代表取締役が辞任した場合の対処法
先日、ライブドアの代表取締役が逮捕されて辞任し、同社が裁判所に仮取締役の選任の申立をしたというニュースが流れました。仮取締役の選任申立てが大きく採り上げられるのは珍しいので、これを機会に
「代表取締役が取締役・代表取締役を辞任した場合に、会社は、どんなことができるのか」
について、簡単にまとめておきましょう。 なお、ここでは、定款で取締役や代表取締役の員数についての定めがないことを前提にお話しします。
委員会設置会社ではない取締役会設置会社においては、(1)取締役が3名以上いなければならない、(2)代表取締役を最低1名選定しなければならないというルールがあります。
代表取締役が辞任しても、(1)取締役が3名以上いたり、(2)他に代表取締役がいるならば、法的な問題はないのですが、(1)(2)のどちらか、又は両方の要件が欠ける場合に、どうするかが問題です。
第1の選択肢は、「何もしない」ということです。
何もしないのが、なんで選択肢になるんだという叱責の声があがりそうですが、会社法は、欠員が生じても困らないように、手当の規定を置いているのです。
会社が何もしないと、辞任した代表取締役は、なお「取締役」及び「代表取締役」としての権利義務を有することになります(346条1項、351条1項)。
つまり、辞めても、あいかわらず、取締役や代表取締役として活動する権限と義務があるということです。
なお、代表取締役が勾留中という特殊な場合、取締役会に出席できない等の問題はありますが、次のようにやろうと思えばなんとかなります。
(1)取締役会の招集通知は、どのような形式で行ってもいいので、拘置所で接見して、代表取締役にも招集通知を行えば、その者が欠席しても、適法に取締役会が開催できます。
(2)仮に、辞任が相次ぎ、取締役の員数が1名になり、しかも、2名の辞任取締役が取締役会に参加できないとしても、取締役全員が書面で同意し、監査役が異議を述べなければ、取締役会の決議があったものとみなすことができます(370条)。ですから、代表取締役の選定等もをやろうと思えばできるわけです。
(3)それから、代表取締役が勾留されていると、一見活動ができないように思いますが、勾留中であっても、契約書にサインくらいはできますし、それが嫌なら、取締役会で支配人を選任すれば(362条4項3号)、当面、代表取締役の代わりになるでしょう。
第2の選択肢は、仮取締役、仮代表取締役の選任を申し立てることです。
第1の方法は、会社法的にはなんとかなっても、普通の会社は、「勾留中の人が経営にタッチしないほうが、世間体がいい」と考えることが多いと思います。
代表取締役の選定だけならば、第1の方法で取締役会を開催すればいいので、裁判所の力を借りる必要はありません。
しかし、取締役の選任は、株主総会を開かなければならないので、とりあえずは、利害関係人(例えば、残された取締役や辞任した代表取締役)が裁判所に「一時取締役の職務を行うべき者」(俗に、仮取締役と呼ばれています)の選任の申立てを行います(346条2項)。
この仮取締役は、よく「職務代行者(352条)」と混同されるのですが、職務代行者は、通常、代表取締役の職務執行停止の仮処分と同時に仮の地位を定める仮処分として選任されるものですから、仮取締役とは全然違う制度です。
おおざっぱに言うと、職務代行者は、株主や他の取締役が知らないうちに、ある取締役が勝手に自分を代表取締役として登記していたような場合のものです。
これに対し、仮取締役・仮代表取締役は、辞任や死亡等により、員数が欠けた場合の制度ですから、職務代行者と混同しないようにしてくださいね。
さて、話を仮取締役・仮代表取締役に戻しますと、この制度の最大の問題点は、裁判所が選ぶというところにあり、裁判所が誰を選ぶのかは決定がでるまでわかりません。
申立ての際に、選んで欲しい人を申立書に記載したら、もしかしたら、その人を選んでくれるかもしれませんが、裁判所が裁量で選ぶので、全然、縁もゆかりもない人を選ぶかもしれません。
したがって、そういう不安定な状態になることが嫌な会社は、第三の方法、つまり、株主総会で、予め「補欠取締役」を選任しておくということが考えられます(329条2項)。
この方法は、辞任する前に株主総会で選任しておかなければいけないので、今回のライブドアのように、辞任した後になんとかしようというときには使えませんが、危機管理を万全にしようという会社は、補欠役員を選定しておくのが一般的であろうと思います。
なお、補欠取締役は、取締役が「逮捕されて辞任した場合」の制度ではなく、死亡したり、別の理由で辞任したりするときにも適用されますので、株主総会で補欠取締役の選任議案が出たとしても「この会社は近々、取締役の中から逮捕者が出るのではないか」等と考えないでくださいね。
ちなみに、代表取締役については、会社法に「補欠」に関する規定がありません。
しかし、これは、補欠代表取締役を禁止するという趣旨ではなく、その選定方法や選定決議の効力について法律による制限をしないという趣旨であり、取締役会の裁量で補欠代表取締役を選定しておくことは、禁止されていないと解すべきだと思います。
最後の方法は、一番ノーマルな方法ですが、株主総会を開催して、取締役を選任することです。
代表取締役が勾留中の場合、株主総会の招集通知を発することができるかというシビアな論点はあるものの(実務上は出せるでしょうが)、会社法は、「代表取締役」ではなく、「取締役」が招集通知を発する(299条)こととしていますので、定款で代表取締役が招集通知を発するという規定を置いていない限り、残っている取締役が招集通知を発すれば、適法に株主総会を招集することができます。
生々しい話題ではありますが、会社法の制度を身近に捉えられる機会と思い、いろいろな方法を紹介させていただきました。なお、以上は、すべて会社法を前提にしているので、現行商法ではできないこともありますので、注意してください。


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