで商事法務の解説会をやりますし、そのうち色々なところで解説をさせられるでしょうから、そのときにでも詳しく聞いてください。

省令は、パブコメで「もっと、まとめてよ!」という意見が多かったので、結局、会社法施行規則、会社計算規則、電子公告規則の3本になりました。

電子公告規則は、名前は威張った感じですが、取得して電子公告調査期間に関するものであり、改正もほとんどないので、とりあえず読み飛ばしましょう。

会社法施行規則が、メインで、こいつを読み飛ばしたら、会社法はよく分からなくなります。でも、似たような規定も沢山あるし、開示関係の規定が多いので、公開会社の事業報告とかを作らない人は、要点を絞れば、さほどのものはありません。

会社計算規則は、皆さんの仕事の内容により、読み方が替わるでしょうが、会計関係以外のお仕事の人は、株式会社の株主資本(36条、37条)とか、設立時の株主資本(74条)とかあたりと、計算関係書類の監査(149条)以下最後まであたりを流し読みすることから始めましょう。分配可能額の計算なんかにハマれば、足し算とか引き算とか、沢山しなければならないので、NINTENDOのDSの「頭のよくなるゲーム」みたいな良い効果があるかもしれません。他方、単に頭痛とイライラが募るというリスクもあります(笑)。

今日は、会社法施行規則のうち、株式や社債関係を説明しましょ。

1 親子会社(規則3,4)
財務諸表規則の子会社と同じ概念です。
3条4項というオシャレな規定が入って、法135条1項の適用がないのではないかというご指摘に答えました。

2 設立費用(規則5)
 定款に係る印紙税が、変態設立事項から外せるようになりました。
 パブコメ版から、創立総会で認めた設立費用というのが外されました。

3 子会社による親会社株式の取得(規則23)
 パブコメ版とあまり変わってません。
 1号から3号までが、子会社が親会社株式の割当てを受ける場合
 4号が無償
 5号が親会社株式の現物配当
 6号7号が三角合併とかで親会社株式をもらう場合。ikさんのご指摘があった共同株式移転に対応しました。
 8号が外国子会社等で三角合併の準備として、親会社株式を取得しておく場合
 9号から11号が、会社外国会社以外の法人の合併等で財産に親会社株式が含まれていた場合
12号 連結配当規制適用会社の兄弟会社同士で親会社株式をキャッチボールする場合

4 自己株式を取得することができる場合(規則27),
 1号の無償の場合などを含め、パブコメ版とあまり変わってません。
 ただ、2号の「株式」に「持分その他これに準ずるものを含む」ことになりました。会社が持分を有する法人が解散したときに、残余財産の分配として自己株式を取得することができることを明確にしました。

5 自己株式の特定の株主からの取得(規則28,29)
 パブコメ版と変わりありません。
 特定の株主から自己株式を取得するための株主総会の決議をしようとするときに、招集通知の発送が2週間を下回ってもよいような会社でも、総会の最低1週間前には、売主追加請求ができることを知らせるようにし、株主は5日前までにその請求をしなければならないとしたものです。

6 市場価格(規則6,30,43等)
 パブコメ版から変わりました。前の週の平均価格はやめました。
 その日の最終取引価格か、公開買付価格かどちらか高い方です。
 その日に取引がない場合があるので、その場合は、その後最初になされた取引の成立価格にすることが追加されました。

7 単元株式数(規則34)
 パブコメ版と同じです。
 現行法の200単元以上を確保するという制約はなくなっています。

8 単元未満株式についての権利(規則35)
 パブコメ版から4号、5号、8号ニあたりが変わってます。
 定款で制限できない権利として、相続等により取得した者の名義書換請求があがってますが(4号)、そこに書いてあるもの以外の取得についての名義書換請求や譲渡承認請求を制限する旨のの定款の定めが置けるようになりました。この定めを置けば、単元未満株式は、事実上、譲渡禁止になりますね。

7 社債の募集に際して取締役会が定めるべき事項(規則99)
 パブコメ版と変わりました。
 2以上の社債の募集を行うような場合に、取締役会では、募集社債の総額の上限額や利率に関する事項や払込金額に関する事項の要綱を定めておけばよいことにして、いろいろな社債が発行しやすいようにしました。

8 社債の募集にあたって決定すべき事項(規則162)
 パブコメ版とあまり変わってません。
 社債の募集をするときに決めなければならない事項であり、分割払込、現行法から消えたと騒がれていた合同発行、それから、現物払込、社債管理者の約定権限等が規定されています。

9 社債の種類(規則165)
 種類の定義を置くことによって銘柄統合ができるようになりました。
 パブコメ版に、担保付社債に関する事項を加えました。

10 社債管理者の設置をすることを要しない場合(規則169),
 銘柄統合して50単位以上になった場合についても社債管理者の設置義務が生じます。
 パブコメ版から実質の変更はありません。

11 社債管理者の資格(規則170)
 現行法と範囲は変わりません。
 パブコメ版から実質の変更はありません。


以上です。明日は、機関関係をやりましょう。

追伸 現在、私は、滞在先で、大変遅いインターネット接続で苦しんでいますので、コメントへの返事が遅れがちになるかもしれませんが、ご容赦ください。

2006年2月 6日 (月)

新株予約権買取請求権

 私は、今、大阪にいます。
 これから約1か月間、大阪の法総研で、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムの法律実務家及び公務員の方達と寝食をともにしつつ、日本を含む各国の会社制度の研究をすることになりました。

 皆さん、暖かい国から来られたせいか、基本的に陽気でほがらかな方ばかりですし、初日は、アジア人同士、和気あいあいと楽しかったのですが、当然、公用語は英語であり、講義も、討論も、みんな英語・・・。1か月間、これかと思うと、やや目眩がします。

 私は、できたてホヤホヤの会社法をいち早くアジアの皆様にお届けする宅配ピザの配送員のような役割ですから、「少々、配送が雑でもいいから、会社法の一番おいしいところを食べてもらえたら、よしとしよう」と開き直ってもいるのですが。

 それにしても、大変なのは、法務省で働いている、わが同僚です。
 国会の対応や、明日あたり公布されるであろう会社法施行規則等のことで、忙しく働いていることでしょう。特に私の後輩検事のH検事は、一見温厚そうな人柄なのに、怒らせると怖いので、ご機嫌取りをしなければいけません。
 このブログを見ている大阪の方がいらっしゃったら、仲間を見捨てた私が許してもらえるようなお土産を教えていただけると助かります。

 と、慣れない土地で四苦八苦している葉玉ですが、今日は、組織再編関係にも関係のある「新株予約権買取請求権」について、お話しします。

現行商法でも、合併、株式交換、株式移転、会社分割において、存続会社等が新株予約権に係る義務を承継することは認められています。ところが、それを正面から規定した条文はなく、承継した場合に登記義務をかけるというヒネくれた形の条文があるだけです。

ですから、一体、どのような要件を充たせば、新株予約権に係る義務(つまり、会社側から見ると、新株予約権を行使されたときに株式を交付しなければならない義務)を承継できるのか、どのような内容の義務を承継するのかについては、すべて解釈に委ねられているのです(もちろん、新株予約権買取請求権なんてものは、現行商法にはありません。)

例えば、A社が新設分割して、B社を設立したときに、A社の新株予約権に係る義務をB社に承継したとしましょう。

その新株予約権の内容は、本来、「A社の株式の交付を受ける権利」ですが、B社に承継されると、「B社の株式の交付を受ける権利」に変化するのでしょうか?

新株予約権は、債権の一種であり、原則として債権者に無断で債権の内容を変更することはできませんから、もし内容を変更するとすれば、本来、新株予約権者の同意が必要でしょう。

また、仮に、債権の内容を変化させない(つまり、B社が「A社の株式」の交付をする義務を負う)という場合でも、勝手に、債務者をA社からB社に変更するのも、民法の原則からは許されません。もちろん、会社分割ですから、「債権者保護手続き」というものがありますが、異議を述べた新株予約権者に対し、弁済とか、担保提供とかで保護するというのは、なかなか難しい。

そこで、会社法は、会社の行為により、新株予約権の内容が変更される場合等に、新株予約権買取請求権を認めることにより、新株予約権者の保護を図りつつ、新株予約権者の個別の同意がなくても、会社が組織再編等ができるようにしたわけです。

この新株予約権買取請求権には、
① 新株予約権の目的である株式に譲渡制限・全部取得条項を付す場合に認められるもの② 組織変更・組織再編において認められるもの
の2種類があります。

①は、118条に規定されていて、例えば、新株予約権を行使すると「普通株式」がもらえると思っていたのに、定款の変更により、その普通株式に譲渡制限が付けられてしまったため、「譲渡制限株式」しかもらえなくなるような場合です。

組織再編と異なり、株式の交付義務を負っている会社には、変更はないのですが、新株予約権の内容が大きく変更されたので、新株予約権買取請求権を認めて、その定款変更に不満のある新株予約権者は、お金をもらって、その会社と縁を切ることを認めているのです。
(新株予約権付社債も、社債ごと、会社に買ってもらえます。)

②は、777条(組織変更)、787条(吸収型再編の消滅会社等)、888条(新設型再編の消滅会社等)に規定されている新株予約権買取請求権です。

787条や888条は、初めて見たときは、結構、分かりにくい規定なのですが、コツをつかめば、実はそうでもありません。

第1のポイントは、会社法は、現行商法の「承継」という言葉を捨てて、「消滅会社等の新株予約権の代わりに、存続会社等の新株予約権を交付する」という構成を採っているということです。

第2のポイントは
a. 新株予約権を発行するときに、予め、組織再編行為の際には、他の株式会社の新株予約権を交付することを定めていたかどうか(交付予定の有無・236条1項8号)
b.  実際に組織再編行為をするときに、新株予約権者に、存続会社等の新株予約権を交付するかどうか(組織再編契約等における交付の有無)
の2点に着目して、場合分けをすることです。

組み合わせは、4通りで
 a.発行時 b.再編時 買取請求権
交付予定    交付      ×
交付予定    交付せず    ○
交付予定なし  交付      ○
交付予定なし  交付せず    ×
となります。

 つまり、新株予約権の発行時の「予定と違っていたら」、新株予約権買取請求権が行使できるということです。
 なお、簡単に説明するため、「交付予定」「交付」などと書きましたが、正確にいうと、発行時の条件と、組織再編時の条件が一緒なければ、新株予約権買取請求権を行使できますので、ちょっとだけ注意してください。

第3のポイントは、新株予約権者が、新株予約権の交付を受ける余地のない組織再編行為、たとえば、株式会社が組織変更して持分会社になる場合や、株式会社と合名会社との間で合名会社を存続会社とする吸収合併を行う場合等では、ちょっと毛色が変わった新株予約権買取請求権が認められるということです。

このような場合においては、消滅する新株予約権の新株予約権者に対しては、これに代わる金銭を交付しなければならない(744条1項7号、751条1項5号等)こととされていますが、実は、この時も、新株予約権者に対しては新株予約権買取請求権が与えられます(777条1項、787条1項1号等)。

この新株予約権買取請求権は、751条1項5号等の金額等に不服がある者のために設けられたもので、実質的には、代金の決定手続のようなものです。

新株予約権買取請求権の制度は、新設の制度でとっつきにくいかもしれませんが、転換社債型新株予約権付社債やストック・オプションを発行している会社が、組織再編を行うときには、つきものの制度なので、それなりに重要な制度であると思います。

2006年2月 4日 (土)

短期間で吸収合併を行う方法

 学生さんの質問に「美人をつけるのは大人の知恵ですか?」とありましたが,その質問は「いいえ,違います」と答える以外に選択肢のない質問ですから,そもそも聞いてはいけません(笑)。
 ただ,私が「4大美人弁護士のうちの3人」と書いたのは,今後,NPの女性弁護士から「ところで,残りの一人は誰なの?」と聞かれたときに,すかさず「それは,あなたですよ。」と言えるようにするためですから,これは大人の知恵かも知れません。

 それは,ともかく,私は,今日職場で,かなり羨ましがられ,ふと研修所時代のことを思い出しました。
 私がLECを辞めて,司法研修所の入ってすぐのころ,私は週に2回くらい,LECの喫茶室のようなところで,元ゼミ生をボランティアで教えていました。
 ところが,ある日,研修所の所長から呼び出され,いきなり,ちょっと怒ったような声で,いろいろ言われました。

所長 「君は,今でもLECに行っているのか。」
私 「はい。研修所が終わった後,たまに遊びに行ってます。この前まで勤めていた職場ですから。所長も,裁判所に行ったりしませんか?」
所長「そりゃ,私もたまに行くが・・・。いや,そういうことではなくて,LECでまだ働いているんじゃないか?」
私「いいえ。働いてませんよ。」
所長「本当か?君が,LECで,可愛い女の子ばかり集めて,授業しているという匿名の電話があったぞ。」
私「所長!私が商売で教えているなら,可愛い女の子だけ集めて教えることはできません。男でも,ワンちゃんでも,お金さえ払う人は,教えなければいけないでしょう。趣味で教えているからこそ,可愛い女の子だけに教えられるんでしょ。その電話の内容そのものが,僕がLECからお金をもらって教えているんじゃないということを明らかにしているじゃないですか。それとも,ボランティアで教えてもダメだということですか。」
所長「うぐっ・・」
私「何か,他にありますでしょうか。」
所長「いや。帰っていいです。」

このような次第で,私は,司法研修所の入所したてで,無罪を勝ち取ったのですが,「世の中,本当に密告とかあるんだなあ。面白いなあ。」と思い,未だに印象にのこっています。

それは,ともかく,本題に入りましょう。

最近は組織再編の重たいネタが続いているので,小ネタを一つ。
「吸収合併の手続きを短期間にやる方法」です。

現行商法は
①吸収合併契約書の作成

②株主総会の招集通知(総会前2週間)
③事前開示書面の備置(総会前2週間)

④株主総会の承認決議

⑤債権者異議手続(決議後,2週間以内に公告・催告をする。その後,1か月が異議期間)
⑥株主買取手続(決議後20日間が行使期間)
⑦株券回収公告(決議後に1か月間以上の提出期間)

⑧登記=効力発生日
という手続きなっています。

つまり,株主総会の承認前に②③で2週間が必要ですし,承認後の⑤⑥⑦は,同時にやってもいいものの,⑤と⑦で,必ず1か月は必要とされています。

これに対し,会社法は,このお尻の方(⑤⑥⑦)の手続きを,株主総会の承認前に前倒しすることができるようにして,しかも,吸収合併の効力発止日を吸収合併契約で定めた日にすることにより,合併の手続きに要する期間を短縮しました。具体的には

①吸収合併契約書の作成

②株主総会の招集通知(2週間前)
③債権者異議手続(1か月以上の異議期間を定めて公告・催告)
④株主買取手続(効力発生日の20日前までに通知)
⑤新株予約権買取手続(効力発生日の20日前までに通知)・・会社法で新設された。
⑥株券回収公告(効力発生日の1か月間以上前に公告及び通知)
⑦ ②から⑤までの一番早い時に事前開示書面の備置開始

⑧株主総会の承認決議

⑨合併契約で定めた効力発生日

⑩登記=対抗要件

 782条2項の事前開示書面の備置開始日を見ると,下の②から⑤までの,どの行為が早く行われても,一番最初の日から吸収合併に関する情報を閲覧できるようになっていますので,そのことからも前倒しが可能になったことがわかると思います。

以上の手続を前提に,手間がかからず,なるべく早く合併の効力を発生させようとすると,どうやればいいか,頭をひねってみましょう。

効力発生日の1ヶ月前に
①株主に,招集通知と株式買取手続の通知と株券回収通知を兼ねたものを通知する。
②新株予約権者に,新株予約権買取手続の通知を行う
③債権者に公告及び催告する
④その日に事前開示書面の備置
といっぺんに全部始める。
  ↓
1か月後の株主総会で,その日を効力発生日とする吸収合併を承認する

こうすれば,1か月で,吸収合併の効力を生じさせることができます。

もちろん,急いでやる必要がなければ,いろいろなパターンがありますので,ご自由に順番を変えてもらっても結構ですが,最短を知っておけば,応用が利くと思います。

なお,株式買取手続の前倒しについては
 「総会の決議前だから,反対株主にならず,株式買取請求権を行使できないのではないか」
という疑問があるかもしれません。
 しかし,事前開示書面等を見て反対するつもりがあるのならば,株主総会の前であっても「自分が株主総会で反対することを停止条件とする株式買取請求権の行使」を行ってよいので,20日間は,株式買取請求権を行使する機会が与えられます。

また,債権者異議手続に関しては,債権者は効力発生日以前に1か月間は異議を述べる機会が与えられますが,その間に異議を申し述べたとしても,株主総会で合併が承認されるかどうか分かりませんので,債権者は,弁済等を受けることはできません。
 会社は,株主総会の承認決議を得た後に,異議を述べた債権者に弁済等必要な行為を行うことになります。

追伸 3月の新刊本の編集執筆作業のため土曜日曜はお休みいたします。

2006年2月 3日 (金)

会社分割における「事業に関する権利義務」の意義

 昨日の夜は、仕事が終わった後、4大法律事務所のひとつNPに遊びに行き、事務所見学をさせて貰いました。別に就職するわけではありません(笑)。NPには、私の同期で同じクラスの太田洋先生など親しくさせていただいている先生が沢山いるので、NPから法務省に任期付任用公務員として来ている「超」美人弁護士のT先生に頼んで、案内してもらうことにしたのです。

 実はNPのあるアークヒルズは、大昔、LECの本社があったところでもあるので、「フロアの雰囲気は同じだろう」とタカをくくっていたら、さすがNP。

受付、会議室、図書室等立派にリフォームされていて、モダンに改装されておりました。事務所内に、カフェや無人コンビニがあり、至れり尽くせり。法律事務所は、6時過ぎるとしんみりするところが多いのに、NPは、7時になっても残っているスタッフが多く、活気があり、「勢いのある事務所は違うなあ」と思いました。
 NTは、独創性に富んだ先生が多いという印象がありますが、こういう活気の中で、いいアイデアも生まれてくるのでしょう。
 事務所見学の後は、NPの4大美人弁護士のうちの3人と鳥鍋をつつきながら、相当盛り上がってしまい、その結果、ブログの更新も朝になってしまったという次第です。でも、女性が、一線の弁護士として活躍するというのは、男性にはない苦労もあるけど、充実感もあるということがヒシヒシと感じられました(なお、「誰が4大美人弁護士か言ってみろ」と言われても、筆の勢いで、そう書いただけなので、そのツッコミには、答えようがありません。悪しからずご了承ください)。

さて、興奮冷めやらぬ中、書いているので、話が長くなりましたが、今日こそ、予告どおり、「会社分割と事業に関する権利義務」の話をしたいと思います。

会社分割は、平たく言えば、1つの会社を2つに分ける「分社化」のことです。

「分社化」といっても、新たに会社を作る「新設分割」だけではなく、既存の会社に事業を承継させる「吸収分割」もありますし、会社法では対価が金銭等でもよくなったので、実質は、会社の事業の全部又は一部を切り売りするようなものです。
その意味で、会社分割は、事業の譲渡や財産の移転と、あまり変わらないというのは、以前、お話ししたところです。

この会社分割は、現行法では、「営業」単位でなければ、行うことができません

法制的には、なぜ「営業」単位でなければならないのか、合理的理由を見つけるのは困難ですが、①会社分割は組織再編の一つだからだとか、②組織再編税制の一つとして特例を設けてもらうためには「営業」単位の方がよかったからだとか、考えられる理由はいくつかあります。

会社分割の制定時、問題視されていたものの一つに労働関係の問題があり(国鉄の民営化、分社化の際に一部の労働者が置き去りにされたということで社会問題化したことがその根幹にあります)が、労働関係の承継を考えるにあたって、とりあえず営業単位にしておいた方が整理しやすいということもあったのかしれません。

ただ、「営業」単位にしたことによって、よく分からない問題が出てくることになりました。

例えば、食料品の製造及び販売業を営むマルハ食品が、製造業部分を対象に吸収分割するとします。このとき、吸収分割契約では、その対象を、単に「製造業」と書いただけでは分からないので、具体的に「食品加工機械1台・・・」等とどのような財産を移転させるのかも、決めなければいけません。

ところが、この契約で譲渡の対象になった財産と「営業」の間に齟齬が生じる可能性があります。製造業に使われていない販売用のトラックが譲渡されることになっていたり、逆に、本来、製造業に必要なフライパン一式が、契約の中で抜けていたりという場合です。

この契約内容と「営業」との齟齬が生じた場合の処理として、「営業」単位にこだわると、「販売用のトラックは、製造業と関係のない財産であり、契約の対象である財産には、組織的一体性がないから、吸収分割は無効である」とか、「フライパン一式が抜けていたのだから、組織的一体性のある財産とは言えないので、営業ではない。だから、吸収分割は、無効である」ということになりかねません。

もともと、組織的一体性というのがあいまいなので、例えば、「トラックは、原材料を運ぶためのものだから、製造業の一つだ」みたいな強弁をすることはできるかもしれませんが、逆に言えば、吸収分割の効力を争うネタは、いくらでも作れるということです。

また、会社分割の「営業」を営業譲渡の「営業」と同視すると、営業活動の承継も含まれることになります。しかし、会社分割の場合は、組織再編の一つであり、分割した後も、分割会社で同一営業を続けていきたい場合も多いので、「必ず営業活動の承継をしなければならない」というのは、実態に合いません。したがって、客観的意義の営業(財産セット)のみを分割の対象とする必要があります(これは現行法の解釈としても、そのように解する人が多いと思います)。

このように「営業」単位を要求することは、法的安定性という点から問題があるので、会社法では、分割の対象を、「事業に関して有する権利義務」(757条1項)とすることにより、事業活動や客観的意義の事業ではなく、「単なる権利義務」が分割の対象であることを明らかにしているのです。

もちろん、解釈論として「事業」単位であるという考えもあるでしょうが、事業の譲渡では「事業」(467条1項1号2号)という文言が使ってあるのに対し、会社分割では「事業に関する権利義務」という文言が使われているのですから、両者を同じと解するのは困難ではないかと思います。

このように事業単位という考え方を捨てると、何か問題が起きるでしょうか。

事業の譲渡のように、取引行為の一つだと
①事業の譲渡に該当すれば、株主総会の特別決議
②①でないもののうち、重要な財産の譲渡ならば、取締役会の決議
③①でも②でもなければ、取締役で決めることも可能
というようなデマケがされているので、組織的一体性を外してしまうと、②や③との区別がつかなくなってしまいます。

ところが、会社分割は、組織法上の行為ですから、一定の手続きを取らなければ、絶対に効果が生じないものなので、事業単位ではなくても、デマケの問題が起こる余地はありませんし、他に特に問題になるようなこともないと思います。

ということで、組織的一体性のない財産の移転により会社分割を行うことは何の問題もなく、条文上もそのように予定されているので、論点<689>では、そのような立場で論証しています。

なお、組織的一体性のない財産を譲渡するときには、次の点について、注意が必要です。

1 事業に用いられていない財産は、会社分割できない。
  これは、文言上仕方ありませんし、次に述べる2、3との関係でもやむをえないと思います

2 フライパン一式だけを目的にして会社分割しても、根抵当権の共有が生じる場合がある(民法389条の10)。
 例えば、同条1項は、「元本の確定前に根抵当権者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債権のほか、分割をした会社及び分割によって設立された会社又は営業を承継した会社が分割後に取得する債権を担保する。 」と規定しています。文言上、新設分割はバッチリ該当します。吸収分割のときは、フライパン一式が「営業」にあたらないと言えば、いいのかなあ。

3 フライパン一式だけを目的とにして会社分割しても、労働関係承継法が適用されて、フライパンを使っている労働者も一緒に連れて行かなければならない可能性もある。

根抵当権の共有や労働関係承継の問題があるので、あまり極端な例は出てこないはずであり、私が、事業単位を捨てても問題はないと考える理由の一つにもなっています。

なお、「営業」と「事業」という二つの言葉が出てきましたが、商法と会社法で用語が変わっただけですから、意味の違いはないと思って頂いていていいと思います。

2006年2月 2日 (木)

簡易事業譲渡と「重要な一部」

今日は、会社分割の話をしようと予告したのですが、EKさんから、事業譲渡について質問があり、昨日の問題を考えるのに、いい質問なので、今日も事業譲渡の続きにします。

<EKさんの質問>
Q 事業とは事業活動承継説」に賛成なのですが…467条1項2号は、簿価が5分の1以下であれば、総会の承認がいらないと言っていますので、信念が揺らぎます。判例とは、40年9月22日判決でしょうか?そこでの「少数派意見と判決」が467条に混在していると見ることはできないのでしょうか。つまり、財産セットの譲渡は、事業譲渡とは言わない。しかし、重要な財産セットを譲渡したら、営業活動もできなくなるかもしれないでしょう。そういう株主の心配を補うために「総会決議」が必要なのではないでしょうか。
 財産セットは「事業(活動)の譲渡」ではないけれど、「事業活動の譲渡には総会決議が必要である」ことから、ハードの譲渡にも承認を要する、ということなのですが…
 会社法は、最高裁の少数意見も(両方)入れ込んだのではないでしょうか。つまり。467条の「事業」は広義で、21条は狭義。

<答>
さて、EKさんの言っているのは、いいところを突いていますが、答えはちょっと逆なんです。

ポイントは、総資産の20%以上という大きな財産の移転が生じているにもかかわらず、なお、「重大な一部ではない」として、株主総会の決議が不要な場合があるということです。条文に則して説明します。

467条1項2号は、事業の重要な一部のうち、「当該譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一を超えないもの」を除いていて、そのような場合には、株主総会の決議はいらないと言っています。

これは、現行商法245条1項1号が、「重要ナル一部ノ譲渡」としか書いておあらず、どんなものが重要で、どんなものが重要でないか、よく分からなかったので、その判断基準の一部を明確にするために設けられたものです。

商法の「重要ナル」の判断には、量的基準と質的基準があるといわれていました。

量的基準は、数字で表すことができるものであり、実務でよく使われていたのが「10%ルール」、つまり、譲渡される「事業」が、譲渡会社の売上高、利益、資産等の10%を超えなければセーフ、超えれば、総会決議が必要というものです。

話は、それますが、私は子供の頃から「3秒ルール」というルールを採用しており、このルールは、自分が食べている物が床に落ちても、3秒以内ならば拾って食べても安全というルールです。

私は、このルールを絶対視しており、落とした食べ物がソフトクリームだったり、落とした場所が犬のウ○チの上であったりすると、さすがに躊躇を覚えますが、概ね、腹をこわすことなく生きています。

事業譲渡に関する「10%ルール」も「3秒ルール」と同じ程度の信用性はあると思います(笑)。

もう一つの基準は、質的基準です。これは、事業活動を譲渡することによって、会社の事業を維持できなくなるか、または少なくとも事業の規模を大幅に縮小せざるを得なくなるかということで判断します。

この量的基準と質的基準がANDで結ばれているのか、ORで結ばれているのかは、よく分からないわけですが、人間、量的基準を充たしているかどうかは判断しやすいものの、質的基準はよくわからないものですから、「どうしても事業譲渡を総会決議をやらずにすませたい」という経営者の前では、質的基準はあまり機能していないような感じでした。

さて、会社法で採用された簡易事業譲渡は、簡易分割の規定の真似真似ルールですが、量的基準について、法律で明確な線を引いたというところに大きな意味があります。

つまり、今までは、葉玉流の3秒ルールくらいの信用性がなかったルールを「総資産額の20%未満」ならセーフという明確な基準にしたわけです。

売り上げも、利益も関係ありません。しかも、「純資産」じゃなくて、「総資産」で
、これまでの実務の基準を大きく踏み越える「20%」っていう線を引いているところは、「男だね!」っていう感じです(意味不明)。

このように簡易事業譲渡ができる基準を極めて緩やかにした以上、この要件を充たさないのに、別の書かれざる量的基準を設定しようとする人は、牛丼を3杯食べてるのに、まだお代わりしようとする人ほどどん欲です。

普通の人は、これ以上の量的基準の緩和は無理と考えるのであり、467条1項2号の「重要な」というのは、残るもう一つの基準である質的基準を意味すると考える以外にはないと思います。。

 すなわち、譲渡会社が、事業活動の一部を譲受会社に承継させ、競業避止義務が生じたため、会社のこれまでの事業を維持できなくなるか、大幅に縮小せざるを得なくなる場合を「重要な一部」と捉えるのです。

結局、以上をまとめると、会社法において、事業譲渡で株主総会の決議が必要な場合は、
量的に重大なもの かつ 質的に重大なもの
であすが、量的重大性については簡易事業譲渡で規定されているということです。

EKさんは、簡易事業譲渡の新設により「客観的意義の事業説」の考え方を採用したのではないかと心配されていますが、その逆です。

客観的意義の事業説に立つならば、簡易事業譲渡の要件を充たさないならば、常に株主総会の決議が必要であると考えるのが自然です。

ところが、会社法は、事業の財産的な価値だけで重要性を図るのではなく、事業活動の承継に伴う競業避止義務の影響力の重大性も備えてはじめて株主総会決議を要することとしています。

総資産の20%以上もの財産を移転するにもかかわらず、「重要でない一部」が存在する理由を、客観的意義の事業説から説明するのは相当苦しいような気がします。

 なお,事業譲渡と経済的に同様の効果が生ずる「会社分割」においては,総資産額の20%を超える資産の移転がされる場合には,承継される権利義務の「質的な重要性」のいかんを問わず,株主総会の決議が必要となります(784条3項)。

 これは、事業譲渡が取引行為で、通常、対価は金銭であるため、株主と譲渡された事情の関係が切れてしまうのに対し、会社分割は組織法上の行為で、通常、分割会社が新設会社・承継会社の株式を取得するあめ、株主は、分割会社を通じて、新設会社・承継会社に影響力を持ち続けられるという点にあるのでしょう。

 もっとも、事業の現物出資もできますし、対価が柔軟化されたため、対価が金銭であるような場合には、分割会社が新設会社に影響力を及ぼすことができなったので、両者を区別する意味はほとんどなくなっているはずですが、伝統を重んじて、事業の一部譲渡だけに「重要な」の要件が付されています。

このような前振りをしたうえで、明日こそ会社分割と事業に関する権利義務の話に突入したいと思います。

2006年2月 1日 (水)

事業譲渡の「事業」の意義

 私の両親は、福岡県の久留米市で、マルハ食品という株式会社を設立し、明太子とか出し昆布とか食料品の生産及び卸売り業を営んでいました(葉玉のハでマルハ食品です。大洋ホエールズの親会社だった食品大手のマルハとは何の関係もありません。類似商号っぽいですが、うちの方が、マルハさんよりも20年くらい早くマルハ食品を商号にしていましたので、うちが真似したわけではありません。多分、むこうがマネしたわけでもないと思いますが(笑))。

 私は、一人っ子で、しかも、法律家になってしまったので、マルハ食品には、跡取りがいなくなり、両親が歳を取ったこともあって、マルハ食品の財産を売ることにしました。さて、マルハ食品の財産を売るには、どのような方法があるでしょうか。

 マルハ食品は、現預金、土地、店舗、食品加工設備、冷蔵設備、商品等の財産、従業員との雇用契約、仕入れ先からの買掛金、お得意さんへの売掛金等の財産でなりたっています。

 それらの財産は、バラバラに売るならば、価値は低いかも知れませんが、それらの財産が集まって、活動しはじめると、利益を生み出す回路ができあがります。

 土地の上に店舗が立ち→店舗の中に食品加工設備や冷蔵設備があり→仕入れ先から仕入れた材料を従業員が食品加工設備で加工し→冷蔵設備の中で保存し→さらに、従業員がその商品をお得意さんに売って回り→お得意さんから売掛金を回収して、仕入れ先に買掛金を払ったり、従業員達に給料を払ったりして、残ったお金が利益になるという回路です。

このように一つ一つの財産が、それぞれの役割に応じて結びつき、利益を生み出すような形で保持されている財産の集まりを「客観的意義の事業」と言い、その客観的意義の事業(財産)を、役員や従業員等人の力で実際に動かして、利益を生み出していることを「事業活動」と言います。

法律的に言うと、客観的意義の事業は「有機的一体として機能する財産」と表現され、主観的意義の事業(事業活動)は「その財産によって営まれる活動」と表現されます。

あなたが、「買う」立場に立ってみてください。

「この食品加工用機械を買ってよ。300万円もするんだよ」と言われても、困惑するだけでしょう。
しかし、あなたが食品加工業者なら、「今の工場が狭くなったから、ここに引っ越せば、生産性があがるだろう。」と思い、客観的意義の事業だけでも高く買うでしょう。
さらに、あなたに食品加工の知識がなくても、客観的維持の事業と事業活動をセットで買えば、自動的に利益を生み出してくれる回路が手に入るのですから、「買ってみようかな」という気持ちになるかもしません。

このような理由から、世の中の会社は、よく「事業譲渡」をやるわけです。

この事業譲渡については、譲受人の競業避止義務を定めた21条1項と、株式会社の事業譲渡の手続を定めた467条1項1号の関係が問題になります。

21条1項は、「事業」を譲渡した会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その「事業」を譲渡した日から二十年間は、同一の「事業」を行ってはならないと規定しています。

最後の「事業」は、客観的意義でしょうか、それとも事業活動でしょうか。
そこの「事業」は、事業活動という意味でなければ、意味が通りませんね。

また、21条1項の「事業を譲渡」という意味を客観的意義の事業だけだと捉えると、「土地・店舗・食品加工設備・冷蔵設備等」のいわばハード面の譲渡ということになるわけですが、そのような譲渡は、譲渡人に競業避止義務を欠ける根拠になりえません。

 例えば、私の父親が、職人達と一緒に、それらのハードを使えば、おいしい明太子が製造され、私の母親が、まん丸い笑顔で、魚屋さんに明太子を売れば、飛ぶように売れていきます。
 しかし、このハードは、別に明太子作りに特化された施設ではないので、譲受人は、同じハードを使って、お菓子を作って、可愛い女子高生に売ることもできるのです。
 そんなにやっていることが違うのに、譲受人が、21条1項を根拠に、「明太子の製造販売をやめろ」というのは、ちょっとおかしいでしょ?

 私達が、譲受人に「明太子の製造販売事業」(事業活動)を売ったのならば、隣接市町村で同じ明太子屋をやるのは禁止されて当然ですが、「土地・店舗・食品加工設備など食品の製造販売を行うのに便利な財産セット」(客観的意義の事業)を売ったのならば、競業避止をかけるべきではない。
 そういう価値観のもとで、21条1項の「事業の譲渡」は、事業活動の承継を含むものと解釈されているのです。

では、467条1項1号2号の「事業の譲渡」は、どんな意味でしょうか。

 ここで、ある学説は、同条の「事業」は、21条1項と異なり、客観的意義の事業のみを指し,会社の事業活動の承継を含まないといいます(客観的意義の事業説)。

 この説は、マルハ食品が、組織的一体性のある財産を譲ってしまったら、財産的な価値の高いものが会社から流出することになるし、これから自分の事業を続けていくのにも不便だから、競業避止義務がかかるかどうかに関わりなく、株主総会の特別決議を要求して、慎重に判断させるべきだという考えです。

でも、客観的事業かどうかは、値段の高い安いで決まるわけではなく、例えば、マルハ食品が、その一部門として、こじんまりと司法試験予備校をやっていて、プレハブに机を10個並べて、ホワイトボードを設置し、基本書を5冊くらい並べておけば、それはそれで「客観的意義の事業」であり、その「予備校セット」を売るのと、1000坪の土地を売るのでは、後者の方がよほど慎重に行うべきことだと思います。

もともと、高価な財産であっても、有機的一体性がないならば、「重要な財産の譲渡」として取締役会の専決事項になるだけであり、そこに有機的一体性が加わっただけで、株主総会の決議が必要となるとは考えにくいのです。

しかも、譲り渡し会社は、「事業の全部又は一部」の譲渡でも株主総会の決議が必要なのに、譲り受け会社は、「事業の全部」の譲受けでなければ株主総会の特別決議にならないというのも、「事業の財産的価値」だけでは説明できません。
 事業譲渡は、取引行為であり、譲渡会社が価値の高い事業を譲ったのならば、譲受会社は、その対価として価値の高い財産を譲渡会社に支払ったはずであり、「事業の一部譲渡」における両社の手続の違いは、財産的価値とは違うところで理屈をつけるしかないはずです。

そのようなことを考えていくと、最高裁のいうように、467条1項1号2号は、譲渡会社に21条1項により競業避止義務が生じるような事業譲渡、つまり、客観的意義の事業と事業活動の承継を意味すると解するのが妥当であるように思います(事業活動承継説)。

 譲渡会社は、競業避止義務を負うことにより、定款で定めた会社の目的の一部が実現できなくなるおそれがありますし、株主は、その事業を気に入って、出資していたのかもしれないのですから、会社の事業目的の変更を迫られるようなことは、株主総会で決めてもらうのが妥当です。
 
 また、事業活動承継説は、譲受会社が、譲渡会社が法定の手続きを踏んでいるかどうか、つまり、株主総会の決議が必要か、取締役会の決議で足りるかということを判断しやすいというメリットもあります。譲渡会社が競業避止義務を負うかどうかは、譲受会社にも、すぐに判断できますから(店舗と設備だけを買ったのか、従業員等を含む事業活動を承継したのか、分からない人はいないでしょう。)。

そういうことで、100問の問91は、この記事と同じく事業活動承継説で論証しています。ただ、今日の記事は、「事業」の概念をよく理解していただいたくことに力点があり、本当の目論見(めろんけん)は、明日あたりに書く「会社分割における事業に関する権利義務の意義」の前振りをしておこうというあたりにございます。
・・・ということで、明日に続く。

« 2006年1月 | トップページ | 2006年3月 »

最近のトラックバック

2009年11月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30